鉄道や道路の高架下にある駐車場や、屋外の機械式駐車装置にも、広さによっては自動火災報知設備が求められます。
東大阪市消防局の運用基準と、堺市消防局の審査基準は、周囲が外気に開放されたものについて、設置しないことができる特例を置いています。
大阪市の運用基準の自動火災報知設備の節には、同じ項目が見当たりません。
この記事では、国の基準と市の運用を分けて整理し、東大阪市と堺市の特例の読み方と、大阪市との違いを確かめます。
東大阪市で、高架下の月極駐車場を管理しています。
壁のない駐車場にも、自動火災報知設備は必要ですか。
国の基準では、広さで決まります。
東大阪市には、設置しないことができる特例があります。
特例があるのですね。
壁がなければ、付けなくてよいということですか。
いいえ、自動的には外れません。
国の政令、市の運用基準、特例の条文の順に読みましょう。
- 国の消防法施行令第21条第1項は、駐車場について延べ面積や床面積で自動火災報知設備を求めており、高架下や機械式駐車装置を外す規定はありません
- 東大阪市の運用基準は、周囲が外気に開放された高架工作物下の駐車場、倉庫等と機械式駐車装置について、設置しないことができるとしています
- 堺市の審査基準も、高架工作物下の駐車場と機械式駐車装置について、同じ趣旨の特例を置いています
- どちらの特例も、外気への開放性と使用実態等を勘案して、消防法施行令第32条を適用するものです
- 大阪市の運用基準の自動火災報知設備の節には、高架下や機械式駐車装置の項目が見当たりません
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目次
国の基準では駐車場に自動火災報知設備はどんなときに必要になるのか

自動車車庫と駐車場は、消防法施行令別表第1の(13)項イに当たります。
消防法施行令第21条第1項は、自動火災報知設備を設ける防火対象物を、第1号から第15号までに分けて定めています。
駐車場に関係が深いのは、次の2つの号です。
十三 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の地階又は二階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が二百平方メートル以上のもの
延べ面積が500平方メートル以上になると、自動火災報知設備が必要になります。
第13号は、ほかの用途の建物の中に駐車場があるときなどに働く号です。
地階又は2階以上の階で、駐車の用に供する部分の床面積が200平方メートル以上の階が対象です。
どちらの号も、物差しは面積です。
令第21条には、「高架」や「機械式」という言葉が一度も出てきません。
壁がなく、まわりが外気に開放されていることを理由に、設備そのものを外す規定も置かれていません。
一方で、消防法施行規則には、感知器を設けない場所を定めた規定があります。
ロ 上屋その他外部の気流が流通する場所で、感知器によつては当該場所における火災の発生を有効に感知することができないもの
設備の設置が必要かどうかは令第21条で決まり、この規定は、そのうえで感知器を設けない部分を定めています。
設備そのものを設置しないという扱いは、国の条文では、後で読む令第32条の特例によることになります。
管理している駐車場について、床面積と階を最初に確かめてください。
国の基準は、面積で決まるのですね。
高架下だからという理由では、外れないのですか。
はい、令第21条には高架下を外す規定がありません。
次に、東大阪市の運用基準を読みましょう。
東大阪市の運用基準は高架下の駐車場をどう取り扱っているのか

この基準の「Ⅱ 細目」の9が、特例基準です。
特例基準の書き出しは、次のとおりです。
この柱書の下に、(1)から(12)までの項目が並んでいます。
駐車場に関係するのは、最後の3つです。
(11) 周囲が外気に開放された機械式駐車装置については、外気への開放性及び使用実態等を勘案して、自動火災報知設備を設置しないことができる。
(10)は、鉄道や道路の高架工作物の下に設けられたものが対象で、駐車場だけでなく「倉庫等」も挙げています。
(11)は、機械式駐車装置が対象です。
どちらの項目にも、面積や開口の割合などの数値は書かれていません。
書かれているのは、外気への開放性と使用実態等を勘案する、ということだけです。
続く(12)は、条件の付いた項目です。
| 項目 | 対象 | 書かれている条件 |
|---|---|---|
| (10) | 周囲が外気に開放された高架工作物(鉄道、道路等に使用しているもの)下に設けられた駐車場、倉庫等 | 外気への開放性、使用実態等を勘案する |
| (11) | 周囲が外気に開放された機械式駐車装置 | 外気への開放性及び使用実態等を勘案する |
| (12) | 屋外の駐車の用に供する部分に網目状の金属板等が用いられ、気流が上層に流通する防火対象物又はその部分 | 常時人のいる場所又は利用者の目にふれやすい場所に、非常通報装置又は電話を設置する |
(10)から(12)までには、●も▲も付いていません。
ただし、柱書のとおり、これらは令第32条などの規定を適用する項目です。
項目に当てはまりそうに見えても、「設置しないことができる」のは、その規定が適用されたときです。
高架下の区画に何を置いているか、まわりがどこまで開いているかを、写真と図面で整理してください。
東大阪市は、高架下の倉庫も挙げているのですね。
数値の条件は、書かれていないのですか。
はい、書かれているのは開放性と使用実態です。
堺市の審査基準も読んでみましょう。
堺市の審査基準は高架下の駐車場と機械式駐車装置をどう取り扱っているのか

順にたどります。
1つ目は、用途です。
「政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い」の別記1は、(13)項イの該当用途例を、次のように挙げています。
別記1は、項を決めるときに「参考とすること」とされている表です。
2つ目は、床面積です。
「床面積、階及び高さの取扱い」は、令第21条第1項などの「駐車の用に供する部分」の床面積の数え方を定めています。
(オ) 機械式駐車場及び機械式駐輪場については、壁(壁のないものにあっては柱等)の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を床面積とすること。
オ 屋外に設けられた機械式駐車装置については、前エ.(オ)を準用すること。★
オが、1つ前のエの(オ)を準用する形です。
オには、堺市消防局としての指導基準を表す★印が付いています。
(エ)には◆印が付いていて、参考にした通知として、昭和52年7月8日消防予第130号「外気に開放された高架工作物内を利用した駐車場の用に供される部分の規制について」が挙げられています。
3つ目が、特例です。
自動火災報知設備の審査基準の「Ⅱ 細目」の11が、特例適用基準です。
(4) 周囲が外気に開放された機械式駐車装置については、外気への開放性及び使用実態等を勘案して、政令第32条の規定を適用し、自動火災報知設備を設置しないことができる。★
違いは2つあります。
堺市の(3)は対象を「駐車場」としていて、東大阪市の(10)にある「倉庫等」がありません。
堺市の(4)には★印が付いていて、(3)には印がありません。
審査基準の凡例では、無印は「法令基準及びその解釈」を表します。
堺市は、火災通報装置の審査基準にも、同じ高架下の駐車場の項目を置いています。
ここまでを、次の順に読むと迷いません。
- 審査基準の別記1で、高架下の駐車場や屋外の機械式駐車装置が(13)項イの例に挙げられていることを確かめます
- 「床面積、階及び高さの取扱い」の1の(2)のエで、駐車の用に供する部分の床面積の数え方を確かめます
- 高架下の駐車場はエの(エ)で、柵、塀等で囲まれた部分を床面積に入れます
- 屋外の機械式駐車装置はオからエの(オ)へ進み、壁又は柱等の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を床面積にします
- 消防法施行令第21条第1項に当てはめ、自動火災報知設備の設置が必要かを確かめます
- 必要になったときに、自動火災報知設備の審査基準の11の(3)又は(4)を読み、政令第32条の適用を消防署に相談します
つまり、堺市では、用途、床面積、特例の順に、別々の節を読んでいくのですね。
はい、機械式駐車装置の床面積は準用で決まります。
特例を読むのは、設置が必要になってからです。
特例を適用するかどうかはだれが判断するのか

消防法施行令第32条です。
市の基準に書かれた「外気への開放性」と「使用実態等」は、その判断のために勘案されるものです。
東大阪市の柱書が挙げる条例第52条は、東大阪市火災予防条例の「基準の特例」の条文で、判断するのは消防長です。
堺市火災予防条例では、第72条が同じ役割の条文です。
堺市の審査基準は、第72条の解説で、特例を適用するか否かは消防長又は消防署長が判断するものであり、防火対象物の関係者や設計者などの判断によるものではないとしています。
令第32条は、判断の材料を「防火対象物の位置、構造又は設備の状況」としています。
高架下の駐車場でも、あとから壁やシャッターで囲ったり、区画を物置として使ったりすれば、開放性も使用実態も変わります。
相談の前に、次の順に整理しておくと、話が進めやすくなります。
- 駐車場の用途と床面積を確かめ、消防法施行令第21条第1項のどの号に当たるかを確かめます
- 建物のある市の基準を開き、高架下の駐車場や機械式駐車装置の項目があるかを確かめます
- まわりの壁、柵、シャッターの位置を図面に書き込み、外気に開放されている範囲を整理します
- 車のほかに置いている物、利用する時間帯、管理人の有無など、使用実態を整理します
- 管轄の消防署に相談し、特例の適用について判断を受けます
自分で「開放されているから不要」と決めてはいけないのですね。
判断するのは、消防署なのですか。
はい、判断するのは消防長又は消防署長です。
図面と写真を持って、早めに相談しましょう。
大阪市の運用基準と東大阪市や堺市の基準はどこが違うのか

大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、第2章 第1節が自動火災報知設備で、第12が特例基準です。
柱書は、東大阪市とほぼ同じ形をしています。
3市の公開されている基準を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 東大阪市 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|
| 高架工作物下 | 特例基準(10) 駐車場、倉庫等 | 特例適用基準(3) 駐車場 | 自動火災報知設備の節には見当たらない |
| 機械式駐車装置 | 特例基準(11) | 特例適用基準(4)(★印) | 自動火災報知設備の節には見当たらない |
| 網目状の金属板等を用いた屋外の駐車部分 | 特例基準(12) 非常通報装置又は電話の設置が条件 | 見当たらない | 見当たらない |
| 高さ20メートル以上の立体駐車場の炎感知器 | 特例基準(2)イ | 特例適用基準(5)(★印) | 第12 特例基準 3(2) |
| 根拠として書かれている条文 | 令第32条又は条例第52条 | 政令第32条 | 令第32条又は条例第47条 |
| 駐車場の火災通報装置 | 火災通報装置の基準が公開されていない | 第15のⅡの8(2) 高架工作物下の駐車場 | 第2章 第4節 第5 特例基準 2 無人の駐車場等(電話の設置などが条件) |
高さ20メートル以上の立体駐車場の炎感知器の特例は、3市とも置いています。
大阪市は、火災通報装置の節に、無人の駐車場等の特例を置いています。
駐車場等の出入口に消防機関へ常時通報することのできる電話を設置することなどが条件で、根拠は同じ令第32条です。
東大阪市の(12)が、電話などの設置を条件にしているのと、考え方が似ています。
大阪市の基準に項目がないことは、大阪市では特例が認められないことを意味するわけではありません。
令第32条は国の条文なので、どの市の消防長や消防署長も、個別に判断することができます。
違うのは、判断の目安が基準として公開されているかどうかです。
東大阪市や堺市の項目を、ほかの市の駐車場にそのまま当てはめず、建物のある市の管轄の消防署で確かめ直してください。
つまり、項目として公開しているのは東大阪市と堺市で、大阪市は個別に相談することになるのですね。
はい、公開されている基準を読む限りはそうなります。
建物のある市の消防署に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
壁がないから不要、と自分で決めてはいけないと分かりました。
まずは駐車場の図面と写真をそろえます!
囲いの位置と使い方を整理しておけば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」凡例、Ⅱ 細目 9 特例基準(柱書、(2)イ、(10)、(11)、(12)) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 別記1 (13)項イ、第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い 1 床面積の算定(2)エ・オ、第3章 第1節 第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 11 特例適用基準(3)・(4)・(5)、第3章 第1節 第15 消防機関へ通報する火災報知設備 Ⅱ 細目 8 特例適用基準(2)、堺市火災予防条例第72条の条文と解説及び運用 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第12 特例基準(柱書、3(2))、第2章 第4節 消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)第5 特例基準 2 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市火災予防条例(昭和48年東大阪市条例第38号)第52条(東大阪市例規集)
- 消防法施行令第21条第1項、第32条、別表第1
- 消防法施行規則第23条第4項第1号
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準、条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している基準を読んだ範囲でのものです。自動火災報知設備が必要かどうか、特例が適用されるかどうかについての個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





