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蓄電池設備の電解液比重はなぜ充電中に信用できないのか|比重計の規格からセル電圧の基準値まで解説

蓄電池室で電解液比重とセル電圧を点検する様子

蓄電池設備の点検では、電解液比重とセル電圧を測って蓄電池の性能を確認します。
ところが比重は、充電中に測った値だけでは充電がどこまで進んだか判断できません。
さらに判定の基準値は鉛蓄電池の型式によって異なり、アルカリ蓄電池だけ確認の頻度も別扱いです。
この記事では、比重計の規格と測り方から、充電中に数値が信用できない理由、セル電圧の判定基準値、均等充電の実施義務までを整理します。

うちの蓄電池、充電中に比重を測ったら数値が低いままで焦りました。

充電中の比重では充電量を判断できません。
まずは測り方の基本から見ていきましょう。

測る道具にも何か決まりがあるんですか。

はい、比重計と温度計の精度まで規格で決まっています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 電解液比重は比重計・温度計ともJIS規格の精度を満たす器具で測り、スポイトで吸い上げた液面の上縁を読みます。
  • 充電中の比重は充電終期にガスの攪拌で急上昇するため、測定しても充電量を判断できません。
  • セル電圧の判定基準値は鉛蓄電池の型式ごとに数値が異なり、直流電圧計もJIS規格の精度が必要です。
  • アルカリ蓄電池の比重は充放電しても変化しないため、年1回パイロットセルの確認で足ります。
  • 均等充電は製造者指定の期間どおりに実施したかを記録で確認し、未実施や判定不良なら実施義務が生じます。

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蓄電池設備の電解液比重とセル電圧の点検を比重計の規格と測定方法、充電中の判断限界、セル電圧の基準値、均等充電の実施義務の4つの観点で示した図解

電解液比重はどんな器具でどう測るのか

比重計とスポイトを使って蓄電池の電解液比重を測定する検査員の手元のイラスト
電解液の比重と温度は、鉛蓄電池であれば全セルについて確認します。
ただし、使う器具にも測り方にも細かい決まりがあります。
消防庁の点検要領 第25 非常電源(蓄電池設備) 電解液(リチウムイオン蓄電池を除く。) 比重及び温度 鉛蓄電池の電解液の比重及び温度は、比重計及び温度計による全セルについて確認する。※①比重計は、JIS B7525(比重浮ひょう)に規定された精度±0.005の浮ひょう又はこれと同等以上の精度をもつ比重計を使用すること。②温度計は、JIS B7411(ガラス製棒状温度計(全浸没))に規定された精度±1℃の温度計又はこれと同等以上の精度をもつ温度計を使用すること。ただし、水銀温度計は使用しないこと。電解液比重の測定方法は、次によること。①ゴム球を強く押さえてスポイトの先端を液中に挿入し、ゴム球の力を徐々に弱めてスポイト内に液を吸い込む。②スポイト内の比重計(浮ひょう)が内部に触れないよう正しく浮かし、液の気泡の消えるのを待って液面の盛り上がった上縁の比重計の目盛を読む。
比重計はJIS B7525、温度計はJIS B7411の精度を満たすものを使います。
温度計は水銀温度計の使用が禁止されている点に注意が必要です。
測定は、ゴム球でスポイトに電解液を吸い上げ、気泡が消えるのを待ってから、液面の盛り上がった上縁の目盛を読みます。
構造上電解液が確認できない蓄電池は、比重と温度の測定自体を省略し、代わりに蓄電池表面温度を測ります。

水銀温度計がダメなのは意外でした。

はい、同等以上の精度の器具に限られます。
次は測った値の判定基準を見ましょう。

充電中の比重測定ではなぜ充電量を判断できないのか

充電中の蓄電池とカレンダーで数週間の経過を示したイラスト
比重には鉛蓄電池の型式ごとに判定基準の数値があります。
ただし、充電の最中に測った比重では、その基準と単純に比べられません。
消防庁の点検要領 第25 非常電源(蓄電池設備) ア 電解液比重は、CS CS-E型では、1.205(20℃)以上、HS HS-E型では、1.230(20℃)以上で、各セル間に0.03以上の差がないこと。イ 電解液温度(制御弁式据置鉛蓄電池は蓄電池表面温度)は、45℃以下で、各セルは全セルの平均値の±3度以内であること。※比重は、放電の場合は放電量にほぼ比例して低下するが、充電の場合は充電量に比べて比重の上昇は少なく、充電終期にガスの発生量とともに攪拌されて急激に上昇するので、充電中の比重を測定しても充電量を判断することはできない。また、充電終期電圧を低く、例えば2.3V/セルとした充電方式では、充電終期の電流が少ないため、ガスによる攪拌が行われず、自然拡散にまたなければならない。このため、この充電方式では、常温で約4週間、低温では約6週間経過した後の比重値によって判断する必要がある。
電解液比重はCS・CS-E型で1.205以上、HS・HS-E型で1.230以上が基準で、各セル間の差は0.03以内です。
放電時は放電量にほぼ比例して比重が下がりますが、充電時は上昇が少なく、充電終期にガスの攪拌で急激に上昇します。
このため充電の途中で比重を測っても、どこまで充電が進んだかは分かりません。
充電終期電圧を低くした方式では自然拡散を待つしかなく、常温で約4週間、低温で約6週間経過してからの比重値で判断します。

充電が終わったことを確かめるのに、そんなに時間がかかるんですね。

はい、自然拡散を待つ方式だけの話です。
次はセル電圧の基準を見ましょう。

セル電圧の判定基準値は蓄電池の型式でどう違うのか

直流電圧計でセル電池の端子電圧を測定する検査員のイラスト
セル電圧も比重と同じく、トリクル充電又は浮動充電中の値を測ります。
こちらも鉛蓄電池の型式によって、許容される範囲の数値が異なります。
消防庁の点検要領 第25 非常電源(蓄電池設備) セル電圧 トリクル充電又は浮動充電中のセルの電圧値を直流電圧計により全セルについて確認する。ただし、リチウムイオン蓄電池、ナトリウム・硫黄電池及びレドックスフロー電池にあってはこの点検を省略することができる。※直流電圧計は、JIS C1102(直動式指示電気計器)に規定された精度0.5級以上の計器又はこれと同等以上の精度をもつ計器を使用すること。測定値は、次に示す範囲内であること。ア 据置鉛蓄電池は CS CS-E型 2.15±0.05V HS HS-E型 2.18±0.05V HSE MSE型 製造者指定値に対し 2V電池:±0.10V 6V電池:±0.20V 12V電池:±0.30V イ ベント式アルカリ蓄電池、シール型据置アルカリ蓄電池は、製造者の指定する電圧値の±5%以内とする。
据置鉛蓄電池はCS・CS-E型で2.15±0.05V、HS・HS-E型で2.18±0.05Vが基準値です。
HSE・MSE型は製造者指定値に対し、電池電圧ごとに異なる許容差(2V電池は±0.10V、6V電池は±0.20V、12V電池は±0.30V)で判定します。
ベント式アルカリ蓄電池とシール型据置アルカリ蓄電池は、製造者指定値の±5%以内が基準です。
リチウムイオン蓄電池・ナトリウム硫黄電池・レドックスフロー電池はセル電圧の点検自体を省略でき、測定に使う直流電圧計もJIS C1102の精度0.5級以上が条件です。

型式によって許容差の書き方まで違うんですね。

はい、電池電圧ごとの許容差まで決まっています。
次はアルカリ蓄電池の扱いを見ましょう。

アルカリ蓄電池の比重確認はなぜ年1回でよいのか

アルカリ蓄電池のパイロットセルにマークを付けてカレンダーで年1回の確認を示すイラスト
鉛蓄電池の比重は毎回の点検で全セルを測りますが、アルカリ蓄電池は扱いが異なります。
充放電による比重の変化そのものが無いためです。
消防庁の点検要領 第25 非常電源(蓄電池設備) ※アルカリ蓄電池の電解液比重は、充放電しても変化しないので、年1回、パイロットセルについて、トリクル充電又は浮動充電中の比重を測定し、製造者の指定する値以上であるかを確認することが望ましい。
アルカリ蓄電池の電解液比重は充放電しても変化しないため、年1回の確認で足ります。
対象は全セルではなく、あらかじめ定めたパイロットセル1つです。
測るタイミングはトリクル充電又は浮動充電中で、判定は製造者の指定する値以上であるかどうかです。
鉛蓄電池のように20℃換算や型式ごとの基準値を計算する必要がなく、確認の手順そのものが簡略化されています。

鉛蓄電池と同じ感覚で毎回全部測らなくていいんですね。

はい、パイロットセル1つの確認で足ります。
最後に均等充電の義務を見ましょう。

均等充電はどんなときに実施義務が生じるのか

充電装置の均等充電スイッチと点検記録ノートに記入する検査員のイラスト
均等充電は常に行う作業ではなく、製造者が指定した周期で実施するものです。
点検では、その実施状況と、実施義務が生じる条件の両方を確認します。
消防庁の点検要領 第25 非常電源(蓄電池設備) 均等充電(リチウムイオン蓄電池は除く。) 均等充電の実施を記録により確認する。製造者指定の期間どおりに均等充電が実施されていること。※セル電圧、電解液比重の点検結果が不良と判定される場合、又は均等充電が実施されていない場合は、均等充電を実施しなければならない。
均等充電が実施されているかどうかは、記録を見て確認します。
基準は製造者指定の期間どおりに実施されていることで、リチウムイオン蓄電池はこの点検の対象外です。
セル電圧や電解液比重の点検結果が不良と判定された場合、または均等充電そのものが実施されていなかった場合は、均等充電を実施する義務が生じます。
つまり均等充電は「決まった周期で行う作業」であると同時に、「他の点検結果が悪いときの是正措置」でもあります。

比重やセル電圧の結果が悪いと、均等充電までやり直しになるんですね。

はい、是正措置としての実施義務です。
最後に整理しましょう。

よくある質問

Q測定した比重が20℃でなければ、そのまま基準値と比べてよいですか?
Aいいえ。比重は電解液の温度で変化するため、20℃に換算した値で判定します。実測温度との差1℃あたり0.0007を加えて補正する式が定められています。
Qリチウムイオン蓄電池はセル電圧も比重も測らなくてよいのですか?
Aはい。リチウムイオン蓄電池は電解液比重の点検対象そのものから除外され、セル電圧の点検も省略できます。構造が異なるため、鉛蓄電池・アルカリ蓄電池とは点検項目の立て方が違います。
Q均等充電の電圧値は、充電電圧値と同じ基準で判定しますか?
Aいいえ。均等充電電圧は製造者指定の電圧値の範囲内にあることと表示灯の点灯で確認し、トリクル充電電圧や浮動充電電圧の「±1%以内」という判定とは別の基準です。
Q電解液の減り方が早いときは、どう判断すればよいですか?
A液面が最高液面線から最低液面線まで下がるには、夏期でも2か月以上かかるのが通常です。それより早く減っている、または少数のセルだけ減少が著しい場合は故障と考え、蓄電池設備整備資格者に修理や整備を依頼します。

まとめ

✔比重計はJIS B7525、温度計はJIS B7411の精度を満たす器具で測る(水銀温度計は不可)
✔充電中の比重は充電終期に急上昇するため測定しても充電量を判断できない
✔充電終期電圧の低い方式は常温約4週間・低温約6週間経過後の比重値で判断する
✔セル電圧の判定基準値は鉛蓄電池の型式ごとに異なる(CS・CS-E型2.15±0.05V、HS・HS-E型2.18±0.05V)
✔アルカリ蓄電池の比重は充放電で変化しないため年1回パイロットセルの確認で足りる
✔均等充電は製造者指定期間どおりの実施を記録で確認する
✔セル電圧・比重の結果が不良、または未実施なら均等充電の実施義務が生じる

電解液比重の見方がこれで整理できました!

はい、測るタイミングと基準値がすべてです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号、最終改正:令和7年消防庁告示第6号)別表第25 非常電源(蓄電池設備)
  • 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第25 非常電源(蓄電池設備)(最終改正:令和7年10月3日消防予第410号)

※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検の基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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