車両にタンクを固定すれば移動タンク貯蔵所になる。そう思われがちですが、中身にも条件があります。
間仕切りで分けて片方に水を積む、タンク内を真空にして吸い上げる、といった工夫は認められるのか。
また、指定数量に満たない小さなタンクローリーはどう扱われるのか。
この記事では3つの通達をまとめて並べます。
タンクを間仕切って、片側にガソリン、片側に洗車用の水を積みたいんです。効率がいいので。
まったく同じ申請が照会されています。回答は、危険物のみを貯蔵するものを移動タンク貯蔵所とするよう指導されたい、というものでした。
吸い上げるためにタンク内を真空にするのは、どうでしょうか。
そちらも防災上適当でないとされました。ただし代わりの形が示されているので、そこを読むと道が見えます。
この記事の結論
- 車両に固定したタンクにおいて危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいとされています
- タンク内部の圧力を減じて危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるため防災上適当でないとされています
- 圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当とされています
- 1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行われる場合、その取扱い場所は一般取扱所として規制すべきとされています
- 指定数量未満の危険物を貯蔵する移動タンクは、水圧検査を受ける義務はないものの、水圧試験を行うよう指導することが望ましいとされています
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目次
危険物と水を間仕切って積めるか

自動車の燃料タンク内に残存するガソリン(約0.5リットル)を抜き取り、あわせて自動車を洗浄するためのものです。
照会された車両は、容量1,800リットルのタンクを間仕切板で仕切り、一方にガソリン600リットル、他方に水1,200リットルを貯蔵するものでした。
問1 そもそも、移動タンク貯蔵所は、危険物専用のものであると解せられるが、本件の移動タンク貯蔵所は、容量1,800ℓのタンクを間仕切板をもつて仕切り、一方にガソリン600ℓを、他方に水1,200ℓを貯蔵するものであり、危険物専用のものとは解せられないので、このようなものを許可して差し支えないかどうか。
答1 危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたい。
答1 危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたい。
間仕切板で完全に分けていても、同じタンクに水を積む形は移動タンク貯蔵所として扱わない、という整理です。
照会側も自ら「危険物専用のものとは解せられない」と述べており、そこがそのまま結論になりました。
タンク内を減圧して吸引してよいか

答2 移動タンク貯蔵所の貯蔵タンク内部の圧力を減じて、そのタンク内に危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるので、防災上適当でない。したがつて、設問のように危険物を吸引する必要がある場合は、タンク内部の圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当である。
可燃性蒸気を屋外に出すためです。
タンク内を真空にすれば、その分の気体をどこかへ排出することになります。中身がガソリンであれば、それは可燃性蒸気です。
そのうえで回答は代わりの形を示しています。圧力を減ずることなく吸引できる設備を設けること。否定で終わらせず、成立する道を残した回答です。
取扱いの場所と一般取扱所との境目

答3 移動タンク貯蔵所において、設問のような危険物の取扱いを行なう場合は、その場所等を限定して危険物の取扱作業をするよう指導されたい。
答4 移動タンク貯蔵所により、1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行なわれる場合、その取扱い場所は、一般取扱所として規制すべきものと解する。
答4 移動タンク貯蔵所により、1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行なわれる場合、その取扱い場所は、一般取扱所として規制すべきものと解する。
照会では、輸出用自動車の船積みが多いときは1日200台以上となることもあり、危険物を指定数量以上取り扱うこととなるが、一般取扱所としては規制されないと解してよいかと尋ねていました。
回答はこれを否定し、定常作業として行われるなら一般取扱所として規制すべきとしています。
1回あたりの量ではなく、1日の合計と作業の常態性で判断されることになります。
小型タンクローリーはどう規制されるか

問1 指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を、車両に固定されたタンクにおいて貯蔵し又は取り扱う場合(いわゆる小型タンクローリー)は、火災予防条例準則第46条の規定が当然に適用されるものと解してよいか。
答1 お見込みのとおり。
答1 お見込みのとおり。
火災予防条例準則が適用されます。
指定数量の5分の1以上であれば、条例の側で受け止める構造になっています。
水圧検査と安全装置の作動圧

答2 指定数量未満の危険物を貯蔵する移動タンクについては、水圧検査を受ける義務はないが、水圧試験を行なうよう指導することが望ましい。
義務はないが指導が望ましいです。
なお、昭和40年6月16日付けの自消丙予発第100号は、ガス用ナフサを貯蔵する移動タンク貯蔵所について、圧力の条件を数値で示しています。
答1及び2 設問のタンクが、摂氏40度における蒸気圧(以下「基礎圧力」という。)の1.5倍の圧力で10分間行なう水圧試験において、もれ、又は変形せず、かつ、当該タンクの安全装置が、基礎圧力の1.1倍以下の圧力で作動する場合、危険物の規制に関する政令第23条の規定を適用して、その使用を認めて差し支えない。なお、設問のタンクについての基礎圧力は、添付資料から計算すれば0.5kg/c㎡となる。
照会は、規則が定める作動圧0.2キログラム毎平方センチメートルでは夏期に液温が36度以上になると安全装置が常時作動してしまう、という実務上の困りごとから出たものでした。
よくある質問
Q. 間仕切板で完全に分けても水を積めませんか?
照会された車両は容量1,800リットルのタンクを間仕切板で仕切り、一方にガソリン600リットル、他方に水1,200リットルを貯蔵するものでしたが、回答は危険物のみを貯蔵するものを移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいというものでした。仕切りの有無ではなく、危険物専用であるかどうかで判断されています。
Q. 減圧せずに吸引する方法はありますか?
回答は「タンク内部の圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当である」としています。具体的な機種までは示されていませんが、タンクを真空にする以外の方法で吸い上げる設備であればよいという方向性が示されています。
Q. 1日に指定数量以上を扱えば必ず一般取扱所になりますか?
回答は「1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行なわれる場合」としています。定常作業であることが要件に含まれており、たまたま1日だけ超えた場合とは書き分けられています。
Q. ガス用ナフサのタンクで基礎圧力はどう決まりますか?
摂氏40度における蒸気圧を基礎圧力といいます。昭和40年6月16日付け自消丙予発第100号では、設問のタンクについての基礎圧力は添付資料から計算すれば0.5キログラム毎平方センチメートルとなるとされています。この値を基準に、水圧試験は1.5倍、安全装置の作動圧は1.1倍以下という条件が設定されます。
まとめ
- 車両に固定したタンクにおいて危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいとされています
- 間仕切板で仕切って一方に水を積む形は、危険物専用のものとは解せられないとされました
- タンク内部の圧力を減じて危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるため防災上適当でないとされています
- 吸引が必要な場合は、圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当とされています
- 設問のような取扱いを行う場合は、その場所等を限定して取扱作業をするよう指導されたいとされています
- 1日に指定数量以上の取扱いが定常作業として行われる場合、その取扱い場所は一般取扱所として規制すべきとされています
- 指定数量の5分の1以上指定数量未満の小型タンクローリーには、火災予防条例準則第46条の規定が適用されます
- 指定数量未満の移動タンクは水圧検査を受ける義務はないものの、水圧試験を行うよう指導することが望ましいとされています
否定されても代わりの形が示されてるのは助かりますね。設計をやり直す手がかりになります。
否定の理由まで書かれている回答は、代替案を組み立てる材料になります。㈱防災屋でも設計の見直しからご相談を承っています。
参考・出典
- 特殊な移動タンク貯蔵所の設置について(昭和39年4月24日 自消丙予発第33号 予防課長から横須賀市消防長あて回答)
- 小型タンクローリーについて(昭和40年4月15日 自消丙予発第71号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
- ガス用ナフサを貯蔵する移動タンク貯蔵所について(昭和40年6月16日 自消丙予発第100号 予防課長から愛媛県総務部長あて回答)
- 危険物の規制に関する政令第15条第2号・第23条/危険物の規制に関する総理府令第19条第2項第1号/火災予防条例準則第46条・第30条・第31条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




