差動式分布型感知器の空気管は、なぜ百メートルという長さの上限と、五度という傾斜の角度まで細かく決まっているのでしょうか。
押入れのような狭い場所に取り付けるとき、空気管を隅に寄せてよいのか迷う現場も少なくありません。
さらに、外部の気流が流通する開放された建物や、音が届きにくい機械室では、感知器や地区音響装置の設置範囲そのものが変わってきます。
この記事では、消防庁がかつて示した質疑応答をもとに、現行の消防法施行規則の条文と照らし合わせながら、これらの数字の根拠を解説します。
感知器の取り付け方とか配管の長さとか、昔からある建物だと細かい数字がよくわからなくて困るんです。
五度とか百メートルとか、根拠がある数字なので、今の条文と照らしながら一つずつ確認していきましょう。
開放されてる倉庫とか、機械の音がうるさい部屋とか、普通の部屋と同じルールでいいのかも気になってて。
気流の影響や音の届き方は、建物ごとに事情が変わるので、現場に合わせた考え方を押さえておくと安心ですよ。
- 差動式分布型感知器(空気管式)の検出部は、五度以上傾斜させて取り付けることはできません。
- 一の検出部につなぐ空気管の長さは、リード用空気管を含めて百メートル以内に収める必要があります。
- 押入れのような狭い場所でも、露出部分二十メートル以上を確保できれば、空気管を隅に寄せて設置してもさしつかえありません。
- 外部の気流が流通する場所は、外気に面する部分から五メートル未満の範囲を目安に判断します。
- 建物の構造で地区音響装置の音が届かない部分があるときは、増設するなどして全区域に有効に報知できるようにします。
▼

目次
差動式分布型感知器の検出部は傾斜させて取り付けてもよいのか

この空気の動きを正確に拾うためには、検出部そのものの取り付け方にも条件があります。
現行の消防法施行規則第23条第4項第4号ホも「感知器の検出部は、五度以上傾斜させないように設けること」と定めており、この基準は当時から変わっていません。
空気管式の検出部は、内部のダイヤフラムが空気の膨張をとらえる構造のため、傾きが大きくなるほど感知の感度にばらつきが出ます。
梁の形状や天井の勾配に合わせて検出部を斜めに逃がしたくなる現場もありますが、構造上の都合だけでは例外は認められません。
取り付け角度は、工事の段階で水平器などを使って必ず確認しておきましょう。
うちの倉庫、梁の形が複雑で検出部を斜めに付けたいって業者さんが言ってたんですけど大丈夫なんですか。
五度以上の傾斜は構造にかかわらず認められていないので、梁の形に合わせて取り付け面の方を調整してもらう必要がありますね。
空気管の長さの上限百メートルにはどこまで含まれるのか

現場では検出部そのものの空気管のほかに、途中から別の種類の空気管をつなぐこともあります。
現行の消防法施行規則第23条第4項第4号ニも「一の検出部に接続する空気管の長さは、百メートル以下とすること」と定めており、検出部に接続されている空気管である以上、感知区域に張り巡らせた部分とリード用の部分を区別していません。
リード用空気管は、検出部から離れた感知区域まで信号を運ぶためだけの配管で、感知そのものには直接関わりませんが、法令上は同じ一本の空気管として扱われます。
工事の際に感知区域側の長さだけを百メートル以内に収めても、リード側を含めた合計が超えていれば基準を満たしません。
図面を確認するときは、検出部から出ているすべての空気管をひとつの長さとして足し合わせる必要があります。
検出部までのリード管は別枠で数えなくていいんですか。
リード用空気管も同じ検出部につながる一本の管として、合計で百メートル以内に収める必要がありますよ。
押入れのような狭い場所で空気管を隅に寄せて設置してよいのか

空気管式の感知器は、一定の長さを露出させる必要があるため、特に悩ましい場所になります。
現行の消防法施行規則第23条第4項第4号イは「感知器の露出部分は、感知区域ごとに二十メートル以上とすること」と定めており、位置については特に指定していません。
押入れは布団や荷物の出し入れで空気管に物が当たりやすいため、使う側からすれば中央より隅の方に寄せたいという事情は自然なものです。
ただし隅に寄せたことで露出部分の長さが不足したり、収納物で空気管がふさがれて空気の動きを感知できなくなったりしては本末転倒です。
設置後は実際に収納物を入れた状態でも火災を有効に感知できる位置になっているか、点検のときにあわせて確認しておきましょう。
押入れの奥に布団をぎゅうぎゅうに詰めてるんですけど、空気管が隅にあれば問題ないですか。
露出部分の長さを確保したうえで有効に感知できる位置であれば隅でも大丈夫ですが、収納物でふさがれていないかは点検で見ておきたいですね。
外部の気流が流通する場所はどうやって判定するのか

こうした場所では、感知器を付けても外の風に流されて火災をうまく感知できないことがあります。
現行の消防法施行規則第23条第4項第1号ロも「上屋その他外部の気流が流通する場所で、感知器によつては当該場所における火災の発生を有効に感知することができないもの」を感知器の設置対象から外しており、この考え方は当時から変わっていません。
開放面が一面だけの建物と、二面・三面と開放面が増えていく建物とでは、風の抜け方も警戒すべき範囲も違ってきます。
目安となる五メートルという距離は絶対の線引きではなく、建築物の高さやはりの位置、収容物の状態まで含めて総合的に判断するためのものです。
開放面のある建物に感知器を配置するときは、この目安をもとに、気流の影響を受けにくい奥まった部分を中心に設置を検討しましょう。
うちの資材倉庫、シャッターを開けっぱなしにしてる面があるんですけど、そこにも感知器が必要なんですか。
開放されている面から五メートル未満の範囲は気流の影響で有効に感知できないことがあるので、その手前からしっかり警戒する配置を考えましょう。
建物の構造で地区音響装置の音が届かない部分はどうするのか

地区音響装置の音圧は、建物の構造によって思わぬ死角を生むことがあります。
現行の消防法施行規則第24条も、地区音響装置は防火対象物又はその部分の全区域に有効に報知できるように設けることを求め、各階ごとに各部分から一の地区音響装置までの水平距離が二十五メートル以下となるように設置する基準を定めています。
質疑で取り上げられた建物では、稼働中の機械の騒音が大きい部屋で実際に音圧を測定したところ、地区音響装置の音がほとんど聞こえない部屋が見つかっていました。
図面の上で水平距離の基準を満たしていても、実際の建物では壁や機械の騒音によって音が届かないことがあるため、現場での聞こえ方の確認が欠かせません。
工事や点検のときは、水平距離の基準を満たしているかだけでなく、実際に鳴動させて聞こえない部屋がないかまで確かめておきたいところです。
工場の中で機械の音がうるさい部屋があるんですけど、そこだけベルの音が聞こえにくい気がするんです。
図面上の距離だけでなく実際に鳴らして聞こえ方を確かめて、届かない部屋があれば地区音響装置を増設して全区域に行き渡らせる必要がありますよ。
よくある質問
まとめ
五度とか百メートルとか二十五メートルとか、数字にはちゃんと理由があるんですね。
少し安心しました!
取り付け角度や配管の取り回しで迷ったときは、現場を見ながら一緒に確認しますので、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第23条第4項第1号ロ・第4号イ・ニ・ホ
- 消防法施行規則第24条第5号
- 「消防用設備等の設置に関する質疑について」(昭和54年11月27日付け消防予第228号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





