BLOG

屋外タンクの歩廊橋はなぜ地震で落下したのか|危険物施設の耐震対策を解説

屋外タンクの歩廊橋はなぜ地震で落下したのかのアイキャッチ画像

平成7年の阪神・淡路大震災では、火災や危険物の大量漏えいこそ免れたものの、危険物施設のあちこちで地震の爪あとが残りました。
屋外タンクをつなぐ歩廊橋が落下し、屋内貯蔵所では容器が転倒して危険物が漏れる被害も確認されています。
この経験を受けて消防庁は、歩廊橋や貯水槽、屋内・屋外貯蔵所の架台まで含めた耐震対策の運用基準を示しました。
既設の設備も更新・補修の機会をとらえて、早めに耐震化を進めることが求められています。

うちの屋外タンクにも歩廊橋がついてるんですけど、地震で落ちたりしないですかね。

実際に阪神・淡路大震災で歩廊橋が落下した例があり、国から耐震対策の通知が出ているんですよ。

え、もう対策の基準まで決まってるんですか。

はい、歩廊橋だけでなく貯水槽や屋内・屋外貯蔵所の架台まで含めた耐震基準が平成8年に示されています。

この記事の結論
  • 阪神・淡路大震災をきっかけに、消防危第125号で危険物施設の耐震対策の運用基準が示されました。
  • 対象は屋外タンク貯蔵所の歩廊橋、消火設備の貯水槽、屋内・屋外貯蔵所の架台です。
  • 歩廊橋は可動性のある構造とし、チェーン等の落下防止措置を講じます。
  • 既設の設備は更新・補修の機会をとらえて耐震化すれば足ります。
  • 高度な技術判断が必要なときは危険物保安技術協会に相談します。

▼

歩廊橋の耐震対策をまとめた図解

屋外タンクの歩廊橋はなぜ地震で落下したのか

歩廊橋が落下した屋外タンクのイラスト
平成7年の阪神・淡路大震災は、危険物施設にも大きな爪あとを残しました。
火災や危険物の大量漏えいという最悪の事態こそ免れたものの、設備の損傷は各地で確認されています。
消防危第125号(平成8年10月15日) 先の阪神・淡路大震災においては、危険物施設では、火災の発生、危険物の大量漏えい等の重大な被害は生じなかったものの、消火用貯水槽の亀裂・座屈、屋外貯蔵タンク間の連絡歩廊(以下「歩廊橋」という。)の落下、屋内貯蔵所における容器の転倒・落下に伴う危険物の漏えい等の被害が発生した。
震災の被害が運用強化の引き金になりました。
消防庁はそれ以前から危険物施設における地震対策の推進について(昭和58年消防危第89号)で対策を呼びかけていましたが、実際の震災で歩廊橋の落下や容器の転倒漏えいが起きたことを受け、より具体的な運用基準を示す必要が生じました。
歩廊橋はタンクとタンクをまたぐ細い通路のため、タンク本体が個別に揺れるとねじれや引っ張りの力を受けやすい構造です。
消火用の貯水槽も、地震でコンクリートに亀裂が入ったり鋼板が座屈したりすれば、いざというときに水が使えなくなります。
今回の通知は、こうした具体的な被害のパターンをふまえて設備ごとに対策を整理したものです。

歩廊橋ってタンクの上についてる細い橋のことですよね、そんなに壊れやすいんですか。

タンクが個別に揺れるぶん橋にねじれの力がかかりやすいんです、次で対象設備を確認しましょう。

どの危険物施設の設備が対象になるのか

消火設備と屋内貯蔵所を含む危険物施設のイラスト
通知が対象にしているのは歩廊橋だけではありません。
危険物施設の消火設備や、屋内・屋外貯蔵所の架台まで、地震対策の範囲は意外と広く設定されています。
消防危第125号 危険物施設の消火設備、屋外タンク貯蔵所の歩廊橋及び屋内貯蔵所の耐震対策について以下のように運用することとしたので通知する。
対象は3つの設備グループに分かれます。
ひとつめは危険物施設の消火設備で、第一種・第二種・第三種の消火設備が持つ貯水槽や加圧送水装置、配管などが対象です。
ふたつめは屋外タンク貯蔵所の歩廊橋そのもので、既設のタンク間連絡通路が主な対象になります。
みっつめは屋内・屋外貯蔵所の架台で、こちらは別記事で基準を詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
自分の施設にどの設備があるかをまず洗い出すことが、対策の出発点になります。

うちは屋内貯蔵所しかないんですけど、それでも関係ありますか。

はい、屋内貯蔵所の架台も対象なので、棚の固定状況を確認しておきたいですね。

歩廊橋の耐震対策は何を求めているのか

可動性のある歩廊橋と落下防止チェーンのイラスト
歩廊橋そのものに求められる対策は、大きく分けて2つです。
揺れそのものを受け流す工夫と、万一外れたときに落ちない工夫が組み合わされています。
消防危第125号 歩廊橋の構造は、地震動によるタンク間相互の変位によりタンク本体を損傷するおそれがない構造であるとともに、落下防止を図るため変位に対し追従できる可動性を有するものであること。
歩廊橋は固定するより動かす発想です。
タンクどうしが別々に揺れても橋がついていけるよう、橋の途中に伸縮できる可動部を設け、タンク本体に直接ダメージが伝わらないようにします。
その上で、通知は取付け高さの合計のおよそ3パーセント以上のゆとり(余裕代)を持たせるよう求めており、想定より大きく揺れても橋が突っ張って壊れない設計にします。
さらに、想定を超える変位が起きた場合に備えて、橋が落下しないようチェーンなどで両端をつないでおく措置も必要です。
可動部とチェーンの両方がそろって、はじめて歩廊橋の耐震対策と言えます。

橋を頑丈に固定したほうが安全な気がしますけど、違うんですね。

固定だけだとタンクの揺れ方の違いで橋がちぎれてしまうんです、動く余地を残すのがポイントですよ。

既設の歩廊橋や貯水槽はいつまでに直せばよいのか

既設と新設の歩廊橋を比較するイラスト
もうタンクが建っていて歩廊橋も設置済みという施設も多いはずです。
通知は、こうした既設の設備にすぐ全面改修を求めているわけではありません。
消防危第125号 既設のものについては、その更新・補修等の機会をとらえて、当該措置を講じることとし、それまでの間は、海、河川等の自然水利を有する場合の可搬式ポンプ等の保有、隣接事業所等に有効水利が存する場合の非常時における応援協定の締結等の応急措置が可能な体制を確保すること。
既設は更新・補修のタイミングで対応すれば足ります。
新しく作る設備は最初から耐震基準を満たす必要がありますが、すでにある既設の貯水槽や歩廊橋をすぐに作り直せとは書かれていません。
その代わり、改修するまでの間は、自然水利を使った可搬式ポンプの用意や、近隣事業所との応援協定といった応急措置で備えることが条件になっています。
貯水槽は構造によって求められる強度の考え方が異なり、鉄筋コンクリート造は防火水槽と同等の強度かひび割れ時の漏水を防ぐライニング等の措置、鋼製は地上なら屋外貯蔵タンク、地下なら地下貯蔵タンクと同等以上の強度が目安です。
「いつかやればいい」ではなく、「次の更新・補修のときは必ずやる」という期限の付いた先送りだと理解しておくと実務で迷いません。

うちの歩廊橋、結構古いんですけど今すぐ直さないとダメですか。

今すぐの改修義務はありませんが、次の更新・補修のときには耐震対策とセットで考えておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと歩廊橋付きタンクのイラスト
耐震対策は専門的な数値計算が必要な場面も多く、すべてを自分だけで判断するのは危険です。
まずは現状を把握し、必要に応じて専門家の力を借りる流れを作っておきましょう。
消防危第125号 耐震措置について、高度な技術的判断が必要とされる場合にあっては、必要に応じ危険物保安技術協会の技術援助等の活用を指導されたいこと。
まず目視で歩廊橋と貯水槽の状態を確認します。
歩廊橋については、途中に可動部があるか、落下防止のチェーン等の措置が取り付けられているかを見ておきましょう。
消火用の貯水槽は、鉄筋コンクリート造か鋼製かによって求められる強度の考え方が異なるため、構造が分かる資料を手元に用意しておくと話が早く進みます。
屋内・屋外貯蔵所の架台をお持ちの施設は、固定状況や構造計算書の有無もあわせて確認しておくと安心です。
自社だけで設計水平震度の計算などを判断するのは難しいので、危険物保安技術協会への相談も選択肢に入れておきましょう。

自分たちだけで判断するのは正直自信がないです。

危険物保安技術協会という専門機関もあるので、迷ったら㈱防災屋にも気軽に相談してくださいね。

よくある質問

Q歩廊橋の耐震対策はすべての既設設備にすぐ適用されますか?
Aいいえ。通知では既設の歩廊橋や貯水槽、架台について、更新・補修等の機会をとらえて対策を講じればよいとされています。ただしそれまでの間は、自然水利を使った可搬式ポンプの用意など応急措置が可能な体制を確保しておく必要があります。
Q歩廊橋にはどのような構造が求められますか?
Aタンク間の変位でタンク本体を傷めない構造であることに加え、変位に追従できる可動性が求められます。あわせて、想定を超える変位に備えてチェーンなどの落下防止措置も必要です。
Q消火用の貯水槽にはどんな耐震対策が必要ですか?
A貯水槽の構造によって基準が変わります。鉄筋コンクリート造は防火水槽と同等の強度かひび割れ時の漏水を防ぐライニング等の措置、鋼製は地上なら屋外貯蔵タンク、地下なら地下貯蔵タンクと同等以上の強度が目安とされています。
Q自社だけで耐震性を判断できないときはどうすればよいですか?
A通知では、高度な技術的判断が必要な場合は危険物保安技術協会の技術援助等を活用するよう示されています。構造計算など専門的な判断は無理に自社だけで抱え込まず、専門家に相談しましょう。

まとめ

✔消防危第125号は、阪神・淡路大震災の被害を受けて危険物施設の耐震対策の運用を具体化した通知です。
✔対象は危険物施設の消火設備、屋外タンク貯蔵所の歩廊橋、屋内・屋外貯蔵所の架台の3グループです。
✔歩廊橋は可動性のある構造とし、取付け高さの合計のおよそ3パーセント以上の余裕代を確保します。
✔想定を超える変位に備え、歩廊橋にはチェーン等の落下防止措置を講じます。
✔消火用の貯水槽は、鉄筋コンクリート造と鋼製で求められる強度の考え方が異なります。
✔既設の設備は更新・補修等の機会をとらえて耐震化すればよく、それまでは応急措置の体制を確保します。
✔高度な技術的判断が必要なときは、危険物保安技術協会の技術援助を活用しましょう。

歩廊橋も含めて、うちの施設を一度ちゃんと点検してみます!

もちろんです、耐震対策のご相談も含めて㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防庁「消防危第125号」通知(平成8年10月15日)
  • 消防庁「消防危第89号」通知(昭和58年9月29日)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
屋外タンクの歩廊橋はなぜ地震で落下したのかのアイキャッチ画像
平成7年の阪神・淡路大震災では、火災や危険物の大量漏えいこそ免れたものの、危険物施設のあちこちで地震の爪あとが残りました。 屋外タンクをつなぐ歩廊橋が落下し、屋内貯蔵所では容器が転倒して危険物が漏れる被害も確認されていま...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →