屋外貯蔵所は、硫黄などの危険物を建物に入れず柵等で区画して貯蔵する施設で、周囲には指定数量の倍数に応じた幅の空地を保有する必要があります。
蓄電池により危険物を貯蔵する場合には、リチウムイオン蓄電池と第二類又は第四類の危険物に限り、規則で空地を3メートルまで縮める特例がすでに用意されていますが、それ以外の蓄電池ではこの特例を使えません。
令和7年7月30日、消防庁危険物保安室は、こうしたケースでも政令第二十三条の基準の特例で同じ扱いができるかという照会に答える執務資料を発出しました。
この記事では、キュービクル化と幅3メートルの空地という2つの条件を、条文とあわせて整理します。
うちは鉛蓄電池で屋外貯蔵所を考えているんですが、リチウムイオン用の特例は使えないと聞きました。
それでも空地を縮める方法はないんでしょうか。
実は消防庁が、政令第二十三条の特例でも同じ扱いができるかを整理した執務資料を示しています。
規則の特例と同じ条件で済むなら助かります。
はい、キュービクル化と3メートルの空地という条件は共通です。
順番に見ていきましょう。
- 蓄電池設備により危険物を貯蔵する屋外貯蔵所でも、政令第二十三条の基準の特例を使えば、規則第二十四条の十二の三と同じ条件で空地を縮められることが消防危第181号で確認されました。
- 規則第二十四条の十二の三が使えるのはリチウムイオン蓄電池により貯蔵される第二類又は第四類の危険物に限られます。
- それ以外の蓄電池や危険物を貯蔵する屋外貯蔵所でも、キュービクル化と幅3メートル以上の空地という同じ条件を満たせば、政令第二十三条の特例で対応できます。
- 適用除外になるのは政令第十六条第一項第一号(位置)と第四号(空地)の2つだけです。
- ただし政令第二十三条は市町村長等による個別の認定が前提のため、規則の特例のように自動的には適用されず、事前の協議が必要です。
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目次
なぜこの基準の特例が改めて問われたのか

屋外貯蔵所は、硫黄などの危険物を建物に入れず柵等で区画して貯蔵する施設です。
蓄電池により危険物を貯蔵する場合には、専用の特例がすでに用意されています。
すでに規則には、蓄電池で貯蔵する屋外貯蔵所むけの特例が1つ用意されています。
ところがこの特例には対象となる蓄電池や危険物の種類に条件があり、誰でも使えるわけではありません。
今回の執務資料は、規則の特例に当てはまらない場合でも、政令第二十三条の一般的な特例で同じ結果にたどり着けるかという照会に答えたものです。
(理由までは通知に書かれていませんが)蓄電池の種類や用途が広がるにつれて、こうした照会が増えてきたと考えられます。
蓄電池の特例があるのは知っていましたが、全部の蓄電池に使えるわけじゃないんですね。
はい、対象は限られています。
次の項目で詳しく見ていきましょう。
どの屋外貯蔵所のどんな蓄電池設備が対象になるのか

対象になるのは、蓄電池により危険物を貯蔵し、又は取り扱う屋外貯蔵所です。
まず、すでにある規則の特例がどこまでをカバーしているかを確認します。
規則の特例が使えるのは、リチウムイオン蓄電池で第二類又は第四類の危険物を貯蔵する場合に限られます。
鉛蓄電池やニッケル水素蓄電池など別の蓄電池、あるいは第一類・第三類・第五類・第六類の危険物を蓄電池で貯蔵する屋外貯蔵所は、この号の対象に入りません。
消防危第181号の問1は、こうした規則の対象外のケースを念頭に、政令第二十三条の一般的な特例でも同じ扱いができるかを確認したものです。
つまり対象は「蓄電池で貯蔵する屋外貯蔵所」全般であり、規則の特例の内と外の両方が今回の整理に関わります。
うちはニッケル水素蓄電池なんですが、規則の特例とは対象が違うんですね。
はい、規則の特例は対象が限られます。
だからこそ今回の執務資料が役立ちます。
執務資料はどんな要件を示したのか

執務資料は、具体的な2つの条件を示したうえで「差し支えない」と回答しました。
まず、その根拠になる政令第二十三条がどんな条文かを確認します。
条件は、蓄電池設備をキュービクル式にすることと、柵等の周囲に幅3メートル以上の空地を確保することの2つです。
この2つを満たせば、政令第二十三条の特例として政令第十六条第一項第一号(位置)と第四号(空地)が適用されなくなります。
規則第二十四条の十二の三が定める条件とほぼ同じ内容ですが、根拠となる条文が違うため、市町村長等への確認が別途必要になります。
告示が求めるキュービクル式の技術基準そのものは、規則の特例でも政令第二十三条の特例でも共通です。
規則の特例と条件が同じなら、結局どちらを使っても同じなんでしょうか。
条件は同じでも、認められ方が違います。
規則は自動的に、政令第二十三条は個別の判断によります。
実務で見落としやすいのはどこか

政令第二十三条の特例は、条件さえ満たせば自動的に使えるわけではありません。
見落としやすい点がいくつかあります。
適用除外になるのは、政令第十六条第一項のうち位置(第一号)と空地(第四号)の2つだけです。
柵等の設置(第三号)、湿潤でなく排水のよい場所に設置すること(第二号)、標識と掲示板(第五号)、架台の基準(第六号)はそのまま適用され、免除されません。
また政令第二十三条は市町村長等が個別に認定する仕組みのため、規則第二十四条の十二の三のように届出だけで自動的に適用される基準ではありません。
工事に着手する前に、所轄消防本部との事前協議を済ませておく必要があります。
柵や標識は蓄電池でも関係なく要るんですね。
はい、そこは変わりません。
事前協議も忘れずに進めましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、屋外貯蔵所で蓄電池設備を計画するときに確認しておきたいことを整理します。
規則の特例と政令第二十三条の特例、どちらに当たるかを順番に確認しましょう。
- 貯蔵する危険物の種類と、使用する蓄電池の種類(リチウムイオンかどうか)を確認する。
- リチウムイオン蓄電池かつ第二類又は第四類の危険物であれば、規則第二十四条の十二の三の特例が自動的に使える。
- それ以外の場合は、政令第二十三条の特例として扱えるか所轄消防本部に事前協議する。
- 蓄電池設備をキュービクル式にし、告示が定める技術基準への適合と幅3メートル以上の空地を確保する。
いずれの特例も、柵等・標識掲示板・架台の基準までは免除されません。
迷ったときは、所轄消防署に早めに相談しておくと安心です。
うちも早めに消防本部へ相談してみます。
事前の相談が、工事をやり直さないいちばんの近道ですよ。
よくある質問
まとめ
規則の特例と政令第二十三条の違いがよく分かりました!
事前協議を忘れずに進めてくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(消防危第181号、令和7年7月30日、消防庁危険物保安室長)問1・答1
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第十六条第一項・第二十三条
- 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第十六条の二の七・第二十四条の十二の二・第二十四条の十二の三
- 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和四十九年自治省告示第九十九号)第六十八条の二の三
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





