給油取扱所で給油できる相手は自動車だけではありません。
危険物の規制に関する政令第3条第1号にいう自動車等の範囲は、令和5年の執務資料で明確に示されました。
一方でセルフのスタンドについては、顧客が自ら給油できる対象が別に限られています。
この記事では自動車等の範囲と取扱所をめぐる実務の判断を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
発電機をスタンドに持ち込んで、直接給油してもろてもええんか。
できます。
令和5年の執務資料で可搬形発電設備も自動車等に該当することが明確にされました。
ほなセルフで自分で入れてもええんやな。同じことやろ。
そこは別です。
同じ資料で顧客が自ら給油できるのは自動車及び原動機付自転車のみであることに留意されたいと付記されています。この記事でまとめて解説します!
- 政令第3条第1号の自動車等には可搬形発電設備や除雪機や農機具類等動力源として危険物を消費する燃料タンクを内蔵するもの全てが該当する
- 顧客に自ら給油させる給油取扱所において顧客が自ら給油できるのは自動車及び原動機付自転車のみである
- 軽量パイプと防炎シートによる簡易上屋を有する施設を一般取扱所として認めることはできない
- その施設は業務の態様から判断して貯蔵所として規制されるものと解される
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目次
自動車等には発電機や除雪機や農機具も含まれる

令和5年3月24日付け消防危第63号は、危険物規制事務に関する執務資料の送付についての通知です。
その別紙の冒頭に自動車等についてという項目が置かれています。
問われたのは政令第3条第1号の自動車等には、自動車、航空機、船舶及び鉄道又は軌道によつて運行する車両のほか、可搬形発電設備、除雪機、農機具類等動力源として危険物を消費する燃料タンクを内蔵するもの全てが該当し、給油取扱所においてそれらの燃料タンクへ直接給油することが認められると解してよいかという点でした。
乗り物に限らず、動力源として危険物を消費する燃料タンクを内蔵するものであれば自動車等にあたるという整理になります。
災害時に使う可搬形発電設備や、冬季の除雪機、農作業の機械などをスタンドへ持ち込んで、その燃料タンクへ直接給油してもらうことができるということです。
携行缶を介する必要はありません。
前の記事でみたとおり、携行缶への小分けは指定数量という別の制約を受けます。
機械そのものを持ち込めるのであれば、そちらのほうが安全でもあります。
セルフで顧客が自ら給油できるのは自動車と原付だけ

ただし同じ回答には、重要な但し書きが添えられています。
セルフのスタンドでは扱いが異なるという点です。
セルフでは自分で入れられません。
つまり発電機や除雪機や農機具は、自動車等にはあたるが顧客が自ら給油できる対象ではないという関係になります。
セルフのスタンドで給油してもらいたい場合は、危険物取扱者である従業員に依頼することになります。
持ち込めるかどうかと、自分で入れられるかどうかは別の条文で決まっているということです。
現場でトラブルになりやすいところなので、押さえておく価値があります。
防炎シートの簡易上屋は一般取扱所として認められない

昭和56年4月28日付け消防危第52号は、滋賀県からの照会に答えたものです。
業務の態様は危険物製造所等において製造された危険物すなわち塗料類を、屋外に荷役用上屋を設け危険物運搬用トラックに積み込むため一次的に貯蔵する。また同時に当該場所で同危険物の荷役作業を行うというものでした。
質疑の一つめは一般取扱所に設ける建築物の屋根は不燃材料または耐火構造とすることになつているが、当該簡易上屋は建築基準法上、建築物とは認められないので、軽量パイプを主体とし、防炎性能を有するシートを屋根材とする上屋を有する施設を一般取扱所として認めてもさしつかえないかという点です。
建築基準法上は建築物にあたらないという理屈は通りませんでした。
あわせて晴天時には地盤面に布設された鉄製レールによつて荷役に支障のない場所に移動させる型式とすることや、上屋の移動については構造の変更が生じるものとして許可申請が必要かという問いも出されていましたが、いずれも(1)により承知されたいとされています。
業務の態様から判断して貯蔵所として規制される

ここで終わらないのがこの回答の面白いところです。
一般取扱所としては認められないとしたうえで、別の道筋が示されています。
区分そのものが違いました。
照会ではトラックに積み込むため一次的に貯蔵すると述べられていました。
その実態を見れば、取扱いではなく貯蔵が中心だという判断です。
申請する側が一般取扱所として認めてほしいと求めたのに対し、そもそも当てはめる区分が違うと指摘した形になります。
施設の許可を検討するときは、まずその場所で何をしているのかから見直す必要があるということです。
新しい工法も資料で示せば認められることがある

認められなかった例ばかりではありません。
昭和60年7月30日付け消防危第94号は、栃木県からの照会に答えたもので、地下タンクの外面保護の工法が問われました。
照会では政令第13条第1項の規定による地下タンク室省略工事のため、同項ロによる外面保護を施すこととなつているが、危険物の規制に関する規則第24条に規定する外面保護方法に代えて、耐熱樹脂による施工方法により政令23条の規定を適用し、これを認めてよいかどうかと尋ねられています。
覆装材は、耐熱樹脂を含浸させたポリエステルテープ、耐熱繊維テープを貼付し、耐熱樹脂を厚さ2ミリメートル以上に達するように上塗し、その表面に耐水塗料を塗布した後24時間乾燥させ、地下埋設するという手順でした。
回答は1及び2 添付された資料から判断すれば、いずれも認めてさしつかえないです。
資料が判断を分けます。
規則に書かれた方法そのものではなくても、これと同等以上の防食効果を有するものと認められれば通るということです。
先の簡易上屋の例と対比すると、実態が基準の趣旨に沿っているかどうかが判断を分けていることが分かります。
よくある質問
まとめ
- 政令第3条第1号の自動車等には自動車と航空機と船舶と鉄道又は軌道によつて運行する車両が含まれる
- さらに可搬形発電設備や除雪機や農機具類等、燃料タンクを内蔵するもの全てが該当する
- 給油取扱所においてそれらの燃料タンクへ直接給油することが認められる
- 顧客に自ら給油させる給油取扱所において顧客が自ら給油できるのは自動車及び原動機付自転車のみである
- 軽量パイプと防炎性能を有するシートによる簡易上屋を一般取扱所として認めることはできない
- 当該施設は業務の態様から判断して貯蔵所として規制されるものと解される
- 耐熱樹脂による地下タンク及び配管の外面保護方法は添付資料から判断して認めてさしつかえない
- 規則に定める方法でなくても同等以上の効果が示されれば認められる余地がある
持ち込めるんと自分で入れられるんは別の話やったんか。危なかったわ。
そのとおりです。
事業所での燃料の受け入れ方法や施設区分の整理についてもご相談を承ります。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第11条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第3条・第13条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第24条・第28条の2の4 e-Gov法令検索
- 危険物規制事務上の疑義について(昭和56年4月28日付け消防危第52号 危険物規制課長から滋賀県あて回答)
- 危険物規制事務上の疑義について(昭和60年7月30日付け消防危第94号 危険物規制課長から栃木県あて回答)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(令和5年3月24日付け消防危第63号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




