堺市には、堺東や鳳など、道路を屋根でおおった商店街のアーケードがいくつもあります。
延長50メートル以上のアーケードは、消防法ではそれ自体が1つの防火対象物として扱われます。
国の政令がアーケードに直接求める消防用設備等は多くありませんが、堺市消防局の審査基準には「アーケードに係る指導指針」という独自の節があります。
しかも、道路の全面をおおうアーケードの規定は、片側のアーケードの規定を一部除いて借りる書き方になっています。
この記事では、国の条文と堺市の指導指針を分けて、規定のつながりを順にたどります。
堺市の商店街で、アーケードの改修を話し合っています。
アーケードにも消防の決まりがあるのですか。
はい、延長50メートル以上なら消防法の防火対象物です。
堺市は審査基準に、アーケード専用の指導指針を設けています。
国の決まりと堺市の決まりは、どう違うのですか。
国は連結送水管を求め、堺市は構造や非常警報などを上乗せしています。
順番に見ていきましょう。
- 消防法施行令の別表第1(18)項は延長50メートル以上のアーケードで、堺市の審査基準は市内の5つのアーケードを該当例に挙げています
- 国の政令がアーケードに直接求める代表は、第29条第1項第4号の連結送水管です
- 堺市の指導指針は、道路の片側や両側に設けるアーケードに屋根の切断部、垂れ壁、消火足場、開放できる屋根などを求めています
- 道路の全面をおおうアーケードは、片側の規定を一部除いて借りたうえで、非常警報設備や登はん用はしごと送水口などが加わります
- 大阪市の運用基準には片側や両側のアーケードは連結送水管を設置しないことができるという特例がありますが、堺市と東大阪市の公開資料には同じ記載が見当たりません
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目次
堺市でアーケードは消防法上どんな防火対象物になるのか

そのうち(18)項がアーケードです。
| 欄 | 堺市の審査基準の記載 |
|---|---|
| 該当用途例 | 堺東銀座通周辺アーケード、山之口商店街アーケード、綾之町アーケード、鳳本通商店街アーケード、津久野アーケード |
| 補足事項1 | 夏季に仮設的に設けられる日よけは、本項に含まれないものであること |
| 補足事項2 | 延長は屋根の中心線で測定するものであること |
夏だけ張る仮設の日よけは、(18)項のアーケードには入りません。
もう1つ押さえたいのが、アーケードでつながった店舗の数え方です。
店舗の消防用設備等は、これまでどおり建物ごとに判断します。
(18)項の全国共通の扱いは、アーケードを(18)項から解説した記事で取り上げています。
アーケードでつながっていても、店は店ごとに考えるのですね。
はい、そのうえでアーケード自体にも決まりがあります。
次は国の政令が何を求めているかを見ます。
国の政令は延長50メートル以上のアーケードに何を求めているのか

四 別表第一(十八)項に掲げる防火対象物
ハ 前項第四号に掲げる防火対象物 二十五メートル
一方、非常警報設備を定める第24条第2項は、(1)項から(17)項までの防火対象物を対象にしています。
消防機関へ通報する火災報知設備を定める第23条第1項にも、(18)項は挙がっていません。
つまり、非常警報や通報の設備は、国の政令だけを読むとアーケードには出てきません。
国の政令では、アーケードに求められるのは連結送水管が中心なのですね。
はい、そこへ堺市の指導指針が構造や警報を上乗せしています。
まず片側のアーケードから見ます。
堺市は道路の片側に設けるアーケードに何を求めているのか

堺市の凡例では、★は堺市消防局として防火安全性の向上のために定めた指導基準です。
片側や両側のアーケードの屋根まわりを、表にまとめます。
| 項目 | 堺市の指導指針(3 道路の一側又は両側に設けるアーケード) |
|---|---|
| 屋根の切断部・断層部 | 延長50メートル以下ごとに、桁行0.9メートル以上を開放した切断部か、高さ0.5メートル以上を開放した桁行1.8メートル以上の断層部 |
| 垂れ壁 | 屋根の下面に、延長おおむね12メートル以下ごとに鉄板などの垂れ壁。★で鉄製で厚さ0.8ミリメートル以上、できるだけ側面の建物どうしの境目に置く |
| 消火足場 | 屋根の上におおむね6メートルごと、幅0.6メートル以上の消火足場。★で高さ1メートル以上の手すり、段差は蹴上げ25センチメートル以下の階段 |
| 開放できる屋根 | 屋根を地上から簡便かつ確実に開放できる装置。★で開放できない屋根の長さは桁行8メートル以下、1つの移動屋根を全開したときの開放部分は桁行6.5メートル以上 |
| 側面の建物の開口部 | ★で、防火上主要な位置にある外壁の開口部に防火設備を設ける |
屋根の上に看板や冷房機を置くと、★の細目に反するおそれがあります。
改修で屋根の上に設備を足すときは、消火足場をふさがないか確かめてください。
屋根の上の通路や、開く屋根まで決まっているのですね。
はい、ここで出てきた番号が全面アーケードの規定で借りられます。
次はそのつながりをたどります。
道路の全面をおおうアーケードはどの規定を借りて何が加わるのか

- 出発点は、片側や両側のアーケードの規定である3の(1)から(5)までです
- そこから、(1)イとカ、(2)アとイとウ、(3)アとエとオの(ア)を外します
- 残った規定、たとえば(3)ウの50メートルごとの切断部・断層部や(3)オの消火足場は、全面アーケードにもそのままかかります
- 外した規定の代わりに、4の(1)から(11)までが加わります。たとえば(3)エの12メートルごとの垂れ壁の代わりに、屋根の幅員の8分の1以上を常に開放する(8)がかかります
- 4の(6)と(9)は、さらに国の政令の第24条と第29条の「例により」設けることを求めています
ア 非常警報設備を政令第24 条の規定の例により設けること。★
イ 消防機関へ通報する火災報知設備については、側面建築物又はアーケードに消防機関へ常時通報することができる電話が設けられている場合、設けないことができる。★
| 項目 | 堺市の指導指針(4 道路の全面又は大部分をおおうアーケード) |
|---|---|
| 道路の幅員 | 4メートル以上かつ8メートル以下 |
| 柱以外の部分の高さ | 地盤面から6メートル以上(条件つきで4.5メートルを下らない範囲まで緩和) |
| 屋根の開放 | 幅員の8分の1以上を常時開放。越屋根にするときは★で、長さ10メートル以上で道路の幅員の50パーセント以上の開口部をおおむね10メートル間隔 |
| 警報と通報 | 有効な警報装置と、延長おおむね150メートル以下ごとの消防機関へ通報する火災報知設備。★で非常警報設備は政令第24条の例、常時通報できる電話があれば通報設備は不要 |
| 登はん用はしごと送水口 | ★で延長50メートル以下ごとに登はん用はしご。その直近に連結送水管の送水口と立管を政令第29条の例で設ける |
| 消火足場 | 桁行6メートルごとに梁間方向、桁行方向は放水口のある側に。★で放水口の間ごとと両側に設ければ6メートルごとでなくてよい |
堺市は全面アーケードについて、送水口を登はん用はしごのそばに置くことまで決めています。
消防隊がはしごで屋根に上がり、すぐ近くの立管から水を受けられるようにする並べ方です。
全面アーケードは、片側の規定に足し算と引き算をして読むのですね。
はい、外す規定の番号を1つずつ確かめるのがこつです。
最後に大阪市や東大阪市と比べます。
大阪市や東大阪市とはアーケードの扱いが何が違うのか

| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| アーケード専用の規定 | 連結送水管の特例基準の1項目 | 公開6資料に記載なし | 審査基準に「アーケードに係る指導指針」 |
| 片側・両側のアーケードの連結送水管 | 設置しないことができる(特例基準 3) | 公開6資料に記載なし | 指導指針と連結送水管の節に同じ趣旨の記載は見当たらない |
| 全面アーケードの連結送水管 | 特例の対象外 | 公開6資料に記載なし | 登はん用はしごの直近に送水口と立管(★) |
| アーケードでつながる建物 | 今回の確認範囲では記載を見つけていない | 公開6資料に記載なし | 別の建築物とみなす(設置単位 6) |
その中に、アーケードを取り上げた記載は見当たりませんでした。
大阪市の特例の背景にある国の質疑は、大阪市の連結送水管の特例を解説した記事で紹介しています。
堺市で片側のアーケードの連結送水管を検討するときは、大阪市の特例をそのまま当てはめず、堺市消防局に確認してください。
道路にアーケードを架けるときの建築基準法の論点は、昭和30年代の質疑を読み解いた記事にまとめています。
隣の市でも、アーケードの扱いはずいぶん違うのですね。
はい、同じ大阪府内でも基準の書き方は市ごとに違います。
計画の前に、所轄の消防署で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
商店街の会合で、屋根の上の消火足場と送水口の位置を確かめます。
改修図面も消防署に持っていきます!
先に整理しておけば、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2章 第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 別記1((18)項)、第3 消防用設備等の設置単位 6、第2章 第2節 用途・形態別指導指針 第1 アーケードに係る指導指針 柱書・1・3・4、凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第3節 連結送水管 第9 特例基準 柱書・3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準(消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 別表第一(18)項、第23条第1項、第24条第2項、第29条第1項第4号・第2項第1号ハ
- 建築基準法 第44条第1項
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々のアーケードや建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





