可搬消防ポンプの点検・整備には、消防設備士とは別の資格者がいます。
消防団、自主防災組織、防火対象物、危険物施設等に設置された可搬消防ポンプ等は、エンジンを中心とした高度な知識と技能が必要とされています。
では誰がその点検・整備を担ってよいのか。
消防庁の指導により創設されたのが消防設備士とは別に設けられた可搬消防ポンプ等整備資格者という資格制度です。
うちの倉庫にある可搬消防ポンプ、点検は消防設備士に頼むしかないんでしょうか。
整備もかなり専門的な感じがして心配です。
可搬消防ポンプ等には専用の整備資格者という制度があります。
消防設備士とは別の資格なんですか。
初めて聞きました。
はい、順番に見ていきましょう。
資格ルート・講習・落とし穴の3つが軸になります。
- 可搬消防ポンプ等の点検・整備には、消防設備士とは別に「整備資格者」という資格制度が設けられています
- 整備資格者になるには甲種・乙種消防設備士や消防設備点検資格者を含む複数のルートがあり、消防設備士でなくてもなれます
- 講習は消防法規・構造機能・点検要領・整備要領の4科目、計10時間で、修了後に考査があります
- 整備資格者の免状だけでは、消防法上の点検資格そのものを兼ねるとは限りません
- 整備資格者の活用は義務ではなく、点検・整備を粗雑に行えば免状の返納を命じられることもあります
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目次
可搬消防ポンプ等整備資格者とはどんな制度なのか

その維持管理のために、消防庁の指導で新たに設けられた資格者がいます。
可搬消防ポンプ等は消防団・自主防災組織が保有するものから、防火対象物に設置された動力消防ポンプ設備の可搬式のものまで幅広く使われています。
エンジンを中心とした整備には専門知識が要るため、消防庁の指導のもとで(財)日本消防設備安全センターが「可搬消防ポンプ等整備資格者に関する規程」を定め、整備資格者を認定する仕組みを作りました。
この制度は消防設備士の資格そのものを置き換えるものではなく、別の専門資格として並立しています。
次の章では、この整備資格者になるために実際に通れるルートを見ていきます。
てことは、消防設備士を持っていない人でも整備資格者になれるんですか。
条件を満たせばなれます。
次の章で見ていきましょう。
整備資格者になるにはどんな資格ルートがあるのか

講習を受けられる人の条件は、規程の中で複数のルートに分けられています。
甲種第一類・第二類または乙種第一類・第二類の消防設備士(実務1年以上)が代表的な入口ですが、第一種消防設備点検資格者(実務2年以上)、ボイラー・タービン主任技術者、自動車整備士技能検定、海技士(機関)、自家用発電設備の専門技術者といった関連分野の国家資格・検定からも入ることができます。
さらに、こうした資格を持たなくても、可搬消防ポンプ等の整備について3年以上の実務経験があれば講習を受けられます。
どのルートでも、最後は安全センターが行う講習を修了し、修了考査に合格して免状の交付を受ける流れは同じです。
自社の技術者がどのルートに当てはまるかは、保有資格と実務経験の年数を照らし合わせて確認してください。
うちの整備担当は自動車整備士の資格を持ってるんですが、それでもルートに入るんですね。
実務経験が1年以上あれば対象です。
講習の中身を見てみましょう。
講習ではどんなことを学ぶのか

点検要領と整備要領の両方を学ぶ点が特徴です。
消防法規1時間・構造機能3時間に続き、点検要領2時間・整備要領4時間という配分になっており、整備要領にもっとも多くの時間が割かれています。
これは通達の前文にある「エンジンを中心とした可搬消防ポンプの整備には高度な知識及び技能を必要とする」という課題認識をそのまま反映した配分です。
修了後は1時間の修了考査に合格して初めて免状が交付されます。整備資格者は業務に従事する際は免状を携帯し、関係者から提示を求められたら応じる義務があります。
講習時間の多さから、整備資格者は点検だけでなく整備そのものに重心を置いた制度だと分かります。
整備だけじゃなく点検要領も学ぶんですね。
はい。
ただ免状があれば何でも点検できる、というわけではない点に注意が必要です。
整備資格者の免状があれば消防用設備等の点検もできるのか

整備資格者の免状は、消防法上の点検資格そのものを兼ねるとは限りません。
防火対象物や危険物施設に設置された可搬消防ポンプ等(消防法第10条第4項・第17条に基づく設備)の点検には、危険物取扱者・危険物施設保安員または消防設備士・消防設備点検資格者であることが別途必要になる場合があります。
整備についても同様に、場面によっては消防設備士の資格が必要とされます。
整備資格者はあくまで可搬消防ポンプ等の点検・整備に関する知識・技能を認定する制度であり、消防法令上の資格要件をすべて代替するものではない点を取り違えないでください。
自社の設備がどちらの位置づけになるか迷ったら、所轄消防署に確認してから依頼先を決めるのが安全です。
免状を持っている人に頼めば、どんな点検も大丈夫というわけではないんですね。
そのとおりです。
設置の根拠条文によって必要な資格が変わります。
整備資格者の活用は義務なのか

一方で、認定された資格者が資格を失う条件も定められています。
通達は整備資格者の活用を促す一方で「実施することを義務付けたものではない」と明記しており、従来どおり自社の担当者が点検・整備を行うことも妨げられません。
一方で、整備資格者として認定された側には責務があり、点検・整備を粗雑に行った、受講資格を偽った、再講習を受講しなかった等の事由に該当すると、理事長から免状の返納を命じられ資格を失うことがあります。
依頼する側としては、免状を携帯しているか、再講習を受けているかを確認しておくと、資格の有効性を見誤りません。
制度は任意ですが、エンジンを中心とした専門的な整備を外部に頼むときの一つの目安として活用できます。
義務じゃないけど、頼むならちゃんとした制度に基づく人を選びたいですね。
そのとおりです。
次はよくある質問で細かい点を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
消防設備士とは別の制度があると分かって安心しました。
これで依頼先の説明も聞けそうです。
資格ルート、講習の中身、そして点検資格とは別枠だという点。
この3つを押さえておけば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 可搬消防ポンプ等の維持管理の推進について(平成5年10月12日付け消防消第161号・消防予第275号・消防防第230号・消防危第78号)
- 可搬消防ポンプ等整備資格者に関する規程(消安セ規程第30号・財団法人日本消防設備安全センター)第3条・第4条・第10条
- 消防法第10条第4項・第17条・第17条の3の3・第17条の6
※本記事は公表されている通達および規程に基づく一般的な解説です。個別の設備の設置状況や契約内容によって扱いが異なる場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署または(財)日本消防設備安全センターにご確認ください。





