大きなビルの自動火災報知設備は、火事が起きた階とその上の階だけを先に鳴らす区分鳴動ができます。
そのあと建物全体へ鳴動を広げるきっかけの1つが、国の規則にある一定の時間です。
ところが規則は、その時間が何分なのかを書いていません。
この記事では鈴鹿市消防本部の「おおむね4分」を入口に、三重・埼玉・大阪の7つの消防本部の基準を並べて比べます。
鈴鹿市で7階建てのテナントビルを管理しています。
点検のときに、区分鳴動から全館に切り替わるまでの時間を聞かれて答えられませんでした。
国の規則は一定の時間としか書いていないので、目安は各消防本部の基準で決まっています。
鈴鹿市はおおむね4分以内です。
ほかの市でも4分なのですか。
埼玉県央広域は同じ4分ですが、東大阪市や堺市は2分から5分と書いています。
条文から順に7つの基準を比べていきましょう。
- 消防法施行規則第24条第5号ハは、区分鳴動のあと一定の時間が経過するか新たな火災信号を受けたら全区域へ自動で鳴らすよう定めていますが、時間の長さは書いていません
- 鈴鹿市はおおむね4分以内を基本とし、10分までは施行令第32条を適用して認める書き方です
- 埼玉県央広域はおおむね4分・最大でも10分以内、津市は概ね数分・最大でも10分以内としています
- 大阪市は最大10分以内、東大阪市と堺市はおおむね2分から5分・最大10分以内と書いています
- 四日市市は分数を書かず消防庁の通知によるとし、条件付きで区分鳴動させない扱いも指導基準に置いています
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目次
区分鳴動のあと全館に切り替わる一定の時間は国の規則で何分なのか

区分鳴動ができる建物と、全館へ切り替える条件は次のハに書かれています。
区分鳴動が認められるのは、地階を除く階数が5以上で延べ面積3,000平方メートル超の建物です。
音声で警報を出す地区音響装置も、同じ条の第5号の2ロで同じ仕組みを定めています。
どちらも「一定の時間」とだけ書いているので、何分で全館へ切り替えるかは各消防本部の審査基準が目安を示しています。
条文から基準までは、次の順でつながります。
- 施行規則第24条第5号ハ(音声式は第5号の2ロ)で、出火階と直上階に限った鳴動ができる
- 同じ規定が、一定の時間の経過か新たな火災信号の受信で全区域へ自動で鳴らすよう求める
- 規則には一定の時間の長さも、新たな火災信号の中身も書かれていない
- 各消防本部の審査基準が、時間の目安と新たな火災信号に当たる信号を定めている
うちの7階建ては延べ面積が4,000平方メートルあります。
区分鳴動の対象になるのですか。
階数5以上で3,000平方メートル超なので区分鳴動ができる建物です。
切り替えの時間は管轄の基準で確かめます。
鈴鹿市はなぜおおむね4分を基本にして10分を特例にしているのか

目安と上限を、別の段に分けて書いているのが特徴です。
(イ) 省令第24条第5号ハ及び第5号の2ロに規定する一定の時間とは、防火対象物の用途、規模及び設備の状況並びに火災確認に要する時間、出火階及びその直上階から避難が完了する時間等を考慮し、おおむね4分以内とする。ただし、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、政令第32条の規定を適用して、最大10分以内とすることができる。●
鈴鹿市の凡例では、●は法令基準に行政指導を加えた基準を表します。
施行令第32条は、消防長又は消防署長が建物の位置・構造・設備の状況から判断して、基準によらなくても被害を最少限度に止められると認めたときに基準を適用しないとする規定です。
鈴鹿市は4分を超えて10分までの設定を、この第32条を適用する場面として位置づけています。
全館への切り替えを遅らせたいときは、建物の状況の説明を用意して事前に相談することになります。
4分を超える設定にしたいときは、特例の扱いになるのですね。
鈴鹿市の基準ではそう読めます。
火災確認の体制などを整理して、消防本部に相談しましょう。
埼玉県央広域と津市は何分を目安にしているのか

どちらも上限は10分ですが、目安の書き方が違います。
(イ) 省令第24条第5号ハ及び第5号の2ロに規定する「一定の時間」については、防火対象物の用途、規模及び設備の状況並びに火災確認に要する時間、出火階及びその直上階からの避難が完了すると想定される時間等を考慮し、おおむね4分とし、最大でも10分以内とすること。●
考慮する要素は鈴鹿市と同じですが、埼玉県央広域は10分までの設定に施行令第32条を持ち出していません。
津市の「津市予防事務審査検査基準」5-11 自動火災報知設備 7 地区音響装置 ⑵は、目安を「概ね数分」とし、上限を「最大でも10分以内」としています。
津市の基準には義務と指導を分ける凡例の記号が無いため、書きぶりから読むことになります。
新たな火災信号の中身は3本部とも同じで、ほかの警戒区域・ほかの感知器・発信機・火災の発生を確認した旨の信号の4つを挙げています。
同じ4分でも、鈴鹿市は特例、埼玉県央広域は基準の中で10分まで認めているのですね。
そのとおりです。
管轄が変わると手続きの重さが違ってきます。
大阪市・東大阪市・堺市の書き方はどこが違うのか

ただし目安の有無と、基準に付けた記号の意味がそれぞれ違います。
(ウ) 第1報の感知器が作動し、区分鳴動方式による警報が鳴動してから、一定の時間が経過した場合には、前(イ)の新たな火災信号の入力がない場合でも自動的全館一斉鳴動に切り替わること。なお、一定の時間とは、出火階及びその直上階からの避難が完了すると想定される時間等を考慮し、概ね2分から5分とし、最大で10分以内とすること。◆⑨
| 消防本部 | 一定の時間 | 付いている記号 | 新たな火災信号 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | おおむね4分以内(第32条で最大10分以内) | ●(法令基準+行政指導) | 4種類 |
| 埼玉県央広域 | おおむね4分・最大でも10分以内 | ●(法令基準+行政指導) | 4種類 |
| 津市 | 概ね数分・最大でも10分以内 | 凡例の記号なし | 4種類 |
| 大阪市 | 最大10分以内の時間で設定できる | ◆(市の行政指導基準) | 4種類 |
| 東大阪市 | 概ね2分から5分・最大で10分以内 | ▲(法令基準+行政指導) | 3種類 |
| 堺市 | 概ね2分から5分・最大で10分以内 | ◆(消防庁の通知等を参考にした指導基準) | 3種類 |
| 四日市市 | 分数の記載なし(消防庁の通知によるとする) | 下線なし | 記載なし |
大阪市の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、避難完了や火災確認に要する時間を考えて最大10分以内で設定できるとだけ書いています。
東大阪市と堺市は2分から5分という幅を示し、堺市の◆は国の通知を参考にした指導という意味で、大阪市の◆とは意味が違います。
記号は東大阪市の▲と鈴鹿市の●が同じ「法令基準+行政指導」を表すなど、市ごとに凡例が違うので必ず冒頭の凡例で読み替えます。
新たな火災信号は、大阪市が4種類、東大阪市と堺市はアナログ式の多段階の信号を含む3種類で、火災の発生を確認した旨の信号は挙げていません。
同じ記号でも、市によって意味が違うとは知りませんでした。
比べるときは凡例の読み替えが欠かせません。
記号だけで義務か指導かを決めつけないようにしましょう。
四日市市はどう定めていて自分の建物では何を確かめればよいのか

そのうえで、区分鳴動にしなくてよい場面を下線付きの項目で示しています。
(5)省令第24条第1項第5号ハ、5号の2ロによる区分鳴動の場合は、「消防法施行規則の一部を改正する省令及び受信機に係る技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令の運用について」(平成9年6月30日付け消防予第118号)によること。
(8)省令第24条第1項第5号ハ及び第5号の2ロに規定する防火対象物において、防火対象物の規模、用途及び防火管理体制からパニックによる2次的被害が起こるおそれがなく、一斉鳴動とすることにより避難安全性がより一層確保できる場合は、区分鳴動させなくてもよいものとする。
四日市市の基準は、本市の行政指導が明白な部分に下線を引く凡例で、(8)は下線付き、(5)は下線なしです。
条文の番号は、現行の施行規則では「第24条第5号ハ」「第5号の2ロ」と書かれています。
自分の建物では、受信機に設定されている区分鳴動から全館鳴動までの時間を点検業者や設計図書で確かめ、管轄の目安に収まっているかを見ます。
受信機の更新や用途変更のときは、その時点の管轄の基準で時間と新たな火災信号の範囲を確かめてから設定してもらいます。
次の点検で、受信機に何分で設定されているかを業者さんに聞いてみます。
設定値と管轄の目安を並べて記録しておくと安心です。
点検結果報告書と一緒に保管しましょう。
よくある質問
まとめ
次の点検で、受信機の切り替え時間を確かめてもらいます!
管轄の目安に合っているかまで見ておくと、もしものときに迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第24条第5号ハ・第5号の2ロ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第10 自動火災報知設備 7 地区音響装置 ⑶ 鳴動方式 イ(イ)(ウ) 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第10 自動火災報知設備 8 地区音響装置 ⑶ 鳴動方式 イ(イ)(ウ) 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-11 自動火災報知設備 7 地区音響装置 ⑵ 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第2章 第10 自動火災報知設備 5 音響装置(5)(8) 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第6 音響装置 11(2) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 4 音響装置 ⑷ 鳴動方法 エ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 6 音響装置 (4) 鳴動方法 イ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。受信機の設定時間を変えられるかどうかは建物の用途・規模・防火管理体制によって変わるため、所轄の消防署にご確認ください。





