自衛防災組織に備え付けた大型高所放水車を、オーバーホールのため艤装メーカーへ持ち込む。
その間、備え付けの義務がかかっている車が1台いなくなります。
現場を止めるわけにはいかないし、備え付けを欠くわけにもいきません。
回答は代替車両を求めたうえで、そうでなくてよい場合も示しました。
整備で車を出している間、代わりの車を用意しないといけないのでしょうか。
代替車両を準備させることが原則です。ただし他の事業所からの緊急応援体制などを勘案して防災体制が整えられていると客観的に認められる場合は、この限りでないとされています。
タンクの中で爆発が起きて負傷者も出たのですが、これは通報しなければならない異常現象ですか。
その事例は該当しないとされました。負傷者が出ていても、燃焼が続かず設備の破損もなければ判断が変わります。
この記事の結論
- 防災資機材等をオーバーホールに出す間は、代替車両を準備させることとされています
- ただし他の事業所等による緊急応援体制などを勘案し、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合はこの限りでありません
- 防災資機材等については定期点検の実施等により維持管理の適正を図るよう指導し、消防機関は法第40条に基づき状況を適宜確認します
- 大型化学高所放水車と普通消防車を備え付けた場合の泡消火薬剤は、大型化学消防車に基づいて算定して差し支えありません
- 燃焼継続や消火の必要がなく設備等の破損もなかつた爆発は、負傷者が発生していても法第23条の異常現象に該当しないとされました
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目次
オーバーホールで車が抜ける間どうするか

自衛防災組織に備え付けた大型高所放水車は、いずれ整備の時期がきます。艤装メーカーへ持ち込めば数週間は戻りません。
その間、法が求める備え付けを欠くことになります。
問 自衛防災組織に備え付けた大型高所放水車をオーバーホールするため、艤装メーカーに持ち込む間の代替措置はいかにさせるべきか。
答 代替車両を準備させること。
ただし、他の事業所等による緊急応援体制、他の防災資機材等の保有状況等を勘案し、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合はこの限りでない。
ただし、他の事業所等による緊急応援体制、他の防災資機材等の保有状況等を勘案し、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合はこの限りでない。
まず示されたのは代替車両を準備させることという原則です。整備中だから1台足りなくてよい、とはなりません。
そのうえでただし書が付いています。他の事業所等による緊急応援体制、他の防災資機材等の保有状況等を勘案して、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合です。
注目したいのは客観的にという言葉です。事業者が大丈夫だと考えているだけでは足りず、外から見て体制が保たれていると分かる状態が求められます。
共同防災組織に入っていて応援が確実に来るか、同等の能力を持つ他の車両を持っているか。そうした事実を説明できるかどうかが分かれ目になります。
防災資機材の維持管理はどこまで求められるか

では点検をどこまでやらせるのか、消防機関はどこまで確認するのかという問いです。
問 防災資機材等としての消防車両の維持管理について、定期的に性能試験等を実施させる必要があるか。また、消防機関において、その確認を行う必要があるか。
答 前段 特定事業所における自衛防災組織等の防災体制の充実について(昭和58年5月31日消防地第105号)に基づき、防災資機材等について定期点検の実施等、維持管理の適正を図るよう指導されたい。
後段 法第40条の規定に基づき、維持管理の状況を適宜確認されたい。
後段 法第40条の規定に基づき、維持管理の状況を適宜確認されたい。
前段と後段で、動く主体が分かれています。
前段は事業者側です。昭和58年5月31日付けの消防地第105号に基づいて、定期点検の実施等により維持管理の適正を図る。性能試験そのものを義務づける書き方ではなく、定期点検の実施等という幅のある言い方になっています。
後段は消防機関側です。法第40条の規定に基づいて維持管理の状況を適宜確認する。備え付けの有無だけでなく、その車が使える状態にあるかまで見るということです。
点検記録を残しておかないと、確認の場面で説明ができなくなります。
車の組み合わせを変えたら薬剤の量はどう算定するか

ところが両方の機能を1台にまとめた大型化学高所放水車という車があります。これに普通消防車を足す形に変えた場合、泡消火薬剤の量はどちらを基準に計算するのか。
問 大型化学消防車と大型高所放水車に代えて、大型化学高所放水車と普通消防車を備え付けた場合、泡消火薬剤の備え付け量の算定は大型化学消防車に基づいて行うこととしてよいか。
答 お見込みのとおり。
薬剤の量は、実際に置いた大型化学高所放水車ではなく、代えられる前の大型化学消防車に基づいて算定します。
前の記事で見た防災要員の話と向きが逆に見えるかもしれません。あちらは義務づけの枠に上位の車を当てはめたとき、実際に置いた車の基準で人を置くことになっていました。
ただし人と薬剤では意味が違います。人は車を動かすために要るので、置いた車に合わせます。薬剤は火災に対して必要な量なので、想定している消火能力から決まります。
車をまとめても、消さなければならない火災の規模が変わるわけではないという整理です。
爆発が異常現象に該当しない場合

では、どこからが異常現象なのか。判断が難しい事例が照会されました。
問 タンク内で非破壊検査(浸透深傷)を実施中、内部に滞留した可燃性ガスが爆発した。燃焼継続及び消火の必要はなく、設備等の破損もなかつたが、負傷者2名が発生した。この事故は法第23条の異常現象に該当するか。
答 該当しない。
爆発が起き、2名が負傷しています。それでも異常現象には該当しないとされました。
判断を分けているのは、燃焼が続いていないこと、消火の必要がないこと、設備等の破損がないことの3点です。
法第23条の通報は、災害が広がるおそれに備えて防災機関を動かすためのものです。すでに収まっていて広がる要素がないなら、その仕組みを起動する対象ではないという整理になります。
ただしこれは第23条の話に限られます。労働災害としての報告や、他の法令に基づく届出まで不要になるわけではありません。
なお前の記事で見たとおり、法第23条に該当しない場合でも、少なくとも消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要とされた事例があります。
届出を現地事業所の名前で出せるか

特定事業者とは会社そのものです。ところが実務では、届出を出すのは現地の事業所になります。
問1 法第15条第2項の規定による特定防災施設等の設置届は特定事業者が行うこととされているが、現地事業所の代表者名で行うことができるか。
問2 法第16条第5項、第18条第1項及び第19条第3項の届出についてはどうか。
問2 法第16条第5項、第18条第1項及び第19条第3項の届出についてはどうか。
答 1及び2
特定事業者を代表する者から当該届出に関する委任状の提出等当該委任関係が明確にされていればさしつかえない。
特定事業者を代表する者から当該届出に関する委任状の提出等当該委任関係が明確にされていればさしつかえない。
現地の代表者名で出すこと自体は認められます。ただし条件として、委任関係が明確にされていることが求められました。
示された方法は委任状の提出等です。等とあるので、委任状に限る趣旨ではありません。社内規程で権限が明示されているなど、外から見て委任関係が分かる形であればよいと読めます。
問1の設置届だけでなく、問2として挙げられた法第16条第5項、第18条第1項および第19条第3項の届出についても同じ扱いです。
届出のたびに誰の名前で出すかを迷わなくて済むよう、あらかじめ委任の形を整えておくのが実務的です。
よくある質問
Q代替車両を用意しなくてよいのはどんな場合ですか?
A回答は、他の事業所等による緊急応援体制、他の防災資機材等の保有状況等を勘案し、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合としています。客観的にという語がある以上、外から見て体制が保たれていると説明できる状態が前提になります。
Q性能試験は必ず行わなければならないのですか?
A回答は性能試験そのものを義務づける書き方ではなく、昭和58年5月31日付けの消防地第105号に基づき定期点検の実施等、維持管理の適正を図るよう指導されたいとしています。消防機関の側は法第40条の規定に基づき維持管理の状況を適宜確認することとされています。
Q負傷者が出た爆発でも通報しなくてよいのですか?
A回答が該当しないとしたのは、燃焼継続及び消火の必要がなく、設備等の破損もなかつた事例についてです。石油コンビナート等災害防止法第23条の異常現象に当たるかどうかの判断であり、他の法令に基づく報告や届出まで不要になるわけではありません。
Q委任状は届出のたびに必要ですか?
A回答は、特定事業者を代表する者から当該届出に関する委任状の提出等、当該委任関係が明確にされていればさしつかえないとしています。委任状の提出等という書き方なので、委任関係が外から分かる形であればよいと読めます。具体的な運用は所轄の消防機関にご確認ください。
まとめ
- 防災資機材等をオーバーホールに出す間は、代替車両を準備させることとされています
- ただし他の事業所等による緊急応援体制や他の防災資機材等の保有状況等を勘案し、防災体制が整えられていると客観的に認められる場合はこの限りでありません
- 防災資機材等については、昭和58年5月31日付けの消防地第105号に基づき定期点検の実施等、維持管理の適正を図るよう指導するとされています
- 消防機関は法第40条の規定に基づき維持管理の状況を適宜確認します
- 大型化学高所放水車と普通消防車を備え付けた場合の泡消火薬剤は、大型化学消防車に基づいて算定して差し支えありません
- 燃焼継続及び消火の必要がなく設備等の破損もなかつた爆発は、負傷者2名が発生していても法第23条の異常現象に該当しないとされました
- 特定防災施設等の設置届等を現地事業所の代表者名で行うことは、委任関係が明確にされていればさしつかえありません
整備で抜ける期間まで考えて体制を組んでおく必要があるんですね。
客観的に認められるかどうかは、説明できる資料があるかで決まります。㈱防災屋でも体制の裏づけづくりからご相談を承っています。
参考・出典
- 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(昭和63年1月19日 消防特第15号 消防庁特殊災害室長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
- 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(昭和62年1月12日 消防地第12号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
- 特定事業所における自衛防災組織等の防災体制の充実について(昭和58年5月31日 消防地第105号)
- 石油コンビナート等災害防止法第15条第2項・第16条第5項・第18条第1項・第19条第3項・第23条・第40条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




