夜や休日に誰もいなくなる倉庫や事務所で自動火災報知設備が鳴ったとき、その音に気づく人はいるでしょうか。
国の消防法施行規則は、受信機を置く場所や、受信機が2台以上あるときの通話の設備は決めていますが、建物が無人になるときの知らせ先までは書いていません。
東大阪市消防局の「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」は、無人の建物に自動通報機等を設けるよう、行政指導として求めています。
この記事では、東大阪市の受信機の運用を国の条文から順にたどり、大阪市と堺市の基準とどこが違うかを比べます。
東大阪市で、夜は誰もいなくなる倉庫と事務所を管理しています。
自動火災報知設備が鳴っても、気づく人がいないのが心配です。
東大阪市の運用基準には、ちょうどその場合の項目があります。
無人の建物には、関係者へ自動で知らせる仕組みを求めています。
それは国の法令で決まっていることですか。
いいえ、市の行政指導の基準です。
国の条文から順にたどってみましょう。
- 国の消防法施行規則第24条は、受信機を防災センター等に置くことや、受信機が2台以上なら同時に通話できる設備を設けることを決めていますが、無人の建物の知らせ先は書いていません
- 東大阪市の運用基準は、管理人等を常駐させない無人の建物に、自動火災報知設備の作動を関係者へ自動で知らせる自動通報機等を求めています(●=行政指導)
- 同じ敷地に棟がいくつもあるときは、同時通話装置を設ければ各棟の受信機を1か所に集められます(●)
- 防災センター等があり、受信機のない棟に副受信機と同時通話装置を設ければ、受信機1台で敷地の棟を管理できます(無人の棟は副受信機の対象から除く)
- 保育所・幼稚園・学校の敷地は5つの条件で受信機1台にでき、大阪市は学校だけ、堺市は棟の受信機を集める形です。無人の建物の自動通報機等は、大阪市と堺市の基準には見当たりませんでした
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目次
国の基準は受信機の置き場所と台数をどう決めているのか

自動火災報知設備の受信機の細かい決まりは、消防法施行規則第24条第2号にあります。
ヘ P型一級受信機で接続することができる回線の数が一のもの、P型二級受信機、P型三級受信機、GP型一級受信機で接続することができる回線の数が一のもの、GP型二級受信機及びGP型三級受信機は、一の防火対象物(令第二十一条第一項第十号、第十一号及び第十三号に係る階にあつては、当該階)につき三台以上設けないこと。
ト 一の防火対象物(令第二十一条第一項第十号、第十一号及び第十三号に係る階にあつては、当該階)に二以上の受信機が設けられているときは、これらの受信機のある場所相互間で同時に通話することができる設備を設けること。
同じ条の第5号ヘは、受信機が2台以上あるときは、地区音響装置(ベル)をどの受信機からも鳴らせるようにするとしています。
ところが、この第24条の受信機の決まりには、建物が無人になる時間に誰へ知らせるかという項目はありません。
消防機関へ知らせる火災通報装置は別の設備で、消防機関への通報を受け持ちます。
受信機の種類と台数の上限は受信機の種別と台数の記事で、受信機が2台以上あるときの試験は相互作動試験の記事で解説しています。
国の基準には、無人のときの決まりはないのですね。
はい、受信機の規定には出てきません。
次は、東大阪市の運用基準を見ましょう。
東大阪市は無人の建物にどんな仕組みを求めているのか

ひとつ前のキの(ア)bが、「無人」を定義して「以下同じ」としているので、クもこの意味で読みます。
末尾の●は、運用基準の凡例で次の意味です。
2 ●:行政指導基準であることを示す印
3 ▲:法令基準に行政指導を加えた基準を示す印
運用基準は「自動通報機等」とだけ書いていて、どんな機器を使うか、誰に知らせるかの細かい決まりはありません。
警備会社へ知らせる方法などを考えるときは、設計の段階で所轄の消防署に確かめます。
警備会社への移報と防火管理の関係は遠隔移報システムの記事で、閉店後に無人になるビルの受信機は職員室のベルや無人の飲食店ビルの記事で解説しています。 人はいても、受信機のある場所と夜に人がいる場所が違う建物については、副受信機の項目があります。
誰もいない建物は自動で知らせる、宿直室があればそこにも表示を置く、ということですね。
はい、火災に気づける場所まで信号を届ける考え方です。
次は、棟がいくつもある敷地です。
敷地に棟がいくつもあるとき受信機は1か所に集められるのか

東大阪市の運用基準は、まず国の規則第24条第2号トの「同時に通話することができる設備」の中身を決めています。
(ア) 「同時に通話することができる設備」(以下「同時通話装置」という。)とは、次に掲げるものであること。ただし、同一室内に設けられている場合は、同時通話装置を設けないことができる。
a インターホン
b 非常電話
c 発信機(T型)
d 構内電話で非常用の割り込みができる機能を有するもの又はこれと同等のもの
(イ) 地区音響装置は、いずれの受信機からも鳴動させることができること。
この定義を使って、カが棟ごとの受信機を1か所に集める方法を認めています。
続くキは、さらに進めて、受信機1台で敷地の棟をまとめて管理する方法を2通り示しています。
(ア) 次のa及びbに適合すること。
a 防災センター、守衛室等の集中して管理ができる火災受信場所があり、当該受信所に受信機を設置することにより、火災発生時の初期消火、避難誘導、火災通報等の初動対応がより効果的に実施できること。
b 受信機を設置しない棟(無人(管理人等を常駐させないことをいう。以下同じ。)の棟を除く。)には、副受信機及び同時通話装置を設けること。
守衛室などの火災受信場所に受信機を置き、人のいる棟には副受信機と同時通話装置を設ければ、受信機1台で敷地の棟を管理できます。
無人の棟は、副受信機と同時通話装置を設ける棟から外されています。
ただし、その無人の棟にクの自動通報機等が要るかどうかを、運用基準はキとクの関係としては書いていません。
この点は、所轄の消防署に確かめます。
守衛室に受信機を1台置いて、ほかの棟は副受信機でよいということですね。
はい、人のいる棟には副受信機と同時通話装置が条件です。
次は、保育所や学校の特別な決まりです。
保育所や幼稚園や学校の敷地は受信機1台で足りるのか

a 敷地の主たる用途が、令別表第1⑹項ハ⑶(保育所及び幼保連携型認定こども園に限る。)及びニ(幼稚園に限る。)並びに⑺項に掲げるものであること。
b 防災センター、守衛室等の集中して管理ができる火災受信場所があり、当該受信所に受信機を設置することにより、火災発生時の初期消火、避難誘導、火災通報等の初動対応がより効果的に実施できること。
c 鳴動区分は、全棟一斉鳴動方式であること。
d 当該敷地内の全ての棟が、規則第24条第5号ハ又は第5号の2ロに規定する規模でないこと。
e 当該敷地内の全ての棟が、令第24条第3項に規定する防火対象物(地階を除く階数が2以上のものに限る。)に該当しないこと。
dの規則第24条第5号ハは、地区音響装置を出火階などに限って鳴らす(区分鳴動)建物の規模を決めています。
cで全棟一斉に鳴らす条件をつけているので、区分鳴動が必要な大きな棟がある敷地は外す、という組み立てになっています。
eの令第24条第3項は、非常ベルと放送設備を重ねて設ける建物を決めています。
二 別表第一に掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)で、地階を除く階数が十一以上のもの又は地階の階数が三以上のもの
四 前二号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物で収容人員が三百人以上のもの又は同表(五)項ロ、(七)項及び(八)項に掲げる防火対象物で収容人員が八百人以上のもの
放送設備が必要になる規模は放送設備を重ねて設ける規模の記事で解説しています。
東大阪市の受信機の運用を、国の条文から順に番号つきでまとめます。
- 消防法施行規則第24条第2号トが、受信機が2台以上あれば同時に通話できる設備を設けるとする
- 東大阪市の運用基準 ⑵オ(▲)が、その設備を4種類の同時通話装置と決め、同じ部屋なら不要とする
- ⑵カ(●)が、同時通話装置を設ければ、各棟の受信機を1つの棟に集めて置けるとする
- ⑵キ(ア)(●)が、防災センター等と副受信機・同時通話装置(無人の棟を除く)を条件に、受信機1台で敷地の棟を管理できるとし、ここで「無人」を定義する
- ⑵キ(イ)(●)が、保育所・幼稚園・学校の敷地は、全棟一斉鳴動と、規則第24条第5号ハ等・令第24条第3項に当たらないことなど5つの条件で受信機1台にできるとする
- ⑵ク(●)が、キで定義した無人の建物に、関係者へ自動で知らせる自動通報機等を求める
学校でも、大きな校舎があると1台にはできないのですね。
はい、全棟一斉に鳴らせる規模かどうかが分かれ目です。
次は、近くの市と比べてみましょう。
大阪市や堺市の運用と東大阪市はどこが違うのか

(1) 同一敷地内に2以上の棟がある場合で次に適合するよう措置されているときは、各棟の受信機を、当該敷地内で火災対応を速やかに行うことができる棟に集中して設置することができる(図2-1-2)。
ア 各棟には副受信機を設置すること(受信機を設置する棟を除く。)。ただし、無人の棟等で次に適合する場合は設置しないことができる。
(ア) 火災発生位置が、現場で容易に確認できる状況であること
(イ) 副受信機を設けない棟には、当該棟の見やすい位置に受信機の設置場所を掲示すること
イ 受信機と副受信機の間に、7の例により相互に通話できる設備を設置すること
ウ 受信機においては、当該受信機により警戒する棟が明確に表示されていること
(2) 同一敷地内に2以上の棟がある場合で次に適合するときは、当該敷地内で火災対応を速やかに行うことができる棟に設置する1の受信機で当該敷地内の棟を管理することができる。なお、鳴動方式は全棟一斉鳴動とすること
ア 管理権原が同一の令別表第1(7)項に掲げる防火対象物であること
イ 当該敷地内の全ての棟が規則第24条第5号ハ又は第5号の2ロに規定する規模でないこと
受信機1台で管理できるのは、管理権原が同じ学校((7)項)だけで、保育所や幼稚園は挙げていません。
東大阪市のe(令第24条第3項)に当たる条件も、大阪市の(2)にはありません。 堺市の審査基準は、受信機を集める場合を、国の令第32条か堺市火災予防条例第72条の特例として書いています。
(ア) 防災センター、守衛所等の集中的な管理ができる火災受信場所があること。
(イ) 受信機を設置しない建築物(無人となる建築物は除く。)には副受信機(表示盤)及び同時通話装置を設けること。
ク 防災センター等常時人がいる場所が複数ある場合には、主たる場所に受信機を設け、それ以外の場所には副受信機(表示盤)及び同時通話装置を設けること。また、夜間など時間帯によって常時人のいる場所が宿直室、スタッフステーション等に移動する場合は、当該場所に副受信機(表示盤)及び同時通話装置を設けること。★
国の令第32条は、消防長又は消防署長が認めるときに基準によらないことを認める条文なので、堺市では受信機を集めること自体が特例の扱いです。
また、3市とも、受信機のある場所と夜に人がいる場所が違えば、そこに副受信機を置くよう求めています(大阪市は第8 副受信機◆の2、東大阪市は6 副受信機●の⑵、堺市は上のク★)。 3市で確かめた範囲を並べます。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 各棟の受信機を1か所に集める | カ●:同時通話装置を設ける | 8(1)◆:各棟に副受信機と通話設備(無人の棟等は掲示などで省略可) | キ:令第32条又は条例第72条を適用、防災センター等と副受信機・同時通話装置(無人の建築物は除く) |
| 受信機1台で敷地の棟を管理 | キ●:(ア)用途を問わない/(イ)保育所・幼稚園・学校は5条件 | 8(2)◆:管理権原が同一の学校((7)項)だけ | 該当する項目は見当たらない |
| 無人の建物の自動通報機等 | ク●:設ける | 見当たらない | 見当たらない |
| 宿直室等への副受信機 | 6 副受信機●⑵ | 第8 副受信機◆2 | ク★(同時通話装置も) |
どの市でも、運用基準や審査基準は行政指導や特例の扱いを含むので、最終的な判断は所轄の消防署です。
受信機の置き方を決める前、建物が無人になる運用に変える前に確かめます。
東大阪市の自動火災報知設備の特例は高架下の駐車場の記事でも解説しています。
無人の建物の自動通報機等は、東大阪市ならではの項目なのですね。
はい、3市のうち東大阪市だけでした。
建物のある市の基準を確かめましょう。
よくある質問
まとめ
夜に無人になる棟を洗い出して、自動通報機等と受信機の置き方を確かめます。
まずは建物ごとに人のいる時間を整理してみます!
人のいる時間と受信機の場所がはっきりすれば、消防署との相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」凡例/Ⅱ 細目 1 受信機 ⑵ 設置方法 オ・カ・キ・ク/6 副受信機 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第3 受信機 7・8/第8 副受信機 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 1 受信機 (3)設置場所等 カ・キ・ク https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令第24条第3項、第32条
- 消防法施行規則第24条第2号・第5号・第5号の2
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。3市の比較は、各市が公開している基準で確かめた範囲のものです。個々の建物で受信機をどこに置くか、自動通報機等が要るかどうかは、所轄消防署にご確認ください。





