危険物の規制に関する規則は、地下タンクの外面をどう保護するかを具体的に書いています。
しかし材料も設備も年々新しいものが出てきます。
規則に書かれていない塗料を使ってもよいのか。
配管に電気のヒーターを巻いてもよいのか。
地下タンクのふたの上に計量機を置いてもよいのか。
昭和56年から昭和61年にかけての5つの質疑を通して、新しい材料や設備がどう認められてきたのかを解説します。
地下タンクの外面保護って規則第24条に書いてある方法しかあかんの?
もっとええ塗料あるんやけど。
昭和56年と昭和57年に、ポリエステル樹脂とガラスマットによる方法、ガラスフレーク入りタールエポキシ塗料による方法がそれぞれ照会されて、どちらもさしつかえないとされています。
規則第24条に代えて実施することが認められました。
ほな指定数量に届かへん放電加工機はどうなん?
条例の話やし特例基準もないって聞いたけど。
そちらも道が示されています。
火災の発生および延焼のおそれが著しく少なく、災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは特例を認めてさしつかえないとされました。5件まとめて解説します!
- ポリエステル樹脂とガラスマットで厚さ2ミリメートル以上に仕上げる外面保護は政令第23条を適用し規則第24条に規定する方法に代えて実施することを認めてさしつかえない
- ガラスフレーク入りタールエポキシ塗料で乾燥膜厚1.5ミリメートル以上に仕上げる方法もさしつかえない
- いずれも試験項目ごとの物性を資料で示したうえでの回答である
- 屋外および屋内貯蔵タンクと配管への電気加熱保温設備は添付された資料から判断すれば認めてさしつかえない
- 地下貯蔵タンクの鉄筋コンクリートのふたの上部にアイランドを設けて固定給油設備を設置することもポンプ設備を設置することもさしつかえない
- ただしマンホールプロテクターや点検口や検知管のある場所は除くという前提が付いている
- 指定数量の5分の1以上指定数量未満の放電加工機は火災の発生および延焼のおそれが著しく少なく被害を最少限度に止めることができると認めるときは特例を認めてさしつかえない
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目次
ポリエステル樹脂とガラスマットによる外面保護が認められた

長崎県から、管下消防本部の照会として、地下貯蔵タンクの外面保護方法の特例についての疑義が出されました。
危険物の規制に関する政令第23条を適用し、危険物の規制に関する規則第24条に規定する方法に代えて次の方法で実施することを認めてよいかという問いです。
- 塗装材は所定の物性を有するポリエステル樹脂を使用する
- 覆装材は日本工業規格G3491のガラスマットを使用する
- 塗覆装の方法はタンクの外面に所定の工法で施工し、厚さ2ミリメートル以上に達するまで上塗りとする
照会には、ポリエステル樹脂の物性が試験項目ごとに一覧で添えられていました。圧縮強度は130キログラム毎平方センチメートル以上、曲げ強度は430キログラム毎平方センチメートル以上、引張強度は1,040キログラム毎平方センチメートル以上。吸水率は0.1パーセント以下で、ガソリンに24時間浸けても異状なしという内容です。
工法も図で示されており、タンクの外面に接着剤を塗ってからガラスマットとポリエステル樹脂を交互に重ね、中塗りと表面塗装で仕上げる構成でした。
規則に書かれた方法だけが唯一の答えではありません。
規則第24条が求めているのは、地中で長期間タンクの鋼板を腐食から守ることです。その目的を果たせるかどうかを、試験項目ごとの数値で示したことが判断の土台になりました。
厚さ2ミリメートル以上という仕上がりの基準を自分で置いている点も見逃せません。材料の性能だけでなく、施工した結果どこまで確保するかまでセットで示されています。
ガラスフレーク入りタールエポキシ塗料も従来品との比較で認められた

翌年、大阪府から同じ論点の照会が出されました。
管下消防本部から、規則第24条の規定による地下タンクの外面保護方法に代えて、次の方法を政令第23条を適用し認めてよいかという内容です。
- 塗装材料は、所定の物性を有するガラスフレーク入りタールエポキシ塗料を使用する
- 塗装方法は、ミルスケールやサビ等を完全に除去した後、最初に溶接ラインについて刷毛塗りを1回行い、その後エアレススプレーにより全面を2回以上塗装し、全体の乾燥膜厚が1.5ミリメートル以上となるように仕上げる
- 検査方法ならびに特徴は別添資料のとおり
この照会で目を引くのは、添えられた資料が従来のアスファルトルーフイングとの比較表になっていたことです。同じ試験項目で二つを並べています。
吸水率は0.1パーセント以下に対して1.5から1.0。決定的なのは耐油性で、ガソリンに24時間浸けたとき0.3パーセント以下に対し、アスファルトルーフイングは溶解とされています。
同じ土俵に並べたから差が見えました。
回答はさしつかえないです。新しい材料が優れていると主張するのではなく、規則が認めている材料と同じ試験で数値を並べるという示し方が、判断する側にとって読みやすい形になっています。
溶接ラインを先に刷毛で塗ってから全面をスプレーするという手順まで書かれている点も、前の記事で見た配管の防食と同じ考え方です。
貯蔵タンクと配管への電気加熱保温設備も認められる

群馬県から、危険物規制事務上の疑義として照会がありました。
屋外貯蔵タンクおよび屋内貯蔵タンクと配管に電気加熱保温設備を設置してよいかという問いです。貯蔵品名は第四類の動植物油類でした。
照会された設備は自己制御型ヒーターで、オート・トレースと呼ばれる方式です。構造例として示された断面は幅10ミリメートルほどの平たいテープ状で、2本の導線を自己制御性抵抗体ではさみ、外側をフッ素系樹脂被覆でくるむ構成になっていました。
動植物油類は冬期に固まりやすく、タンクや配管を温めておかないと流れません。かといって危険物のそばで熱源を使うことには当然の懸念があります。
効いたのは自己制御型という仕組みです。抵抗体そのものが温度に応じて発熱量を変えるため、局所的に温度が上がりすぎる状態になりにくい構造です。
ここでも添付された資料から判断すればという言い回しが使われています。工法および設備の概要が資料として添えられていたことが前提です。
地下貯蔵タンクのふたの上に固定給油設備やポンプ設備を置いてよい

大阪府から、固定給油設備等の設置場所についての照会がありました。
管下消防本部から出された内容は2つです。
- 固定給油設備について 給油取扱所、灯油専用一般取扱所、小口詰替一般取扱所において、地下貯蔵タンクの鉄筋コンクリートのふたの上部にアイランドを設け固定給油設備を設置してよろしいか
- ポンプ設備について 地下タンク貯蔵所の地下貯蔵タンクの鉄筋コンクリートのふたの上部にポンプ設備を設置してよろしいか
いずれにも地下貯蔵タンクマンホールプロテクター、点検口、検知管のある場所は除くものとするというただし書きが付けられていました。
そのうえで、もし1と2が認められないのであれば根拠条文を教示願いたい、という3つ目の問いが添えられています。
3つ目に対して根拠条文が示されなかったのは、認められるのだから根拠条文を挙げる必要がないという趣旨だと読めます。
除外を先に書いたただし書きが効いています。
地下貯蔵タンクの上に構造物を置くこと自体が問題なのではなく、点検や検知のために人が近づく必要がある部分をふさぐことが問題になります。マンホールプロテクター、点検口、検知管という3つを照会側があらかじめ除いていたので、残る部分については素直に認められました。
指定数量未満の放電加工機にも条例の特例を認めてよい

最後は大阪府からの、火災予防条例準則第31条の運用についての照会です。
放電加工機は加工液に危険物を使うため、量によっては危険物としての規制がかかります。指定数量以上であれば政令の世界ですが、指定数量の5分の1以上指定数量未満は市町村条例の世界です。
照会側の問題意識はこうでした。放電加工機の取扱いについては昭和61年1月31日付け消防危第19号により示されたところであるが、火災予防条例準則第31条に規定する少量危険物の貯蔵または取扱いについては特例基準が定められていない。
一方で、危険物保安技術協会が型式試験確認済証を貼付した放電加工機については従前に比較して安全性の向上が図られている。これを考慮して、放電加工機を設置する場所の位置、構造または設備について特例を認めることとしてよいか、というものです。
特例を認める条件が言葉で定義されました。
「火災の発生および延焼のおそれが著しく少ない」ことと「被害を最少限度に止めることができる」ことの2つです。この言い回しは、旧防空ごうの屋内貯蔵所が認められたときの回答と同じ組み立てになっています。
あわせて、特例を認めてよい対象が室内の構造、火花を発する機械器具等の使用、危険物の加熱方法等と具体的に列挙されました。何でも緩められるわけではないという線引きです。
型式試験確認済証が貼られていること自体が特例の理由になったのではなく、安全性の向上を考慮する材料として扱われている点も読みどころです。
よくある質問
まとめ
- ポリエステル樹脂と日本工業規格G3491のガラスマットで厚さ2ミリメートル以上に仕上げる外面保護は、規則第24条に規定する方法に代えて実施することを認めてさしつかえない
- ガラスフレーク入りタールエポキシ塗料で乾燥膜厚1.5ミリメートル以上に仕上げる方法もさしつかえない
- 後者は従来のアスファルトルーフイングと同じ試験項目で並べた比較表が添えられており、耐油性ではアスファルトルーフイングが溶解すると記載されている
- 屋外および屋内貯蔵タンクと配管への電気加熱保温設備は、添付された資料から判断すれば認めてさしつかえない
- 地下貯蔵タンクの鉄筋コンクリートのふたの上部にアイランドを設けて固定給油設備を設置すること、ポンプ設備を設置することはいずれもさしつかえない
- ただしマンホールプロテクター、点検口、検知管のある場所は除くという前提が付いている
- 指定数量未満の放電加工機は、火災の発生および延焼のおそれが著しく少なく被害を最少限度に止めることができると認めるときは、室内の構造や火花を発する機械器具等の使用や危険物の加熱方法等について特例を認めてさしつかえない
新しいもんを通すには、古いもんと同じ試験で並べたらええねんな。
そこが要点です。
優れていると言葉で主張するのではなく、規則が認めている材料と同じ試験項目で数値を並べたことが、判断する側にとって読みやすい形になっています。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第17条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第24条 e-Gov法令検索
- 地下貯蔵タンクの外面保護方法の特例について(昭和56年10月8日付け消防危第135号 消防庁危険物規制課長から長崎県あて回答 昭和57年3月23日付け消防危第37号「1」)
- 地下タンクの外面保護方法について(昭和57年3月1日付け消防危第30号 消防庁危険物規制課長から大阪府あて回答 昭和57年3月23日付け消防危第37号「13」)
- 危険物規制事務上の疑義について(昭和58年12月1日付け消防危第127号 消防庁危険物規制課長から群馬県あて回答 昭和58年12月20日付け消防危第138号「18」)
- 固定給油設備等の設置場所について(昭和58年12月2日付け消防危第128号 消防庁危険物規制課長から大阪府あて回答 昭和58年12月20日付け消防危第138号「20」)
- 火災予防条例準則第31条の運用について(昭和61年6月2日付け消防危第59号 危険物規制課長から大阪府あて回答 昭和62年3月3日付け消防危第17号「8」)
- 放電加工機の取扱いについて(昭和61年1月31日付け消防危第19号)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)基準の特例に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




