旅館や寮、福祉施設の改修で、和室の押入の中に感知器を付けるかどうかが話題になることがあります。
国の消防法施行規則には、押入という言葉が出てきません。
堺市消防局の審査基準は、押入を居室と別の感知区域とし、上段か天袋に感知器を付けることを原則にしています。
この記事では、国の規則から堺市の基準と設置例の図までを順にたどり、大阪市・東大阪市の基準とも比べます。
堺市の寮を改修して、和室を増やす計画があります。
押入の中にも感知器が要るのですか。
堺市の審査基準では、押入の上段か天袋に1個以上が原則です。
ただし構造によっては付けなくてよい場合があります。
どんな構造なら付けなくてよいのですか。
壁と天井の材料、上の階の床、天井裏の感知器で決まります。
設置例の図を順に読んでいきましょう。
- 国の消防法施行規則第23条第4項は感知区域ごとに感知器を設けるとしていますが、押入の扱いは書いていません
- 堺市の審査基準は、押入等を居室と別の感知区域とし、感知器を上段(天袋がある場合は天袋)に1個以上設けるとしています
- 押入と隣の部屋の間の壁が不燃材料以外なら、堺市の設置例ではどの場合も感知器が必要です
- 壁が不燃材料なら、上の階の床が耐火構造・天井裏に感知器がある・天井も不燃材料のどれかに当たる設置例で省略になっています
- 大阪市と東大阪市も上段に1個以上が原則ですが、天袋がある設置例でも感知器は上段に描かれていて、東大阪市は特例基準の1つとして書いています
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目次
国の基準では押入の感知器をどう決めているのか

感知器の付け方は、消防法施行規則第23条第4項が細かく定めています。
スポット型の熱感知器なら、感知区域ごとに設けることになっています。
押入はふすまと壁で区切られた小さな空間ですが、第23条には押入という言葉が一度も出てきません。
そのため、押入の中に感知器を付けるかどうか、付けるならどこに付けるかは、各地の消防本部の基準で示されています。
国の古い質疑で押入の感知器の種別を尋ねた例は、感知器の省略の質疑を解説した記事で紹介しています。
国の規則には、押入の決まりは無いのですね。
はい、だから市の基準と図を見る必要があります。
まず堺市の審査基準を読みます。
堺市の審査基準は押入の感知器をどこに付けるとしているのか

項目の★は、凡例で堺市消防局が防火安全性の向上を目的として定めた指導基準の印です。
(ア) 押入等は、原則として居室と別感知区域とすること。
(イ) 感知器は、原則として押入等の上段部分(天袋がある場合は天袋)に1個以上設けること。ただし、当該押入等から出火した場合でも隣室等への延焼のおそれのない構造又はその上部の天井裏に感知器を設けてある場合はこの限りでない。(第12-13図から第12-18図参照)
堺市の基準は、天袋がある押入では一番上の天袋に感知器を付けると書いています。
国の規則から堺市の基準までのつながりを番号順に並べると、次のとおりです。
- 消防法施行規則第23条第4項第3号ロが、感知器を感知区域ごとに設けるとしています。
- 堺市の審査基準 (2)感知区域 オ(ア)が、押入等を居室と別の感知区域にするとしています。
- 同じオ(イ)が、感知器を上段(天袋がある場合は天袋)に1個以上とし、ただし書で付けなくてよい場合を示しています。
- ただし書の「延焼のおそれのない構造」の具体例は、第12-13図から第12-18図の6つの設置例で示されています。
天袋がある押入だと、上段ではなく天袋に付けるのですね。
はい、堺市の基準は天袋がある場合は天袋です。
次は付けなくてよい場合を図で見ます。
堺市ではどんな構造なら押入の感知器を省略できるのか

図の中身を表にまとめると、次のとおりです。
| 設置例 | 上の階の床 | 天井裏 | 押入の天井 | 押入と隣室の間の壁 | 押入の感知器 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第12-13図 | 耐火構造 | 感知器なし | 不燃材料以外 | 不燃材料 | 省略 |
| 第12-14図 | 耐火構造 | 感知器なし | 不燃材料以外 | 不燃材料以外 | 必要 |
| 第12-15図 | 耐火構造以外 | 0.5メートル以上で感知器あり | 不燃材料以外 | 不燃材料 | 省略 |
| 第12-16図 | 耐火構造以外 | 0.5メートル以上で感知器あり | 不燃材料以外 | 不燃材料以外 | 必要 |
| 第12-17図 | 耐火構造以外 | 0.5メートル未満で感知器なし | 不燃材料以外 | 材料の種別にかかわらず | 必要 |
| 第12-18図 | 耐火構造以外 | 0.5メートル未満で感知器なし | 不燃材料 | 不燃材料 | 省略 |
壁が不燃材料の場合は、次のどれかに当たる設置例で省略になっています。
- 上の階の床が耐火構造(第12-13図)
- 天井裏が0.5メートル以上あり、天井裏に感知器がある(第12-15図)
- 天井裏が0.5メートル未満でも、押入の天井が不燃材料(第12-18図)
(略)
ハ 天井裏で天井と上階の床との間の距離が〇・五メートル未満の場所
堺市の第12-17図と第12-18図も、「天井裏に感知器がない場合」として描かれています。
このとき押入の天井が不燃材料以外なら、壁の材料にかかわらず押入に感知器が必要という扱いです。 注意したいのは、オ(イ)の本文が「又はその上部の天井裏に感知器を設けてある場合」と書いている点です。
本文だけを読むと、天井裏に感知器があれば省略できるようにも読めます。
しかし第12-16図は、天井裏に感知器があっても、壁が不燃材料以外なら「感知器は必要」としています。
本文と図をセットで読むことが大切です。
天井裏に感知器がある建物の警戒区域の分け方は、大阪市の天井裏の警戒区域の記事で解説しています。
壁がベニヤ張りなら、天井裏に感知器があっても押入に要るのですね。
はい、堺市の設置例では壁が不燃材料以外なら必要です。
図面で壁と天井の仕上げを確かめましょう。
大阪市と東大阪市では押入の感知器をどこに付けるのか

大阪市は、押入等を押入又は3.3平方メートル以下の物入と定めています。
ア 押入等は、原則として居室と異なる感知区域として感知器を設置すること
イ 感知器は、原則として押入等の上段部分に1個以上設置すること。ただし、当該押入等から出火した場合でも隣室等への延焼のおそれのない構造等の場合は、これによらないことができる(図2-1-3)。
壁と天井の材料、上の階の床、天井裏の高さ50センチメートル、天井裏の感知器で場合を分けている点は、堺市の設置例とほぼ同じです。
違うのは天袋です。
大阪市の設置例では、天袋がある押入でも感知器の印は上段に付き、天袋は「感知器省略」の印になっています。 東大阪市消防局の運用基準は、押入等を特例基準の1つとして書いています。
⑴ 次のいずれかに該当するものについては、自動火災報知設備の感知器を設置しないことができる。
(略)
ス 押入等の感知器は、原則として押入等の上段部分に1個以上設置すること。ただし、当該押入等から出火した場合でも隣室等への延焼のおそれのない構造等の場合は、これによらないことができる。(図99)
天井裏の高さや天井裏の感知器で分ける例は、図99には描かれていません。
また、東大阪市のスには、押入等を居室と別の感知区域にするという書き方はありません。 3市の基準を国の規則から順にたどると、次のようになります。
- 消防法施行規則第23条第4項第3号ロが、感知器を感知区域ごとに設けるとしています。
- 大阪市は感知器の「設置方法」、堺市は「感知区域」の項目で、押入等を居室と別の感知区域にしています。
- 東大阪市は、令第32条又は条例第52条を適用する特例基準の中で、押入等の感知器を上段に1個以上としています。
- 3市とも、ただし書の「延焼のおそれのない構造」の中身は設置例の図で示しています。
同じ大阪府の中でも、天袋の扱いが違うのですね。
はい、天袋のある押入は市ごとに図を確かめることが大切です。
最後に3市を表で比べましょう。
3市の基準を並べると何が同じで何が違うのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 基準の中の位置 | 感知区域 オ(★) | 感知器の設置方法 (3) | 特例基準 ス(令第32条又は条例第52条を適用) |
| 押入等の範囲 | 書かれていない | 押入又は3.3平方メートル以下の物入 | 書かれていない |
| 居室と別の感知区域 | 原則として別 | 原則として異なる感知区域 | スには書かれていない |
| 感知器の位置 | 上段(天袋がある場合は天袋) | 上段(設置例では天袋は省略の印) | 上段(図99では天袋は不要の印) |
| 省略できる場合 | 延焼のおそれのない構造又は天井裏に感知器を設けてある場合(図6つ) | 延焼のおそれのない構造等(図2-1-3) | 延焼のおそれのない構造等(図99) |
| 壁が不燃材料以外 | 設置例はすべて必要 | すべての場合設置要 | 設置例は上段に設置 |
違いが大きいのは、天袋がある押入の感知器の位置です。
堺市の建物で天袋のある押入に感知器を付けるなら、天袋の中になります。
大阪市や東大阪市の設置例どおりに上段に付けた図面を、そのまま堺市で使わないよう注意してください。 感知器を付けなくてよい場所は、押入のほかにも各市が決めています。
大阪市の17の場所は、浴室や短い廊下の感知器の記事で取り上げています。
堺市で自動火災報知設備が必要になる建物の範囲は、堺市の複合用途の自動火災報知設備の記事で解説しています。
大阪市の現場と同じ図面を、堺市で使うところでした。
天袋のある押入は、堺市なら天袋に付けるのが原則です。
迷ったら所轄の消防署に図面で相談しましょう。
よくある質問
まとめ
押入の壁と天井の仕上げを図面で確かめます。
天袋のある押入は天袋に付ける前提で見積もります!
先に整理しておけば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)総則 4 凡例、第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 2 感知器 (2)感知区域 オ・第12-13図から第12-18図 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第4 感知器 2 設置方法 (3)・図2-1-3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 9 特例基準 ⑴ ス・図99 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第21条・第32条
- 消防法施行規則 第23条第4項第1号ハ・第3号ロ
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の押入で感知器を省略できるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





