法令が改正されると既存の危険物施設をどこまで従前のまま使えるのかという問題が必ず出てきます。
経過措置は救済の規定ですが適用の条件は細かく決まっており条文の言葉の読み方ひとつで結論が変わります。
許可を受けているという状態がどの時点を指すのか、確認はどこまで求められるのかといった点は特に迷いやすいところです。
この記事では経過措置の適用をめぐる実務の判断を消防庁の通達に沿って整理します。
うちのタンク改正後の基準にはちゃんと合ってるねん。ほな許可のときの基準は多少ずれてても令第23条で通るやろ。
それは通りません。
平成元年7月4日付け消防危第64号で、改正後の基準に適合しているという理由で令第23条を適用することはできないとされています。
厳しいなあ。ほな許可を受けて設置されているっていうのはどこまでできてたらええんや。
そこは明確です。
完成検査まで完了して完成検査済証の交付を受けている必要があります。工事中や検査待ちでは足りません。この記事でまとめて解説します!
- 施行日前に改正後の技術上の基準に適合していてもそれを理由に危険物の規制に関する政令第23条を適用して許可することはできない
- 法改正で危険物から非危険物になった物品を引き続き貯蔵する場合改正法附則による許可の継続を選択することはできない
- 経過措置でいう現に許可を受けて設置されているとは完成検査まで完了し完成検査済証が交付されている状態を指す
- 適用要件の漏れない構造の確認は必要に応じて目視等によって確認すればよく水張試験までは求められない
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目次
改正後の基準に適合していても政令第23条の特例は使えない

危険物の規制に関する政令第23条は、市町村長等が安全であると認めるときに技術上の基準の特例を認める規定です。
平成元年7月4日付け消防危第64号では、施行日前において改正後の法に基づく位置、構造及び設備の技術上の基準に適合していれば、許可の時点における基準に適合していなくても政令第23条を適用し許可してよいかという照会が出されました。
先取りは特例の理由になりません。
許可は許可の時点の基準で判断するものであり、将来の基準に合っているからという理由で現在の基準を外すことはできないという整理です。
政令第23条は個別の事情に応じて安全性を確認したうえで認める規定であって、基準そのものを新旧で読み替えるための道具ではありません。
改正を先取りした設備であっても、許可の場面では今の条文で判断されます。
非危険物になった物品を貯蔵し続けても許可の継続は選べない

同じ通達の改正法附則第5条関係では、法改正により危険物から非危険物となる物品を貯蔵している屋外タンク貯蔵所で、引き続き当該物品を貯蔵する場合に改正法附則第5条第2項による許可の継続を選択できるかが問われています。
照会文では例として濃硫酸が挙げられています。
危険物でなくなれば許可の対象から外れます。
貯蔵している物品が危険物でなくなった以上、危険物施設としての許可を続けるという選択肢はないという判断です。
あわせて改正令附則第2条第1項第4号関係では、施行日における指定数量の倍数とは改正後の令に基づく指定数量の倍数をいうものかという照会があり、お見込みのとおりとされています。
倍数を数えるときの分母は改正後の指定数量であり、改正前の数値で計算するものではありません。
許可を受けて設置されているとは完成検査済証の交付まで済んだ状態を指す

経過措置の条文にはこの政令の施行の際、現に……許可を受けて設置されている……という書き出しが繰り返し出てきます。
改正令附則第2条第4項関係では、この文言がこの政令の施行の際に完成検査まで完了しているものと解してよいかと問われました。
設置許可を受けただけでは足りません。
工事中のものや完成検査を待っているものは、経過措置の対象となる既設の施設には含まれないという線引きです。
設置の許可と完成検査済証の交付には時間差があります。
改正の施行日をまたぐ工事では、施行日の時点で完成検査済証が出ているかどうかが経過措置に乗れるかどうかを分けることになります。
漏れない構造の確認は目視でよく隣接の非危険物タンクも撤去不要

改正令附則第4条第1項第2号、第5条第1項第1号および第6条第1項第1号関係では、経過措置の適用要件とされている漏れない構造の確認にあたって水張試験等を行うべきかが問われました。
一律に水張試験まで求めるものではありません。
経過措置に乗るための確認であって、新設時と同じ試験を課す趣旨ではないという整理になります。
さらに改正令附則第4条第3項関係では、既設の屋外タンク貯蔵所の隣接タンクが非危険物タンクとなり保有空地が適合しなくなる場合に当該非危険物タンクを撤去する必要があるかが問われています。
回答は撤去する必要はないというもので、改正令附則第4条第3項の経過措置の適用を受けるためとされました。
自分の施設は何も変わっていないのに隣の物品の扱いが変わったせいで空地が不足するという事態を、経過措置で受け止める形です。
移動貯蔵タンクの水圧試験は水以外の不燃性の液体や気体でもよい

同じ平成元年7月4日付け消防危第64号の規則第62条の4第1項および告示第71条関係では、移動貯蔵タンクの定期点検のうちの水圧試験について二つの問いが立てられています。
- 問1 当該水圧試験は、危険物の規制に関する政令第15条第1項第2号に定める水圧試験と同じ方法により行うのか
- 問2 平成5年5月23日において、設置の許可に係る完成検査済証の交付を受けた日又は前回の水圧試験を行った日から、すでに5年以上経過している場合には、直ちに水圧試験を実施しなければならないか
ただし水以外の不燃性の液体又は不燃性の気体を用いて行う試験によっても差し支えないとされました。
水でなくてもかまいません。
問2もお見込みのとおりとされ、期限を迎える移動貯蔵タンクについては期日までに計画的に点検を行うよう留意する必要があると付け加えられています。
水圧試験という名前が付いていても、使う媒体は水に限られません。
内部を水にさらしたくない場合でも、不燃性の液体や気体を用いれば同じ試験として扱えるという点は実務上の意味が大きいところです。
よくある質問
まとめ
- 施行日前に改正後の技術上の基準に適合していてもそれを理由に危険物の規制に関する政令第23条を適用して許可することはできない
- 法改正により危険物から非危険物となった物品を引き続き貯蔵する場合に改正法附則第5条第2項による許可の継続を選択することはできない
- 施行日における指定数量の倍数とは改正後の令に基づく指定数量の倍数をいう
- この政令の施行の際現に許可を受けて設置されているとは完成検査まで完了し完成検査済証が交付されていることを意味する
- 経過措置の適用要件である漏れない構造の確認は必要に応じ目視等によって確認すればよい
- 隣接タンクが非危険物タンクとなり保有空地が適合しなくなっても改正令附則の経過措置により当該非危険物タンクを撤去する必要はない
- 移動貯蔵タンクの定期点検の水圧試験は政令第15条第1項第2号と同じ方法によるが水以外の不燃性の液体又は不燃性の気体を用いた試験でも差し支えない
完成検査済証が出てるかどうかが分かれ目なんやな。覚えとくわ。
経過措置は既にできあがっているものを守る規定です。
だからこそ入口の判定は書類で確認できる事実に寄せられ、逆に中身の確認は目視で足りるといった具合に緩められています。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第15条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の4 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号)第71条 e-Gov法令検索
- 危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について(平成元年7月4日付け消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)経過措置関係
- 危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について(平成元年7月4日付け消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)その他(規則第62条の4第1項・告示第71条関係)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成元年12月21日付け消防危第114号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)規則第40条の2関係ほか
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の経過措置に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




