スプリンクラー設備は、国の基準では、建物の階数を物差しにして求められます。
堺市では、これに加えて、堺市火災予防条例が地盤面からの高さが31メートルを超える階にも求めています。
堺市消防局の堺市消防同意・消防用設備等審査基準は、31メートルを階のどこで測るのか、屋上の塔屋をどう扱うのか、共同住宅ではどう読み替えるのかを定めています。
この記事では、国の基準と堺市の条例・審査基準を分けて整理し、高さの測り方と、大阪市・東大阪市の条例との違いを確かめます。
堺市内で10階建てのビルの防火管理者をしています。
スプリンクラー設備は、11階建てからと聞きましたが合っていますか。
国の基準は、11階以上の階が目安です。
堺市は、条例で高さによる基準を足しています。
高さとは、建物の高さのことですか。
どこを読めば分かりますか。
堺市火災予防条例第66条を読みます。
国の政令、市の条例、審査基準の順に読むと整理できます。
- 国の消防法施行令第12条第1項第12号は、ほかの号に当たらない防火対象物の11階以上の階にスプリンクラー設備を求めています
- 堺市火災予防条例第66条第1項第5号は、11階未満の階で地盤面からの高さが31メートルを超えるものにも求めています
- 堺市の審査基準は、31メートルの高さが階の内部にある階を対象とし、スラブ内にあるときはそのスラブを床とする階からとしています
- 31メートルを超える部分が、階数に算定されない塔屋等の部分だけのときは、設置は必要でないとされています
- 同じ文言の号は大阪市と東大阪市の条例にもあり、適用しないとする特例は消防長などの判断が前提です
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目次
国の基準ではスプリンクラー設備は何階から必要になるのか

消防法施行令第12条第1項は、スプリンクラー設備を設ける防火対象物を、第1号から第12号までに分けて定めています。
このうち、階数で決まるのは次の2つの号です。
十二 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)
地階を除く階数が11以上あれば、総務省令で定める部分を除いて、建物の全体が対象になります。
第12号は、それ以外の建物です。
共同住宅、事務所、工場、倉庫、学校などが入り、対象は11階以上の階だけです。
どちらの号も、物差しは階数です。
令第12条には、「地盤面」という言葉が一度も出てきません。
階高の大きい建物では、10階建てでも、上の階の床が地上30メートルを超えることがあります。
それでも、階数が10以下であれば、第3号にも第12号にも当たりません。
床面積や用途で決まるほかの号に当たるかどうかは、別に確かめます。
自分の建物の用途が令別表第1のどの項か、地階を除く階数がいくつかを、最初に確かめてください。
国の基準は、階数で決まるのですね。
10階建てなら、この2つの号には当たらないということですか。
はい、階数で決まる号には当たりません。
次に、堺市の条例を読んでみましょう。
堺市の条例は10階以下のどの階にスプリンクラー設備を求めているのか

第5章は第62条から第72条までで、スプリンクラー設備は第66条です。
堺市の審査基準は、条例の条文に【解説及び運用】を付けて載せています。
第66条第1項の柱書と第5号は、次のとおりです。
(5) 令別表第1に掲げる建築物の11階未満の階で、地盤面からの高さが31メートルを超えるもの
対象は「令別表第1に掲げる建築物」で、用途による限定はありません。
共同住宅でも、事務所でも、工場でも、11階未満の階で高さが31メートルを超える階があれば、その階が対象です。
第66条第1項には、ほかに第1号から第4号までがあります。
テレビなどのスタジオ部分、吹抜け部分を共有する階、床面積の大きい地階又は無窓階についての号で、高さで決まるのは第5号だけです。
審査基準の解説は、第66条を次のように説明しています。
たとえば、各階の階高が3.5メートルの10階建てを考えます。
1階の床が地盤面と同じ高さにあると仮定すると、10階の床は地盤面から31.5メートルの高さになります。
国の第12号には当たりませんが、堺市の第5号には当たり得る建物です。
設け方は、第66条の第2項と第3項が定めています。
第3項は、国の令第12条第2項(一部の号を除く)や、消防法施行規則第13条(第1項及び第3項第12号を除く)などの規定の「例により」設置し、維持するとしています。
規則第13条は、スプリンクラー設備を設置することを要しない階の部分等を定める条文です。
国の規定を借りる形なので、ヘッドを設ける部分は、国の規定とあわせて読むことになります。
建物の断面図で、各階の床が地盤面から何メートルの高さにあるかを確かめてください。
階数が10以下でも、高さで対象になるのですね。
31メートルは、階のどこで測るのですか。
そこは、審査基準が測り方を定めています。
図も付いているので、順に読みましょう。
堺市では31メートルの高さを階のどこで測るのか

その(3)が、条例第66条第1項第5号の高さについての規定です。
なお、31mの高さがスラブ内にあるときは、当該スラブを床とする階が31mを超える階に該当する。(第4-12図参照)
階の全部が31メートルより上にある必要はありません。
審査基準の第4-12図は、9階と10階の断面に、31メートルの線を2とおり書き込んでいます。
図の内容を整理すると、次のとおりです。
| 31メートルの線の位置 | 31メートルを超える階 |
|---|---|
| 9階の内部(図では、9階の天井より上で、10階の床スラブより下) | 9階及び10階 |
| 10階の床スラブの中 | 10階 |
線が床スラブの中を通るときは、そのスラブを床とする階からで、下の階は対象になりません。
この読み方に、試しに数字を当てはめてみます。
各階の階高がすべて同じで、1階の床が地盤面と同じ高さにあると仮定した、10階建ての計算例です。
| 各階の階高 | 10階の床の高さ | 31メートルの線が通る位置 | 31メートルを超える階 |
|---|---|---|---|
| 3.0メートル | 27.0メートル | 屋上の床(30.0メートル)より上 | 10階までには無い |
| 3.3メートル | 29.7メートル | 10階の内部 | 10階 |
| 3.5メートル | 31.5メートル | 9階の内部(9階の床は28.0メートル) | 9階及び10階 |
実際には、断面図の寸法で、線がスラブの中を通るのか、階の内部を通るのかを確かめます。
敷地に高低差がある建物では、地盤面をどこにとるかで結果が変わり得ます。
第4の3の(3)には、◆印も★印も付いていません。
審査基準の凡例では、無印は「法令基準及びその解釈」を表します。
ここまでを、次の順に読むと迷いません。
- 消防法施行令第12条第1項の第3号と第12号で、階数で決まる階を確かめます
- 消防法第17条第2項を読み、市町村が条例で異なる規定を設けられることを確かめます
- 堺市火災予防条例第66条第1項第5号を開き、11階未満の階で地盤面からの高さが31メートルを超えるものが対象であることを確かめます
- 条例第66条の解説の3から、審査基準の「第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い」へ進みます
- 第4の3の(3)と第4-12図で、31メートルの線が階の内部にあるのか、スラブ内にあるのかの扱いを確かめます
- 断面図の寸法を当てはめ、31メートルを超える階を決めます
つまり、31メートルの線が階の中を少しでも通れば、その階から対象になるのですね。
はい、スラブの中を通るときは、その上の階からです。
断面図に線を引いて確かめましょう。
堺市では屋上の塔屋や共同住宅をどう取り扱うのか

審査基準は「搭屋」と書いているので、引用はそのままにしています。
| 31メートルを超える部分 | 解説の3の取扱い |
|---|---|
| 階数に算定される階にある | その階のほか、階数に算定されない塔屋等の部分にも設置する |
| 階数に算定されない塔屋等の部分だけ | その部分に、設置は必要でない |
塔屋などが階数に算定されるかどうかは、建築基準法施行令で決まります。
そのうえで、塔屋などを階数として算定するか疑義が生じる場合は、建築主事等に確認することとしています。
共同住宅には、もう1つ読み替えがあります。
条件に合う共同住宅(特定共同住宅等)は、平成17年総務省令第40号により、通常のスプリンクラー設備に代えて共同住宅用スプリンクラー設備を用いることができます。
この省令は、設置する階を次のように階数で書いています。
「特定共同住宅等に係る審査基準」の、Ⅴ 共同住宅用スプリンクラー設備の12です。
40号省令第3条第3項第2号イ(イ)に規定する「11階以上の階」は「条例第66条第1項第5号に規定する階」を含むものとし、「10階以下の階」は「10階以下の階で条例第66条第1項第5号の規定によらない階」に読み替えるものとする。
アは、省令第3条第4項第1号イの「前項第2号イに掲げる部分」に、条例の階も含むものとして取り扱うとしています。
イは、同号ロの「10階以下の階」を、「10階以下の階で地盤面からの高さが31メートルを超えない階」に読み替えるとしています。
条例で対象になった階を、省令の設置対象と設置免除の両方の規定に乗せて読む扱いだと読めます。
塔屋と共同住宅は、次の順に読みます。
- 条例第66条第1項第5号と審査基準の第4の3の(3)で、31メートルを超える階を決めます
- 条例第66条の解説の3で、階数に算定されない塔屋等の部分の取扱いを確かめます
- 塔屋等が階数に算定されるかどうかは、建築基準法施行令第2条第1項第8号と審査基準の第4の2で確かめ、疑義があれば建築主事等に確認します
- 共同住宅なら、特定共同住宅等に係る審査基準のⅤの12へ進みます
- 平成17年総務省令第40号の第3条第3項第2号イ(イ)の「11階以上の階」に、条例の階を含めて読みます
- 同じ省令の第3条第4項第1号の設置免除の規定も、12の(2)の読み替えをして当てはめます
塔屋だけが31メートルを超える場合は、設置は必要でないのですね。
マンションでも、同じ31メートルで考えるのですか。
はい、マンションでも条例の階を含めて読みます。
設置免除の規定も、読み替えて当てはめます。
大阪市や東大阪市の条例と堺市の条例はどこが違うのか

大阪市と東大阪市の火災予防条例を、それぞれの市の例規集で確かめました。
(7) 令別表第1に掲げる建築物の11階未満の階で、地盤面からの高さが31メートルを超えるもの
(5) 令別表第1に掲げる建築物の11階未満の階で、地盤面からの高さが31メートルを超えるもの
違うのは、号の番号と、まわりの規定の書き方です。
3市の条例と公開されている基準を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 条文 | 堺市火災予防条例第66条第1項第5号 | 大阪市火災予防条例第40条第1項第7号 | 東大阪市火災予防条例第46条第1項第5号 |
| 号の文言 | 令別表第1に掲げる建築物の11階未満の階で、地盤面からの高さが31メートルを超えるもの | 同じ | 同じ |
| 消防法施行規則第13条の扱い | 第3項で、規則第13条(第1項及び第3項第12号を除く)などの規定の例により設置し、維持する | 第3項で、規則第13条第2項及び第3項などの規定の例により設置し、維持する | 第1項のただし書で、規則第13条第2項に規定する階の部分と同条第3項各号に掲げる部分を除く |
| 31メートルの測り方と塔屋等の取扱い | 審査基準に規定と図がある | 公開されている運用基準には見当たらない | 公開されている運用基準には見当たらない |
| 共同住宅用スプリンクラー設備の読み替え | 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅴの12 | 運用基準 第8章 第7節 特定共同住宅等 第2の3と6 | 公開されている運用基準では確認できない |
| 基準の特例 | 条例第72条(消防長又は消防署長) | 条例第47条(消防長) | 条例第52条(消防長) |
東大阪市が公開している6つの運用基準には、スプリンクラー設備の基準がありません。
測り方を図つきで公開しているのは、3市のうち堺市だけということになります。
共同住宅用スプリンクラー設備の読み替えは、大阪市の運用基準にも同じ形で置かれています。
大阪市では、設置免除の「31メートルを超えない階」への読み替えに、行政指導基準を表す◆印が付いています。
堺市の審査基準の12には、印が付いていません。
最後に、条例の上乗せには、基準の特例の条文があります。
審査基準の解説も、特例を適用するか否かは、防火対象物の関係者や設計者などの判断によるものではないとしています。
特例の申請は、「堺市消防同意・消防用設備等事務処理要綱第14条」の規定により処理するとされています。
東大阪市の公開基準に項目がないことは、その市に測り方の決まりがないことを意味するわけではありません。
堺市の審査基準で読んだ測り方を、ほかの市の建物にそのまま当てはめず、建物のある市の管轄の消防署で確かめ直してください。
つまり、号の文言は3市とも同じでも、測り方まで公開しているのは堺市だけなのですね。
はい、公開されている基準を読む限りはそうなります。
建物のある市の消防署に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
10階建てでも、高さ31メートルの線を確かめる必要があると分かりました。
まずは建物の断面図を出してきます!
断面図に線を引いておけば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第1章 総則 4 凡例、第2章 消防同意審査基準 第1節 総論 第4 床面積、階及び高さの取扱い 2 階数の算定・3 高さの算定(3)(第4-12図を含む)、第3章 第2節 第1 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅴ 共同住宅用スプリンクラー設備 12、堺市火災予防条例 第5章 消防用設備等の技術上の基準の付加基準(第62条、第66条、第72条の条文と解説及び運用) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第7節 特定共同住宅等 第2 共住省令 3・6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局が公開している運用基準(消火器具、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯及び誘導標識、連結送水管、非常コンセント設備) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市火災予防条例(昭和37年大阪市条例第14号)第40条、第47条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例(昭和48年東大阪市条例第38号)第42条、第46条、第52条(東大阪市例規集)
- 消防法第17条第2項
- 消防法施行令第12条第1項・第2項
- 消防法施行規則第13条
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第3条第3項第2号イ、第4項第1号
- 建築基準法施行令第2条第1項第8号
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。審査基準や運用基準、条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。階高の計算例は、床スラブの厚さなどを考えに入れていない単純な例です。スプリンクラー設備が必要かどうかについての個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





