防犯のために、店舗や事務所の窓にフィルムを貼ることがあります。
窓は、消防隊が外から入るための入口でもあり、入れる窓が足りない階は「無窓階」になります。
堺市消防局の審査基準は、窓ガラス用フィルムを貼った窓の扱いを具体的に書き、CPマーク品のフィルムを貼ったものを除いています。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分けて整理し、フィルムやシャッターが無窓階の判定にどうつながるかを、条文の順にたどります。
堺市で小さな店を経営しています。
防犯のために、窓にフィルムを貼ろうと考えています。
フィルムの種類によっては、消防の判定に影響します。
堺市の審査基準には、はっきりした線引きがあります。
フィルムを貼るだけで、消防が関係するのですか。
窓の数は変わらないのですが。
はい、窓は消防隊が外から入る入口でもあります。
国の政令と規則、堺市の審査基準の順に読みましょう。
- 無窓階は、消防法施行規則第5条の5が定める避難上又は消火活動上有効な開口部が足りない階で、消火器や屋内消火栓、自動火災報知設備などの基準が厳しくなります
- 国の規則は、開口部に「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」を求めていますが、フィルムという言葉は出てきません
- 堺市の審査基準は、窓ガラス用フィルムを貼ったガラスを有効な開口部として扱える一覧に入れつつ、CPマーク品のフィルムを貼ったものを除いています
- 複層ガラスやシャッター付きの開口部にも、堺市消防局独自の指導基準を表す★印の条件が付いています
- 大阪市と東大阪市の公開されている基準には、無窓階の取扱いの節が見当たらないので、管轄の消防署で確かめます
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目次
国の基準では無窓階はどうやって決まるのか

無窓階という言葉は、消防法施行令第10条第1項第5号で定義されています。
窓があっても、避難上又は消火活動上有効な開口部が足りなければ、無窓階になります。
その中身を定めているのが、消防法施行規則第5条の5です。
2 前項の開口部は、次の各号(十一階以上の階の開口部にあつては、第二号を除く。)に適合するものでなければならない。
三 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
10階以下の階では、面積の合計が床面積の30分の1を超えることに加えて、大きな開口部が2つ以上必要です。
第2項第3号は、開口部の構造についての条件です。
外から開けられるか、容易に壊して入れる開口部だけが、数に入ります。
国の規則の条文には、「フィルム」という言葉は出てきません。
どのガラスなら「容易に破壊することにより進入できる」と言えるのかは、条文だけでは決まらないのです。
無窓階になると、たとえば次のように、設備が必要になる床面積が小さくなります。
| 設備 | 無窓階で必要になる床面積(国の政令) |
|---|---|
| 消火器具 | 50平方メートル以上(令第10条第1項第5号) |
| 屋内消火栓設備 | 別表第1(2)項から(10)項まで、(12)項及び(14)項の防火対象物は150平方メートル以上(令第11条第1項第6号) |
| 自動火災報知設備 | 別表第1に掲げる建築物は300平方メートル以上(令第21条第1項第11号)、(2)項イからハまで及び(3)項などは100平方メートル以上(同項第10号) |
この記事では、窓のガラスとフィルムが、開口部の数え方にどう効くのかに絞って読み進めます。
窓があっても、外から入れなければ数えないのですね。
フィルムについては、国の規則に書いていないのですか。
はい、国の条文にはフィルムの言葉がありません。
次に、堺市の審査基準を読みましょう。
堺市の審査基準は窓ガラス用フィルムをどう扱っているのか

その第2章 第1節 第5が、「無窓階の取扱い」です。
3の「開口部の構造」は、規則第5条の5第2項第3号の読み方を、次のように書き出しています。
はめ殺しの窓等の(エ)が、窓ガラス用フィルムの項目です。
そうしたガラスにフィルムを貼っても、内貼りでも外貼りでも、一覧に入ったままです。
ただし、防犯性能の試験に合格したCPマーク品のフィルムを貼ったものは、一覧から除かれています。
屋内でロックされている窓等にも、同じ趣旨の項目があります。
★印の意味は、審査基準の第1章 総則の凡例に書かれています。
ここまでの連鎖を、番号順にまとめます。
- 消防法施行令第10条第1項第5号が、無窓階を「総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階」と定めます
- 消防法施行規則第5条の5第1項が開口部の大きさと面積の合計を、第2項第3号が「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」であることを求めます
- 堺市の審査基準 第2章 第1節 第5 3(1)が、第3号に当たるものとして取り扱える開口部を、はめ殺しの窓等、屋内でロックされている窓等、シャッター等の開口部などに分けて並べます
- はめ殺しの窓等の(エ)と、屋内でロックされている窓等の(ク)が、窓ガラス用フィルムを貼ったガラスを挙げ、CPマーク品のフィルムを貼ったものを除きます(★印)
- フィルムを貼る元のガラスは、それぞれの一覧のガラスであることが前提で、ガラスの評価は第5-1表によります
- 一覧に当てはまらない開口部を除いて、規則第5条の5第1項の面積の合計と大きな開口部の数を数え直し、足りなければ無窓階になります
CPマーク品のフィルムを貼った窓が、ただちに数えられなくなるとまでは書かれていません。
一覧のどれにも当てはまらないときに、有効な開口部として扱えるかどうかは、管轄の消防署の判断になります。
CPマーク品のフィルムは、防犯性能が高いからこそ、一覧から外されているのですね。
はい、防犯で破られにくいことが、消防では入りにくさになります。
次は、ガラスの種類ごとの扱いを見ましょう。
ガラスの種類や複層ガラスで無窓階の判定はどう変わるのか

堺市の審査基準は、ガラスの種類ごとの扱いを、第5-1表にまとめています。
「足場有り」は、避難階又はバルコニー、屋上広場等の破壊作業のできる足場が設けられているものです。
表の主な行を、言葉を整えて並べると次のとおりです。
| ガラスの種類 | 引き違い戸(足場有り/足場なし) | はめ殺し(足場有り/足場なし) |
|---|---|---|
| 普通板ガラス、フロート板ガラスなど(厚さ6ミリメートル以下) | ○/○ | ○/○ |
| 網入板ガラス、線入板ガラス(厚さ6.8ミリメートル以下) | △/△ | ×/× |
| 網入板ガラス、線入板ガラス(厚さ10ミリメートル以下) | △/× | ×/× |
| 強化ガラス、耐熱板ガラス(厚さ5ミリメートル以下) | ○/○ | ○/○ |
| 倍強度ガラス | ×/× | ×/× |
| 合わせガラス(中間膜0.76ミリメートル以下の2種類) | △/△ | ×/× |
| 合わせガラス(中間膜1.52ミリメートル以下の3種類) | △/× | ×/× |
△は、ガラスを一部破壊して外部から開放できる部分を、開口部として扱えるものです。
×は、開口部として扱えないものです。
はめ殺しの窓では、網入板ガラスや合わせガラスはすべて×です。
フィルムを貼る前に、元のガラスがこの表のどこに当たるかを確かめておくと、相談がスムーズです。
合わせガラスの考え方は、防犯対策で入れた合わせガラスの記事でも解説しています。
複層ガラスにも、★印の項目があります。
はめ殺しの窓では、どの板ガラスも(ア)から(エ)までのどれかに当たる必要があります。
(エ)はフィルムの項目なので、フィルムを貼った板ガラスも、CPマーク品でなければこの組み合わせに含まれます。
表の備考は、低放射ガラス(通称Low-E膜付きガラス)について、基板ガラスによって判断を行うとしています。
薄い膜が付いていても、元になるガラスで判断するということです。
元のガラスの種類と、貼るフィルムの種類の両方を見るのですね。
はい、まずガラスの種類と厚さを確かめます。
そのうえで、フィルムがCPマーク品かを見ます。
防犯シャッターを付けた開口部はどんな条件で有効になるのか

シャッターを閉めると、外からは開けにくくなります。
堺市の審査基準は、「ウ シャッター等の開口部」で、有効な開口部として扱える条件を4つ挙げています。
そのうち、外部解錠サムターンの項目は次のとおりです。
a 奥行き80cm 以上及びシャッター幅以上の幅を有すること。
b 手すり高さ1.2m 以下とし、当該手すりの上端から天井面までの高さ1.0m 以上とすること。
| 項目 | 主な条件 |
|---|---|
| (ア) バランス式シャッター等 | 屋外から水圧によって開放できる装置(水圧開放装置)で解錠したのち、屋内外から手動で開放できるもの(避難階に開口部があるものに限る)。注水口は床面から0.5メートル以上1メートル以下の高さ(★印) |
| (イ) 外部解錠サムターン | 奥行き80センチメートル以上でシャッター幅以上の足場、手すりの高さ1.2メートル以下、手すりの上端から天井面まで1.0メートル以上、解錠方法の表示(★印) |
| (ウ) 電動式シャッター | 非常電源装置付き、屋内外から電動で開放できるもの又は水圧開放装置付き、送水口は避難階で差し込み式(★印) |
| (エ) スラット部分の厚さが0.3ミリメートル以下のもの | ステンレス製のもの又はCPマーク品を除き、(イ)のaとbの足場があるもの(★印) |
薄いスラットのシャッターでも、ステンレス製やCPマーク品は、(エ)から除かれています。
ここでも、防犯性能の高い製品ほど、消防の一覧から外れるという構図は、フィルムと同じです。
営業時間外だけ無窓階になる場合の扱いは、無窓階の判定基準の記事で解説しています。
シャッターを付けるなら、足場や表示まで考える必要があるのですね。
はい、付けた後では直しにくい条件です。
工事の前に、消防署へ相談しましょう。
大阪市や東大阪市では無窓階の扱いをどう確かめればよいのか

大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、設備ごとに章と節を分けた基準です。
公開されている目次には、無窓階の取扱いの章や節が見当たりません。
東大阪市消防局が公開している6つの運用基準も、消火器具や自動火災報知設備など、設備ごとのものです。
こちらにも、無窓階の取扱いの節は見当たりません。
窓ガラス用フィルムやCPマーク品について、3市を比べられるのは堺市だけです。
大阪市や東大阪市に線引きがないという意味ではなく、公開されている資料には載っていないということです。
どの市でも、改修の前に次の順で確かめると、相談がスムーズです。
- 窓のある階が10階以下か、11階以上かを確かめます
- 窓ごとに、ガラスの種類と厚さ、引き違い戸かはめ殺しか、足場があるかを図面に書き込みます
- 貼る予定のフィルムやシャッターの製品名を確かめ、CPマーク品かどうかを整理します
- フィルムを貼った後に、外から入れる開口部の面積の合計と大きな開口部の数が足りるかを数えます
- 図面と製品の資料を持って、管轄の消防署に相談します
フィルムやシャッターの発注の前に、相談しておくことをおすすめします。
つまり、はっきり書いてあるのは堺市で、大阪市や東大阪市は個別に相談するのですね。
はい、公開されている基準を読む限りはそうなります。
建物のある市の消防署に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
防犯と消防の両方を考えて、製品を選ぶ必要があると分かりました。
まずは窓のガラスとフィルムの資料をそろえます!
ガラスの種類と製品の資料があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版(令和8年4月1日改正)第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第5 無窓階の取扱い(1 床面積に対する開口部の割合、3 開口部の構造(1)ア(ア)(イ)(エ)(オ)(カ)・イ(ク)(ケ)・ウ(ア)〜(エ)、第5-1表と備考・凡例) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」目次 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開されている6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令第10条第1項第5号、第11条第1項第6号、第21条第1項第10号・第11号
- 消防法施行規則第5条の5
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している基準を読んだ範囲でのものです。無窓階に当たるかどうか、開口部が有効と扱われるかどうかについての個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





