BLOG

危険物施設の単位はどう決まる?部屋を区画しても合算される理由と地下タンクの区分を解説

危険物の許可申請でつまずきやすいのが「どこまでを一つの施設として数えるのか」という問題です。
工場の内部を壁で仕切れば室ごとに別の取扱所になるのか、地下タンクと地上のポンプは一つの施設なのか、ボイラー用のタンクはどの区分になるのか。
いずれも条文を読んだだけでは答えが出ない論点です。
実際に照会された事例をもとに、施設の単位をどう切るかを解説します。

工場の中をブロック壁で3つに仕切ってあるんや。
ほんなら部屋ごとに別の取扱所やろ?1部屋あたりなら指定数量未満やで。

それは通りません
壁で区画しても一の危険物施設と解され、取扱数量は合算して判定されるという回答が示されています。

ほんなら地下タンクと地上のポンプも、ぜんぶまとめて一つで申請したらええんやな。

逆です
そちらは地下タンク貯蔵所と一般取扱所の2施設に分けて規制されます。
まとめる場合と分ける場合の線引きをこの記事で解説します!

この記事の結論
  • 建築物の内部を壁で3室に区画しても一の危険物施設と解され、危険物を取り扱う室の数量を合算して指定数量以上となれば一般取扱所として規制される
  • 地下タンク5基と油ポンプ設備・ドラム詰設備の申請は、地下タンクを1の地下タンク貯蔵所とし、油ポンプ設備とドラム詰設備をあわせて一の一般取扱所とする
  • 地下タンクが貯蔵を目的とするものであれば貯蔵所と取扱所の2施設に分かれ、貯蔵を目的としないものであれば地上部分と地下タンクの一体が一の一般取扱所になる
  • 高層建築物等の地下室に設けるボイラー用のタンクは、サービスタンクであれば一般取扱所に付属したタンクとして扱う

危険物施設の単位は建築物の区画ではなく取扱いの実態で決まる

危険物の許可は施設ごとに受けるものなので、どこまでを一つの施設として数えるかによって、必要な許可の件数も適用される技術基準も変わります。
同じ設備を並べても、一つにまとめれば取扱数量が合算されて指定数量を超え、分ければそれぞれ指定数量未満になる、ということが起こり得ます。

この単位の切り方について、条文には明確な定義がありません。危険物の規制に関する政令第2条および第3条が貯蔵所と取扱所の区分を定めているだけで、「一の施設」の範囲は書かれていないためです。そこで実務では、過去の質疑応答で示された考え方を手掛かりに判断します。

この記事で扱う4つの事例に共通しているのは、建物の壁や設備の位置ではなく、危険物の取扱いが実質的に一体として行われているかどうかで単位を決めているという点です。区画があっても一体なら一つ、位置が近くても目的が違えば別、という判断になります。

内部を3室に区画しても一の危険物施設として合算される

管内の工場から次のような一般取扱所の設置許可申請が提出されたが、この場合、この取扱所の危険物の取扱数量はA室およびB室の取扱数量を合計したものとすべきか、またはA室およびB室をそれぞれ別の一般取扱所とすべきか、という照会がありました。
さらに、取扱数量を減じてA室およびB室が個々には指定数量未満を取り扱うが、両室の取扱量を合計すると指定数量以上となる場合はどのように扱うべきか、という点もあわせて問われています。

  • 建築物は床面積697.129平方メートルで、この内部をA室・B室・C室の3室に区画する(各室の床面積は大体同じ)
  • 構造は鉄骨造り外壁ブロック積み(ブロック厚さ15センチメートル)、屋根鉄骨スレートぶき、床コンクリート、窓のガラスは網入りを使用し、出入口には甲種防火戸を設ける
  • 各室の区画はブロック(厚み10センチメートル)を小屋裏まで積み、開口部は設けない。したがって各室の出入口は外からでなければできない
  • 危険物の取扱いはA室およびB室において、紙および合成樹脂フイルム等に接着剤を塗布する作業を行ない、機械の洗滌等に指定数量以上のトルオール等を使用する
  • C室は包装室・従業員控室等に使用し、そこにおいては危険物の取扱いを行なわない
区画しても一の危険物施設として取扱数量が合算される
回答では、設問の工場は一の危険物施設と解する。したがってA室およびB室における危険物の取扱数量が1日に指定数量以上となる場合は、一般取扱所として規制されるとされました。
注目すべきは、区画の仕様がかなり厳格であっても結論が変わっていない点です。ブロックを小屋裏まで積み上げ、開口部を一切設けず、各室の出入口は外からしか入れない構造にしています。物理的にはほぼ独立した3つの空間です。それでも一の施設と解されました。
つまり区画を強化して数量を分割するという発想は通らないということです。

地下タンクと地上のポンプ設備は別の施設として規制される

市内において、30キロリットル入地下タンク5基とこれに連なる油ポンプ5台およびドラム詰設備5基を使って危険物の取扱いをしようとする計画について、設置許可申請をする場合に次のどの方法をとればよいか、という照会がありました。

  • 全施設を含めて一つの一般取扱所とする
  • 地下タンクをそれぞれ地下タンク貯蔵所とし、地下タンクを除いた地上施設全体を一つの一般取扱所とする
  • 地下タンクを地下貯蔵タンクとし、油ポンプ設備とドラム詰設備をそれぞれ別個の一般取扱所とする
  • 全施設を一つとしてよい場合、貯蔵タンクが屋外タンクの場合にも同じことがいえるか
  • 計画されている場所が住居地域に指定されているため、この取扱所における危険物取扱数量が指定数量の5倍を超えると建築基準法の規定による用途地域制限を受けるか
回答では、前の4つはいずれも適当でないとされました。そのうえで、設問の場合、地下タンク5基は1の地下タンク貯蔵所として、また、油ポンプ設備およびドラム詰設備はこれをあわせて一の一般取扱所として、それぞれ規制されるものと解すると示されています。最後の用途地域制限についてはお見込みのとおりです。
ポイントはタンク5基をばらばらに5つの貯蔵所とするのではなく、まとめて1の地下タンク貯蔵所とするという点と、地上のポンプ設備とドラム詰設備も分けずにまとめて一の一般取扱所とするという点です。数を合わせて分割するのでも、全部を一つにするのでもなく、貯蔵の機能と取扱いの機能で2つに切るという整理になっています。

貯蔵が目的かどうかで地下タンクの扱いが変わる

危険物の地下貯蔵タンクを設け、当該タンクの危険物を地上のポンプ設備等により取り扱う場合について、危険物を取り扱う地下タンクを設け、当該タンクの直上地盤面を含む場所(建築物の場合を含む)においてタンク内の危険物を取り扱う詰替えや加工等を行う場合は、取扱い場所およびタンクを一体の施設とみなして一の一般取扱所として規制することは支障ないか、という照会がありました。

貯蔵が目的かどうかで地下タンクの区分が変わる
回答は次のとおり目的によって2つに分かれます
地下タンクが貯蔵を目的としたものであるときは、当該地下タンクは一の地下タンク貯蔵所として、また、当該地下タンク貯蔵所の直上の危険物を取り扱う取扱場所は一の一般取扱所として、それぞれ規制される
貯蔵を目的としないものは、地上部分および地下タンクの一体が一の一般取扱所として規制される
同じ配置の設備であっても、そのタンクに貯蔵という目的があるかどうかで施設の数が1つか2つかに変わるということです。位置関係だけを見て判断すると誤ります。

あわせて、高層建築物等の地下室に空調設備またはボイラー用として重油もしくは灯油等のタンクを設置する場合、当該タンクを地下タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所・一般取扱所であるボイラー室等に付属したタンクのいずれの区分で規制することが妥当か、という照会もなされています。

回答では、設問のタンクがサービスタンクまたはメインタンクのいずれを指すか明らかでないが、サービスタンクである場合は一般取扱所に付属したタンクが正しいとされています。
サービスタンクはボイラーへ供給するために一時的に燃料を受け入れる小容量のタンクであり、貯蔵そのものを目的としていません。前の設問と同じ考え方で、貯蔵目的がないものは取扱所の一部として扱うという整理につながっています。

ドラムの一時置場は政令第23条の特例基準を参照する

一般取扱所であるドラム詰替場に附属の屋外置場を設けることについて照会がありました。
貯蔵タンクの危険物をドラムに詰め替えて運搬する際、一時的に貯蔵の状態となることがあるので、原則として貯蔵所を設けてこれに収納する取扱いとすべきであると考えるが、一般的にその期間は3日以内であるから、この置場を屋外に排水溝を設けた舗装地盤として設け、この一般取扱所の附属置場とすることを認めてよろしいか、という内容です。
この置場の保有空地または保安距離は一般取扱所の基準を適用するものとしています。

回答では、「危険物の規制に関する政令第23条の特例基準について」(昭和36年5月10日付け自消甲予発第25号)の第2の3に、製油所および油槽所におけるドラムの一時置場に関する基準が示されているので、それを参照されたいとされています。
つまりこの論点は個別に判断するものではなく、すでに特例基準として整理されているという回答です。一時置場を設けたい場合は、まずこの通達の基準に照らして計画を立てるのが実務の順序になります。

よくある質問

Q. 工場の内部を壁で区画すれば室ごとに別の取扱所にできますか?
できません。ブロックを小屋裏まで積み上げて開口部を設けず、各室の出入口を外からしか入れない構造にした事例でも、一の危険物施設と解されています。危険物を取り扱う室の数量を合算し、1日に指定数量以上となる場合は一般取扱所として規制されます。
Q. 地下タンク5基と地上のポンプ設備はどう申請しますか?
地下タンク5基をまとめて1の地下タンク貯蔵所とし、油ポンプ設備とドラム詰設備をあわせて一の一般取扱所として、それぞれ規制されるものと解するとされています。全部を一つにするのでも、設備ごとにばらばらに分けるのでもありません。
Q. 地下タンクの直上で詰替えをする場合は1つの施設になりますか?
タンクの目的によります。地下タンクが貯蔵を目的としたものであれば、地下タンク貯蔵所と一般取扱所の2施設に分かれます。貯蔵を目的としないものであれば、地上部分と地下タンクの一体が一の一般取扱所として規制されます。
Q. ビルの地下にあるボイラー用の重油タンクはどの区分になりますか?
サービスタンクである場合は、一般取扱所であるボイラー室等に付属したタンクとして扱うことが正しいとされています。メインタンクを指す場合は結論が異なり得るため、どちらを指しているのかを明確にして協議してください。

まとめ

  • 危険物施設の単位は建築物の区画や設備の位置ではなく、取扱いが実質的に一体かどうかで決まる
  • 内部を3室に区画しても一の危険物施設と解され、危険物を取り扱う室の数量を合算して判定される
  • 地下タンク5基は1の地下タンク貯蔵所、油ポンプ設備とドラム詰設備はあわせて一の一般取扱所として規制される
  • 地下タンクが貯蔵目的なら2施設に分かれ、貯蔵目的でなければ地上部分と一体で一の一般取扱所になる
  • ビルの地下のボイラー用タンクは、サービスタンクであれば一般取扱所に付属したタンクとして扱う
  • ドラムの一時置場は昭和36年5月10日付け自消甲予発第25号の特例基準を参照する

壁を厚くしても分けられへんのに、タンクとポンプは分かれるんやな。
ややこしいわ。

基準は一つです
貯蔵という目的があるかどうかで切る、という考え方に立ち返れば整理できます。

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第2条・第3条 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第19条 e-Gov法令検索
  • 「危険物の規制に関する政令第23条の特例基準について」(昭和36年5月10日付け自消甲予発第25号)
  • 内部を区画する危険物一般取扱所の取り扱いについて(昭和39年7月9日付け自消丙予発第65号 予防課長から神奈川県企画調査部長あて回答)
  • 一般取扱所であるドラム詰替場附属の屋外置場の設置について(昭和40年1月19日付け自消丙予発第8号 予防課長から鳥取県総務部長あて回答)
  • 危険物関係設置許可申請について(昭和40年2月17日付け自消丙予発第22号 予防課長から香川県総務部長あて回答)
  • 地下タンクを設けた危険物取扱所について(昭和40年4月15日付け自消丙予発第71号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)一般取扱所の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
eyecatch-kikenbutsu-shisetsu-tan-i
危険物の許可申請でつまずきやすいのが「どこまでを一つの施設として数えるのか」という問題です。 工場の内部を壁で仕切れば室ごとに別の取扱所になるのか、地下タンクと地上のポンプは一つの施設なのか、ボイラー用のタンクはどの区分...