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使用停止命令に弁明の機会は要るか|罰則を適用する手続と配備が間に合わない場合の措置

使用停止命令に弁明の機会が要るかを解説するアイキャッチ画像

大容量泡放射システムが期限までに配備されない。
消防機関は措置命令を出し、それでも動かなければタンクの使用停止を命じることができます。
ただし命令は一方的に出せるものではありません。
使用停止命令は弁明の機会を要する不利益処分です

タンクの使用停止を命じられる場合、こちらの言い分を聞いてもらえるのでしょうか。

使用停止命令は行政手続法第13条の不利益処分に該当し、名あて人に対して弁明の機会の付与を要するとされています。

薬剤だけが期限に間に合いません。すぐ命令が出るのでしょうか。

措置命令が適当とされていますが、その前に配備までの間に講ずる措置を文書で提出するよう指導することとされています。

この記事の結論
  • 使用停止命令は行政手続法第13条に規定する不利益処分に該当し、名あて人に対して弁明の機会の付与を要します
  • 命令の履行期限は、未配備の大容量泡放射システムが配備されるまでの間としても差し支えありません
  • 命令に違反した特定事業者に罰則を適用しようとする場合は、違反事実を特定し捜査機関に告発する必要があります
  • 泡消火薬剤のみが期限に間に合わない場合は、措置命令の前に配備までの間に講ずる措置を文書で提出するよう指導します
  • 他の広域共同防災組織から薬剤を輸送する計画は、発災から泡放射開始までが概ね8時間以内となるようにする必要があります

使用停止命令に弁明の機会は要るか

使用停止命令の前に名あて人へ弁明の機会が付与される流れのイメージ
平成20年11月4日付けの消防特第181号の続きです。
措置命令の履行期限が過ぎても大容量泡放射システムが配備されない場合、法第21条第3項により、期間を定めて浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の全部または一部の使用停止を命ずることができます。
タンクを止めるのは事業者にとって重い処分です。手続の面が問われました。
問7(1) 使用停止命令は、行政手続法第13条に規定する不利益処分に該当し、名あて人に対して弁明の機会の付与を要するものと解してよいか
(2) 命令の履行期限の設定にあつては、未配備の大容量泡放射システムが配備されるまでの間としてよいか
答7(1) お見込みのとおり
(2) 差し支えない
言い分を聞く手続が要ります
使用停止命令は弁明の機会の付与を要する不利益処分です。命令を出す側は、その手続を踏まなければなりません。
一方の履行期限は、システムが配備されるまでの間としてよいとされました。何月何日までという固定の期日ではなく、状態が解消されるまでという定め方が認められています。
配備が済めば命令の目的は達せられるので、期限を切って再度出し直す必要はないという考え方です。
なおこの問7は、前に見た措置命令についての問6と対になっています。あちらは配備が期限を超えても実現していないことが客観的に明らかであれば警告等を特段要さないとされていました。処分の重さに応じて手続の要否が分かれています。

命令に違反したら罰則はどう適用するか

命令違反の事実を特定して捜査機関に告発する流れのイメージ
措置命令にも使用停止命令にも従わない場合、法には罰則があります。
ただし罰則は行政庁が科すものではありません。手続を尋ねた問いです。
問8 関係市町村長等は、法第21条第1項第3号の規定に基づく措置命令又は同条第3項の規定に基づく使用停止命令に違反した特定事業者に対し、法第50条第3号又は第49条第3号の規定に基づく罰則を適用しようとする場合に、どのような手続をとる必要があるか
答8 違反事実を特定し、捜査機関(警察又は検察)に告発する必要がある
具体的には、「石油コンビナート等特別防災区域における特定事業所の立入検査及び違反処理について」(平成19年3月20日付け消防特第35号)で通知した「特定事業所の違反処理マニュアル」を参考とされたい
告発という手続を踏みます
罰則を適用するのは司法の役割です。消防機関ができるのは、違反事実を特定して捜査機関に告発することまでです。
違反事実を特定するという言葉が入っている点が重要です。命令に従っていないという印象ではなく、どの命令のどの部分にどう違反したのかを記録として示せなければ、告発は成り立ちません。
参考として挙げられているのは、平成19年3月20日付けの消防特第35号で通知された特定事業所の違反処理マニュアルです。立入検査の段階から違反処理までを一続きの手続として整理したものになります。
事業者の側から見れば、立入検査で指摘を受けた時点が記録の起点になるということです。

薬剤だけ間に合わない場合まず何をするか

配備期限に間に合わない場合に講ずる措置を文書で提出する流れのイメージ
大容量泡放射システムは、泡放水砲と防災資機材と泡消火薬剤の組み合わせです。放水砲は用意できたが薬剤が間に合わない、ということが起こります。
実際にそうした相談が寄せられました。
問9 特定事業者から、大容量泡放射システムのうち大容量泡放水砲用泡消火薬剤のみが配備期限までに備え付けられない見込みであり、当該システムが配備されるまでの間は、次の(1)から(4)に掲げる措置を講じる旨の相談を受けている。このような相談に対して、どのような指導を行うべきか。
答9 設問の場合、浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の全面火災の発生に備え、早急に大容量泡放水砲用泡消火薬剤を配備する必要があり、法第21条第1項第3号に基づく措置命令を行うことが適当であるが、その前に大容量泡放水砲用泡消火薬剤を配備するまでの間に特定事業者が講ずる措置を文書で提出するよう指導されたい
その際、次のことに留意し、発災時に迅速かつ的確な応急対応が行われるよう指導されたい
まず文書で出させます
措置命令を行うことが適当であるとしたうえで、その前にという順序が示されています。
求められるのは、配備までの間に講ずる措置を文書で提出させることです。口頭のやり取りではなく、書面として残す形が指定されています。
これは事業者にとっても意味があります。何をいつまでにやるかを文書で示せていれば、その間の空白をどう埋めるつもりなのかが行政と共有されます。
そのうえで留意すべき事項が4つ挙げられました。次の項目以降で見ていきます。

薬剤の輸送計画に何を織り込むか

他の広域共同防災組織から2つの輸送ルートで薬剤を運ぶ計画のイメージ
留意事項の1つめは、他の広域共同防災組織が保有する薬剤を運んでくる計画についてです。
浮き屋根式タンクの全面火災では、ボイルオーバーという現象が起こりえます。時間との勝負になります。
(1) 他の広域共同防災組織が保有する大容量泡放水砲用泡消火薬剤を概ね8時間以内に輸送する計画の策定に当たつては、夜間・休日も含めて、発災から泡放射開始までの時間が概ね8時間以内となるようにする必要があること。
また、通行障害等により一の輸送ルートが活用できない場合に備え、二以上の輸送ルートについて計画が作成されている必要があること。
なお、当該輸送の計画について、道府県防災本部に設置される輸送専門部会で警察機関等と調整を図つておくことが適当であること。
8時間は放射開始までです
数え方に注意が要ります。8時間は輸送にかかる時間ではありません。発災から泡放射開始までの時間です。
積み込み、走行、現場での接続と準備まで含めて8時間ということになります。輸送そのものは、それよりかなり短く見積もる必要があります。
しかも夜間や休日も含めて成り立たせなければなりません。平日昼間の所要時間で計画を作ると、実際には届かないことになります。
さらに二以上の輸送ルートが求められています。通行障害で1本が使えなくなる事態を織り込むということです。
なお計画は道府県防災本部の輸送専門部会で警察機関等と調整しておくことが適当とされています。緊急通行の扱いを事前に詰めておく趣旨と読めます。

薬剤が届くまでに何を備えるか

発災タンクに隣接するタンクへ冷却散水を行い延焼拡大を防ぐ構成のイメージ
薬剤が届くまでの数時間、火災は進行します。その間に何をするかが残る留意事項です。
(2) 発災タンクからの輻射熱の影響を考慮して、タンク側板周囲への冷却散水設備の設置、三点セット及び放水銃による冷却又は固定泡消火設備による泡シールの実施等、発災タンクに隣接するタンク等への延焼の拡大を防止する態勢をあらかじめ構築しておくこと。
(3) 大容量泡放水砲用泡消火薬剤以外の泡消火薬剤の使用は、火災の状況を総合的かつ慎重に判断して行う必要があるものの、火災の状況によつては有効な場合も考えられることから、使用が想定される泡消火薬剤が発災タンクに放射されていても、大容量泡放水砲用泡消火薬剤の消火性能に悪影響を及ぼさないことを、あらかじめ確認しておく必要があること。
先に混ぜても大丈夫か調べます
(2)は、燃えているタンクを消せない間、周りへ広げないという発想です。冷却散水設備、三点セットと放水銃による冷却、固定泡消火設備による泡シール。手段が具体的に並んでいます。
(3)が見落とされやすいところです。手持ちの別の薬剤で先に泡をかけることは考えられますが、あとから届いた大容量泡放水砲用の薬剤と相性が悪ければ、本命の消火性能が落ちます。
だから使う可能性のある薬剤について、悪影響を及ぼさないことをあらかじめ確認しておく必要があるとされました。火事が起きてから調べるのでは間に合いません。
なお(4)として、教育訓練の早急な実施、屋外タンクの液面低下措置または貯蔵危険物の移送先の確保、タンク側板の座屈等により防油堤内へ危険物が流出した場合に備えた防油堤内への泡シールの態勢についても検討するよう指導されたいとされています。

よくある質問

Q措置命令にも弁明の機会が要るのですか?
A同じ執務資料の問6では、措置命令について行政手続法第13条に規定する意見陳述のための手続は同条第2項第3号に該当するものとして特段の手続を要さないと解してよいかとの問いにお見込みのとおりとされています。一方、問7の使用停止命令については弁明の機会の付与を要するとされました。
Q罰則は消防機関が科すのですか?
A回答は、違反事実を特定し捜査機関(警察又は検察)に告発する必要があるとしています。具体的な進め方は、平成19年3月20日付けの消防特第35号で通知された特定事業所の違反処理マニュアルが参考とされています。
Q8時間は輸送にかかる時間のことですか?
A回答は、夜間・休日も含めて発災から泡放射開始までの時間が概ね8時間以内となるようにする必要があるとしています。輸送だけでなく、準備や接続まで含めた時間です。あわせて二以上の輸送ルートについて計画が作成されている必要があるとされています。
Q別の泡消火薬剤を先に使ってよいのですか?
A回答は、火災の状況を総合的かつ慎重に判断して行う必要があるとしたうえで、状況によっては有効な場合も考えられるとしています。ただし使用が想定される薬剤が発災タンクに放射されていても大容量泡放水砲用泡消火薬剤の消火性能に悪影響を及ぼさないことを、あらかじめ確認しておく必要があるとされています。

まとめ

  • 使用停止命令は行政手続法第13条の不利益処分に該当し、名あて人に対して弁明の機会の付与を要します
  • 命令の履行期限は、未配備の大容量泡放射システムが配備されるまでの間としても差し支えありません
  • 罰則を適用しようとする場合は、違反事実を特定し捜査機関に告発する必要があります
  • 進め方は平成19年3月20日付けの消防特第35号で通知された特定事業所の違反処理マニュアルが参考とされています
  • 薬剤のみ間に合わない場合は、措置命令の前に講ずる措置を文書で提出するよう指導します
  • 輸送計画は発災から泡放射開始まで概ね8時間以内とし、二以上のルートを用意します
  • 使用が想定される他の泡消火薬剤については、消火性能に悪影響を及ぼさないことをあらかじめ確認しておきます

間に合わないときこそ、何を出しておくかが問われるんですね。

暫定措置は文書にして初めて評価されます。㈱防災屋でも計画書の組み立てからご相談を承っています。

参考・出典

  • 大容量泡放射システムに関する執務資料の送付について(平成20年11月4日 消防特第181号 消防庁特殊災害室長から関係道府県消防防災主管部長・関係政令指定都市消防長あて)
  • 石油コンビナート等特別防災区域における特定事業所の立入検査及び違反処理について(平成19年3月20日 消防特第35号)
  • 石油コンビナート等災害防止法第21条第1項第3号・第21条第3項・第49条第3号・第50条第3号
  • 行政手続法第13条
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

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