排煙設備の設計では、まず建物を防煙区画に分け、区画ごとに排煙口を置きます。
国の消防法施行規則は防煙区画の面積を500㎡以下と決めていますが、階をまたいでよいかや、隣の部屋とまとめてよいかは書いていません。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、ここに吹き抜けの例外と上部を開けた2室の扱いを書き足しています。
国の規則から県央広域の2つの扱いまでたどり、鈴鹿市・堺市・大阪市の書き方と比べます。
鴻巣市で改装する店舗に、1階と2階をつなぐ吹き抜けがあります。
防煙区画を階ごとに分けると排煙口が増えてしまいそうで困っています。
県央広域の基準は、条件つきで吹き抜けの2つの階を1の防煙区画にできるとしています。
まず国の規則が何を決めているかから確かめましょう。
小さな事務室が並ぶ階も、部屋ごとに区画しないといけないのですか。
間仕切壁の上を開けて50分の1以上の開口を取れば、2室を一つの区画とみなせる場合があります。
順に見ていきます。
- 消防法施行規則第30条は、防煙壁で500㎡以下に区画した防煙区画ごとに排煙口を置くと定めるが、階をまたぐ区画や2室のまとめ方は書いていない
- 埼玉県央広域は、防煙区画を2以上の階にわたらせないよう行政指導(▲)している
- ただし避難階とその直上階又は直下階だけに通じる大きな吹き抜けは、支障がなければ1の防煙区画にでき、手動起動装置を各階に設ける
- 間仕切壁の上部を常時開放し、開口の面積をそれぞれの床面積の50分の1以上にすれば、2室を同一の防煙区画とみなすことができる
- 鈴鹿市はほぼ同じ文、堺市は小規模な区画に限って隣の区画とまとめられ、大阪市は階をまたがないことだけを指導している
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目次
防煙区画は国の規則でどう決められているのか

置き方の細かい決まりは、消防法施行規則第30条に書かれています。
イ 間仕切壁、天井面から五十センチメートル(略)以上下方に突出した垂れ壁その他これらと同等以上の煙の流動を妨げる効力のあるもので、不燃材料で造り、又は覆われたもの(以下この条において「防煙壁」という。)によつて、床面積五百平方メートル(令第二十八条第一項第一号に掲げる防火対象物にあつては、三百平方メートル)以下に区画された部分(以下この条において「防煙区画」という。)ごとに、一以上を設けること。(略)
ロ 防煙区画の各部分から一の排煙口までの水平距離が三十メートル以下となるように設けること。
ハ 天井又は壁(防煙壁の下端より上部であつて、床面からの高さが天井の高さの二分の一以上の部分に限る。)に設けること。
同条第6号ロ(要旨)
直接外気に接する排煙口から排煙する防煙区画にあつては、当該排煙口の面積の合計は、消火活動拠点以外の部分では当該防煙区画の床面積の五十分の一となる面積以上であること。
防煙区画は、天井から50cm以上下がった垂れ壁などの防煙壁で、床面積500㎡以下(地下街は300㎡以下)に区切った部分です。
排煙口は区画ごとに1つ以上で、区画のどこからでも30m以内に置き、窓などで外へ出す自然排煙なら面積を床面積の50分の1以上にします。
一方で、区画が2つの階にまたがってよいか、隣り合う部屋をまとめてよいかは、規則第30条に書かれていません。
その空白を埋めているのが、各消防本部の審査基準です。
明日やることは、排煙設備のある階の平面図に、防煙壁の位置と各区画の床面積を書き込むことです。
国の規則には、階をまたぐ話そのものが出てこないのですね。
そうです。
そこで県央広域の基準は、規則第30条第1号の防煙区画について8つの扱いを書き足しています。
防煙区画は2つの階にまたがってよいのか

最初の2項目は、区画の形と階の話です。
省令第30条第1号に規定する防煙区画は、次によること。
⑴ 防煙区画は、可能な限り単純な形状とすること。▲
⑵ 防煙区画は、2以上の階にわたらないこと。▲(第18-4図参照)
県央広域の凡例では、▲は行政指導基準を表し、⑴と⑵の本文はどちらも▲です。
第18-4図は、上の階の床の端に防煙たれ壁を下ろし、下の階の部分にも別の排煙口と手動起動装置を置いて、区画を階ごとに分けた形で描いています。
階段やエスカレーターでつながっていても、床で上下に分かれているなら、階ごとに排煙口を考えるのが出発点です。
形を単純にするよう求める⑴も、煙が流れる道筋を読みやすくするための指導と読むのが自然です。
明日やることは、排煙設備のある階ごとに、防煙区画の数と排煙口の位置を一覧にすることです。
行政指導なので、法令の義務とは書き分けられているのですね。
はい、ただし審査では指導どおりの図面が求められるのが普通です。
例外は吹き抜けの場合だけ書かれています。
吹き抜けでつながった2つの階は1つの防煙区画にできるのか

ただし書の部分には▲が付いていません。
ただし、避難階とその直上階又は直下階のみに通ずる吹き抜けとなっている部分の面積が大きく、かつ、避難上及び消火活動上支障がない場合は、1の防煙区画として取り扱うことができる。この場合、手動起動装置を各々の階に設けること。(第18-5図参照)
手動起動装置は、次に定めるところによること。
(イ)一の防煙区画ごとに設けること。
1つ目は、吹き抜けが避難階とその直上階又は直下階のみに通じていることで、1階が避難階なら1階と2階、又は地下1階と1階の組み合わせになります。
2つ目は吹き抜けの面積が大きいこと、3つ目は避難上と消火活動上の支障がないことですが、どちらも数字は書かれていません。
国の規則は手動起動装置を「一の防煙区画ごとに」設けるとしていますが、県央広域は2つの階をまとめた区画でも各々の階に設けるよう求めています。
第18-5図も、2つの階をまとめた区画に排煙口を1つ描き、手動起動装置は上の階と下の階の両方に描いています。
明日やることは、吹き抜けの面積と、各階のどこから起動装置を操作するかを平面図に書き込み、所轄の消防署に「面積が大きい」に当たるか確かめることです。
3階までつながる吹き抜けだと、この例外は使えないのでしょうか。
文言は「のみに通ずる」なので、3つ以上の階にわたる吹き抜けは対象外と読めます。
その場合は設計の早い段階で所轄と協議してください。
間仕切壁の上部が開いた2室は1つの防煙区画とみなせるのか

小さな事務室や個室が並ぶ階で、部屋ごとに排煙口を置かずに済むかどうかに関わります。
間仕切壁の上部が、次に掲げる条件に該当する排煙上有効に開放されている場合の2室については、原則として、同一の防煙区画とみなすことができる。(第18-6図参照)
ア 間仕切壁の上部(防煙壁の下端より上部であって、床面からの高さが天井の高さの2分の1以上の部分に限る。)の部分が常時開放(開放部分にガラリ等を設けたものを含む。)されていること。
イ 当該開放部分の面積が、それぞれ排煙を負担する床面積の50分の1以上であること。
同 ⑷
避難経路又は消防隊が進入する廊下若しくは通路と居室を同一の防煙区画としないこと。▲
アの「防煙壁の下端より上部であって、床面からの高さが天井の高さの2分の1以上」は、規則第30条第1号ハが排煙口の位置に使っている言い回しと同じです。
イの50分の1も、規則第30条第6号ロが自然排煙口の面積に求める割合と同じで、奥の部屋の開口を排煙口と同じ物差しで測っていると読めます。
第18-6図は、外壁に排煙口のあるA室に、B室とC室が上部の開口でつながる形で、区画はA+B+Cが500㎡以下、排煙口は(A+B+C)÷50以上と描いています。
例えばA室300㎡・B室120㎡・C室80㎡なら、B室の開口は2.4㎡以上、C室は1.6㎡以上、A室の自然排煙口は10㎡以上になります(説明のための仮の数字です)。
明日やることは、まとめたい部屋ごとに床面積と間仕切壁の上部の開口面積を表にし、廊下が同じ区画に入っていないかを確かめることです。
| 第18-6図の読み方 | 図に書かれていること |
|---|---|
| 防煙区画の大きさ | A+B+Cが500㎡以下(地下街は300㎡以下) |
| B室・C室の上部の開口 | それぞれB÷50以上・C÷50以上 |
| A室の外壁の排煙口 | (A+B+C)÷50以上 |
| 排煙口までの距離 | B室・C室の奥の隅から開口部を通って排煙口まで30m以下 |
奥の部屋の開口は、排煙口と同じ考え方で大きさを決めるのですね。
そう読めます。
ただし「原則として」と書かれているので、最後は所轄の判断です。
鈴鹿市や堺市や大阪市では防煙区画のまとめ方をどう書いているのか

文言がほぼ同じ本部もあれば、まったく逆の方向から書いている本部もあります。
小規模な区画等において、間仕切等部分に空気の流通する有効な開口部として省令第30条第6号ロに規定する開口部を有している場合は、隣接する2以上の区画を一の防煙区画とすることができる。この場合、排煙口は努めて当該開口部付近に設けること。
ただし、自然排煙方式の場合は、原則として、区画ごとに排煙口を設けること。
大阪市消防局 運用基準 第5章 第1節 第2 1
(1)防煙区画は、2以上の階にわたらないこと◆
(3)防煙壁に開口部を設ける場合は、常時閉鎖式又は煙感知器の作動若しくは排煙機の起動と連動して閉鎖する特定防火設備を設けること◆
鈴鹿市の審査基準は、⑵を「原則として」で始め、吹き抜けの例外と各階の手動起動装置、⑶の2室の扱いまで、県央広域とほぼ同じ文と図を載せています。
堺市は2室に当たる扱いを「小規模な区画等」に限り、自然排煙方式なら原則として区画ごとに排煙口を求めているので、窓で排煙する計画では県央広域よりまとめにくい書き方です。
大阪市は階をまたがないことを指導(◆)するだけで例外を書かず、防煙壁に開口部を設けるなら閉鎖する特定防火設備を求めていて、開けたまま2室をまとめる発想とは逆向きです。
四日市市と津市の基準には、階をまたぐ区画や2室のまとめ方の記載は見当たりませんでした(津市は自走式駐車場の大梁の特例だけです)。
明日やることは、建物の所在地の消防本部の基準で同じ項目を探し、例外が書かれていなければ図面を持って事前に相談することです。
| 消防本部 | 2以上の階にわたらない | 吹き抜けの例外 | 上部を開けた2室 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | あり(▲行政指導) | あり(避難階と直上階又は直下階のみ・手動起動装置は各階) | 原則として同一の防煙区画とみなせる(印なし・ガラリ等も含む) |
| 鈴鹿市 | 原則としてあり(▲) | あり(差し支えない・手動起動装置は各階) | 同一の防煙区画とみなして差し支えない(印なし) |
| 堺市 | あり(★市独自の指導) | 記載なし | 小規模な区画等に限り一の防煙区画にできる(★・自然排煙は原則区画ごと) |
| 大阪市 | あり(◆行政指導) | 記載なし | 記載なし(防煙壁の開口部は閉鎖する特定防火設備◆) |
| 四日市市・津市 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
- 消防法施行令第28条第1項:排煙設備がいる建物(延べ1,000㎡以上の地下街、500㎡以上の劇場等の舞台部、キャバレー・物品販売店舗・停車場・駐車場等の1,000㎡以上の地階又は無窓階)
- 消防法施行規則第30条第1号イ・ロ・ハ:防煙壁で500㎡以下に区画し、区画ごとに排煙口を置き、30m以内・天井の高さの2分の1以上に設ける
- 消防法施行規則第30条第6号ロ:自然排煙口の面積は防煙区画の床面積の50分の1以上
- 県央広域 第18 4柱書:「省令第30条第1号に規定する防煙区画は、次によること」
- 同 ⑵本文(▲):2以上の階にわたらない → ただし書:避難階と直上階又は直下階のみの大きな吹き抜けは1の区画にでき、手動起動装置は各階
- 同 ⑶ア・イ:規則の1号ハと同じ位置、6号ロと同じ割合の開口で2室を同一の区画とみなす → ⑷(▲):廊下・通路と居室は同じ区画にしない
つまり、同じ間取りでも消防本部によって区画の数が変わり得るのですね。
そのとおりです。
だからこそ所在地の基準で例外の有無を先に確かめます。
よくある質問
まとめ
まずは改装する店舗の図面に、吹き抜けの面積と各階の起動装置を書き込んでみます!
防煙区画ごとの床面積と開口面積の表を添えると協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第28条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第30条第1号・第4号・第6号(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第18 排煙設備 4⑴〜⑷・第18-4図〜第18-6図(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第18 排煙設備 3⑴〜⑶・第18-7図〜第18-9図(鈴鹿市消防本部)
- 消防用設備等の審査基準 第20 排煙設備 Ⅱ 1(1)・2(1)(堺市消防局)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第5章 第1節 排煙設備 第2 1(大阪市消防局)
- 四日市市消防同意事務審査基準(四日市市消防本部)・津市予防事務審査検査基準 5-19 排煙設備(津市消防本部)
※本記事は埼玉県央広域消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・消防法施行規則に基づく一般的な解説です。▲・◆・★は各本部の凡例の記号で、県央広域・鈴鹿市の▲と大阪市の◆は行政指導の基準、堺市の★は市独自に定めた指導基準を表します。面積の例は説明のための仮の数字です。「記載なし」「見当たらない」としたものは、各本部の排煙設備の基準を確認した範囲の結果です。建築基準法の排煙設備の基準は別に確認が必要です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





