BLOG

運搬容器とみなせる範囲はどこまでか|耐油性の容器の定義からナトリウム硫黄電池と給油機器一体型まで

運搬容器とみなせる範囲を解説するアイキャッチ画像

危険物の運搬容器の話は基準そのものより「これは運搬容器として扱えるのか」という入口の判断で止まることが多いものです。
耐油性の容器という言葉ひとつ取っても条文に定義はなく通達で示された例を追わなければ判断できません。
さらに近年はナトリウム硫黄電池や給油機器と一体になった容器のように従来の枠に収まらないものが増えています。
この記事では運搬容器としてどこまでみなせるのかを消防庁の通達に沿って整理します。

耐油性の容器って結局どんな容器のことなん。条文にはそれ以上書いてへんやんか。

定義は平成11年9月30日付け消防危第92号で示されています。
収納された危険物と反応せず容易に壊れず口から漏れない構造であれば形状は問わないという考え方です。

ほなタンクコンテナとか電池みたいなもんはどう扱うんや。運搬容器の表に載ってへんやろ。

そこは個別の通達で答えが出ています。
電池は単電池又はモジュールのどちらかが基準に適合していればよく、表示板の付いた移動貯蔵タンクは運搬容器とみなせます。この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • 耐油性の容器とは収納された危険物と反応しない材料で造られ容易に破損せず口から収納物が漏れるおそれがない構造のものをいい形状は問わない
  • ナトリウム硫黄電池を運搬する場合は単電池又はモジュールのいずれかが危険物の規制に関する政令第28条の基準に適合していればよい
  • 国際海事機関の表示板が貼付された移動貯蔵タンクのうち一定の基準に適合するものは移動貯蔵タンクではなく運搬容器とみなして運搬できる
  • 給油機器と一体になった構造の容器も表示から基準と性能が確認できれば機械により荷役する構造を有する運搬容器に該当する

耐油性の容器は反応せず壊れず漏れなければ形は問わない

油に侵されず漏れない構造の耐油性の容器

危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示には耐油性の容器という言葉が出てきますが告示自体にその定義はありません。
そこで平成11年9月30日付け消防危第92号において、耐油性の容器とはどのような容器をいうのか、という問いが立てられています。

回答は収納された危険物と反応しない材料で造られた容器で、容易に破損するおそれがなく、かつ、その口から収納物が漏れるおそれがない構造であるものをいう、というものです。
そして形状は問わないものであると明記されています。
材質や形の名前で決めるのではなく、中身と反応しないこと、壊れないこと、漏れないことという三つの機能を満たしているかどうかで判断する構成です。

同じ通達では耐油性の容器に該当する例も具体的に挙げられています。

  • 平成2年10月31日付け消防危第105号で回答されているもの アルミホイル缶、合成缶、板紙箱(内側プラスチック袋付き)、板紙箱(プラスチック加工紙製)、コンポジット容器
  • 多層プラスチックフィルム袋 スタンディングパウチ(平成10年10月13日付け消防危第90号で回答されているもの)およびピロー包装

スタンディングパウチはポリエステルフィルム、ナイロンフィルム及びポリエチレンフィルム(内側)の順で積層された3層フィルム、ピロー包装はナイロンフィルム、エバーフィルム及びポリエチレンフィルム(内側)の順で積層された3層フィルムとして図示されています。
どちらも硬い缶ではなく袋ですが、耐油性の容器として並べられています。

ナトリウム硫黄電池は単電池かモジュールのどちらかが基準に適合すればよい

モジュールの中に単電池が並ぶナトリウム硫黄電池

平成17年12月19日付け消防危第295号の別紙には運搬容器関係として、ナトリウム硫黄電池(Na-S電池)を運搬する場合、運搬容器としていかなる基準に適合する必要があるか、という問いがあります。
ナトリウム硫黄電池は単電池が集まってモジュールを構成する二重構造になっており、どちらの単位で基準を見るのかがはっきりしないという悩みです。

回答は単電池又はモジュールのいずれかが危険物の規制に関する政令第28条の基準に適合する必要があるというものです。
両方に基準を課すのではありません
外側のモジュールが運搬容器として基準に適合していれば中の単電池までは問わず、逆に単電池が基準に適合していればモジュールは運搬容器としての基準を問わない、という読み方になります。

入れ子になった容器のどこを運搬容器と捉えるかという問題に対して、いずれか一方で足りると割り切った点がこの回答の要点です。

表示板が貼付された移動貯蔵タンクは運搬容器とみなして運搬できる

鋼製フレームに収まったタンクと表示板

平成25年2月22日付け消防危第25号の別紙には運搬容器関係として次の問いがあります。
国際海事機関(IMO)が採択した危険物の運送に関する規程(IMDGコード)に定める基準に適合している旨を示す表示(IMO表示板)が貼付されている移動貯蔵タンクのうち、危険物の規制に関する規則別表第3の3(金属製の欄に限る)又は別表第3の4(金属製の欄に限る)に掲げる基準に適合するものについては、規則第43条第1項第2号の機械により荷役する構造を有する容器の基準も満たすことから、当該タンクを移動貯蔵タンクではなく運搬容器とみなして運搬を行うことを認めてよいか、というものです。

回答はお見込みのとおりです。
移動タンク貯蔵所ではなく運搬として扱えます
ただし最大容積については、IMO表示板の交付に係る各国政府機関又はこれに代わる機関の許可書等により確認できるものであることという条件が付いています。表示板だけで容積まで信用するのではなく、その裏付けとなる許可書等で確認せよという趣旨です。

タンクという形をしているから移動貯蔵タンクだ、と形で決めるのではなく、規則が求める運搬容器の基準を満たしているかどうかで扱いを決めるという考え方が現れた回答です。

コンテナへの収納は隙間を作らず固定するのが基本になる

当て木で隙間を埋めて荷物を固定したコンテナ内部

同じ平成25年2月22日付け消防危第25号の回答には続きがあります。
ドライコンテナ等への危険物運搬容器の収納方法については、国際海事機関等がガイドライン「Guidelines for Packing of Cargo Transport Units(CTUs)」の中で例示しているので指導の参考とされたいとされ、その仮訳が別紙として付けられています。

別紙3.2.3では均一な形状と大きさの荷物を積む場合には、壁から壁まで隙間なく積み込むべきであるとされています。
そのうえで、多くの場合では隙間が発生することがあるとして、荷物間のスペースが大きすぎる場合は固定しなければならないと示されています。
具体的な手段として荷敷き、折り畳まれた段ボール、エアバッグ又は他の適切な手段が挙げられています。

図としても、くさびによる荷物の回転防止、当て木による固定、トレーラーのヘッドボードへの固定、Hブロックによる固定、縦置きパレットによる固定などが示されています。
これらは告示や規則の条文ではなく指導の参考として示されたものですが、荷崩れによる漏えいや破損を防ぐという意味で運搬の実務に直結する内容です。

給油機器と一体になった容器も機械により荷役する構造の運搬容器になる

ポンプとホースが一体化しフォークリフトポケットを持つ角型容器

令和4年7月26日付け消防危第163号の別紙は、給油機器と一体となった構造の運搬容器についての照会です。
問われているのは、国際連合の危険物輸送に関する勧告に基づく表示(UN表示)が付された軽油又は灯油を収納する、給油機器と一体となった構造の運搬容器の扱いです。

  • 構造 機械によるつり上げを行うためのつり具の取付け部分及びフォークリフトポケットを有する
  • 一体化 運搬容器上部に組み込んだ給油機器(ポンプ・ホース等)と一体となった構造で、車両に積載したまま車両の電源により給油等が可能
  • 種類と容積 硬質プラスチック製に該当し、内容積は最大で450リットルであり、積み重ねられるようには設計されていない

照会者は、当該運搬容器については付されているUN表示により危険物の規制に関する規則第43条第1項第2号に定める基準及び同条第4項第2号に定める性能を有していることがわかることから、機械により荷役する構造を有する運搬容器に該当していると解してよいか、と尋ねています。

回答はお見込みのとおりです。
給油機器が付いていても運搬容器のままです
ポンプやホースという給油の設備が組み込まれていることで給油取扱所の設備に近づいて見えますが、容器としての基準と性能が表示で確認できる以上、運搬容器としての位置づけは変わらないという判断です。

よくある質問

Q. 耐油性の容器に決まった形はありますか?
ありません。平成11年9月30日付け消防危第92号では、収納された危険物と反応しない材料で造られた容器で、容易に破損するおそれがなく、かつ、その口から収納物が漏れるおそれがない構造であるものをいい、形状は問わないものであるとされています。該当例としてアルミホイル缶や合成缶のような缶のほか、スタンディングパウチやピロー包装のような多層プラスチックフィルム袋も挙げられています。
Q. ナトリウム硫黄電池はモジュールと単電池の両方が基準に適合する必要がありますか?
平成17年12月19日付け消防危第295号では、単電池又はモジュールのいずれかが危険物の規制に関する政令第28条の基準に適合する必要があるとされています。いずれか一方が適合していればよく、両方に基準を課すものではありません。
Q. IMO表示板が付いたタンクを運搬容器として運ぶときに気をつけることは?
平成25年2月22日付け消防危第25号では、危険物の規制に関する規則別表第3の3又は別表第3の4の金属製の欄に掲げる基準に適合するものについて、移動貯蔵タンクではなく運搬容器とみなして運搬することが認められています。ただし最大容積については、IMO表示板の交付に係る各国政府機関又はこれに代わる機関の許可書等により確認できるものであることとされています。
Q. ポンプやホースが付いた容器は給油設備として扱われますか?
令和4年7月26日付け消防危第163号では、給油機器と一体となった構造の運搬容器について、付されているUN表示により危険物の規制に関する規則第43条第1項第2号に定める基準及び同条第4項第2号に定める性能を有していることがわかることから、機械により荷役する構造を有する運搬容器に該当すると解して差し支えないとされています。

まとめ

  • 耐油性の容器とは収納された危険物と反応しない材料で造られ容易に破損せずその口から収納物が漏れるおそれがない構造のものをいい形状は問わない
  • 該当例にはアルミホイル缶や板紙箱などの硬い容器のほかスタンディングパウチやピロー包装のような多層プラスチックフィルム袋も含まれる
  • ナトリウム硫黄電池を運搬する場合は単電池又はモジュールのいずれかが危険物の規制に関する政令第28条の基準に適合していればよい
  • IMO表示板が貼付された移動貯蔵タンクのうち規則別表第3の3又は別表第3の4の金属製の欄の基準に適合するものは運搬容器とみなして運搬できる
  • その場合の最大容積は表示板の交付に係る各国政府機関又はこれに代わる機関の許可書等により確認できるものであることが求められる
  • ドライコンテナ等への収納方法は国際海事機関等のガイドラインが指導の参考として示され隙間を作らず固定することが基本とされている
  • 給油機器と一体となった構造の容器もUN表示により基準と性能が確認できれば機械により荷役する構造を有する運搬容器に該当する

形やなくて中身の性能で見るんやな。えらいすっきりしたわ。

運搬容器の判断はどれも同じ形をしています。
基準と性能を満たしているかを確かめ、満たしているなら名前や見た目にかかわらず運搬容器として扱う、という順番です。

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第28条 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第43条・別表第3の3・別表第3の4 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号)第68条の2の2 e-Gov法令検索
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成11年9月30日付け消防危第92号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)容器関係(則第39条の3関係)
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成2年10月31日付け消防危第105号 危険物規制課長から各都道府県消防防災主管部長あて)告示第68条の2の2関係
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成10年10月13日付け消防危第90号 危険物規制課長から各都道府県消防防災主管部長あて)別紙7 運搬容器関係
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成17年12月19日付け消防危第295号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各政令指定都市消防長あて)別紙 運搬容器関係
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成25年2月22日付け消防危第25号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 運搬容器関係
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和4年7月26日付け消防危第163号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 給油機器と一体となった構造の運搬容器について
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の運搬容器に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
運搬容器とみなせる範囲を解説するアイキャッチ画像
危険物の運搬容器の話は基準そのものより「これは運搬容器として扱えるのか」という入口の判断で止まることが多いものです。 耐油性の容器という言葉ひとつ取っても条文に定義はなく通達で示された例を追わなければ判断できません。 さ...