タンクローリーは、その日の出荷計画によって積む油種が変わります。
午前は灯油、午後はガソリン。1台で1日に何度も品名が変わることも珍しくありません。
そのたびに届出を出すのか。
この論点には、実務を回すための答えがあります。
その日の需給で積む油種を変えています。1台につき1日2回変わることもあって、届出が追いつきません。
予想されるすべての品名と数量をあらかじめ届け出ておけば、変える都度の届出は要らないという整理が示されています。
積載量の都合でタンクの1室を使わないようにするのは、どうでしょうか。
それは否定されています。しかも積載量の制約は許可の判断材料にならないと、はっきり書かれています。
この記事の結論
- 貯蔵する危険物が1日に2回以上変わる場合は、予想されるすべての品名および数量をあらかじめ届け出るのが適当とされています
- その届出をした場合、品名および数量を変える都度の届出は要しないと解されています
- 実態を把握する必要があるときは、消防法第16条の4により報告を求めることが適当とされています
- タンクの1室を空室として密閉した構造は、政令第15条の基準に適合しないため許可すべきでないとされています
- 移動タンク貯蔵所の最大積載量は道路運送車両に関する法令で規制されるため、設置許可に際して考慮する余地はないとされています
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目次
品名が1日に何度も変わる場合の届出

照会側の状況は具体的でした。設置者が需要と供給のバランスを採るため、その日その日の出荷計画により1台ごとにその都度品名を変更する。あるいは1台の内、間仕切りを利用して混載する。
例として、間仕切りにより4つに区画されているとき、そのうちの1区画に灯油、3区画をガソリンに使用する場合が挙げられています。
答 貯蔵する危険物が1日に2回以上変わる場合は、貯蔵することが予想されるすべての危険物の品名及び数量について、あらかじめ消防法第11条の2に定める届出をさせるのが適当であり、この届出をした場合、貯蔵する危険物の品名及び数量を変える都度の届出は要しないと解する。
運用の勘所は「予想されるすべての」という部分です。
実際に積む可能性のある品名と数量を洗い出して一度に届け出ておけば、日々の入れ替えごとの手続は不要になります。
実態の把握は報告徴収で行う

回答はその手当ても示しました。
この場合、火災予防上品名変更の実態を把握する必要があると認められるときは、消防法第16条の4により、品名変更の実態についての報告を求めることが適当である。
なお、設問の指導事項1及び3はいずれも適当でなく、2は市町村長の承認事項ではない。
照会側の案は、ガス検知表をその都度携行させる、正副2通を提出させて承認を受けさせる、表示の枚数を準備させて承認後に取り付けさせる、というものでした。
届出という制度に対して承認の仕組みを重ねることはできない、という整理です。
なお昭和40年7月17日付けの自消丙予発第127号は、品名及び数量を変更しようとする場合は消防法第11条の2の届出を要し、政令第15条第10号に規定する表示についても届出に伴う変更を要するとしています。
1室を空室にした構造は許可できるか

ガソリン9,000リットルを貯蔵運搬していた移動タンク貯蔵所を買い受け、動植物油類(米油)の運搬に使おうとした事例です。
車両の最大積載量は6,440キログラムで、動植物油類はガソリンより比重が大きいため、9,000リットルでは積載過重になります。
そこで陸運事務所の指示により、タンクの1室(2,000リットル)をふた電気溶接密閉、無配管として空室とし、7,000リットルの移動タンク貯蔵所として設置許可申請がなされました。
答 設問1および2
添付された図面によれば設問のタンクは、危険物の規制に関する政令第15条に定める移動貯蔵タンクの構造および設備の基準に適合しないものと解される。したがつて、設問のような構造のタンク車は、移動タンク貯蔵所として許可すべきでない。
添付された図面によれば設問のタンクは、危険物の規制に関する政令第15条に定める移動貯蔵タンクの構造および設備の基準に適合しないものと解される。したがつて、設問のような構造のタンク車は、移動タンク貯蔵所として許可すべきでない。
使わない室を密閉すれば容量が減るという発想ですが、政令第15条が定める構造および設備の基準に適合しないと判断されました。
最大積載量は許可の判断材料にならない

なお、移動タンク貯蔵所の最大積載量については、道路運送車両に関する法令によつて規制されるので、移動タンク貯蔵所の設置許可に際して考慮する余地はない。
積載過重になるかどうかは道路運送車両に関する法令の問題であり、消防側の設置許可では見ない、という整理です。
なお、特殊な構造でも認められた例はあります。昭和43年4月10日付けの消防予第105号は、液状の硫黄を輸送する移動タンク貯蔵所について、政令第15条第3号および第4号の規定に政令第23条を適用し、13項目にわたる構造をもって許可してさしつかえないとしました。
胴板厚4.5ミリメートル、容量5,555リットル(比重1.8)、タンク断面積の55パーセントを有する3枚の防波板、8本の加熱管、厚さ100ミリメートルのアルミ箔付グラスウールによる保温といった仕様が並んでいます。
ガス吸引排風機の使用を義務づけられるか

照会側の案は、品名の変更があった場合はすべて使用すべき、同一品名中の異なる危険物の変更があった場合にも使用すべき、そして未設置の事業所へは設置を義務づけるべき、という3点でした。
答 品名の異なる危険物を積み替える際の静電気による出火危険は、ガソリンと灯油による場合であり、その他の危険物一般についてのものでない。したがつて、設問の装置を使用しなければならないのは、上記物品の積み替え作業時に限られるから設問の(1)、(2)及び(3)はいずれも適当でない。
静電気による出火危険が問題になるのはガソリンと灯油の組み合わせであって、危険物一般の話ではない、という理由が示されています。
さらに回答は、その作業を行う場合であっても危険排除の方法は設問の装置の使用のみに限られるものでない、と付け加えています。
特定の装置を唯一の解として義務づけることはできない、という念押しです。
よくある質問
Q. まとめて届け出た品名以外を積むときはどうしますか?
回答は「貯蔵することが予想されるすべての危険物の品名及び数量について、あらかじめ届出をさせるのが適当」としています。したがって、あらかじめ届け出た範囲を超える品名を積む場合は、その時点で改めて届出が必要になると読めます。予想の範囲をどこまで広く取るかが運用の要点です。
Q. 品名変更の実態はどう確認されますか?
火災予防上、品名変更の実態を把握する必要があると認められるときは、消防法第16条の4により品名変更の実態についての報告を求めることが適当とされています。届出をまとめる代わりに、必要に応じて報告徴収で確認するという組み立てです。
Q. 液状の硫黄を運ぶタンクはどのような構造ですか?
昭和43年4月10日付け消防予第105号で示された構造は、両端皿型の鏡板をもつ横型円筒形、鋼板第2種SS41、胴板厚4.5ミリメートル、容量5,555リットル(比重1.8)、間仕切板なし、タンク断面積の55パーセントを有する3枚の防波板、上部にマンホール、液充填用ハッチ、安全弁および通気コック、8本の加熱管、耐圧15キログラム毎平方センチメートル、厚さ100ミリメートルのアルミ箔付グラスウールによる保温、その外部を薄鋼板でケーシング、というものです。
Q. 積替え時の危険排除は排風機でなければなりませんか?
回答は「上記作業を行なう場合であつても危険排除の方法は、設問の装置の使用のみに限られるものでない」と念のため付け加えています。ガソリンと灯油の積替え時に危険排除が必要であることと、特定の装置を唯一の手段として義務づけることは別だという整理です。
まとめ
- 貯蔵する危険物が1日に2回以上変わる場合は、予想されるすべての品名および数量について、あらかじめ消防法第11条の2の届出をさせるのが適当とされています
- その届出をしていれば、品名および数量を変える都度の届出は要しないと解されています
- 火災予防上必要と認められるときは、消防法第16条の4により品名変更の実態についての報告を求めることが適当とされています
- 照会側が示した指導案のうち、ガス検知表の都度携行と表示の承認後取付けは適当でなく、正副2通による承認は市町村長の承認事項ではないとされました
- タンクの1室をふた電気溶接密閉、無配管として空室とした構造は、政令第15条の基準に適合しないため許可すべきでないとされています
- 移動タンク貯蔵所の最大積載量は道路運送車両に関する法令によって規制されるため、設置許可に際して考慮する余地はないとされています
- 液状の硫黄を輸送する移動タンク貯蔵所は、13項目の構造を示したうえで政令第23条を適用し、さしつかえないとされた例があります
- ガス吸引排風機の使用を要するのはガソリンと灯油の積替え作業時に限られ、一律の義務づけは適当でないとされています
届出をまとめておいて、必要なら報告で確認するという形なんですね。運用が回ります。
予想される品名をどこまで洗い出しておくかが要点です。㈱防災屋でも届出の組み立てからご相談を承っています。
参考・出典
- 移動タンク貯蔵所の許可品名変更の貯蔵取り扱いについて(昭和41年2月4日 自消丙予発第20号 予防課長から富山県総務部長あて回答)
- 危険物を貯蔵できないタンク室をもつ移動貯蔵タンクについて(昭和41年4月2日 自消丙予発第42号 予防課長から埼玉県総務部長あて回答)
- 液状の硫黄を輸送する移動タンク貯蔵所の設置について(昭和43年4月10日 消防予第105号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
- ガス吸引排風機の使用について(昭和43年4月23日 消防予第126号 予防課長から富山県総務部長あて回答)
- 危険物の規制に関する政令第15条・第15条第3号・第4号・第10号・第23条/消防法第11条の2・第16条の4
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




