5階建て以上の大きな建物で火災が起きても、鳴るベルは建物の一部だけということをご存じでしょうか。
消防実務六法には、自動火災報知設備の地区音響装置の鳴動方式をめぐって当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行規則と照らし合わせて読み直します。
区分鳴動の対象となる建物規模から、階段の感知器が作動したときの扱いまで、順に確かめていきましょう。
うちの建物、火災報知器が鳴っても一部のフロアしか鳴らないって聞いたんですが本当ですか。
はい。
実は昭和の質疑応答で、どの階を鳴らすかという基準まで細かく示されているんですよ。
階段の感知器が作動したときの扱いや、受信機が2台あるときの通話設備も気になります。
では。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。
- 区分鳴動の対象となる延べ面積3,000平方メートル超は、地階を含めた床面積の合計で判定されます
- 地階で出火した場合は、出火階及びその直上階に限らず地階部分全域に警報が及ぶよう指導されています
- 区分鳴動の受信機にも、必要に応じて全館に一斉警報を発する機能をあわせ持たせてよいとされました
- 階段の煙感知器が作動しても地区音響装置は自動では鳴動せず、火災確認後に受信機を操作して鳴動させる方式とされました
- 一の防火対象物に2以上の受信機があるときは同時通話設備が必要で、別棟であれば一の防火対象物に含まれないとされました
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目次
区分鳴動の対象となる延べ面積3,000平方メートル超は地階を含めて数えるのか

その延べ面積を、地階を含めて数えるのかどうかが問われました。
(昭和45年7月24日 消防予第153号 消防庁予防課長から兵庫県あて回答)
現行の規則第24条第5号ハも「地階を除く階数が五以上で延べ面積が三千平方メートルを超える防火対象物」と定めており、この延べ面積の考え方は昭和45年当時から変わっていません。
地上階だけの床面積で3,000平方メートルに届かなくても、地階を合わせた建物全体の延べ面積で3,000平方メートルを超えれば、区分鳴動の対象になります。
設計や点検の際は、地上階の図面だけでなく地階部分の床面積もあわせて合算し、区分鳴動の対象になるかどうかを判定する必要があります。
うちは地上だけなら3,000平方メートルに届かないんですが、地下の駐車場も入れると超えそうです。
その場合は地階を含めた合計で判断するので、区分鳴動の対象になります。
出火階及びその直上階に限る警報の範囲は地階があるとどう変わるのか

地階がある建物では、その範囲がどう扱われるのかが問われました。
(昭和45年7月24日 消防予第153号 消防庁予防課長から兵庫県あて回答)
現行の規則第24条第5号ハは、この考え方をさらに細かく場合分けしていて、出火階が2階以上の階なら出火階及びその直上階、1階なら出火階・その直上階及び地階、地階の場合は出火階・その直上階及びその他の地階に限って警報を発すると定めています。
つまり当時の「地階は地階全域に」という指導は、現行条文では地階で出火した場合に出火階・直上階・その他の地階まで対象を広げる形で明文化されたと見ることができます。
地階のある建物の点検では、出火した階に応じて警報の範囲がどう変わるかを、現行条文の場合分けに沿って確認する必要があります。
なるほど、地階で火事が起きたら地階全体に警報が広がるようになってるんですね。
はい。
現行の条文では出火した階によって警報の範囲が細かく決められています。
区分鳴動の受信機にも全館一斉に警報を発する機能を持たせてよいのか

全館に一斉に警報を発する機能もあわせ持たせてよいのかが問われました。
(昭和45年7月24日 消防予第153号 消防庁予防課長から兵庫県あて回答)
現行の規則第24条第5号ハも、区分鳴動で警報を発したあと「一定の時間が経過した場合又は新たな火災信号を受信した場合」には、建物の全区域に自動的に警報を発するよう措置することを定めています。
当時の「必要に応じて全階にも警報を発することができる」という回答は、現行条文では一定時間の経過や新たな火災信号の受信を条件に、自動的に全館鳴動へ切り替える仕組みとしてより明確に定められています。
点検では、区分鳴動から全館鳴動へ自動的に切り替わる設定になっているかどうかも、あわせて確認する必要があります。
一部の階しか鳴らないままだと、逃げ遅れる人が出ないか心配です。
一定時間が経つか新たな火災信号を受けると、自動で全館に警報が切り替わる仕組みになっています。
階段の煙感知器が作動したとき地区音響装置はどう鳴動させるのか

階段の感知器が作動したときにどう鳴動させるべきかが問われました。
(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第24条第5号ロも「階段又は傾斜路に設ける場合を除き、感知器の作動と連動して作動するもの」と定めていて、階段や傾斜路の感知器を連動鳴動の対象から除く考え方は当時の回答と同じ方向にあります。
現行規則にはこの除外の理由までは明記されていませんが、階段は煙が上下階へ伝わりやすい通り道であるため、感知器の作動だけで自動的に鳴動させると出火場所の確認前に広い範囲へ警報が及ぶおそれがある、という配慮によるものと考えられます。
階段に煙感知器を設けている建物では、火災の確認後に受信機を操作して必要な階を鳴動させる運用になっているか、点検時にあわせて確認しておく必要があります。
階段の感知器は特別扱いなんですね、知りませんでした。
はい。
階段や傾斜路の感知器は、連動して自動で鳴動させない扱いになっています。
一の防火対象物に受信機が2台あるとき同時通話設備はどこまで必要なのか

P型2級受信機を2台設ける場合でも、同時通話設備が必要かどうかが問われました。
(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第24条第2号トも「一の防火対象物に二以上の受信機が設けられているときは、これらの受信機のある場所相互間で同時に通話することができる設備を設けること」と定めていて、当時の回答にある規則第24条第2号ホは号の構成が変わり、同じ基準は現在規則第24条第2号トに置かれています。
同じ通知の中では「一の防火対象物」について、同一敷地内にあっても別棟の防火対象物は含まないとも示されており、受信機を分けて設置する建物が同じ敷地内の別棟どうしであれば、この同時通話設備の対象にはならないと整理されています。
受信機を複数台設ける計画では、それぞれが同一の建物内にあるか別棟かを確認したうえで、同時通話設備の要否を判断する必要があります。
受信機を2台に分けるときは、建物のつながり方も見ておく必要があるんですね。
はい。
同じ建物内か別棟かで、同時通話設備が必要かどうかが変わります。
よくある質問
まとめ
どの階が鳴って、どの階が鳴らないのか、理由まで分かるとうちの点検でも確認しやすそうです。
区分鳴動の仕組みは現行条文でも細かく場合分けされています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条
- 区分鳴動の対象となる延べ面積の判定に関する質疑(昭和45年7月24日 消防予第153号 消防庁予防課長から兵庫県あて回答)
- 出火階及びその直上階に限る警報の範囲に関する質疑(同上)
- 区分鳴動と全館一斉鳴動の機能に関する質疑(同上)
- 階段の煙感知器作動時の鳴動方法に関する質疑(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 同時通話設備の要否に関する質疑(同上)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





