誘導灯には、そこから何m先までを受け持つかという有効範囲が決まっています。
国の規則は、誘導灯を容易に見とおせない場所では、その範囲を歩行距離10m以下に縮めるとしています。
では「見とおせない」とはどんな場所なのか、埼玉県央広域消防本部の審査基準は、はりや棚の高さまで挙げて具体的に示しています。
鴻巣市を管轄する埼玉県央広域の基準を国の規則から順にたどり、鈴鹿市・津市・四日市市・堺市と比べます。
鴻巣市の店舗で、売場に背の高い棚を増やす計画があります。
誘導灯の数はいまのままで足りるのでしょうか。
棚の高さによっては、誘導灯が見とおせない扱いになります。
そうなると、一つの誘導灯が受け持てる範囲が短くなります。
天井の太いはりも、関係があるのですか。
はい、埼玉県央広域の基準は0.4m以上のはりも挙げています。
まず国の規則がどこまで決めているかから見ていきます。
- 国の消防法施行規則第28条の3第2項は、誘導灯を容易に見とおせない・識別できない場合の有効範囲を歩行距離10m以下とするが、どんな場合かの例は挙げていない
- 埼玉県央広域は、壁の陰・階段・0.4m以上のはりや防煙たれ壁・1.5m程度以上の棚やパーティション・吊広告の5つを見とおせない場合としている
- はりの下まで誘導灯を吊り下げた場合や、棚より高い位置に設けた場合は見とおせるものとし、おおむね5m動けば見える場合も除く
- 見とおせない部分では、通路誘導灯B級を壁から10m以下・相互に20m以下で並べる例図が示されている
- 鈴鹿市は本文で1.8m程度とし、倉庫や工場の荷物とラックを加えている。津市・堺市は1.5m程度、四日市市は国の通知によるとしている
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目次
国の規則は誘導灯が見とおせないときの有効範囲をどう決めているのか

本文で距離を決め、ただし書で見とおせない場合を別に扱っています。
避難口誘導灯及び通路誘導灯の有効範囲は、当該誘導灯までの歩行距離が次の各号に定める距離のうちいずれかの距離以下となる範囲とする。ただし、当該誘導灯を容易に見とおすことができない場合又は識別することができない場合にあつては、当該誘導灯までの歩行距離が十メートル以下となる範囲とする。
一 次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の下欄に掲げる距離(表は略)
二 次の式に定めるところにより算出した距離(略)
第1号の表では、避難口誘導灯のA級は避難の方向を示すシンボルのないもので60m、B級は30m、通路誘導灯はA級20m・B級15m・C級10mです。
第2号は、表示面の縦寸法に係数を掛けて距離を出す方法で、どちらを使ってもかまいません。
ところが、誘導灯を容易に見とおすことができない場合は、等級に関係なく歩行距離10m以下の範囲しか受け持てません。
規則は「見とおすことができない場合」がどんな場所かを挙げていないので、各消防本部の審査基準がその例を示しています。
レイアウトを変える前に、いまの誘導灯が何級で、何mを受け持つ前提で配置されているかを図面で確かめておきます。
A級の誘導灯でも、見とおせなければ10mまでになるのですね。
そうです、規則のただし書は等級を問いません。
次に、埼玉県央広域が挙げている具体例を見ます。
埼玉県央広域は見とおせない場合として何を挙げているのか

審査基準の第4章 第16 誘導灯の2⑵が、規則のただし書をそのまま受けて例を並べています。
省令第28条の3第2項ただし書きに規定する「誘導灯を容易に見とおすことができない場合又は識別することができない場合」とは、次の場合が該当すること。
ア 壁面があり陰になる部分がある場合(略)
イ 階段により階数がかわる場合
ウ 0.4m以上のはり、又は防煙たれ壁がある場合(略)
エ 一定以上の高さのパーティション、ショーケース、棚、又は可動間仕切がある場合
なお、一定以上の高さとは通常1.5m程度とし、(略)
オ 吊広告、垂れ幕がある場合
アは、L字形の部屋のように壁が出っ張って誘導灯が陰になる場面、イは階段を上がって階が変わる場面です。
ウは天井から下がる0.4m以上のはりや防煙たれ壁、エは高さが通常1.5m程度以上のパーティション・ショーケース・棚・可動間仕切です。
オは天井から下げる吊広告や垂れ幕で、売場の装飾もここに入ります。
この⑵には、埼玉県央広域が行政指導の印にしている▲も●も付いておらず、規則の解釈として書かれています(原本の画像で確認)。
棚を増やしたり、季節の吊広告を下げたりする前に、誘導灯と通路の間にこの5つが入らないかを売場の図面で確かめます。
セールのときの吊広告まで入るとは思っていませんでした。
吊広告も、誘導灯と人の間に下がれば視界をさえぎります。
ただし、見とおせるとされる付け方もあります。
はりや棚があっても見とおせるとされるのはどんなときか

アのただし書と合わせると、見とおせるものとして扱う場面が3つ読み取れます。
ア ただし、人が若干移動(おおむね歩行距離5m以内)することにより、誘導灯を容易に見とおすことがきる場合又は識別できる場合を除く。
ウ なお、吊具等により表示上部が障害物より下方にある場合は見とおせるものとするが、そうでない場合は、見とおしはきかないものとすること。
エ なお、一定以上の高さとは通常1.5m程度とし、誘導灯がこれらの障害物より高い位置に、避難上有効に設けられている場合には、見とおせるものとすること。
はりやたれ壁がある場合は、吊具などで誘導灯を下げ、表示面の上の端がはりの下端より低くなっていれば見とおせるものとされます。
棚やパーティションは、誘導灯がそれより高い位置に避難上有効に付いていれば見とおせるものとされます。
壁の陰になる場合でも、おおむね歩行距離5m以内の移動で誘導灯が見えるなら、アには当たりません。
用語の定義の1⑹も、吹き抜けや死角について同じおおむね5mの考え方を図で示しています。
一方、2⑷は、誘導灯の有効範囲は表示面の裏側には及ばないとしているので、両面に人が来る場所では表示面の向きも確かめます。
つまり誘導灯を少し下げれば、はりの向こうからも見えるようになるのですね。
表示面の上の端がはりの下端より低ければ、見とおせる扱いです。
下げられないときは、誘導灯の数で補うことになります。
見とおせない部分では誘導灯をどんな間隔で並べるのか

2⑶が、規則のただし書の「10m以下となる範囲」を第16-7図の例によるとしています。
⑶ 省令第28条の3第2項ただし書きに規定する「誘導灯までの歩行距離が10m以下となる範囲」とは、第16-7図の例により設けること。
⑷ 誘導灯の有効範囲は、表示面の裏側には及ばないものであること。
第16-7図はB級の通路誘導灯の例で、居室の各部分から誘導灯を見とおしできない場合と、見とおしできる場合を左右に並べています。
見とおしできない例では、壁から10m以下、誘導灯どうしは20m以下の間隔で並び、12台が描かれています。
見とおしできる参考例では、壁から15m以下・相互に30m以下で、4台です。
B級の通路誘導灯の有効範囲は規則の表で15mなので、見とおせなくなると受け持てる範囲が15mから10mに縮む、ということを図にしたものと読めます。
棚を増やす計画では、増やしたあとの通路で各部分から10m以内に誘導灯があるかを、平面図に円を描いて確かめます。
図の例だと、見とおせない部屋のほうが誘導灯がずっと多いのですね。
はい、例図では左が12台、右が4台です。
この線引きは、消防本部によって少しずつ違います。
鈴鹿市や津市や四日市市や堺市では見とおせない場合の例はどう違うのか

大きく違うのは、棚やパーティションの高さの目安と、倉庫・工場の扱いです。
省令第28条の3第2項ただし書きに規定する「誘導灯を容易に見とおすことができない場合又は識別することができない場合」とは、次の(ア)から(カ)までに掲げるような誘導灯の視認の障害がある場合をいう。
(ウ) はり、又は防煙たれ壁がある場合
(エ) 1.8m程度の高さのパーティション、ショーケース、棚、又は可動間仕切がある場合
(カ) 倉庫、工場等の用途において、荷物及びラック等がある場合
| 項目 | 埼玉県央広域 | 鈴鹿市 | 津市 | 四日市市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|---|
| 例の書き方 | 第16 2⑵ア〜オ(無印) | 第16 2⑴ア(ア)〜(カ)(無印) | 5-17 ⑵イ・別紙2の例図 | 例の一覧はなし(国の通知の規定によるとする) | 第18 Ⅱ 3⑴・第18-2表(◆①) |
| はり | 0.4m以上 | 本文は「はり」、図に0.4m以上 | 0.4m以上 | - | 0.4m以上 |
| 棚・パーティションの高さ | 通常1.5m程度 | 本文は1.8m程度、図は1.5m程度 | 通常1.5m程度 | - | 通常1.5m程度 |
| 吊り下げて見とおせる扱い | あり(はり・たれ壁) | 記載なし | あり(はり・防煙壁・吊広告) | - | あり(はり・たれ壁・吊り広告) |
| 倉庫・工場の荷物やラック | 記載なし | あり | 記載なし | - | 記載なし |
| 少し動けば見える場合 | おおむね歩行距離5m以内 | おおむね5m以内(用語の定義) | 記載なし | おおむね5m以内(用語の定義) | 概ね5m以内(用語の図) |
鈴鹿市は本文で1.8m程度としつつ、第16-6図のパーティションの例には1.5m程度と書かれていて、どちらで見るかは鈴鹿市消防本部に確かめる必要があります。
また鈴鹿市は、倉庫や工場の荷物とラックを6つ目の例に加えています。
四日市市は第16の冒頭で、誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年消防庁告示第2号)と、平成11年9月21日付け消防予第245号の設置・維持ガイドラインの規定によるとし、見とおしの定義とおおむね5mの扱いだけを書いています。
堺市の◆①は、通知一覧で同じ消防予第245号を指していて、堺市の凡例では◆が消防庁の通知等を参考にした指導基準を表します。
津市の基準には記号がなく、埼玉県央広域と鈴鹿市の本文には▲も●も付いていません。
管轄の境に近い建物や、他市の店舗と同じレイアウトを使うときは、表のどの行が変わるかを先に確かめます。
同じ棚でも、鈴鹿市なら高さの目安が違うかもしれないのですね。
そうなんです、本文と図で数字が違うところもあります。
棚の高さを決める前に、管轄の消防本部に確かめておくと安心です。
よくある質問
まとめ
棚の高さと誘導灯の位置を売場の図面に書き込んで、埼玉県央広域消防本部に相談してみます!
誘導灯から10mの円を描いた図があれば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第28条の3第2項(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第16 誘導灯 1⑹・2⑵〜⑷ https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第16 誘導灯 1⑸・2⑴ https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-17 誘導灯 ⑵イ・別紙2 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第16 誘導灯及び誘導標識 1(1) https://yokkaichisyoubou.jp/sys/wp-content/uploads/2024/04/006.pdf
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 3(1)・第18-2表・通知一覧 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は埼玉県央広域消防本部・鈴鹿市消防本部・津市消防本部・四日市市消防本部・堺市消防局が公表している基準と、消防法施行規則に基づく一般的な解説です。各基準の文章・数字・記号は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





