1階が倉庫で2階が事務所、1階が作業場で2階がアパート、といった複合用途の建物は、堺市の町なかでよく見かけます。
国の基準では、こうした建物の自動火災報知設備は用途ごとの面積で判定するため、設置が要らないことがあります。
ところが堺市の火災予防条例は、延べ面積や構造の条件で自動火災報知設備の設置を上乗せしています。
この記事では、国の基準と堺市の条例を分けて、条例が国の規則のどこを外して借りているのかを順にたどります。
堺市で、1階が倉庫で2階が事務所の建物を持っています。
延べ面積は1,000平方メートルを少し超えます。
その組み合わせなら、堺市の条例の上乗せに当たるかもしれません。
まず、国の基準から整理しましょう。
用途ごとに見れば、どちらも小さいのですが。
国の基準では用途ごとに見ることが多いです。
ただし、堺市の条例は建物全体の面積で見ます。
- 国の基準では、(16)項ロの複合用途の建物は用途ごとに別の建物とみなして自動火災報知設備の要否を判定します
- 堺市火災予防条例第68条は、(16)項ロと小規模特定用途複合防火対象物に、延べ面積1,000平方メートル以上で設置を求めています
- 木造などで、1階が作業場や倉庫、上の階が共同住宅の建物は、延べ面積300平方メートル以上で設置が必要です
- 条例は国の規則第23条第4項第1号ヘ(小規模特定用途複合防火対象物の感知器の緩和)を外して借りています
- 大阪市の条例は堺市とほぼ同じで、東大阪市の条例は複合用途では(16)項ロだけを対象にしています
▼

目次
国の基準では複合用途の建物の自動火災報知設備はどう決まるのか

複合用途の建物は、消防法施行令の別表第一で(16)項に当たり、店舗や飲食店などの特定用途を含むものが(16)項イ、含まないものが(16)項ロです。
複合用途の建物には、用途ごとに分けて判定するという通則があります。
(略)
の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。
第3号は、(16)項イを延べ面積300平方メートル以上で対象にする号です。
別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)及びニ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物
たとえば倉庫((14)項)や工場((12)項)や共同住宅((5)項ロ)の部分は500平方メートル以上(第4号)、事務所((15)項)の部分は1,000平方メートル以上(第6号)で対象になります。
そのため、1階の倉庫が450平方メートル、2階の事務所が600平方メートルといった建物は、延べ面積が1,000平方メートルを超えても、国の基準では設置が要らないことがあります(地階や無窓階、3階以上の階で床面積300平方メートル以上の階などは、別の号で対象になります)。
複合用途の判定単位は消防法施行令第9条のみなしの記事で解説しています。 もう1つ、(16)項イのうち特定用途の部分が小さい建物には、感知器の緩和があります。
(略)
当該用途に供される部分の床面積
(略)
が五百平方メートル未満(同表(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分にあつては、千平方メートル未満)であるもの
ヘの「次に掲げる防火対象物」は、カラオケボックスなど((2)項ニ)、旅館やホテル((5)項イ)、病院や老人ホームなど((6)項イ(1)〜(3)・ロ)、入居や宿泊をさせる(6)項ハです。
それ以外の事務所や住戸などの部分で、用途ごとの床面積が500平方メートル未満(事務所などは1,000平方メートル未満)なら、感知器を設けなくてよい部分に当たりえます。
小規模特定用途複合防火対象物の考え方は、小規模特定用途複合防火対象物の記事で解説しています。
国の基準だと、用途ごとに小さければ設置が要らないこともあるのですね。
はい、(16)項ロは用途ごとの面積で見ます。
次は、堺市の条例を見ましょう。
堺市の火災予防条例第68条は何を上乗せしているのか

条例の第5章「消防用設備等の技術上の基準の付加基準」が、国の基準に上乗せする消防用設備等の基準で、第68条が自動火災報知設備です。
(1) 令別表第1(16)項イ(規則第13条第1項第2号に規定する小規模特定用途複合防火対象物(以下単に「小規模特定用途複合防火対象物」という。)に限る。)及びロに掲げる防火対象物(特定主要構造部を耐火構造としたもの及び建築基準法第2条第9号の3のイ若しくはロのいずれかに該当するものを除く。)のうち、同表(12)項及び(14)項に掲げる用途に供する部分の上階を同表(5)項ロに掲げる用途に供するもので、延べ面積300平方メートル以上のもの
(2) 令別表第1(16)項イ(小規模特定用途複合防火対象物に限る。)及びロに掲げる防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のもの
| 号 | 対象の用途 | 構造の条件 | 延べ面積 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | (16)項イ(小規模特定用途複合防火対象物に限る)・(16)項ロのうち、(12)項・(14)項の部分の上階が(5)項ロのもの | 特定主要構造部を耐火構造としたもの・準耐火建築物(建築基準法第2条第9号の3イ・ロ)以外 | 300平方メートル以上 |
| 第2号 | (16)項イ(小規模特定用途複合防火対象物に限る)・(16)項ロ | 条件なし | 1,000平方メートル以上 |
「解説及び運用」は、それぞれの号のねらいを次のように説明しています。
政令第21条第1項各号の規定では防火対象物全体に設置を要することとなりにくい防火対象物について、規制を強化しているものである。
堺市の付加基準は、ほかにもスプリンクラー設備や誘導灯で国の基準を上乗せしています。
例として堺市で高さ31メートルを超える10階以下の階のスプリンクラー設備の記事や堺市で工場や作業場の避難口誘導灯の記事で解説しています。
下が作業場で上がアパートの木造なら、300平方メートルからなのですね。
はい、木造などの構造が条件です。
次は、条例が国の規則をどう借りているかを見ましょう。
堺市の条例は国の規則のどこを外して借りているのか

除かれている第24条の括弧書を国の規則で確かめると、どれも同じ文でした。
つまり第2項は、感知器だけでなく音響装置や発信機についても、小規模特定用途複合防火対象物の緩和を借りない書き方になっています。
条例で設ける自動火災報知設備では、ヘの部分にも感知器などを設ける、と読めます。
もう1つの手がかりが、付加基準の通則の第62条です。
だから、用途ごとに見れば小さい(16)項ロでも、建物全体の延べ面積で1,000平方メートル以上かを判定します。
ここまでの連鎖を、番号順にまとめます。
- 消防法施行令第9条が、(16)項の建物を用途ごとに別の建物とみなし、(16)項ロの自動火災報知設備は用途ごとの面積で判定します
- 消防法施行規則第23条第4項第1号ヘが、小規模特定用途複合防火対象物の一部の部分を、感知器を設けなくてよい部分にしています
- 堺市火災予防条例第68条第1項が、(16)項ロと小規模特定用途複合防火対象物に、延べ面積1,000平方メートル以上(木造などで下が作業場や倉庫、上が共同住宅なら300平方メートル以上)で設置を求めます
- 第62条第2項が、第68条第1項を令第9条のみなしから外すので、建物全体の延べ面積で判定します
- 第68条第2項が、規則第23条を第4項第1号ヘを除いて借り、規則第24条もヘの部分を外す括弧書を除いて借ります
- その結果、条例で設ける自動火災報知設備には、小規模特定用途複合防火対象物の緩和が働かない、と読めます
用途ごとに分けないうえに、感知器の緩和も借りないのですね。
はい、2つの外し方が組み合わさっています。
次は、具体的な建物で比べましょう。
どんな建物で国の基準と堺市の条例の差が出るのか

どの例も、地階や無窓階がなく、指定可燃物を大量に扱わないなど、国の基準のほかの号には当たらない前提です。
| 建物の例 | 国の基準 | 堺市の条例 |
|---|---|---|
| 木造2階建て、1階が作業場((12)項)150平方メートル、2階がアパート((5)項ロ)150平方メートル、延べ300平方メートル | 用途ごとに見るとどちらも500平方メートル未満なので、設置は要らない | 第1号に当たり設置が必要 |
| 2階建て、1階が倉庫((14)項)450平方メートル、2階が事務所((15)項)600平方メートル、延べ1,050平方メートル | 倉庫は500平方メートル未満、事務所は1,000平方メートル未満なので、設置は要らない | 第2号に当たり設置が必要 |
| 2階建て、1階が飲食店90平方メートルと事務所460平方メートル、2階が共同住宅470平方メートル、延べ1,020平方メートルの小規模特定用途複合防火対象物 | (16)項イとして設置は必要。ただし規則第23条第4項第1号ヘにより、それぞれの部分は感知器を設けなくてよい部分に当たりうる | 第2号に当たり、ヘを除いて借りるので各部分に感知器を設けると読める |
延べ面積1,000平方メートル未満の小規模特定用途複合防火対象物は、第1号に当たる木造などの建物を除き、国の基準どおりヘの緩和が働きます。
面積の数え方や用途の判定で結論が変わるので、図面と用途の一覧をそろえてから当てはめます。
なお、第72条は、消防長又は消防署長が認めるときは条例の第5章の規定を適用しないという基準の特例を置いていて、「解説及び運用」は、適用するか否かは個々の防火対象物について消防長又は消防署長が判断するものとしています。
国の基準では要らない建物でも、堺市では必要になるのですね。
はい、延べ面積で見るのが大きな違いです。
次は、大阪市や東大阪市と比べましょう。
大阪市や東大阪市では同じ上乗せがあるのか

大阪市の第42条は、第3号と第4号が堺市の第68条第1項とほぼ同じ文で、第2項も同じ書き方です。
2 前項の規定により設ける自動火災報知設備は、令第21条第2項及び第3項並びに規則第23条(第4項第1号ヘを除く。)、
2 前項の規定により設ける自動火災報知設備は、令第21条第2項及び第3項並びに規則第23条第4項から第9項まで、第24条及び第24条の2の規定の例により設置し、及び維持しなければならない。
| 項目 | 堺市(第68条) | 大阪市(第42条) | 東大阪市(第48条) |
|---|---|---|---|
| 延べ1,000平方メートル以上 | (16)項ロ・小規模特定用途複合防火対象物 | (16)項ロ・小規模特定用途複合防火対象物 | (16)項ロだけ |
| 下が(12)項・(14)項、上が(5)項ロで延べ300平方メートル以上 | (16)項ロ・小規模特定用途複合防火対象物 | (16)項ロ・小規模特定用途複合防火対象物 | (16)項ロ |
| 除く構造(条文の書き方) | 特定主要構造部を耐火構造としたもの・建築基準法第2条第9号の3イ・ロ | 建築基準法第2条第9号の3イ・ロ | 特定主要構造部を耐火構造としたもの・建築基準法第2条第9号の3イ・ロ |
| 規則第23条の借り方 | 第4項第1号ヘを除く | 第4項第1号ヘを除く | 第4項から第9項まで |
| 共同住宅だけの木造などで延べ200平方メートル以上 | 第68条にこの号はない | あり(第1号) | あり(第1号) |
| 天井と天井裏を別の警戒区域にする規定 | 第68条にこの項はない | 第3項(延べ600平方メートル以上) | 第3項(天井裏250平方メートル以下は除く) |
延べ1,000平方メートル以上の(16)項ロに設置を求める点は3市とも同じで、小規模特定用途複合防火対象物まで広げているのが堺市と大阪市です。
大阪市の天井裏の警戒区域は大阪市で天井裏にも感知器がある建物の警戒区域の記事、東大阪市と堺市の自動火災報知設備の特例は東大阪市と堺市で高架下の駐車場の自動火災報知設備の記事で解説しています。
市によって、対象の建物の範囲が少しずつ違うのですね。
はい、同じ大阪府内でも違います。
建物のある市の条例で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
用途ごとの面積ではなく、建物全体の延べ面積で確かめればよいのですね。
まずは各階の用途と面積を図面で拾い出します!
図面と用途の一覧があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第5章 火災予防条例審査基準 堺市火災予防条例 第5章 消防用設備等の技術上の基準の付加基準 第62条・第68条(第5-1表)・第72条 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市火災予防条例(昭和37年大阪市条例第14号)第42条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例(昭和48年東大阪市条例第38号)第48条(東大阪市例規集)
- 消防法施行令第9条、第21条第1項・第2項・第3項
- 消防法施行規則第13条第1項第2号、第23条第4項第1号ヘ、第24条第5号・第5号の2・第8号の2
- 建築基準法第2条第9号の3
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料・例規集に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準、条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。大阪市と東大阪市の比較は、各市の例規集で確かめた範囲のものです。個々の建物の用途や構造の判定、条例の適用の判断は、所轄消防署にご確認ください。





