非常ベルの点検で、鳴動の項目があるのをご存じでしょうか。
音が鳴るかどうかだけでなく、どの階まで鳴らすかという鳴らし方そのものが確認の対象です。
大きな建物では出火階の近くだけを鳴らす区分鳴動があり、あとで全館に切り替わる仕組みも求められています。
この記事では、点検要領の判定文をもとに、鳴動方式の確認で何を見るのかを整理します。
非常ベルの点検って、鳴らして音を聞くだけではないのですか。
音圧のほかに、鳴動方式を確かめる項目が別にあります。
まず全体像から見ていきましょう。
区分鳴動というのは、どの建物でも関係しますか。
対象は一定規模以上の建物に限られます。
順番に見ていきましょう。
- 非常ベルの点検では、音圧のほかに鳴動方式を、所定の操作で確かめます。
- 判定の項目は、一斉鳴動・区分鳴動・相互鳴動・再鳴動の四つです。
- 区分鳴動の対象は、地階を除く階数が5以上で延べ面積が3,000平方メートルを超える防火対象物です。
- 区分鳴動のあとは、一定の時間の経過か新たな火災信号の受信で、自動的に全館へ切り替わることが必要です。
- 放送設備のスピーカーにも、同じ四つの判定項目が並びます。
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目次
非常ベルの点検では鳴動の何を確かめるのか

点検要領には、次のように書かれています。
(点検方法)所定の操作により、鳴動方式を確認する。
(判定方法)ア 一斉鳴動の場合 起動装置の操作により全館の音響装置が一斉に鳴動すること。 イ 区分鳴動の場合 … ウ 相互鳴動の場合 2以上の操作部又は複合装置が設けられている防火対象物の音響装置は、いずれの操作部又は複合装置からも鳴動できること。 エ 再鳴動の場合 再鳴動機能を有する音響装置は、機能が正常であること。
つまり、音が出るかを見るだけでなく、建物ごとの鳴らし方が設計どおりに働くかを確かめる項目です。
すべての建物に四つとも当てはまるわけではなく、区分鳴動は規模の大きな建物、相互鳴動は操作部が複数ある建物、再鳴動は機能を持つ装置だけが対象です。
出火階と直上階に限る警報の考え方は出火階と直上階に限る警報の記事で整理しています。
一斉鳴動だけの小さな建物は、この項目を何も見ないのですか。
一斉鳴動の場合は、起動装置の操作で全館が一斉に鳴ることを確かめます。
他の三つは、建物や装置に当てはまるときだけ見ます。
区分鳴動はどんな建物で確かめるのか

根拠は、規則の音響装置の基準にあります。
地階を除く階数が五以上で延べ面積が三千平方メートルを超える防火対象物にあつては、出火階が、二階以上の階の場合にあつては出火階及びその直上階、一階の場合にあつては出火階、その直上階及び地階、地階の場合にあつては出火階、その直上階及びその他の地階に限つて警報を発することができるものであること。
点検要領の判定文も、区分鳴動の場合の書き出しを同じ規模の条件から始めています。
ここで注意したいのは、規則が「限つて警報を発することができる」と書いている点です。
区分鳴動は鳴らさなくてよい階を決めるものではなく、そうした鳴らし方も許される大規模な建物向けの仕組みです。
だから、点検の現場では、まず建物がこの規模の条件に当たるかを確かめます。
規模が足りない建物は、最初から全館一斉鳴動ですか。
区分鳴動の条件に当たらない建物は、一斉鳴動の確認になります。
階数と延べ面積は、建物の図面で確かめられます。
出火階によって鳴る階はどう変わるのか

点検要領の判定文にも、同じ三つの場合が並びます。
| 出火階 | 鳴らす階 |
| 2階以上 | 出火階とその直上階 |
| 1階 | 出火階とその直上階及び地階 |
| 地階 | 出火階とその直上階及びその他の地階 |
1階と地階の場合に広がる理由まで、点検要領は書いていません。
点検で見るのは、設計どおりの階が鳴る作りになっているかという動作の確認です。
放送設備のスピーカーにも、同じ三つの場合が並んでいます。
出火階が最上階のときは、直上階がありませんが。
直上階が無い場合の扱いまでは、点検要領に書かれていません。
設備の仕様書や所轄消防署の指導に沿って確かめましょう。
全館一斉鳴動への自動切り替えはどう見るのか

規則の文が、区分鳴動のすぐあとに続けて書いています。
…この場合において、一定の時間が経過した場合又は新たな火災信号を受信した場合には、当該設備を設置した防火対象物又はその部分の全区域に自動的に警報を発するように措置されていること。
点検要領も、区分鳴動の判定に「自動的に全館一斉鳴動すること」と書き加えています。
点検方法の欄に書かれているのは「所定の操作により、鳴動方式を確認する」だけで、切り替えの試験の細かい手順は書かれていません。
また、規則も点検要領も「一定の時間」の長さは示していないので、設備ごとの設定は取扱説明書や設計図書で確かめることになります。
導入のときに区分鳴動を選んだ建物は、この切り替えの設定がそのままになっているかを見ておくと安心です。
旅館の火災を受けた通知の流れは旅館の火災を扱った記事で扱っています。
火災信号を新たに受信するとは、どういう場面ですか。
最初の火災信号のあとに、別の場所からの信号が入る場面が考えられます。
詳しい条件は、設備の仕様書で確かめてください。
相互鳴動と再鳴動は何を確かめるのか

判定文を確かめてみましょう。
ウ 相互鳴動の場合 2以上の操作部又は複合装置が設けられている防火対象物の音響装置は、いずれの操作部又は複合装置からも鳴動できること。
エ 再鳴動の場合 再鳴動機能を有する音響装置は、機能が正常であること。
再鳴動については、機能を持つ装置だけが対象で、機能が正常であることを確かめます。
放送設備のスピーカーにも、同じ相互鳴動と再鳴動の項目が並んでいます。
受信機が複数あるときの確かめ方は相互作動試験の記事で、再鳴動機能付きの受信機の考え方は再鳴動機能付きの受信機の記事で扱っています。
操作部が一つだけの建物は、相互鳴動は見ないのですか。
判定文は2以上の操作部がある建物を対象にしています。
一つだけなら、この項目は当てはまりません。
よくある質問
まとめ
まず建物の階数と延べ面積を確かめて、区分鳴動の対象かを見ます!
鳴動方式は、設計と設定がそろっているかを点検で確かめることが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等の点検及び報告)、第25条の2(非常警報設備に関する基準の細目)
- 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年消防庁告示第9号)
- 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第14 非常警報器具及び設備
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





