停電で照明が消えたあとも、しばらく光って避難の方向を示すのが蓄光式誘導標識です。
国の告示は明るさで中輝度と高輝度に分け、高輝度のものは誘導灯を補う場所などに使うと決めています。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、第4章 第16の2で付け方をさらに細かく書いています。
国の省令・告示・通知から埼玉県央広域の基準までたどり、大阪市・堺市・津市など6つの消防本部の書き方と比べます。
鴻巣市のビルで階段の改修を予定しています。
業者から光る標識を階段にも貼るよう勧められて迷っています。
埼玉県央広域の審査基準には、階段のどこに付けるかまで書かれています。
まず国の決まりから見ていきましょう。
標識なら認定品を貼れば足りるのだと思っていました。
製品の性能だけでなく、貼る場所と照明も見られます。
順番に確かめます。
- 国の告示は、消灯20分後の明るさが24以上100ミリカンデラ毎平方メートル未満のものを中輝度、100ミリカンデラ毎平方メートル以上のものを高輝度と呼び分けている
- 中輝度の標識は普通の誘導標識として、廊下の各部分から歩行距離7.5m以下の箇所と曲がり角に付け、埼玉県央広域は接着剤などでの固定を行政指導(▲)で求める
- 照度は消灯後の明るさで判断し、蛍光灯で200ルクス以上ならみなしてよいが、LED照明は紫外線が少ないので試験データを確かめる
- 国の通知が「設けることが適当」とした階段の始点と終点の標識を、埼玉県央広域は「設けること」と言い切り▲を付けている
- 床や巾木に貼る高輝度の標識は耐摩耗性や耐水性のあるものとし、埼玉県央広域は●、大阪市と東大阪市は◆を付けている
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目次
蓄光式誘導標識の中輝度と高輝度は何が違うのか

明るさの区分は、誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年消防庁告示第2号)の第2が決めています。
中輝度蓄光式誘導標識 蛍光ランプで照度200ルクスの光を20分間当て、その20分後の表示面が24ミリカンデラ毎平方メートル以上100ミリカンデラ毎平方メートル未満の平均輝度を持つもの
高輝度蓄光式誘導標識 同じ条件で100ミリカンデラ毎平方メートル以上の平均輝度を持つもの
国の決まりは、次の順で埼玉県央広域の基準につながっています(省令はe-Govの現行条文、告示と通知は総務省消防庁が公表している本文で確かめました)。
- 規則第28条の2第1項第3号・第2項第2号・第3項第3号が、避難階の小さな居室(小規模な路面店等)は蓄光式誘導標識を設ければ誘導灯や誘導標識を要しないとする
- 規則第28条の3第4項第3号の2と第10号が、(2)項ニの店舗や大規模・高層の建物で、通路誘導灯を補う蓄光式誘導標識を認める
- 告示第2号の第3と第3の2が、これらの場所に使う標識を高輝度に限り、床面又はその直近・7.5m以下・曲がり角などの細目を決める
- 平成22年4月9日の消防予第177号「蓄光式誘導標識等に係る運用について」が、照度の目安や階段の扱いを助言として示す
- 埼玉県央広域の基準 第4章 第16の2が、通知の中身を取り込み、一部に▲と●を付けて運用を決める
明日やることは、貼る予定の標識の仕様書で、中輝度か高輝度かと認定品かどうかを確かめることです(埼玉県央広域は2で告示に適合するもの又は認定品とし、●を付けています)。
同じように光って見えても、置ける場所が違うのですね。
誘導灯の代わりや補いに使うものは高輝度に限られます。
製品の区分は表示や仕様書で確かめられます。
鴻巣市では中輝度の誘導標識をどう付けるのか

第1号は、避難口や階段に設けるものを除き、各階ごとに廊下と通路の各部分から一の誘導標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所と曲り角に設けるとしています。
⑴ア 避難口に設けるものは、規則第28条の3第3項第1号の避難口の上部等に設ける
⑴イ 廊下・通路に設けるものは、各階ごとに歩行距離7.5m以下となる箇所と曲がり角の床又は壁に設ける
⑴ウ 階段・傾斜路には、特に避難の方向を指示する必要がある箇所に設ける
⑴エ 自然光による採光が十分でない場合は、照明(一般照明を含む)で補う
⑵ア 容易にはがれないよう接着剤、両面テープ等で固定する▲
⑵イ 床か壁かなど設置環境に応じて、必要なら耐水性・耐薬品性・耐摩耗性等のあるものを使う▲
埼玉県央広域の凡例では、印なしは法令基準(法令の解釈を含む)、▲は行政指導、●は法令基準に行政指導を加えたものです。
⑴のア〜エは印なしで、採光が足りなければ一般照明で補うという点は、規則第5項第2号の「採光が識別上十分である箇所に設けること」を言いかえたものと読めます。
⑵の固定と耐水性などは、法令に書かれていない上乗せとして行政指導の扱いです。
明日やることは、廊下の図面に標識の位置を落とし、7.5mの円と曲がり角が全部押さえられているかと、両面テープなどの固定方法を施工業者に確かめることです。
はがれた標識がそのままになっている場所があるのを思い出しました。
貼り直すときは固定方法も見直しておきましょう。
位置がずれていないかもあわせて確かめます。
高輝度の誘導標識はどれくらいの明るさを保てばよいのか

その目安を示したのが消防予第177号で、埼玉県央広域は4⑴アでほぼ同じ内容を表にしています(印なし)。
| 規則の根拠 | 場所 | 消灯後の明るさの目安 |
|---|---|---|
| 第28条の2第1項第3号ほか | 小規模な路面店等 | 20分後に100ミリカンデラ毎平方メートル以上(避難口から最も遠い箇所まで15m以上なら300以上) |
| 第28条の3第4項第3号の2 | 個室型遊興店舗((2)項ニ) | 20分後に100ミリカンデラ毎平方メートル以上 |
| 第28条の3第4項第10号 | 大規模・高層の防火対象物等 | 20分後に100以上、かつ60分後に75ミリカンデラ毎平方メートル以上 |
埼玉県央広域の4⑴ア(イ)は、一般的な蛍光灯の下で照度が200ルクス以上あれば、20分後に100ミリカンデラ毎平方メートル以上になるとみなしてよいとしています。
一方で、LED照明は目に見える明るさが同じでも蓄光材を光らせる紫外線が蛍光灯より弱いのが一般的なので、特に注意するよう書いています。
(ウ)で無人の建物や部分にまで照明の点灯は求めないとし、(エ)で必要な照度を確保できないときは誘導灯や光を発する帯状の標示で誘導表示をするとしています。
明日やることは、照明をLEDに替えた階や調光している場所に高輝度の標識がないかを洗い出し、製品の試験データと照明の組み合わせを確かめることです(大阪市は調光器などで消灯・減光させないと書いています)。
去年、廊下の照明をLEDに替えたばかりで心配になってきました。
標識のメーカーが出している試験データで照明との相性を確かめましょう。
足りなければ照度を上げるか誘導灯を検討します。
階段や段差では始点と終点に付けるのか

消防予第177号は、その直近を床面からおおむね1メートル以下の避難上有効な箇所とし、階段・傾斜路・段差のある場所では始点と終点に標識を「設けることが適当」と助言しています。
(ア) 「床面又はその直近の箇所」とは、床面又は床面からの高さがおおむね1m以下の避難上有効な箇所
(イ) 階段、傾斜路、段差等のある場所では、転倒・転落を防ぐため、その始点及び終点となる箇所に高輝度蓄光式誘導標識を設けること▲ なお、暗い中で階段か踊場か判断できない錯覚を防ぐため、設置高さは統一すること
(ウ) 床面・巾木等に設けるもので摩耗や浸水が心配なものは、耐摩耗性や耐水性のあるものを設置すること●
(エ) 高輝度蓄光式誘導標識があることをもって、その箇所の通路誘導灯を免除することはできない
始点と終点の標識は、通知では望ましい措置の位置づけですが、埼玉県央広域は「設けること」と書いて▲(行政指導)を付けています。
耐摩耗性・耐水性も通知では「適当」ですが、告示第5 第3号(一)の「堅ろうで耐久性のあるもの」と結び付けて●(法令基準+行政指導)にしています。
(エ)は通知のエと同じで、補うために付けた標識を理由に通路誘導灯を減らすことはできません。
明日やることは、階段の図面で上り口と下り口の両方に標識があるか、全部の階で床からの高さがそろっているかを確かめることです。
階ごとに高さがばらばらだと、暗い中で踏み外しそうです。
だから埼玉県央広域は高さの統一まで書いています。
改修では既存の階と同じ高さに合わせましょう。
他の消防本部では蓄光式誘導標識をどう扱っているのか

大阪市と東大阪市は始点と終点の標識を床面直近の壁面に設けるとして◆(行政指導)を付け、標識の「下端まで」の高さを1メートル以下と書いています。
| 消防本部(基準の位置) | 階段の始点と終点 | その他の上乗せ |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域(第4章 第16の2) | 設けること(▲)・高さを統一 | 耐摩耗性・耐水性(●)、中輝度の固定と耐水性等(▲) |
| 大阪市(誘導灯 3(2)) | 床面直近の壁面に設けること(◆) | 耐摩耗性等の表(◆)、大規模・高層の下り階段は踏面の端に帯状の標示(◆)、照明を調光器などで消灯・減光させない |
| 東大阪市(誘導灯 3⑵) | 大阪市と同じ文(◆) | 耐摩耗性等の表(◆) |
| 堺市(第18 誘導灯及び誘導標識) | 記載なし | 路面店は避難口まで10m以上なら通路にも1以上、300ミリカンデラの目安を10m以上から(いずれも★)、誘導標識は努めて蓄光式(★) |
| 津市(5-17 誘導灯) | 記載なし | 帯状の標示で代えるときは予防課長と協議、標識は固定や貼付けが確実にできるもの・必要に応じ耐水性等(記号なし) |
| 鈴鹿市(第4章 第16の2) | 記載なし | 規則と告示によるとだけ書く |
| 四日市市 | 審査基準に蓄光式誘導標識の記述なし | |
国の通知は避難口から最も遠い箇所まで15m以上で300ミリカンデラ毎平方メートル以上としていますが、堺市は10m以上からとして★(堺市独自)を付けています。
堺市の◆は消防庁の通知などを参考にした指導、★は市独自の指導で、大阪市・東大阪市の◆(市の行政指導)とは意味が違う点に注意が要ります。
明日やることは、建物を管轄する本部の審査基準の誘導灯・誘導標識の節を開き、階段の始点と終点、床からの高さ、照明の条件の3点を拾い出しておくことです。
同じ通知でも、本部によって言い切り方が違うのですね。
記号の意味も本部ごとに違うので、凡例から読むのが近道です。
迷ったら図面を持って所轄に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まず階段の上り口と下り口に標識があるかを見て回ります!
照明の種類と貼る高さもあわせて見ておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第28条の2・第28条の3(e-Gov法令検索)
- 誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年消防庁告示第2号・令和元年消防庁告示第2号改正)第2・第3・第3の2・第5(総務省消防庁)
- 蓄光式誘導標識等に係る運用について(平成22年4月9日 消防予第177号・総務省消防庁)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第16の2 誘導標識(埼玉県央広域消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 第2節 誘導灯及び誘導標識(大阪市消防局)
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 誘導灯及び誘導標識(東大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第18 誘導灯及び誘導標識(堺市消防局)
- 津市予防事務審査検査基準 5-17 誘導灯(津市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第16の2 誘導標識(鈴鹿市消防本部)
※本記事は埼玉県央広域消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行規則・消防庁告示・消防庁の通知に基づく一般的な解説です。埼玉県央広域の▲は行政指導、●は法令基準に行政指導を加えたもの、大阪市・東大阪市の◆は行政指導基準、堺市の★は市独自の指導基準を表し、記号は原本の画像で確かめました。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「記載なし」としたものは各本部の誘導灯・誘導標識の節を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





