消防法第40条第1項は、消防隊の通行や消防活動を妨害した者に対する罰則を定めています。
条文をよく読むと、第1号には故意にという要件が明記されているのに、第2号と第3号にはそれがありません。
では過失で妨げてしまった場合も罰せられるのか、子どもの場合はどうなるのかは、条文だけでは分かりません。
この記事では消防法の罰則における故意と過失の扱いを消防庁の質疑応答に沿って整理します。
うっかりホースを踏んだだけでも罰せられるんか。それは怖いで。
そこは整理されています。
回答では過失による妨害は罰則の対象にならないと解するとされています。
ほな逃げるためにやむを得ず邪魔してもうた場合はどうなるんや。
比較で決まります。
刑法第37条により避けようとした危険の方が大きいと判断された場合は罰せられないとされています。この記事でまとめて解説します!
- 過失による妨害は罰則の対象にならないと解する
- 消防法の罰則は行政罰であるが懲役又は罰金であるから刑法総則の規定が適用される
- やむを得ず妨害した場合は生じた損害と避けようとした危険との比較において危険の方が大きいと判断された場合は罰せられない
- 消防法第40条第1項第2号にいう消防団員には消防組織法第12条に規定する消防職員を含まないと解される
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目次
過失による妨害は罰則の対象にならない

消防法第40条第1項の各号を読み比べると、書き方に違いがあります。
照会では第1号該当者については故意に妨害の要件が明記してあるのに対し、第2号及び第3号該当者についてはその要件が記してないのは、法益の保護の面で、過失による妨害も罰則の対象とする趣旨であると解してよろしいかと問われました。
条文に故意という文字がないからといって、過失まで対象になるわけではないという整理です。
うっかりは罰せられません。
ではなぜそう解せるのか。
回答はここから、消防法という法律の性格をさかのぼって説明していきます。
消防法の罰則は行政罰だが刑法総則の適用を受ける

回答はまず消防法の位置づけを確認します。
そもそも、消防法は、消防行政に関する法律であつて、行政法規の一種である。したがつて、消防法に規定されたこの罰則は、行政罰であつて、刑事罰ではないとされています。
行政罰であれば刑法とは無関係になりそうですが、そうはなりません。
行政罰は法理論上は刑事罰ではないから、当然には刑事罰を定めている刑法の適用を受けるものではない。しかしながら、刑法第8条には、刑法総則は他の法令において刑を定めたものにも適用する、と規定していると述べられます。
行政罰中刑法で定めていると同種の懲役、禁錮、罰金、拘留、科料については、原則として刑法総則の規定が適用されるが、過料及び法律で前記以外のことを定めている場合のそれらについては、刑法総則の適用がないこととなるとされています。
そのうえで結論に至ります。
消防法第40条で規定する罰則は懲役又は罰金であるから、前記によつて明らかな如く、刑法総則の規定が適用されるとされました。
刑法第38条により罪を犯す意志のない行為は罰せられないことになつているので、消防法第40条第1項の第2号及び第3号においても、この規定が適用され、故意に妨害という要件がなくても、故意に妨害した者にのみ適用があり、犯意のない妨害行為は罰せられない、と解するのが妥当であるとされています。
刑法第38条が効いています。
やむを得ない妨害は危険の大きさとの比較で判断される

照会では緊急避難にあたる場面についても問われました。
刑法第37条におけるが如き事例の場合、すなわち、自己の生命等の危険のため避難せんとして妨害することを知りつつやむを得ず妨害した如き場合は、故意ありとして第2項を適用し、さらに重く罰せられるのかという問いです。
さらに救済の余地も残されています。
ただ、後者の場合であつても、その時の情状により、処罰を減軽又は免除されうるとされました。
火災の現場から逃げようとして、結果的に消防隊の活動を妨げてしまったという場面が想定されます。
命を守る行動は考慮されます。
子どもの場合は14歳を境に処罰の対象が分かれる

照会の最後はなお、子供ではどうかという短い問いでした。
これに対する回答も簡潔です。
刑法第41条は刑事責任能力の年齢を定めた規定です。
消防法の罰則にも刑法総則が適用される以上、この年齢の線引きもそのまま働くということになります。
前の項目でみたとおり、消防法第40条の罰則は行政罰でありながら刑法総則の適用を受けます。
故意の要否も、緊急避難も、年齢による責任の有無も、すべて刑法総則を通じて決まっているという筋が通っています。
第40条第1項第2号の消防団員に消防職員は含まれない

もうひとつ、対象となる相手についての照会があります。
消防法第40条第1項第2号は消防団員の行なう消防活動等への妨害を取り上げていますが、この消防団員に消防職員は含まれるのかが問われました。
ではなぜ消防団員だけが特に保護されているのでしょうか。
回答は二つの理由を挙げています。
そのうえで現在の状況にも触れられています。
現在においては、消防団員は、常勤又は非常勤を問わず、刑法第7条にいう法令ニ依リ公務ニ従事スル其他ノ職員に当たるものと解されているので、第1の理由は消滅したが、なお、第2の理由によつて存置されているものと思料されるとされました。
なお消防職員への妨害が野放しというわけではなく、回答では公務執行妨害罪にいたらない程度の妨害は軽犯罪法第1条第31号違反となるという関係も示されています。
よくある質問
まとめ
- 過失による妨害は罰則の対象にならないと解する
- 消防法は行政法規の一種でありその罰則は行政罰であつて刑事罰ではない
- 刑法第8条により刑法総則は他の法令において刑を定めたものにも適用される
- 消防法第40条の罰則は懲役又は罰金であるから刑法総則の規定が適用される
- 刑法第38条により犯意のない妨害行為は罰せられないと解するのが妥当である
- やむを得ず妨害した場合は危険の方が大きいと判断されれば罰せられずその逆なら処罰を受ける
- 子供の場合は14歳以上であれば罰せられるがそれ以下であれば処罰の対象にならない
- 第40条第1項第2号にいう消防団員に消防組織法第12条に規定する消防職員は含まれない
行政の法律でも刑法が効いてくるんやな。ようできとるわ。
そのとおりです。
もちろん罰則の有無にかかわらず、現場では消防隊の指示に従うことが何より大切です。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第40条 e-Gov法令検索
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第12条・第15条の2・第15条の4 e-Gov法令検索
- 刑法(明治40年法律第45号)第7条・第8条・第37条・第38条・第41条・第95条 e-Gov法令検索
- 軽犯罪法(昭和23年法律第39号)第1条 e-Gov法令検索
- 妨害の故意と過失とは
- 消防団員の行なう消防活動等に対する妨害について
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の罰則に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




