危険物が指定数量以上か、未満か。
許可がいるかどうかは、この線で分かれます。
では、その量は、何をどう数えて決めるのでしょうか。
消防の実務書には、数え方を一つずつ確かめた質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。危険物の量の数え方を、順に確かめます。
指定数量って、タンクの容量で決まるんじゃないんですか。
いいえ。
何を数えるかで答えが変わります。
そこが、よく分からないんです。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- 製造所や取扱所では、1日に扱う終末製品の最大数量で数え、循環させる装置では瞬間の最大停滞量で数えると答えています
- 原料を混ぜてすぐ使う場合は、原料と製品を比べて大きいほうの量で数えると答えています
- ガソリンの自動販売機は、機械の容量ではなく1日の取扱数量が指定数量以上かどうかで規制が分かれると答えています
- 道路に危険物を散布する工事は、指定数量以上なら仮取扱いの承認が必要で、タンク車に入れて散布するなら移動タンク貯蔵所として規制されると答えています
- 柵で囲った構内だけを走るタンク車でも、移動タンク貯蔵所の設置許可が必要だと答えています
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目次
危険物の量は、どの条文で決まっているのか
消防法第10条第1項は、指定数量以上の危険物を、貯蔵所以外の場所で貯蔵してはならず、製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所で取り扱ってはならないと定めています。同条第2項は、品名や指定数量が違う危険物を同じ場所に置くときは、それぞれの数量を指定数量で割った商の和が一以上なら、指定数量以上とみなします。
指定数量は、消防法第9条の4が定める数量で、危険物の規制に関する政令第1条の11が、別表第三に定める数量としています。指定数量未満の危険物は、市町村条例で規制されます。
条文は「指定数量以上」と定めるだけで、何をどう数えるかまでは書いていません。以下の5問は、その数え方や施設の区分を確かめた質疑です。
危険物の量は、1日の最大量と瞬間の最大量のどちらで数えるのか

同じ危険物でも、数え方によって量が大きく変わります。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和40年4月15日)
製造所や取扱所は、原料を受け入れて製品を出す施設です。回答は、1日を単位に、出来上がる製品の最大量で数えることを基本にしています。原料のほうが大きいときは、原料の倍数で数えます。
一方、循環系装置は、同じ危険物が配管の中を繰り返し流れます。1日の延べ量で数えると、実際にある量より大きくなってしまうため、その瞬間に施設内にある最大の量で見ると読めます。
法第10条は「指定数量以上」としか書いていません。数え方を補うのは、この回答のような運用です。
同じ危険物でも、施設によって数え方が違うんですね。
はい。
出入りする施設か、循環する施設かで見ます。
原料を混ぜてすぐ使う薬品は、原料と混合後のどちらで数えるのか

混ぜてすぐ使い切るなら、原料の量で数えればよいのでしょうか。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和58年6月17日)
混ぜたあとの薬品は、すぐ使い切るとしても、その間は危険物として存在します。原料の40リットルだけで数えると、実際に取り扱う100リットルが抜け落ちます。
回答は、中間で生じる薬品を「一時的なもの」として除かず、現に扱う最大の量を基準にする読み方を示しています。
なお、質疑に出てくる倍数の数字は当時の別表によるものです。今の指定数量は、別表第三で確かめてください。
すぐ使い切るから小さく見る、とはならないんですね。
はい。
混ぜたあとの量も数えます。
ガソリンの自動販売機は、貯蔵量が少なくても許可がいるのか

ガソリンの指定数量は200リットルですから、貯蔵量だけ見れば、指定数量に届きません。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和51年12月1日)
貯蔵量が95リットルでも、何度も売れば、扱う量は積み上がります。回答は、売れる量まで含めた1日の取扱数量を見ています。
現行の政令第3条第2号は、販売取扱所を「店舗において容器入りのままで販売するため危険物を取り扱う取扱所」と定め、第4号は、給油取扱所などに当たらない取扱所を一般取扱所としています。
未満の場合は、消防法第9条の4のとおり、市町村条例で規制されます。
貯蔵量が少なければ大丈夫、とは限らないんですね。
はい。
1日の取扱数量で見ます。
道路に危険物を散布する工事は、どんな承認が必要になるのか

この作業は、危険物の取扱いとして、どう規制されるのでしょうか。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和44年7月18日)
消防法第10条第1項のただし書は、所轄の消防長又は消防署長の承認を受けて、指定数量以上の危険物を10日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合を、例外として認めています。道路への散布は、この仮取扱いとして扱われます。
承認は無条件ではなく、標識と消火器、有資格者の監督が求められ、危険と認められる工事は承認しないとされています。回答の「危険物取扱主任者」は、現行では危険物取扱者にあたります。
道路の上でも、承認がいるんですね。
はい。
指定数量以上なら仮取扱いの承認です。
柵で囲った構内を走るタンク車にも、移動タンク貯蔵所の許可は要るのか

柵で囲って公道と分けていれば、移動タンク貯蔵所の許可はいらないのでしょうか。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和55年2月21日)
危険物の規制に関する政令第2条第6号は、移動タンク貯蔵所を「車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所」と定めています。定義に出てくるのは車両に固定されたタンクで、道路を走るかどうかや、車検の要否は出てきません。
許可は消防法第11条第1項が求めます。回答は理由を書いていませんが、定義から、敷地の中だけを走る車も対象に含まれる読み方だと考えられます。
敷地の中だけでも、許可がいるんですね。
はい。
車両に固定されたタンクなら対象です。
よくある質問
まとめ
危険物の量にも、細かい数え方があるんですね。
うちも、扱う量を確かめてみます!
数える前に、施設の実態を確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第9条の4・第10条・第11条
- 危険物の規制に関する政令第1条の11・第2条・第3条・別表第三
- 消防庁の危険物規制に関する質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





