鈴鹿市で病院や保育園、高齢者施設の避難器具を選ぶとき、国の法令は滑り台だけに限っていません。
消防法施行令の表では、病院や福祉施設などの(6)項の2階なら、避難はしごや救助袋を含む6種類から選べます。
ところが鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域消防本部の審査基準は、こうした建物の避難器具を滑り台へ寄せる行政指導を置いています。
この記事では国の表から3つの消防本部の書き方までをたどり、言い回しの強さの違いと他市の扱いを比べます。
鈴鹿市で2階建ての保育園を建てる計画があります。
避難器具は滑り台でないと認められないのでしょうか。
鈴鹿市の審査基準は滑り台とすると書いていますが、行政指導の印が付いた項目です。
まず国の表から確かめましょう。
四日市市や、埼玉の鴻巣市あたりでも同じ書き方ですか。
四日市市と埼玉県央広域消防本部は努めてという言葉を入れています。
言い回しの違いを並べて見ていきましょう。
- 消防法施行令第25条第2項第1号の表は、病院や福祉施設などの(6)項の2階に6種類の避難器具を認めており、滑り台はそのうちの1つです
- 鈴鹿市の審査基準は、病院・幼稚園・保育園・社会福祉施設などの避難器具を「滑り台とする」と定め、行政指導の印▲を付けています
- 四日市市と埼玉県央広域消防本部は同じ趣旨を「努めて滑り台とすること」と書き、鈴鹿市より一段やわらかい言い回しです
- 3つの消防本部とも、避難が困難な人の状況に応じて救助袋にする道を残しています
- 津市・大阪市・東大阪市・堺市の公開の基準には、用途で器具の種類を寄せる記載が見当たりませんでした
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目次
国の基準では病院や福祉施設の避難器具をどこまで選べるのか

病院・診療所・老人福祉施設・保育所・幼稚園などの(6)項は、第1項第1号で収容人員20人以上の階が対象になります。
第25条第2項第1号 前項各号に掲げる階には、次の表において同項各号の防火対象物の区分に従いそれぞれの階に適応するものとされる避難器具のいずれかを(略)設置すること。
| 階 | 適応する避難器具(第1項第1号=(6)項の防火対象物) |
|---|---|
| 地階 | 避難はしご・避難用タラップ |
| 2階 | 滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋・避難用タラップ |
| 3階 | 滑り台・救助袋・緩降機・避難橋 |
| 4階・5階 | 滑り台・救助袋・緩降機・避難橋 |
| 6階以上(10階まで) | 滑り台・救助袋・避難橋 |
2階なら6種類、3階から5階なら4種類のどれを選んでも、表の上では適応する器具になります。
3階以上では避難はしごと避難用タラップが外れ、6階以上ではさらに緩降機も外れます。
第1項は避難階と11階以上の階を除いているので、表が効くのは地階と、避難階を除く10階までの階です。
国の基準だけを見れば、表に並ぶ器具のどれを選ぶかは設計の判断になります。
国の表だけ見れば、2階の保育室に避難はしごを付けてもよいのですね。
表の上ではそうです。
ただ鈴鹿市では、審査基準がもう一段の指導を重ねています。
鈴鹿市の審査基準は病院や福祉施設の避難器具をどう定めているのか

避難器具は第4章第15にあり、用途や建物の造りで器具の種類を寄せる項目が3つ並んでいます。
対象は病院・幼稚園・保育園・社会福祉施設のほか、「その他避難が困難な者が利用する防火対象物」と広く書かれています。
文末には▲が付いていて、第1章の凡例ではこれが行政指導基準を示す印です。
その第1章は、行政指導事項は関係者に義務を課すものではなく、任意の協力で実現されるものとしています。
ただし書きで救助袋も認めているので、鈴鹿市で計画するなら、利用者の状態を説明できる形で滑り台か救助袋かを消防本部と相談します。
言い切っていても、法令上の義務ではないということですね。
そのとおりです。
ただ事前相談ではこの項目が出てくるので、器具を選んだ理由を用意して臨みましょう。
四日市市と埼玉県央広域消防本部の書き方はどこが違うのか

並べると文の骨組みは同じで、言い回しの強さだけが違います。
ただし、避難が困難な者の状況に応じて、救助袋とすることができる。
| 消防本部 | 言い回し | 行政指導の目印 | ただし書き |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 滑り台とする | ▲ | 救助袋として差し支えない |
| 四日市市 | 努めて滑り台とすること | 文全体に下線 | 救助袋とすることができる |
| 埼玉県央広域 | 努めて滑り台とすること | ▲ | 救助袋とすることができる |
対象の書き方は、病院・幼稚園・保育園・社会福祉施設その他避難が困難な者が利用する防火対象物と、3つとも同じです。
四日市市は総則で、本市の行政指導であることが明白な部分にアンダーラインを引くとしており、この項目は文全体に下線が引かれています。
埼玉県央広域消防本部も▲を付け、第1章で行政指導事項は相手方の任意の協力により実現されるものと書いています。
3つとも行政指導である点は同じなので、指導としては滑り台が第一の選択肢として示され、救助袋がその次に控える形だと読んでおきます。
つまり鈴鹿市が一番強い書き方で、四日市市と県央広域は少しやわらかいのですね。
文面ではそうです。
どこもただし書きで救助袋を認めている点は共通です。
劇場や学校やバルコニーのある建物はどう書かれているのか

四日市市の避難器具の節には、この2つに当たる項目は見当たりませんでした。
⑸ 外気に面する部分に、バルコニーその他これに類するもの(この項において「バルコニー等」という。)を避難上有効に設けた防火対象物に設置する避難器具は、避難器具用ハッチに格納された金属製避難はしご又は救助袋とする。▲
⑺ 劇場、百貨店、学校、博物館その他多数の者が利用する防火対象物に設置する避難器具は、救助袋又は滑り台とする。▲
⑸ 外気に面する部分に、バルコニーその他これに類するもの(以下この項において「バルコニー等」という。)が、避難上有効に設けられている防火対象物に設置する避難器具は、努めて避難器具用ハッチに格納された金属製避難はしご又は救助袋とすること。▲
⑺ 劇場、百貨店、学校、博物館その他多数の者が利用する防火対象物に設置する避難器具は、努めて救助袋又は滑り台とすること。▲
劇場・百貨店・学校・博物館などは第25条第1項第3号の防火対象物で、国の表では避難はしごや緩降機も選べる区分です。
それでも両本部は、この用途には救助袋又は滑り台を挙げています。
バルコニー等を避難上有効に設けた建物では、避難器具用ハッチに格納した金属製の避難はしごか救助袋を挙げています。
用途と建物の造りのどちらで項目に当たるかによって示される器具が変わるので、両方の目で自分の建物を見直します。
うちの学校は4階建てですが、避難はしごは勧められないということですか。
鈴鹿市や県央広域の基準では、救助袋か滑り台が示されています。
国の表で選べても、事前相談で確かめておきましょう。
津市や大阪府内の市ではどうなっていて何を確かめればよいのか

用途や造りで器具の種類を寄せる項目があるかどうかは、消防本部ごとにはっきり分かれます。
| 消防本部 | 病院・福祉施設など | 劇場・学校など | バルコニー等のある建物 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 滑り台とする▲ | 救助袋又は滑り台とする▲ | ハッチ格納の金属製避難はしご又は救助袋とする▲ |
| 四日市市 | 努めて滑り台(下線) | 記載なし | 記載なし |
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 努めて滑り台▲ | 努めて救助袋又は滑り台▲ | 努めてハッチ格納の金属製避難はしご又は救助袋▲ |
| 津市 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| 大阪市・東大阪市・堺市 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
1つ目は、建物の用途が令別表第一のどれに当たり、避難器具が要る階がどこかを、第25条の表で確かめることです。
2つ目は、管轄の消防本部の審査基準に、用途や造りで器具を寄せる行政指導があるかを確かめることです。
3つ目は、滑り台の置き場所が取れないなどの理由で別の器具にしたいとき、利用者の状態や避難空地の条件をそろえて事前相談に持ち込むことです。
指導の無い市でも、表から選んだ器具を実際の利用者が使えるかどうかは、建物側で考えておく必要があります。
鈴鹿市の保育園なら、まず滑り台で計画して、難しければ救助袋を相談するのですね。
その順番で進めると話が早いです。
2階の開口部と降りる場所を図面で先に押さえておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず鈴鹿市の基準どおり滑り台で配置を考えてみます!
開口部と避難空地まで決まれば、事前相談もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第25条
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第1章 総則、第4章 第15 避難器具 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則、第2章 第15 避難器具 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第1章、第4章 第15 避難器具 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」避難器具の節 津市「予防関係審査基準」のページ
- 大阪市消防局・東大阪市消防局・堺市消防局が公開している消防用設備等の技術基準・審査基準のうち避難器具の節
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。避難器具の種類や設置場所は建物の用途・階・収容人員・開口部の状況によって変わるため、設計の前に所轄の消防署にご確認ください。





