非常用発電機の燃料タンクを地下に置くとき、点検のたびに掘り返すのは現実的ではありません。
そこでタンク室の上に人が入れる点検作業用の地下空間を設けたい、という相談が出ます。
地下タンク貯蔵所は、タンク室や地下貯蔵タンク等が地盤面下に埋設されていることを前提に基準が組まれています。
否定はされていませんが、措置と構造計算の2つが宿題になります。
維持管理をしやすくするため、タンク室の上に点検用の空間を作りたいのですが。
頭ごなしに否定はされていません。
ただし空間そのものへの措置と、タンク室の構造の確認という2つの宿題が示されています。
構造は標準の構造例をそのまま使えばよいでしょうか。
そこがはっきり否定されています。
構造例は適用できず、個別に構造計算をして基準への適合を確認する必要があります。
- タンク室の上部に地下空間を設ける形態は、現行の技術基準では想定されていないとされています
- 地下空間には、政令第24条の技術上の基準に従って照明、換気、危険物が漏えいした場合の回収措置等を講ずる必要があります
- 標準として示されている構造例を適用することはできず、個別の条件に応じた構造計算等による確認が必要です
- 統計的手法を用いた漏れの点検方法は、検知精度が客観的に確認されている場合に「その他の方法」として認められます
- 電気防食は、腐食防食学会が策定したガイドラインに基づき施工して差し支えないとされています
▼
目次
上部に地下空間を有するタンク室の位置づけ

基準が前提にしていない形です。
地下タンク貯蔵所の基準は、タンクや室が土に囲まれていることを織り込んで作られています。
その上に空洞があると、埋設という前提が一部崩れることになります。
なお本通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたものです。
想定されていない形でも、頭から否定はされないのですね。
宿題が示されます。
計画があるなら、早めに相談してください。
地下空間に講ずべき措置

照明と換気と回収措置が要ります。
地上なら自然に拡散する蒸気が、閉じた地下空間では溜まります。
また空間内には配管が通るため、そこから漏れた危険物を受けて回収する手当ても必要になります。
閉じた空間では、蒸気がたまるのですね。
照明と換気と回収の措置が要ります。
設備の計画に、この3つを入れてください。
標準の構造例は適用できない

通常であれば、示されている構造例に沿って設計すれば足ります。
構造例は、上に土が載っている前提で荷重を見込んだものです。
上部が空洞になれば荷重の条件が変わるため、そのまま当てはめられません。
なお、この際には平成17年3月24日付けの消防危第55号の第1の5を参考にするとともに、必要に応じ第三者機関の評価資料を活用されたいとされています。
構造例は、そのままでは使えないのですね。
荷重の条件が変わります。
個別の計算を、設計者に依頼してください。
統計的手法による漏れの点検が認められる条件

規則第62条の5の2第1項による地下貯蔵タンク(二重殻タンクを除く)の漏れの点検、および規則第62条の5の3第1項による地下埋設配管の漏れの点検についてです。
〈統計的手法を用いた漏れの点検方法〉
設置者等が、1日に1回以上の割合で、地下貯蔵タンクへの受入量、払出量及びタンク内の危険物の量を継続的に記録し、当該液量の情報に基づき分析者(法人を含む。)が統計的手法を用いて分析を行うことにより、直径0.3ミリメートル以下の開口部からの危険物の流出の有無を確認することができる方法
答 危険物の流出の有無に関する検知精度について、第三者機関の評価を受けている等、客観的に確認されている場合にあっては、お見込みのとおり。
検知精度の客観的な確認が条件です。
第三者機関の評価を受けていることが例として挙げられており、自社で精度を主張するだけでは足りない書きぶりです。
点検の方法にも、条件があるのですね。
検知の精度の確認が要ります。
採用する方法の資料を、そろえておきましょう。
電気防食をガイドラインに基づき施工できるか

電気防食の措置は、告示第4条第1項第1号の規定に基づき実施することとされています。
答 差し支えない。
判断の根拠として、そのガイドラインが国際標準化機構の規格に準拠していることが挙げられています。
告示に直接書かれていない民間の規格でも、拠って立つ標準が示されていれば運用できるという例です。
施工の方法も、根拠があれば認められるのですね。
規格に準拠していることが理由です。
採用する基準を、記録に明記してください。
よくある質問
まとめ
- タンク室の上部と地盤面の間に点検作業用の地下空間を設ける形態は、現行の技術基準では想定されていないとされています
- 地下空間では、点検作業中の可燃性蒸気の滞留と、空間内の配管からの危険物の流出が危険として想定されています
- これらを考慮し、政令第24条の技術上の基準に従って照明、換気、危険物が漏えいした場合の回収措置等を講ずる必要があります
- タンク室の形態については、平成18年5月9日付け消防危第112号別紙の構造例を適用することはできません
- 個別の条件に応じた構造計算等により、政令第13条第1項第14号、規則第23条の4および告示第4条の50への適合を確認する必要があります
- 統計的手法を用いた漏れの点検方法は、検知精度について第三者機関の評価を受けている等、客観的に確認されている場合に認められます
- 政令第13条第1項第8号の通気管は、一部が地盤面下にあっても「地下埋設配管」には該当しません
- 電気防食は、腐食防食学会が策定しISO 15589-1に準拠したガイドラインに基づき施工して差し支えないとされています
否定はされていなくても、相応の準備が要るのですね。
すっきりしました。
基準が想定していない形をとるなら、そのぶん資料で埋めることになります。
㈱防災屋でも計画段階からご相談を承っています。
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成30年4月27日 消防危第72号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 上部に地下空間を有する地下タンク貯蔵所のタンク室関係
- 同前〔抄〕(平成31年4月19日 消防危第81号)別紙 地下貯蔵タンク及び地下埋設配管の漏れの点検について 問12・問13
- 同前〔抄〕(令和2年3月27日 消防危第89号)別添 地下貯蔵タンク等の電気防食について 問5
- 地下貯蔵タンク及びタンク室の構造例について(平成18年5月9日付け消防危第112号)
- 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の施行について(平成17年3月24日付け消防危第55号)
- 危険物の規制に関する政令第24条・第13条第1項第14号・第13条第1項第8号/規則第23条の4・第62条の5の2・第62条の5の3/告示第4条の50・第4条第1項第1号・第71条・第71条の2
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




