消防法第27条は、消防隊が火災の現場に到着するために一般交通の用に供しない通路や公共の用に供しない空地などを通行できると定めています。
では火災現場に向かうのだから、どんな場合でも私有地を通ってよいのでしょうか。
また現場の指揮を執る上席消防吏員とは誰なのか、上空の取材ヘリコプターは自由に飛べるのかも問題になります。
この記事では消防隊の緊急通行権と消防活動の妨害をめぐる扱いを消防庁の質疑応答に沿って整理します。
火事のときは消防車がうちの土地を通ってもええんか。急いどるんやから当然か。
当然ではありません。
火災現場に向かう消防隊は緊急性を有していますが、直ちにどのような場合でも通行しうると解することはできないとされています。
ほな取材のヘリが上を飛ぶんはどうなんや。あれも邪魔になるやろ。
実際に問題になった事例があります。
航空局の回答では取材飛行であるために特別扱いをすることはないと明言されています。この記事でまとめて解説します!
- 消防隊が消防法第27条所定の場所を通行しうるのは特に緊急性のある場合でなければならない
- 公共の用に供しない空地とは個人の所有地で偶偶空地になっているようなものである
- 一般交通の用に供しない通路とは車馬交通禁止通路又は私設通路等一般交通の用に供しない通路を意味する
- 上席消防吏員とは火災現場において当該火災に対する消火責任を有する者のうち最上位の消防吏員を指す
▼
目次
私有地等を通行できるのは特に緊急性のある場合に限られる

消防隊の緊急通行権については、次のような照会が寄せられました。
消防隊が火災の現場に出動する場合は当然緊急の必要があるのであるから、どんな場合であつても一般交通の用に供しない道路又は公共の用に供しない空地及び水面を通行しうると解して支障ないかという問いです。
そのうえで消防隊が同条所定の場所を通行しうるのは特に緊急性のある場合でなければならないとされています。
ではどのような場合が特に緊急性のある場合にあたるのでしょうか。
回答には具体例が挙げられています。通行途中に障碍物があつて通行不能の場合とか、現場の状況により僅かな時間的差異によつて重大災害が予想せられる場合等の如きであるとされました。
火災現場に向かっているというだけでは足りず、その通行が必要になっている具体的な事情が求められるという整理です。
常に通れるわけではありません。
公共の用に供しない空地とは偶偶空地になっている個人の土地をいう

では条文にいう場所とは具体的に何を指すのでしょうか。
まず消防法第27条中の公共の用に供しない空地とはどんな場所かが問われました。
公園や広場のように公共の利用に供されている土地ではなく、たまたま空いている私有地が想定されているということです。
自分の土地が更地になっている、資材置場として使っているといった状態がこれにあたります。
そうした土地は前の項目でみたとおり、特に緊急性のある場合には消防隊の通行の対象になりうるということになります。
一般交通の用に供しない通路とは私設通路等をいう

もうひとつの語についても照会があります。
消防法第27条中の一般交通の用に供しない通路とはどんな通路かという問いでした。
私道や車両禁止の道が対象です。
マンションの敷地内通路や、車止めのある歩行者専用の路地などが実際には該当します。
これらは一般の車両が通れない場所ですが、消防隊は要件を満たせば通行できるという位置づけです。
なお消防用車両については、車種によって扱いが分かれます。
動力ポンプ等の運搬用トラックは消防用車両でなく消防自動車であり、道路交通法施行令第14条に規定するところにより運転中の場合緊急自動車としての取扱いを受けるとされています。
上席消防吏員とは消火責任を有する者のうち最上位の者をいう

消防法第28条は消防警戒区域について定めており、その第3項に上席消防吏員という語が出てきます。
これが誰を指すのかが問われました。
そのうえで通常は当該防火対象物を管轄する消防署長、消防署長がいないときはその代理者であるとされています。
管轄がまたがる場合の扱いも示されています。
当該防火対象物が2以上の消防署の管轄区域に及ぶ場合は、上位の消防署長が上席消防吏員となるとされました。
消防警戒区域を設定して立入りを制限する権限は、この上席消防吏員が持つことになります。
消火活動を阻害するおそれのある低空飛行は許可されない

昭和40年9月7日付けの回答は、実際に起きた消火活動の妨害についての照会です。
昭和40年5月13日に横浜市鶴見区の運河で発生したタンカー火災において、消防隊が水上および陸上より消火活動を実施中に数機のヘリコプターが飛来し、現場および付近の石油タンク群上空を超低空飛行して取材活動を行ったという事案でした。
この爆音により現場指揮命令の伝達および周辺会社の自衛防ぎよ従事のための連絡マイク放送が徹底を欠く等の支障をきたすとともに、更に飛行翼の風圧で海面上のエヤーフオームが散乱して有効な消火の妨害となりましたとされています。
これに対する運輸省航空局長の回答が示されています。
低空飛行は一般的には航空法第81条により禁止されており特定の場合に許可されるが、この許可に当つては取材飛行であるために特別扱いをすることはなく、地上又は水上における消火活動を阻害するおそれのある場合には従来とも低空飛行の許可はしておらず今後も許可をしない方針です。
取材でも特別扱いはされません。
回答では今後の対応まで示されています。
低空飛行を行なつた航空機の国籍記号および登録記号ならびに低空飛行を実証する現場写真等を送付いただければ、調査の上所要の措置を講じますとされ、今後同種の不都合があつた場合も同様の方針ですと結ばれています。
よくある質問
まとめ
- 火災現場に出動する消防隊が緊急性を有していても直ちにどのような場合でも通行しうると解することはできない
- 消防法第27条所定の場所を通行しうるのは特に緊急性のある場合でなければならない
- 通行途中に障碍物があつて通行不能の場合や僅かな時間的差異によつて重大災害が予想せられる場合が例に挙げられている
- 公共の用に供しない空地とは個人の所有地で偶偶空地になつているようなものである
- 一般交通の用に供しない通路とは車馬交通禁止通路又は私設通路等を意味する
- 上席消防吏員とは消火責任を有する者のうち最上位の消防吏員を指し通常は管轄する消防署長である
- 防火対象物が2以上の消防署の管轄区域に及ぶ場合は上位の消防署長が上席消防吏員となる
- 消火活動を阻害するおそれのある低空飛行は取材飛行であっても許可されない方針である
急いどるからといって何でもありやないんやな。ちゃんと線が引かれてるわ。
そのとおりです。
敷地内の通路や消防活動空地の確保でお困りの際は、所轄消防署との協議も含めてご相談ください。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第27条・第28条・第29条 e-Gov法令検索
- 道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第14条 e-Gov法令検索
- 航空法(昭和27年法律第231号)第81条 e-Gov法令検索
- 消防隊の緊急通行権について
- 消防法第27条にいう「公共の用に供しない空地」とは
- 消防法第27条にいう「一般交通の用に供しない通路」とは
- 消防法第28条にいう「上席消防吏員」とは
- 消防用車両の範囲について(昭和38年8月9日付け自消丙予発第46号 予防課長から長崎市消防局長あて回答)
- 火災現場取材活動ヘリコプターの低空飛行制限について(昭和40年9月7日付け 横浜市消防局長あて回答/昭和40年11月2日付け空航第465号 運輸省航空局長から消防庁次長あて)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の消火の活動に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




