避難口誘導灯は、消防法施行規則が「屋内から直接地上へ通ずる出入口」や「直通階段の出入口」など4種類の場所に付けると決めています。
ところが、上の階から下りてきた階段が地階まで続いている建物では、避難階で階段室から廊下へ出る扉が見落とされやすくなります。
埼玉県央広域消防本部(鴻巣市・桶川市・北本市)は、その扉に避難口誘導灯を付けるよう審査基準に書いています。
規則の文言から県央広域の上乗せまでをたどり、鈴鹿市・四日市市・津市・大阪市・東大阪市・堺市の書き方と比べます。
鴻巣市の店舗ビルで、地下の倉庫へ下りる階段が1階を通り過ぎて続いています。
1階で階段室から廊下に出る扉に誘導灯が無いと、設計の打合せで指摘されました。
埼玉県央広域の審査基準は、地階へ通じている直通階段の避難階の出口に避難口誘導灯を付けるとしています。
上から下りてきた人に、ここが避難階だと気づいてもらうための扉です。
ほかの市でも同じ扱いなのですか。
鈴鹿市は同じ文ですが、四日市市は地階の有無を問わず、津市は「望ましい」という書き方です。
国の規則から順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則 第28条の3第3項第1号は、避難口誘導灯を直接地上へ通ずる出入口・直通階段の出入口など4種類の場所に設けるとしていて、避難階で階段室から廊下へ出る扉を別に書き分けてはいない
- 埼玉県央広域は第4章 第16 4⑴オで、地階へ通じている直通階段の階段室から避難階の廊下等へ通ずる出入口(避難経路となるものに限る)に避難口誘導灯を付けるとし、行政指導の印▲を付けている
- 付室の中に出入口が複数あって最終避難口が分からないときは、県央広域は最終避難口に誘導灯(十分に明るければ誘導標識)、鈴鹿市と堺市は誘導標識、津市はC級の避難口誘導灯としている
- 鈴鹿市は県央広域と同じ文(▲)で、四日市市は地階に限らず階段室から避難階の廊下等への出入口とし、直接外部へ出る構造などで避難口と分かる場合を除いている
- 大阪市・東大阪市は乗り換え構造などで避難階と分かれば不要、堺市は避難経路以外の経路がある場合に限る、津市が載せる国のガイドラインは望ましい止まりで、条件の付け方が消防本部ごとに違う
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目次
国の規則は避難口誘導灯をどの出入口に付けると決めているのか

まずはその文言を確かめます。
一 避難口誘導灯は、次のイからニまでに掲げる避難口の上部又はその直近の避難上有効な箇所に設けること。
イ 屋内から直接地上へ通ずる出入口(附室が設けられている場合にあつては、当該附室の出入口)
ロ 直通階段の出入口(附室が設けられている場合にあつては、当該附室の出入口)
ハ イ又はロに掲げる避難口に通ずる廊下又は通路に通ずる出入口(室内の各部分から容易に避難することができるものとして消防庁長官が定める居室の出入口を除く。)
ニ イ又はロに掲げる避難口に通ずる廊下又は通路に設ける防火戸で直接手で開くことができるもの(くぐり戸付きの防火シャッターを含む。)がある場所(略)
イは建物の外へ出る最後の出入口(県央広域の審査基準は「最終避難口」と呼びます)、ロは直通階段の出入口、ハは部屋から廊下へ出る出入口、ニは廊下の途中にある手で開ける防火戸です。
ロの文言は各階の直通階段の出入口を広く指していて、避難階で階段室から廊下へ出る扉を別に書き分けてはいません。
津市の審査検査基準に別紙として載っている「誘導灯及び誘導標識に係る設置・維持ガイドライン」(四日市市の審査基準が冒頭で引く平成11年 消防予第245号と同じ名前のもの)は、屋内の直通階段から避難階の廊下や通路に通ずる出入口には避難口誘導灯を設けることが望ましいとしています。
この「望ましい」を、各消防本部がどこまで具体的な指導に引き上げているかが、この記事の比べどころです。
- 消防法施行令 第26条第1項第1号:避難口誘導灯を設置する防火対象物((5)項ロ・(7)項・(8)項・(10)項〜(15)項・(16)項ロは地階・無窓階・11階以上の部分に限る)
- 消防法施行規則 第28条の3第3項第1号イ〜ニ:避難口誘導灯を設ける4種類の場所
- 設置・維持ガイドライン 第2 2⑶エ(津市の審査検査基準 別紙):屋内の直通階段から避難階の廊下等に通ずる出入口は「望ましい」
- 埼玉県央広域 審査基準 第4章 第16 4(柱書):規則の規定によるほか、次による
- 同 4⑴オ:地階へ通じている直通階段の階段室から避難階の廊下等へ通ずる出入口(避難経路となるものに限る)▲
階段の扉なら、規則のロで最初から付いているものだと思っていました。
各階の階段室の扉には付けますが、避難階で廊下側へ出る扉は図面で抜けやすいところです。
まずは避難階の平面図で、階段室の扉の数を数えてみましょう。
埼玉県央広域は地階まで続く階段の出口に何を足しているのか

そのうちの1つが、地階へ通じている階段の扉です。
オ 地階へ通じている直通階段の階段室から避難階の廊下等へ通ずる出入口(避難経路となるものに限る。)▲(第16-16図参照)
第16-16図には、上の階から下りてきた階段が避難階を通り過ぎて地階まで続く断面と、避難階で階段室から廊下へ出る扉に誘導灯を付けた例が描かれています。
階段が地階まで続いていると、上から下りてきた人が避難階に気づかず地階まで下りてしまうおそれがあるので、そこで廊下へ出る扉を示すという考え方と読めます(審査基準は理由までは書いていません)。
かっこ書きで「避難経路となるものに限る」としているので、避難階で階段室から出ても最終避難口へ向かう経路にならない扉までは対象にしていないと読めます。
末尾の▲は県央広域の凡例で行政指導を表す印で、規則のイ〜ニに当たるア〜エには印がありません。
| 県央広域 第16 4⑴ | 避難口誘導灯を付ける場所 | 記号 |
|---|---|---|
| ア | 最終避難口(規則のイ) | なし |
| イ | 直通階段の出入口(規則のロ) | なし |
| ウ | アかイに通ずる廊下等に通ずる出入口(規則のハ) | なし |
| エ | アかイに通ずる廊下等の手で開く防火戸(規則のニ) | なし |
| オ | 地階へ通じている直通階段の階段室から避難階の廊下等へ通ずる出入口(避難経路となるものに限る) | ▲ |
| カ | 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備の防護区画からの出入口(十分に明るければ誘導標識でよい) | ▲ |
つまり、地下の倉庫へ下りる階段があるから1階の扉に付けるのですね。
そのとおりで、地階が無ければこのオは当てはまりません。
断面図で、階段が避難階より下へ続いているかを確かめてください。
付室の中に出入口がいくつもあるときはどこに付けるのか

ただ付室の中に扉がいくつもあると、どれが本当の出口か分かりにくくなります。
なお、最終避難口に付室が設けられている場合にあっては、避難口誘導灯は当該付室の出入口に設ければよく、(避難経路が明らかな)近接した位置に二重に設ける必要はないこと。ただし、付室内に複数の出入口があるため、最終避難口が識別できない場合には、当該最終避難口に誘導灯を設置すること。ただし、非常用の照明装置が設置されているなど十分な照度が確保されている場合は、誘導標識とすることができる。(次のイにおいて同じ。)
県央広域は、付室の扉に誘導灯を付ければ足り、すぐ近くに二重に付ける必要はないとしたうえで、付室の中に扉が複数あって最終避難口が分からないときは、その最終避難口にも誘導灯を付けるとしています。
非常用の照明装置などで十分に明るければ誘導標識でよく、「次のイにおいて同じ」とあるので直通階段の付室も同じ扱いです(第16-11図は直通階段の付室で階段側の扉に誘導標識を描いた例)。
鈴鹿市と堺市は同じ場面で誘導標識を求め、津市は直通階段への出入口にC級の避難口誘導灯を設けるとしていて、目印の種類が分かれます。
四日市市・大阪市・東大阪市の誘導灯の節には、この場面を取り上げた項目は見当たりませんでした。
| 消防本部 | 付室の中に出入口が複数あって出口が分からないとき | 記号 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域 | 最終避難口に誘導灯。十分な照度があれば誘導標識(第16 4⑴ア・直通階段も同じ) | なし |
| 鈴鹿市 | 最終避難口に誘導標識(第16 2⑶ア(ア)) | なし |
| 堺市 | 階段への出入口に誘導標識の設置を指導(第18 Ⅱ 3(2)ア(ア)b なお書き) | なし |
| 津市 | 直通階段への出入口にC級の避難口誘導灯(5-17 2⑴) | 凡例なし |
| 四日市市・大阪市・東大阪市 | この場面の項目は見当たらない | - |
付室の扉が3つあると、目印をもう1つ足すことになるかもしれないのですね。
県央広域なら、明るさしだいで誘導標識で足りる場合もあります。
付室の扉の数と非常用照明の位置を、設計者に確かめておきましょう。
階段の出口に誘導灯を付けなくてよいのはどんな場合か

この「分かる場合」をどう書いているかが、消防本部ごとに違います。
ア 次に掲げる部分については、避難口誘導灯の設置を要すること。
(ア)階段室から避難階の廊下等への出入口。ただし、避難階において直接外部へ出る構造等で避難口である旨が容易に判断できる場合を除く。
四日市市は、地階へ通じているかどうかに関係なく、階段室から避難階の廊下等への出入口に避難口誘導灯を求め、避難階で直接外部へ出る構造などで分かる場合だけを除いています(この項には行政指導を表す下線がありません)。
大阪市と東大阪市は、屋内の直通階段の避難階の出口に設けるとし、階段が避難階で乗り換え構造になっているなど避難階と容易に分かる場合は設けないことができるとしています。
堺市は「避難経路以外の経路がある場合に限る」として、図には地階へ続く階段を描いています。
鈴鹿市は県央広域と同じ文で、別の項で、階段からそのまま外へ出る最終避難口が地上へ出る扉だと容易に分かる場合は、その扉の誘導灯を免除できるとしています。
| 消防本部 | 避難階で階段から出る扉の扱い | 付けなくてよい場合として書かれていること | 記号 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域 | 地階へ通じている直通階段の階段室から避難階の廊下等への出入口(避難経路となるものに限る) | 地階へ通じていない階段はオの対象外 | ▲ |
| 鈴鹿市 | 県央広域と同じ文(第16 2⑶ア(イ)) | 直通階段からの最終避難口で、直接地上に通ずる出入口と容易に分かる場合(同イ(イ)) | ▲(免除は無印) |
| 四日市市 | 地階の有無を問わず、階段室から避難階の廊下等への出入口 | 避難階で直接外部へ出る構造等で避難口と容易に分かる場合 | 下線なし |
| 津市 | 屋内の直通階段から避難階の廊下等への出入口に「設けることが望ましい」(別紙ガイドライン) | 記載なし | 凡例なし |
| 大阪市 | 屋内に設ける直通階段の避難階の出口に設置 | 避難階で乗り換え構造になっているなど避難階と容易に分かる場合 | 見出しに◆ |
| 東大阪市 | 大阪市と同じ文 | 大阪市と同じ | 見出しに◆ |
| 堺市 | 直通階段の階段室から避難階の廊下等への出入口(避難経路以外の経路がある場合に限る) | かっこ書きの限定のみ | ★ |
四日市市にも店舗があるので、そちらは地階が無くても確認が要りそうです。
はい、階段を出た先が屋内の廊下なら、四日市市では付ける前提で考えておくのが安全です。
建物ごとに、階段を出た先が外か廊下かを一覧にしておきましょう。
エスカレーターや立体駐車場の出口にも誘導灯は要るのか

こちらは誘導灯の設置義務がかからない建物まで含めている点が特徴です。
(イ)エスカレーター区画内及び立体駐車場等の内部からの脱出口(政令第26条第1項各号の防火対象物又はその部分以外の場合であっても設置すること。)
エスカレーターを壁で囲んだ区画や立体駐車場の中から外へ逃げる脱出口に、避難口誘導灯を付けるという項目です。
かっこ書きで「政令第26条第1項各号の防火対象物又はその部分以外の場合であっても設置すること」としていて、施行令の用途や地階・無窓階・11階以上の条件に当たらない部分でも付けるよう求めています。
この(イ)は全文に下線があり、四日市市の凡例で行政指導に当たる項目です。
県央広域・鈴鹿市・津市・大阪市・東大阪市・堺市の誘導灯の節には、エスカレーターや立体駐車場の脱出口を挙げた項目は見当たりませんでした。
立体駐車場の階段の扉にも誘導灯を、と言われることがあるのですね。
四日市市では行政指導として求められる項目です。
計画の段階で、脱出口の位置を図面に書き込んでおきましょう。
よくある質問
まとめ
次の打合せでは、階段の断面図と避難階の扉の位置を並べて確かめてみます!
付けたあとも誘導灯の前に物を置かないなど、日ごろの管理で見えやすさを保つことが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第26条第1項第1号/消防法施行規則 第28条の3第3項第1号(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第1章 総則(凡例)、第4章 第16 誘導灯 4⑴ア〜カ(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第16 誘導灯 2⑶ア・イ(鈴鹿市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第16 誘導灯及び誘導標識 2(1)ア(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-17 誘導灯 2⑴、別紙「誘導灯及び誘導標識に係る設置・維持ガイドライン」第2 2⑶エ(津市消防本部)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章 第2節 誘導灯及び誘導標識 第2 避難口誘導灯 1 設置場所(2)(大阪市消防局)
- 東大阪市消防局「誘導灯及び誘導標識の運用基準」第2 避難口誘導灯 1 設置場所⑵(東大阪市消防局)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 3(2)ア(ア)b・e(堺市消防局)
※本記事は埼玉県央広域消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。埼玉県央広域と鈴鹿市の▲は行政指導、四日市市の下線は行政指導、大阪市・東大阪市の◆は行政指導基準、堺市の★は市独自の指導基準を表し、記号と下線は原本の画像で確かめました。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。「見当たらない」としたものは各本部の誘導灯の節を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





