ボイラーの燃料タンク、マンションの各戸の灯油、ショールームに並ぶ車の燃料と、危険物の「量」は数え方ひとつで大きく変わります。
国の火災予防条例(例)は、同じ場所にある危険物を足し合わせて指定数量の5分の1と比べるのが原則です。
津市消防本部の「少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針」は、その数え方に4つの特例を置いています。
条例(例)の原則から津市の4つの特例と場所の取り方まで、順番にたどります。
津市のビルで、地下のボイラーと燃料のサービスタンクを入れ替える計画があります。
ボイラーとタンクの油を足すと少量危険物を超えそうで困っています。
津市の指針は、配管でつながったボイラーとタンクを大きい方の量で数えてよいとしています。
まず原則の数え方から確かめましょう。
足さなくてよい場合があるのですか。
はい、共同住宅の灯油や循環する油にも特例があります。
どれも条件つきなので順に見ていきます。
- 国の火災予防条例(例)は、同一の場所にある危険物を指定数量の5分の1で割って足し、1以上なら少量危険物とみなすのが原則
- 津市の指針第2は、配管でつながったボイラー等とサービスタンク等を、足さずに大きい方の数量で数えてよいとしている
- 共同住宅等の管理権限が異なる場所では、暖房や調理の器具の燃料を容器で置く量を場所ごとに算定できる
- 展示・保管中の車両や船舶の燃料タンクの量は除外でき、油が循環する設備は配管等の瞬間最大停滞量で数えられる
- 特例を使うときは、場所の範囲を図面に示し、消費設備の数量の見積もり方まで所轄の消防署と協議する
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目次
少量危険物の量はもともと同じ場所で足し合わせて数えるのか

その条例の手本になっているのが、消防庁が示した火災予防条例(例)です。
指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱い並びに貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備は、前条に定めるもののほか、次条から第31条の8までに定める技術上の基準によらなければならない。
第32条(品名又は指定数量を異にする危険物)
品名又は指定数量を異にする2以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係る危険物の数量を当該危険物の指定数量の5分の1の数量で除し、その商の和が1以上となるときは、当該場所は指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす。
指定数量の5分の1以上で指定数量未満の危険物が少量危険物で、条例(例)第30条の基準に加えて、第31条の2から第31条の8までの技術上の基準がかかります。
灯油は消防法別表第一の第二石油類で、危険物の規制に関する政令別表第三の指定数量は非水溶性液体の1,000リットルなので、少量危険物になるのは200リットル以上です。
品名が違う危険物でも、第32条により同一の場所なら5分の1の数量で割った商を足して判定します。
ただし条例(例)の条文は、配管でつながった設備や循環する油の量をどう見るかまでは書いていません。
明日やることは、建物の中で危険物を置いている場所と、品名・数量を一覧にすることです。
同じ場所にあれば、種類が違っても足し合わせるのですね。
そうです。
その足し方の細部を補っているのが津市の指針の第2です。
ボイラーとサービスタンクがつながっているときどちらの量で数えるのか

津市の指針は、この組み合わせの量の数え方と、場所の取り方を別々に書いています。
ボイラー、バーナー等の危険物消費設備とサービスタンク等の危険物貯蔵設備が配管で接続されている貯蔵取扱場所の危険物の数量は、当該危険物消費設備又は危険物貯蔵設備のうち、大なる方の危険物の数量とすることができるものとする。
同指針 第3 3(抜粋)
ボイラー、バーナー等の危険物消費設備とサービスタンク等の危険物貯蔵設備が配管で接続されている形態(これらの設備は、それぞれが少量危険物の数量であるものに限る。)より危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、次の各号に掲げるところにより一の貯蔵取扱場所として扱うことができる。(略)ただしこの場合、所有者等に対し維持管理および遵守すべき基準について必要な教示をすること。
第2の3は、消費設備(ボイラー等)と貯蔵設備(サービスタンク等)のうち大なる方の数量をその場所の数量にできるとしています。
例えばタンク側が180リットル、ボイラー側が120リットルなら、合計300リットルではなく180リットルで数えることになります。
ただし消費設備の数量を1日の消費量で見るのか、機器内の量で見るのかは指針に書かれていないので、見積もり方は所轄に確かめてください。
場所の取り方は第3の3が型を示していて、それぞれが少量危険物の数量である設備に限られ、所有者等には維持管理の教示が行われます。
明日やることは、ボイラーとタンクがどの部屋にあり、間に壁があるかを図面で確かめることです。
| 設備の置き方(第3 3) | 一の貯蔵取扱場所になる範囲 |
|---|---|
| 消費設備と貯蔵設備を一の室に置く(3-1図 一室型) | その室 |
| 隣り合う室にそれぞれ置く(3-2図 一室型変形・間は不燃材料の壁) | その2室で一つ |
| 隣り合わない室にそれぞれ置く(3-3図 2室型) | 2室がそれぞれ一つ(場所は2つ) |
| 屋外に置き、条例の空地や囲い等を連続・共用する | 連続する空地・共用する囲い等の部分で一つ |
部屋が離れていると、場所が2つに分かれるのですね。
はい、図の2室型では2つの場所になります。
次は共同住宅の灯油を見ます。
共同住宅の暖房用の灯油は建物全体で足し合わせるのか

一棟を一つの場所と見て足し合わせると、すぐに200リットルを超えてしまいます。
共同住宅等の管理権限が異なる場所においては、暖房又は調理の用に供する器具等の燃料として容器により貯蔵し、又は取り扱う危険物の数量の算定は、当該場所ごととすることができるものとする。
指定数量の5分の1以上(個人の住居で貯蔵し、又は取り扱う場合にあつては、指定数量の2分の1以上)指定数量未満の危険物(略)を貯蔵し、又は取り扱おうとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。
条件は、管理権限が異なる場所であること、暖房や調理の器具の燃料であること、容器で置くことの3つです。
例えば20戸がそれぞれ18リットルの容器を2つ置くと建物全体で720リットルですが、住戸ごとなら1戸36リットルで、200リットルに届きません。
一方で、建物の共用のタンクから各戸へ配る方式は「容器」ではないので、この特例ではなく別の基準で考えることになります。
なお条例(例)第46条は、個人の住居の届出の基準を2分の1以上(灯油なら500リットル以上)としていますが、これは届出の線で、少量危険物の範囲そのものではありません。
明日やることは、管理している建物で各戸に灯油を置く運用があるかと、共用部に置いている分を分けて書き出すことです。
共用の倉庫にまとめて置いている灯油は、住戸ごとにはならないのですか。
指針の条件は管理権限が異なる場所なので、共用の倉庫は一つの場所として数えるのが自然です。
判断に迷う置き方は所轄に確かめてください。
展示中の車や油が循環する設備はどこまで数えるのか

どちらも、実際に置いている量より大きく数えないための書き方になっています。
船舶、車両等の船体、車体に燃料タンクが装着されている状態により、展示又は保管されているものについては、その場所における危険物の数量から当該機器等の危険物の数量を除外することができるものとする。
同 第2 4
潤滑油循環設備、熱媒体油循環設備等の配管及び附属機器で危険物が循環する場所の危険物の数量は、当該配管等の瞬間最大停滞量により算定することができるものとする。
第2の1は、車両や船舶を燃料タンクが付いたまま展示・保管している場合、そのタンクの燃料をその場所の数量から外せるとしています。
外せるのは車体・船体に付いたタンクの燃料なので、別に置いた携行缶やオイルは通常どおり数えます。
第2の4は、潤滑油や熱媒体油が配管と附属機器を回る設備を、配管等に一度にとどまる最大の量である瞬間最大停滞量で数えるとしています。
指定数量以上の製造所等でも、消防庁の質疑応答(昭和40年4月15日)が、循環系装置は瞬間最大停滞量によると答えています。
明日やることは、展示車両とは別に置いている燃料や油を拾い出し、循環設備は配管と機器の容量表を設備業者から取り寄せることです。
循環設備は、1日に流れる延べの量ではなく、中にとどまる量で見るのですね。
そうです。
その量は配管と機器の容量から積み上げて示します。
数え方の特例を使うとき明日からなにをすればよいのか

津市の指針は、その目的を「統一的な運用を図ること」と書いています。
この指針は、指定数量未満の危険物及び指定可燃物の貯蔵並びに取扱いについて、津市火災予防条例(平成18年津市条例第260号。以下「条例」という。)第34条の3に規定する基準の特例を適用する際の指針及びこれらを貯蔵し、又は取り扱う場所に関する取扱を定めることにより、統一的な運用を図ることを目的とする。
- 消防法第9条の4:指定数量未満の危険物の基準は市町村条例で決める
- 火災予防条例(例)第31条:指定数量の5分の1以上指定数量未満が少量危険物の範囲
- 火災予防条例(例)第32条:同一の場所の危険物は5分の1で割って足し、1以上なら少量危険物とみなす(第34条の3の基準の特例は第32条を対象から外している)
- 津市の指針第2の1〜4:車両の燃料タンク・共同住宅の灯油・ボイラーとタンク・循環する油の数量の算定の特例
- 津市の指針第3の3:ボイラー等とタンクを一の貯蔵取扱場所とする範囲(一室・隣接2室・離れた2室・屋外の空地の共用)
- 火災予防条例(例)第46条:少量危険物の届出(個人の住居は指定数量の2分の1以上)
東大阪市は「少量危険物等の運用指針」、堺市は「少量危険物等の審査基準」という別の資料によるとしているので、津市以外で同じ扱いがあるかは、その市の資料で確かめる必要があります。
特例はどれも「できる」という書き方なので、使うかどうかは所轄の消防署との協議で決まると考えておくのが安全です。
明日やることは、危険物の一覧表に「原則で数えた量」と「特例で数えた量」を並べ、場所の範囲を描いた平面図と一緒に所轄へ持って相談することです。
| 場面 | 国の火災予防条例(例) | 津市の指針 第2 |
|---|---|---|
| 展示・保管中の車両や船舶 | 特別の定めなし(同一の場所で合算) | 車体・船体の燃料タンクの量を除外できる(1) |
| 共同住宅等の暖房・調理用の燃料 | 特別の定めなし(届出は個人の住居で2分の1以上・第46条) | 管理権限が異なる場所ごとに算定できる(容器に限る・2) |
| ボイラー等とサービスタンク等 | 特別の定めなし | 大なる方の数量とすることができる(3) |
| 潤滑油・熱媒体油の循環設備 | 特別の定めなし | 配管等の瞬間最大停滞量で算定できる(4) |
つまり、原則の量と特例の量を並べて見せるのが相談の出発点なのですね。
そのとおりです。
設備を入れ替えるたびに一覧表も更新してください。
よくある質問
まとめ
まずはボイラー室の図面に、タンクと配管の位置とそれぞれの量を書き込んでみます!
図面ができたら、一室型か2室型かを書き添えると協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法 第9条の4・別表第一(e-Gov法令検索)
- 危険物の規制に関する政令 別表第三(e-Gov法令検索)
- 火災予防条例(例)第31条・第32条・第34条の3・第46条(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官通知)
- 少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針(令和5年11月改訂版)第1・第2・第3(津市消防本部)
- 消防庁の危険物規制に関する質疑応答(昭和40年4月15日)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準(鈴鹿市消防本部)・四日市市消防同意事務審査基準(四日市市消防本部)・埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準(埼玉県央広域消防本部)・消防用設備等の設置に係る運用基準(大阪市消防局)
※本記事は津市消防本部が公表している指導運用指針と、消防法・火災予防条例(例)に基づく一般的な解説です。津市火災予防条例の条番号は、指針が引用している範囲でのみ記載しています。数値の例は説明のための仮の数字です。「見当たらない」としたものは、各本部の消防用設備等の基準を検索した範囲の結果で、少量危険物の別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





