地下の店舗や大きな物販店に設ける排煙設備は、火事のときに排煙機を回して煙を外へ出す設備です。停電しても止まらないよう、非常電源を付けることが法令で決まっています。
ところが堺市消防局の審査基準を開くと、排煙設備の節には電源・非常電源・耐震措置の中身がほとんど書かれていません。どれもほかの設備の節を「準用」する形になっていて、その先をたどらないと答えが出てきません。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分け、準用の先を1つずつたどって、大阪市の運用基準とも比べます。
堺市で地下の店舗に排煙設備を設ける計画です。
電源や非常電源の決まりはどこを見ればよいですか。
堺市の審査基準では、排煙設備の節から自動火災報知設備と屋内消火栓設備の節へ飛びます。
順にたどれば全部つながります。
ほかの設備の節を読まないといけないのですか?
はい、借りている先を読むのが近道です。
国の規則も同じつくりなので、そこから見ましょう。
- 国の消防法施行規則第30条も、排煙設備の電源は第24条第3号(自動火災報知設備)、非常電源は第12条第1項第4号(屋内消火栓設備)の例によるとしていて、自分では書いていません
- 堺市は、電源を自動火災報知設備の受信機の常用電源の規定から、非常電源と配線を屋内消火栓設備のⅡ5から、耐震措置を屋内消火栓設備のⅡ6から借ります
- 屋内消火栓設備のⅡ5は「第3 非常電源による」とさらに先へ送り、そこで排煙設備の非常電源は30分間以上、非常電源から電動機の接続端子までは耐火配線と決まります
- 大阪市は、排煙設備の節から「第6章 非常電源の基準」へ直接送ります。30分間以上は同じで、耐火配線の範囲に排煙用切替えダンパーまで含めて図示しています
- 東大阪市の公開資料には排煙設備の基準がありません。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
排煙設備の電源の決まりはどこに書いてあるのか

八 非常電源は、第十二条第一項第四号の規定の例により設けること。
九 操作回路の配線は、第十二条第一項第五号の規定の例により設けること。
(略)
十一 風道、排煙機、給気機及び非常電源には、第十二条第一項第九号に規定する措置を講ずること。
堺市の審査基準は、この規則の上に次の3項目を書き足しています。
電源は、省令第30条第7号の規定によるほか、第12 自動火災報知設備Ⅱ.1.(1)を準用すること。
(7) 非常電源、配線等
非常電源、配線等は、政令第28条第2項第4号並びに省令第30条第8号及び第9号の規定によるほか、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.5を準用すること。
(8) 耐震措置
風道、排煙機、給気機及び非常電源の耐震措置は、省令第30条第11号の規定によるほか、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.6を準用すること。
- (6)電源は、第12 自動火災報知設備のⅡ1(1)(受信機の常用電源)を準用する
- (7)非常電源・配線等は、第2 屋内消火栓設備のⅡ5(非常電源、配線等)を準用する
- そのⅡ5は、非常電源と非常電源回路の配線を第3 非常電源にさらに送る
- (8)耐震措置は、第2 屋内消火栓設備のⅡ6(耐震措置)を準用する
国の規則も、ほかの設備の号を借りているのですね。
はい、堺市も同じ形で借り先を指定しています。
まず電源から見ます。
電源は自動火災報知設備の受信機の規定をどう借りるのか

イ 電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとること。(略)
ロ 電源の開閉器には、自動火災報知設備用のものである旨を表示すること。
堺市が準用する自動火災報知設備のⅡ1(1)は、受信機の常用電源の項目です。
ア 交流電源
(ア) 電源の電圧及び容量が適正であること。
(イ) 電源電圧は、300V以下とすること。
(ウ) 定格電圧が60Vを超える受信機の金属製外箱は、努めて接地工事を施すこと。
イ 蓄電池設備
蓄電池設備を常用電源として使用する場合は、「蓄電池設備の基準(昭和48年2月10日消防庁告示第2号)」に適合するものを使用すること。
- 交流電源は、電圧と容量が適正であること
- 電源電圧は300V以下
- 定格電圧が60Vを超える受信機の金属製外箱は、努めて接地工事をする
- 蓄電池設備を常用電源にするときは、昭和48年消防庁告示第2号「蓄電池設備の基準」に適合するものを使う
また、次に見る屋内消火栓設備のⅡ5には、常用電源回路の配線を専用配線にする決まりも含まれています。電源については(6)と(7)の両方から決まりがかかります。
受信機の規定を、排煙設備にも当てはめるのですね。
はい、読み替え方は基準に書かれていないので確認が大切です。
次は非常電源です。
非常電源と配線は屋内消火栓設備からどうたどるのか

(2) 常用電源回路の配線は、電気工作物にかかる法令によるほか、次によること。
ア 低圧のものにあっては、引き込み開閉器の直後から分岐し、専用配線とすること。
イ 特別高圧又は高圧による受電のものにあっては、変圧器二次側に設けた配電盤から分岐し、専用配線とすること。
| 消防用設備等 | 非常電源の種別 | 作動時間 |
|---|---|---|
| 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・排煙設備・非常コンセント設備など | 非常電源専用受電設備(注1の防火対象物を除く)、自家発電設備、蓄電池設備または燃料電池設備 | 30分間以上 |
| 自動火災報知設備・非常警報設備 | 非常電源専用受電設備(注1の防火対象物を除く)または直交変換装置を有しない蓄電池設備 | 10分間以上 |
配線は、第3の中に排煙設備の項目があり、ここで話が排煙設備に戻ってきます。
最後の「前(1)の例」は、第3の屋内消火栓設備の非常電源回路の項目です。非常電源の専用区画等から直接専用の回路とすることや、地絡で電路を遮断する装置を設けないことなどが決まっています(堺市の非常電源回路の記事で解説)。ここまでの道のりをまとめると次のとおりです。
- 排煙設備のⅡ1(7)で、屋内消火栓設備のⅡ5を準用する
- Ⅱ5(1)で、非常電源と非常電源回路の配線を第3 非常電源に送る
- 第3の第3-1表で、排煙設備の非常電源は30分間以上と決まる
- 第3の(12)排煙設備で、非常電源から電動機の接続端子までを耐火配線とし、さらに前(1)の屋内消火栓設備の例による
屋内消火栓から非常電源の基準へ、さらに排煙設備の項目に戻るのですね。
はい、4段たどって配線の範囲が決まります。
次は耐震措置です。
耐震措置は屋内消火栓設備の規定をどう借りるのか

堺市が(8)で準用する屋内消火栓設備のⅡ6は次のとおりです。
(2) 配管等の耐震措置
ア 加圧送水装置の吸込管側(床上水槽から接続される管又は横引部分が長い管の場合に限る。)及び吐出側には、可とう管継手を設けること。
イ 建築物にエキスパンションジョイント部を設ける場合にあっては、配管等を通過させないこと。やむを得ず、通過させる場合は、できるだけ建築物の下層部を通過させ、可とう管継手を設けること。
(2)は水の配管と加圧送水装置を前提にした書き方です。排煙設備の風道にどう当てはめるかは審査基準に書かれていないので、エキスパンションジョイントをまたぐ風道などは設計の段階で管轄の消防署と相談するのが確実です。
| 耐震措置の対象 | 国の規則 | 堺市が借りる先 |
|---|---|---|
| 風道・排煙機・給気機・非常電源 | 規則第30条第11号→第12条第1項第9号 | 屋内消火栓設備 Ⅱ6 |
| 非常電源の固定 | 有効な措置 | 固定金具・アンカーボルト等で堅固に固定 |
| 配管等(屋内消火栓) | 有効な措置 | 可とう管継手・エキスパンションジョイント部の扱い |
非常電源はアンカーボルトでしっかり固定するのですね。
はい、倒れたら排煙機が回らないからです。
最後に大阪市と比べます。
大阪市や東大阪市の運用基準と比べて違いはあるのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 排煙設備の節の書き方 | 電源・非常電源と配線・耐震措置を自動火災報知設備と屋内消火栓設備から準用 | 非常電源及び配線を第6章へ直接送る |
| 非常電源の作動時間 | 30分間以上(第3-1表) | 30分間以上(別表6-1の使用時間) |
| 耐火配線の範囲 | 非常電源の専用区画等から電動機の接続端子まで | 非常電源から電動機の入力端子と排煙用切替えダンパーの入力端子まで |
| 耐火か耐熱の配線 | 操作回路等(図では起動装置・防災センター等の表示装置) | 操作(起動)回路・連絡装置回路等(図では起動装置・排煙境界壁) |
| 常用電源・耐震措置の項目 | 排煙設備の節にあり(準用) | 排煙設備の節には置かれていない |
- 堺市は3つの項目を別々の節から借りるが、大阪市は非常電源と配線を第6章へ1本で送る
- 非常電源の作動時間はどちらも30分間以上で、非常電源の種別の書き方も同じ
- 大阪市は排煙用切替えダンパーの入力端子までを耐火配線として図に描き、排煙境界壁への線も耐火か耐熱の配線にしている
- 堺市は、常用電源と耐震措置も排煙設備の節で借り先を指定している
堺市で蓄電池設備を非常電源にするときの容量は堺市の蓄電池設備の容量の記事で解説しています。堺市の建物で排煙設備の電源まわりを確かめる順番は次のとおりです。
- 常用電源は、分岐させない専用の配線にし、開閉器に排煙設備用である旨を表示する
- 非常電源は、建物が特定防火対象物で延べ1,000平方メートル以上かを確かめて種別を選び、30分間以上の容量にする
- 非常電源から電動機の接続端子までを耐火配線、起動装置と表示装置への線を耐火か耐熱の配線にする
- 排煙機・給気機・非常電源をアンカーボルト等で固定し、風道の扱いは図面の段階で所轄の消防署に相談する
大阪市はダンパーまで耐火配線と図に描いているのですね。
はい、図の線の種類まで見比べると違いが分かります。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず借りている先の節を開いて、非常電源と配線の範囲を図面に書き込みます。
固定の方法も確かめます!
準用の先まで読むと抜けがなくなるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第20 排煙設備 Ⅱ 細目 1 (6) 電源・(7) 非常電源、配線等・(8) 耐震措置/第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 1 受信機 (1) 常用電源/第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 5 非常電源、配線等・6 耐震措置/第3 非常電源 Ⅱ 細目 1 非常電源の設置(第3-1表)・非常電源回路等 (1) 屋内消火栓設備・(12) 排煙設備(第3-25図) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第1節 排煙設備 第3 非常電源及び配線/第6章 非常電源の基準 ス 排煙設備(図6-20)・別表6-1 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6資料に排煙設備の基準なし) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第28条、消防法施行規則 第12条・第24条・第30条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。準用する規定の読み替え方が基準に書かれていない部分は、本記事では断定していません。





