消防法第18条第1項は、火災報知機や消火栓などについてみだりに使用し損壊し撤去し又はその正当な使用を妨げてはならないと定めています。
いたずらで発信機を押した、消火栓の蓋が持ち去られたといった話は今も起こります。
では自動火災報知設備はここにいう火災報知機に含まれるのか、損壊とはどこからを指すのかまでは条文からは読み取れません。
この記事では消防法第18条が禁じる行為の範囲を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
ビルの発信機をいたずらで押されたんやけど、これって罪になるんか。
なります。
自動火災報知設備も消防法第18条にいう火災報知機に含まれるとされており、いたずらの発報は使用と損壊の双方に該当します。
壊してへんのに損壊になるんか。押しただけやで。
そこが要点です。
損壊とは効用を減却ないし減少させる行為とされ、必ずしも物理的にこわす必要はないと示されています。この記事でまとめて解説します!
- 消防法第18条の火災報知機には防火対象物に設置される自動火災報知設備が含まれる
- 損壊とは有する効用を減却ないし減少させる行為をいい必ずしも物理的にこわす必要はない
- いたずらによる発報は使用と損壊の双方に該当する
- 地下式消火栓の蓋は機械部と室及び蓋の三者の有機的一体として消火栓の一部である
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目次
自動火災報知設備も消防法第18条にいう火災報知機に含まれる

昭和61年6月17日付け消防予第76号は消防法第18条の解釈についての照会です。
ある自動火災報知設備が消防法第18条にいう火災報知機に該当するか否かが問われ、三つの考え方が示されました。
回答はお見込みのとおりでした。
照会では、消防法第17条の規定による設置とはいえないので第18条は適用できないという考え方や、第18条で使用を制限される消防用設備は消防機関の消火活動と密接に関係するものに限られるという考え方も並べられていました。
いずれも採られていません。
つまり設置の根拠が何であるかを問わず、また消火活動との関係の濃さも問わず、防火対象物に設置される自動火災報知設備は第18条の保護の対象になるということです。
建物の自火報も対象に入ります。
損壊は効用を減らす行為であり物理的にこわす必要はない

昭和39年2月11日付け自消丙予発第11号では、警鐘台のボルトおよびナットを損傷させた事案について使用し損壊し撤去し又はその正当な使用を妨げることの法律的解釈が問われました。
四つの行為それぞれについて次のように示されています。
損壊とは有する効用を減却ないし減少させる行為をいい、必ずしも物理的にこわす必要もなくまた回復不能の状態におく必要もないとされています。
正当な使用を妨げるとは用いるべきときにその用いる行為を妨げる行為をいうとされ、火災信号や火災警戒信号などを発する必要があるときが例に挙げられています。
この四つのうち損壊の定義がとりわけ広いことが分かります。
効用が下がれば損壊にあたります。
なお同じ回答では、この事案に消防法第38条が適用されるとされ、その理由として警鐘台の重要性に鑑み刑法第261条の一般器物損壊罪に比してより重い刑を科すべく特別の構成要件として設けられた規定であると説明されています。
いたずらによる発報は使用と損壊の双方に該当する

昭和29年5月17日付けの回答では、火災報知機により出動した消防隊が現場不明のため調査したところ泥酔者の悪戯発報と判明したという事案について、被疑者の処置が問われました。
さらに当該火災報知機が発報後一定時間は発報できないような構造のものである場合は正当な使用を妨げたことになるとされています。
あわせて虚偽の通報をしたことになるかおよび軽犯罪法第1条第16号に該当するかという問いにも、それぞれお見込みのとおりと回答されています。
飲酒の影響については事実認定は司法当局が行なうべきものとされ、消防が被疑者を調査することなく正規の手続を取られたいとされています。
一度の悪戯発報が消防法第18条の複数の禁止行為にまたがり、さらに軽犯罪法にも触れるという整理です。
現場では消防隊の出動という実害も生じます。
地下式消火栓の蓋も消火栓の一部として保護される

昭和26年11月12日付け国消管総発第207号は、消火栓の蓋や枠が盗難にかかりその正当な使用が妨げられている実情を受けた照会です。
検察庁からは蓋又は枠は消火栓に非ず保護物であるという見解が示され、消防法を適用できるかが問題となりました。
理由としては、放水口が土砂や水の浸入でつまれば使用不能になること、地下式消火栓は通常道路内にあるため危険防止上蓋は特殊な構造を考慮する必要があること、蓋はその所在位置を明示するものであることなどが挙げられています。
結論として同条の消火栓とは取り付け以前の消火栓ではなく、機械部と室及び蓋の三者の有機的一体を指しているとされました。
蓋だけでも消火栓の一部です。
消防ポンプ車の附属品は第18条ではなく刑法の対象になる

一方で第18条の対象に含まれないものもあります。
昭和27年5月6日付け国消管総発第51号では消防ポンプ車が掲げられていないので消防団管理のポンプ車の附属品を盗難する等により第18条第1項の禁止行為に該当する行為を行なった者があっても同条に該当しないと解されるが如何と問われました。
そのうえでポンプ車に設備されている管鎗や水管その他を盗んだ者に対しては消防法に罰則規定がないので刑法第36章の窃盗及び強盗の罪に関する規定又は場合によっては同法第261条の器物損壊に関する規定の適用があるとされています。
消防法第18条第1項が挙げているのは火災報知機と消火栓と消防の用に供する貯水施設と望楼と警鐘台等です。
ここに挙げられていないものについては、消防法ではなく刑法で対応するという切り分けになっています。
よくある質問
まとめ
- 消防法第18条の火災報知機には防火対象物に設置される自動火災報知設備が含まれる
- 使用とはある目的のために使う行為で損壊にも撤去にもいたらない場合をいう
- 損壊とは有する効用を減却ないし減少させる行為をいい必ずしも物理的にこわす必要はない
- 撤去とはその存在する場所より取り払う行為をいう
- 正当な使用を妨げるとは用いるべきときにその用いる行為を妨げる行為をいう
- いたずらによる発報は使用と損壊の双方に該当し軽犯罪法第1条第16号にも該当する
- 地下式消火栓は機械部と室及び蓋の三者の有機的一体であり蓋も消火栓の一部である
- 消防ポンプ車の附属品は第18条の対象ではなく刑法の窃盗又は器物損壊の規定が適用される
押しただけでも損壊になるんやな。軽い気持ちでやったらえらいことになるわ。
そのとおりです。
いたずら発報が続く建物では、発信機の保護カバーの設置など管理面での対策もご相談ください。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第18条・第38条・第44条 e-Gov法令検索
- 刑法(明治40年法律第45号)第235条・第261条 e-Gov法令検索
- 軽犯罪法(昭和23年法律第39号)第1条 e-Gov法令検索
- 地下式消火栓の蓋は消火栓の一部であるか(昭和26年11月12日付け国消管総発第207号 管理局総務課長から広島県総務部長あて回答)
- 消防車および附属品を盗む行為の罰則について(昭和27年5月6日付け国消管総発第51号 総務課長から舞鶴市東消防署長あて回答)
- 火災報知機の悪戯発報した場合の処置について(昭和29年5月17日付け 総務課法規係から京都市右京消防署あて回答)
- 警鐘台損壊の場合の罰則について(昭和39年2月11日付け自消丙予発第11号 予防課長から群馬県藤岡市消防長あて回答)
- 消防法第18条の解釈について(昭和61年6月17日付け消防予第76号 消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の消防用施設の濫用に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




