危険物にあたるかどうかは引火点で決まりますが、実際に扱うのは単一の物質より混合物や水溶液のほうが多いはずです。
主成分が危険物でも水に溶かせばどうなるのか、アルコールが混ざった接着剤はどう扱われるのかは判断に迷うところです。
消防庁には昭和50年代に個別の製品について照会が相次ぎ、そのつど判定が示されました。
この記事では混合物や水溶液の危険物判定を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
除草剤って危険物が入っとるやろ。あれも規制の対象になるんか。
意外な結論が出ています。
塩素酸ナトリウムを主成分とする水溶液剤について危険物に該当しないとされました。
ほなクリーニングの溶剤はどうなんや。丙種の免状で扱えるんか。
そこは明確に否定されています。
クリーニングソルベントは第二石油類にあたり丙種では取り扱えないとされました。この記事でまとめて解説します!
- 塩素酸ナトリウムを主成分とする水溶液剤はいずれも消防法に定める危険物に該当しない
- アルコール分を含む接着剤で引火点20度のものは第四類第一石油類の危険物に該当する
- クリーニングソルベントは第二石油類に該当し丙種危険物取扱者が取り扱うことはできない
- ガソリンや灯油や軽油や重油の区分は日本工業規格に該当する物品をそれぞれいうものである
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目次
水溶液になっていれば危険物に該当しないことがある

昭和51年6月29日付け消防危第16号は、除草剤についての照会です。
東京消防庁から危険物第一類の塩素酸ナトリウムを主成分とする除草剤用の塩素酸ナトリウム系水溶液剤は危険物に該当するか否かと問われました。
照会には組成の表が添えられています。
試料により塩素酸ナトリウムが25.8パーセントから30.0パーセント、塩化カルシウムや塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムが加わり、水が61.4パーセントから63.6パーセントを占めるという内容でした。
主成分が第一類の危険物であっても、水溶液の形になっていれば別の判断になるということです。
危険物であるかどうかは製品そのものの状態で判断されるという考え方が表れています。
成分表だけでは決まりません。
同じ趣旨で、昭和49年5月20日付け消防予第77号では1・1・1-トリクロルエタンが消防法上の危険物に該当するか否かが問われ、設問の物品は、消防法別表に掲げる危険物に該当しないとされています。
アルコールを含む接着剤は第4類第1石油類にあたる

逆に、危険物になると判定された混合物もあります。
昭和51年8月27日付け消防危第45号は、兵庫県内の化学工場が製造する接着剤についての照会です。
そのうえでタグ密閉式により引火点を測定した結果は、引火点20度でありましたと報告されています。
回答は設問の物品は、消防法別表に掲げる第四類第一石油類の危険物に該当するです。
水が1割入っていても、アルコール分が5割を占めていれば引火点は20度まで下がります。
照会にはロットによる2から3パーセント程度の振れがあることも添えられており、製造のばらつきまで含めて報告している点が参考になります。
クリーニングソルベントは丙種危険物取扱者では扱えない

昭和51年7月12日付け消防危第23-2号は、クリーニング工場で使用する溶剤についての照会です。
兵庫県から二つの点が問われました。
一つめは日本工業規格K2201に定める工業ガソリンは、消防法別表備考第3号イの規定にかかわらず第二石油類として規制してよいかという点です。
二つめは危険物の規制に関する規則第49条の規定により、前記クリーニングソルベントは、丙種危険物取扱者が取り扱うことができるものと解してよいかという点でした。
丙種の範囲外になります。
丙種危険物取扱者が扱えるのはガソリンや灯油や軽油や重油など限られた品目です。
第二石油類であっても、その品目に当てはまらなければ丙種では取り扱えないということになります。
ガソリンや灯油の区分は日本工業規格で定められている

同じ回答の中で、石油類の区分についての運用が明確に示されています。
消防法別表備考第3号において石油類に指定されているガソリン、灯油、軽油および重油の区分についての説明です。
あわせて灯油とはJIS K2203、軽油とはJIS K2204、重油とはJIS K2205に該当する物品をそれぞれいうものであると示されました。
混合物についても扱いが定められています。
ガソリン、灯油、軽油又は重油の混合物であつて、上記のいずれの物品にも該当しないものは、引火点に応じて定められている第一石油類、第二石油類、第三石油類又は第四石油類のいずれかの石油類に該当するとされました。
名前が同じでも規格に当てはまらなければ別の扱いになるということです。
実務では製品の規格番号まで確認する必要があります。
石けんの香料やみかんの皮の油も石油類に該当する

昭和48年1月26日付け消防予第19号は、石けん等の香料に使用する植物油性香料についての照会です。
東京消防庁から7種類の香料について、消防法別表のいずれかの品名に該当するかが問われました。
回答は設問の物品は、消防法別表備考3に定める引火点に応じた石油類に該当するです。
植物から採った天然の油であっても、引火点があれば石油類として扱われるということです。
昭和51年4月19日付け消防予第59号では、みかん加工工場からみかんの皮を圧搾して抽出するオレンジ油について問われ、設問の物品は、消防法別表第四類第二石油類に該当するとされました。
食品工場や化粧品工場で副産物として油を取り出す場合も、指定数量を超えれば規制の対象になります。
よくある質問
まとめ
- 塩素酸ナトリウムを主成分とする除草剤用の水溶液剤はいずれも消防法に定める危険物に該当しない
- 1・1・1-トリクロルエタンは消防法別表に掲げる危険物に該当しない
- アルコール分を含み引火点20度である接着剤は第四類第一石油類の危険物に該当する
- JIS K2201の4号のミネラルスピリット及び5号のクリーニングソルベントはいずれも第二石油類に該当する
- クリーニングソルベントを丙種危険物取扱者が取り扱うことはできない
- ガソリンや灯油や軽油や重油の区分は日本工業規格に該当する物品をそれぞれいうものである
- これらの混合物で規格に該当しないものは引火点に応じたいずれかの石油類に該当する
- 植物油性香料は引火点に応じた石油類に該当しオレンジ油は第四類第二石油類に該当する
みかんの皮の油まで対象なんか。うちの工場も一回見直さなあかんな。
そのとおりです。
安全データシートの引火点と保管量をもとに、指定数量の確認からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第49条 e-Gov法令検索
- 植物油性香料等の規制について(昭和48年1月26日付け消防予第19号 予防課長から東京消防庁あて回答)
- 1・1・1-トリクロルエタンの規制について(昭和49年5月20日付け消防予第77号 予防課長から新潟県あて回答)
- オレンジ油の規制について(昭和51年4月19日付け消防予第59号 予防課長から愛媛県あて回答)
- 塩素酸ナトリウム系水溶剤の規制について(昭和51年6月29日付け消防危第16号 危険物規制課長から東京消防庁あて回答)
- クリーニングソルベントの規制について(昭和51年7月12日付け消防危第23-2号 危険物規制課長から兵庫県あて回答)
- 接着剤の規制について(昭和51年8月27日付け消防危第45号 危険物規制課長から兵庫県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の別表による危険物に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




