火災のあと、消防は現場に入って調査を行います。
消防法第31条は消防長または消防署長に火災の原因と損害の調査を義務づけており、そのための権利と義務が定められています。
警察の捜査とは何が違うのか、調査を断ることはできるのかは、条文を読んだだけでは分かりにくいところです。
この記事では火災調査の形態と権利義務を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
火事のあとの消防の調査って、警察の取り調べと同じようなもんか。
別のものです。
調査はいわゆる一種の任意捜査であり、令状請求権を伴わないとされています。
ほな何を調べるんや。原因だけとちゃうんか。
損害も調べます。
火災調査の形態は原因調査と損害調査の二つに分けられ、それぞれさらに二つに分かれます。この記事でまとめて解説します!
- 火災調査の形態は原因調査と損害調査の二つに分けることができる
- 調査はいわゆる一種の任意捜査であり令状請求権を伴わない
- 調査は犯罪と関連のない火災についてもその原因及び損害の調査を内容とする
- 立入検査の場合には関係者の承諾をうる義務および業務不妨害及び秘密不漏洩の義務がある
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目次
火災調査は原因調査と損害調査の二つに分けられる

消防法第31条は消防長又は消防署長に対して、消火活動の義務とともに調査の義務を課した規定です。
その調査の形態と権利義務について問われた照会があります。
原因調査は、犯罪の有無を考慮することを必要としない原因の調査すなわち原因別の調査と、犯罪的要素を加味した放火及び失火別の調査との二つに分類できるとされています。
損害調査についても内訳が示されています。
損害調査は、火災による損害調査と、消火作業による損害調査との二つに分けることができるとされました。
前者は、火災によつて破損され、破壊され、及び被害を受けた人的、物的損害調査であり、後者は、火災の消火作業のために破損され、破壊され、及び被害を受けた人的、物的損害調査であるとされています。
消火による損害も調べます。
火を消したことによって生じた被害も調査の対象に含まれている点は見落とされがちです。
放水による水損なども、この枠組みの中で把握されることになります。
調査は令状を伴わない任意の手続であり捜査とは異なる

消防の調査権と警察の捜査権の関係についても照会があります。
回答では消防法において与えられている調査権は、消防長又は消防署長が一定の資料に基づき、又は資料を発見蒐集して、火災の原因及び損害を決定する手続であると位置づけられています。
これに対して警察はその固有の事務として、犯罪の予防、捜査、鎮圧に当たることを責務とすることが法定せられ、また捜査機関としては、刑事訴訟法によつて、検察官と並んで、第一次的な立場を占めているとされます。
一つめは調査は火災の原因及び損害を決定するための手続であるのに対し、捜査は訴を提起し遂行するための手続であるという点です。
捜査については任意捜査のみならず強制捜査が許されているので、令状請求権を伴うとされました。
消防の調査に令状はありません。
ただし両者が無関係というわけではありません。
回答では消防は、その調査権によつて、火災原因及び損害の決定を行なうとともに、放火又は失火の犯罪の疑がある場合は、捜査機関の捜査の端緒を導き、又は捜査機関の捜査と併行して調査を行なうので、実際の運営において関連が非常に深いことは自明であるとされています。
調査のために消防長や消防署長には七つの権利が与えられている

調査を遂行するためには権利が与えられるとともに、一定の義務が伴うことも当然であるとされています。
まず与えられている権利が列挙されています。
また関係のある官公署に対する必要事項の通報請求権が第32条第2項に定められています。
警察の捜査と重なる場面についての権利もあります。
警察官が放火又は失火の犯罪の証拠物を押収した場合、それが検察官に送致されるまでの間の、その証拠物に対する調査権と、警察官が放火又は失火の犯罪の被疑者を逮捕した場合、それが検察官に送致されるまでの間の、その被疑者に対する質問権が第35条の2第1項に定められています。
証拠物や被疑者が検察官へ送致されるまでの間に限って、消防の側からも調査ができるという仕組みです。
捜査と調査が並行して進む場面を想定した規定といえます。
立入検査には承諾を得る義務や秘密を漏らさない義務が伴う

権利と対になる義務も四つ挙げられています。
最初の二つは立入検査に関するものです。
あわせて立入検査の場合の、関係者の業務不妨害及び秘密不漏洩の義務も同じ第34条に定められています。
承諾なしには入れません。
調査に立ち入る側にも守るべき線が引かれているということです。
建物の所有者や管理者としては、承諾を求められる立場にあることを知っておく意味があります。
もっとも前の項目でみたとおり、消防と警察は実際の運営において関連が非常に深いとされています。
調査に協力することが、結果として原因の解明と再発の防止につながるという面も踏まえて対応することになります。
放火や失火の疑いがあれば警察への通報と証拠物の保全が義務となる

残る二つの義務は、警察との関係に関するものです。
いずれも犯罪の疑いがある場合に発生します。
疑いを認めた時点で、通報するとともに証拠物を集めて保全することが求められるということです。
通報と保全はセットです。
回答は運営の心構えで締めくくられています。
調査権と捜査権の現実の運営に当たつては、現地の消防機関と警察機関が、その執行について十分な成果を期するとともに、円満な解決を図り、放火及び失火撲滅の共同目的の完全かつ強力な遂行を期さなければならないとされています。
よくある質問
まとめ
- 火災調査の形態は原因調査と損害調査の二つに分けることができる
- 原因調査は原因別の調査と放火及び失火別の調査との二つに分類できる
- 損害調査は火災による損害調査と消火作業による損害調査との二つに分けることができる
- 調査は火災の原因及び損害を決定するための手続で捜査は訴を提起し遂行するための手続である
- 調査はいわゆる一種の任意捜査であるが令状請求権を伴わない
- 権利として物的調査権と質問権と通報請求権と資料提出命令権と立入検査命令権が定められている
- 義務として立入検査の場合の承諾をうる義務と業務不妨害及び秘密不漏洩の義務が定められている
- 放火又は失火の犯罪の疑がある場合は所轄警察署への通報及び証拠物の収集保全の義務がある
消火で壊れた分まで調べてくれるんやな。そこは知らんかったわ。
そのとおりです。
調査の結果は再発防止の設備計画にも活かせます。復旧のご相談もあわせて承ります。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第31条・第32条・第33条・第34条・第35条・第35条の2 e-Gov法令検索
- 警察法(昭和29年法律第162号)第1条 e-Gov法令検索
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第180条 e-Gov法令検索
- 消防の行なう調査権と警察の行なう捜査権の違い
- 調査の形態と権利および義務について
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の火災原因及び損害調査に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




