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自動火災報知設備の感知器はどこまで省略できるのか|高さ8メートルの熱半導体式から共同住宅の用途変更まで五つの質疑応答を現行の条文と照らして解説

自動火災報知設備の感知器はどこまで省略できるのかを示すアイキャッチ画像

感知器をどこまで省略してよいのか、逆にどこまで新しく設置義務が及ぶのか、現場では判断に迷う場面が少なくありません。
消防実務六法には、高さ8メートルの感知器の種別から、拘置所のような特殊な建物の扱いまで、当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行令・施行規則と照らし合わせて読み直します。
高さ8メートルの熱半導体式から共同住宅の用途変更まで、順に確かめていきましょう。

高さ8メートル以上の倉庫に感知器を付けるんですが、普通の感知器で大丈夫なんでしょうか。

実は昔の質疑応答に、高さごとの感知器の種別を尋ねたものがあるんですよ。
比べてみると、今の基準と違う部分もあります。

拘置所のような特殊な建物や、押入れのような狭い場所の扱いも気になります。

では。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 熱半導体式の感知器は当時高さ8メートル以上でも使用できるとされましたが、現行の表に同じ区分がなく所轄消防署での確認が必要です
  • 拘置所の収容舎房は、構造・可燃物・監視体制が揃って初めて令第32条による感知器の省略が認められました
  • 押入れの感知器は、温度上昇が緩やかな室という区分を適用して種別が選ばれます
  • 総合操作盤を設けても、非常警報設備の代替にすることはできません
  • 共同住宅の一部を旅館や食堂に用途変更すると、既存の住宅部分にも自動火災報知設備の設置義務が及びます

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高さ8メートルの感知器種別や収容舎房の省略や押入れの区分や総合操作盤と代替や用途変更後の義務を示す図解

熱半導体式第2種の感知器を高さ8メートル以上の場所で使用できるのか

高さ8メートル付近の天井に感知器が取り付けられた倉庫のような部屋の断面
取付け面の高さが8メートル以上になると、感知器は種別によって使えるものと使えないものが分かれます。昭和48年の質疑は、熱半導体式という感知器を8メートル以上の場所で使ってよいかを尋ねました。
問 規則第23条第4項第4号の3ロの規定によると熱半導体式第2種の感知器は、取付面の高さが8メートル未満の場合は規定されていないが、8メートル以上の場合は使用できないか。
答 使用できる。昭和45年9月24日付け事務連絡による執務資料を参照されたい。
(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
当時は使用できるとされましたが、現行の表に同じ区分はそのままの形では出てきません。
現行の規則第23条第4項第2号の表は、取付け面の高さに応じて設置できる感知器の種別を定めており、掲げられているのは差動式スポット型・差動式分布型・補償式スポット型・定温式・イオン化式スポット型・光電式スポット型の6区分だけで、「熱半導体式」という区分名は出てきません。熱半導体式スポット型は、感知器の規格上は差動式スポット型の一方式として扱われていますが、同表で取付け面の高さが8メートル以上15メートル未満の欄に掲げられているのは差動式分布型・イオン化式スポット型・光電式スポット型の3種類だけで、差動式スポット型は含まれていません。
当時の回答がそのまま現在にも通用するとは限らず、高さ8メートル以上の場所に設置する感知器の選定は、現行の表と所轄消防署で確認する必要があります。

古い感知器がそのまま今も使えるとは限らないんですね。

はい。
高さごとの種別は、現行の表で確かめます。

拘置所の収容舎房は感知器の設置を省略できるのか

格子窓のある収容舎房の天井に感知器が設けられていない断面
被疑者を収容する部屋は、一般の居室と構造も使われ方も大きく異なります。昭和49年の質疑は、拘置支所の収容舎房について、感知器の設置を省略できるかを尋ねました。
問 法務局庁舎(1階大分地方法務局中津支所、2階中津区検察庁、3階拘置支所事務室、4階被疑者収容舎房)のうち、4階被疑者収容舎房内部分について、自動火災報知設備の設置を省略してよいか。収容舎房は床・天井・間仕切りを鉄筋コンクリートモルタル仕上げとし、電気配線は鉄筋コンクリートに埋込み、窓枠及び扉は鋼材を使用し、暖冷房の設備はなく、収容人員最高30名に対し常時1名が2時間交代で監視に当たり、火気の使用及び持込みを厳禁し、内蔵可燃物は畳・寝具・被服及び日用の洗面具等に限られる。
答 設問の庁舎のうち被疑者収容舎房内部分については、消防法施行令第32条の規定を適用し、感知器の設置を省略して差し支えないものと解する。
(昭和49年4月2日 消防安第35号 安全救急課長から大分県あて回答)
拘置所だから一律に省略できるのではなく、構造と運用実態の組み合わせが決め手になっています。
現行の消防法施行令第32条も、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは、基準を適用しない、という当時と同じ枠組みを定めています。
この回答が省略を認めた決め手は、鉄筋コンクリート造で可燃物が畳・寝具・被服程度に限られること、火気の使用や持込みが厳禁されていること、そして常時看守が1名ついて2時間交代で監視する体制が取られていたことの組み合わせです。令第32条は建物の種類で一律に決まる規定ではなく、個々の建物の構造と運用実態を踏まえて消防長又は消防署長が判断するものなので、同じような収容施設でも監視体制や可燃物の状況が異なれば結論も変わります。

収容施設なら一律に省略できるわけじゃないんですね。

はい。
構造と監視体制のセットで判断されます。

押入れに感知器を設ける場合、どの設置場所の区分を適用するのか

押入れの開き戸の上に感知器が取り付けられた部屋の断面
押入れは天井が低く奥行きも浅い特殊な空間で、一般の居室と同じ感覚で感知器の種別を選べるとは限りません。昭和50年の質疑は、この区分の考え方を尋ねました。
問 自動火災報知設備に関し、押入れに感知器を設ける場合、どの設置場所の区分を適用するか。
答 設問の場合、「消防法施行令及び同法施行規則の一部改正に伴う消防用設備等の設置に関する消防法令の運用基準の細則について」(昭和44年消防予第249号消防庁予防課長通達)第2、3(1)の表中「出火時の温度上昇が緩慢であると予想される室」の欄を適用されたい。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
押入れは、天井の高さだけでなく温度の上がり方という視点でも区分されます。
差動式の感知器は周囲の温度が上昇する速さをとらえて作動する仕組みのため、火災が起きても温度の上がり方が緩やかな場所では、一般の居室と区別して種別を選ぶ必要があります。押入れは、建具で仕切られて気密性が高い反面、ふだん火気を使う場所ではなく、出火しても温度上昇が緩やかと見込まれることから、この通達の区分に当てはめて感知器の種別を選ぶ扱いとされました。
この通達そのものは現在も消防庁の運用基準として参照されており、押入れのような特殊な空間に感知器を設ける際は、天井面の高さだけでなく、その場所でどのように温度が上がると見込まれるかという視点もあわせて確認する必要があります。

押入れも、ただ天井に付ければいいわけじゃないんですね。

はい。
温度の上がり方も、区分の手がかりになります。

総合操作盤があれば非常警報設備は要らなくなるのか

総合操作盤と非常警報設備のベルが別々に置かれている様子
自動火災報知設備の信号を一括して扱う総合操作盤は便利な機器ですが、別の設備である非常警報設備の代わりにできるわけではありません。昭和51年の質疑は、その境界線を尋ねました。
問 共同住宅等に対する特例基準のうち、自動火災報知設備に用いる電磁継電器とはいかなるものか。また、非常警報設備の代替として自動火災報知設備の総合盤を認めてよろしいか。
答 前段 感知器からK型火災表示器を介して送られた信号を受信して、火災の発生を関係者に知らせるものをいう。後段 総合操作盤のみをもって非常警報設備の代替をすることはできない。
(昭和51年3月23日 消防安第46号 安全救急課長から鹿児島県総務部長あて回答)
自動火災報知設備と非常警報設備は、現行の政令でも別個の設備として基準が置かれています。
現行の消防法施行令第21条は自動火災報知設備の基準を、第21条の2は非常警報設備の基準を、それぞれ別の条文で定めています。自動火災報知設備は感知器が火災を自動で感知して受信機に知らせる設備であるのに対し、非常警報設備は非常ベルや放送設備など、建物にいる人へ火災を知らせ避難を促すための設備です。
総合操作盤は、自動火災報知設備をはじめとする複数の防災設備の状況を一括して表示・操作するための機器であって、それ自体が非常警報設備の役割(建物内への警報)を果たすわけではないため、総合操作盤を設けたからといって非常警報設備を省略することはできません。

操作盤があれば警報設備は省けると思っていました。

はい。
役割が違うので、代わりにはなりません。

共同住宅の一部を旅館や食堂に用途変更すると、残りの住宅部分にも設置が必要になるのか

下層階が旅館で上層階が共同住宅の建物の上層階にも感知器が設けられた断面
自動火災報知設備の設置を免除されていた既存の共同住宅でも、建物の一部を別の用途に変更すると扱いが変わることがあります。昭和50年の質疑は、具体的な例を挙げて尋ねました。
問 昭和36年8月1日自消2予発第118号の通達に基づき特例基準の適用を受けている共同住宅について、1階と2階の部分を旅館として、あるいは1階を食堂及びロビーとして用途変更する場合、3階から6階までの共同住宅部分にも自動火災報知設備の設置が必要になるか。
答 設問の防火対象物は、消防法施行令別表第1(16)項イに掲げる防火対象物に該当し、いずれの場合にも自動火災報知設備の設置が必要である。(令第34条第2号)
(昭和50年4月15日 消防安第43号 安全救急課長から岐阜県総務部長あて回答)
一部屋の用途変更が、建物全体の扱いを変えることがあります。
現行の消防法施行令第34条は、既存の防火対象物であっても新しい基準がそのまま適用される「適用が除外されない消防用設備等」を列挙しており、自動火災報知設備は、別表第一(16)項イを含む防火対象物に設けるものとして、現行では第3号に置かれています。当時の回答が引用した「令第34条第2号」は、その後の改正で号の番号が移動し、現在は第3号に当たります。
共同住宅の一部を旅館や食堂に用途変更すると、建物全体が複合用途防火対象物である(16)項イに該当することになり、自動火災報知設備は既存不適格の保護を受けずに新しい基準がそのまま適用されるため、それまで免除されていた共同住宅部分にも新たに設置義務が及びます。用途変更を検討する際は、変更する部分だけでなく、建物全体の用途区分がどう変わるかを先に確認しておく必要があります。

一部屋変えるだけで、他の部屋にも影響するんですね。

はい。
建物全体の用途区分が変わるためです。

よくある質問

Q熱半導体式の感知器は、今でも高さ8メートル以上の場所に使えますか?
A現行の規則第23条第4項第2号の表には「熱半導体式」という区分名はなく、差動式スポット型として扱われる方式のため、8メートル以上15メートル未満の欄には掲げられていません。当時の回答をそのまま適用せず、所轄消防署で確認してください。
Q拘置所のような収容施設なら、感知器を一律に省略できますか?
Aいいえ。令第32条の特例は建物ごとの構造や監視体制を踏まえた個別の判断であり、この質疑も鉄筋コンクリート造で可燃物が少なく、常時監視が行われている点が決め手になっています。
Q総合操作盤を設置すれば、非常警報設備は不要になりますか?
Aいいえ。総合操作盤は複数の防災設備を一括して表示・操作する機器であり、非常警報設備とは役割が異なるため、総合操作盤だけで非常警報設備の代替はできません。
A用途変更によって建物全体が複合用途防火対象物の(16)項イに該当することになり、自動火災報知設備は既存不適格の保護を受けない設備として新基準がそのまま適用されるためです。

まとめ

✔熱半導体式の感知器は当時使用できるとされましたが、現行の高さ別の表に同じ区分はなく所轄消防署への確認が必要です
✔拘置所の収容舎房は、構造・可燃物・監視体制が揃って初めて令第32条の省略が認められました
✔押入れの感知器は、天井の高さだけでなく温度上昇が緩やかという区分でも種別が選ばれます
✔総合操作盤は複数の防災設備を一括管理する機器であり、非常警報設備の代替にはなりません
✔共同住宅の一部を旅館や食堂に用途変更すると、建物全体が(16)項イの複合用途防火対象物になります
✔自動火災報知設備は令第34条が定める適用除外されない設備であり、既存部分にも新基準が及びます
✔昭和の質疑応答を読むときは、条番号や号の番号が現在と変わっていないか必ず確認する必要があります

うちの建物も、感知器の種別や用途変更の扱いを見直してみます。

設置の要否の判断は、構造や用途が特殊になるほど複雑になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条・第21条の2・第32条・第34条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条・第24条
  • 熱半導体式感知器の高さに関する質疑(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 拘置所収容舎房の感知器省略に関する質疑(昭和49年4月2日 消防安第35号 安全救急課長から大分県あて回答)
  • 押入れの感知器設置区分に関する質疑(昭和50年6月16日 消防安第65号 安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 総合操作盤と非常警報設備の代替に関する質疑(昭和51年3月23日 消防安第46号 安全救急課長から鹿児島県総務部長あて回答)
  • 共同住宅の用途変更に関する質疑(昭和50年4月15日 消防安第43号 安全救急課長から岐阜県総務部長あて回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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