前の記事で、一部事務組合の職員は災害対策本部の本部員に任命できないと確認しました。
今回の回答は、そこに続きがあることを示しています。
あらかじめその職員を市町村の職員に併任しておけば、本部員に任命できます。
つまり入れられないのではなく先に手続がいるということです。
消防の一部事務組合の職員を、市町村の災害対策本部の本部員にしたいのですが。
あらかじめその職員を市町村の職員に併任しておくことが必要とされました。併任しないまま任命することはできません。
防災会議を共同設置しているので、災害対策本部も共同でつくれますか。
できないものと解するとされています。災害応急対策の実施責任が個々の執行機関に課せられていることが理由です。
この記事の結論
- 消防の一部事務組合の職員を本部員に任命するには、あらかじめその職員を市町村の職員に併任しておくことが必要です
- 災害対策本部の共同設置については規定がなく、できないものと解するとされました
- 災害救助法に基づく救助組織は災害対策本部に吸収されるもので、別個な組織と考えるべきでないとされています
- 地域防災計画の添付資料にあたる軽易なものは、修正の手続きをとることは要しないと解されました
- 災害危険区域とは建築基準法第39条に基づくもので、条例で津波や高潮や出水等による危険の著しい区域を指定できます
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目次
一部事務組合の職員を本部員にする道筋

本部員は、当該市町村の職員のうちから市町村長が任命します。消防の一部事務組合の職員は、組合の職員であって市町村の職員ではありません。
では、その職員を本部員にする道は閉ざされているのか。
問 市町村災害対策本部の本部員に消防の一部事務組合の職員を任命することができるか。
答 災害対策本部の本部員は、当該市町村の職員のうちから任命されることになつており(災害対策基本法第23条第3項)、消防の一部事務組合の職員を本部員に任命しようとするときは、あらかじめその職員を市町村の職員に併任しておくことが必要である。
答えは任命の可否だけを述べているのではなく、順番を示しています。任命する前に併任という手続を挟むということです。
併任とは、もとの職を保ったまま別の団体の職を兼ねさせる扱いです。組合の職員のまま、市町村の職員でもある状態をつくります。この状態になれば第23条第3項の当該市町村の職員に当てはまり、本部員に任命できます。
逆にいえば、併任をしないまま本部員に任命した場合、その任命は法の求める資格を欠くことになります。
実務では、災害が起きてから併任の手続を始めても間に合いません。本部の名簿をつくる段階で、組合職員が含まれていないかを先に確かめておく必要があります。
災害対策本部を共同設置できるか

会議を共同でつくったのなら、本部も共同でつくれるのではないか。組織を減らせるなら、そのほうが効率的にも見えます。
問 市町村防災会議を共同設置した場合又は市町村防災会議の協議会を設置した場合に、災害対策本部についても共同設置することはできるか。
答 災害対策本部の共同設置については規定がなく、また、災害応急対策は、災害対策基本法第50条第2項の規定により、個々の執行機関にその実施責任が課せられていることから、できないものと解する。
理由が2つ挙げられています。1つは、共同設置についての規定が置かれていないこと。防災会議には第16条第2項という根拠がありますが、本部にはそれがなく、結論はできないものと解するとされました。
もう1つが実質的な理由です。第50条第2項により、災害応急対策の実施責任は個々の執行機関に課せられています。責任が市町村ごとに分かれている以上、それを実行する本部を1つにまとめることはできないという整理です。
会議と本部で扱いが分かれるのは、役割が違うからです。会議は計画をつくり調整する場なので、まとめる利点があります。本部は現に起きている災害に手を打つ組織で、責任の所在をあいまいにできません。
相互応援協定などで足並みをそろえることと、本部そのものを1つにすることは別だと押さえておきます。
災害救助法の救助組織との関係

災害対策基本法第23条の災害対策本部と、災害救助法第22条の救助組織。根拠法が違うので、別々の組織を2つ立てるべきかが問われました。
問 災害対策基本法第23条の規定に基づく災害対策本部と災害救助法第22条の規定に基づく強力な救助組織とは、考え方に当然相異があると思われるが、相互の関係を示されたい。
答 救助組織は、災害対策本部に吸収され、活動しならびに整備されるもので、別個な組織と考えるべきでない。
吸収されるという語が使われています。救助組織を廃止するのではなく、災害対策本部という枠の中で活動し、整備されるということです。
根拠法が違えば組織も分かれるという発想を、この回答は否定しています。現場から見れば、指揮系統が2つある状態がいちばん困ります。
前の項目と読み合わせると、この考え方の輪郭がはっきりします。1つの市町村の中では組織を1つにまとめ、市町村をまたいで1つにすることはしない。まとめる方向と分ける方向が、責任の単位で決まっています。
地域防災計画の添付資料を直す場合

地域防災計画には、備蓄している衣料品の品名や数量といった具体的な情報が載ります。数量は年ごとに動きます。
そのたびに計画の修正手続を踏むのか。
問 地域防災計画中に登載されている代表的なもの(例えば、衣料品等の品名、数量等)の訂正のみを行なう場合も防災計画の修正として取扱うべきであるか。
答 例示のようなものは、本来計画そのものではなく添付資料として取扱われるものと思料されるので、軽易なものは、修正の手続きをとることは要しないものと解する。
考え方の順序は、まず計画そのものか添付資料かを分けることです。品名や数量の一覧は、本来計画そのものではなく添付資料として扱われるものとされました。
そのうえで、軽易なものについては修正の手続きをとることを要しないと解されています。
注意したいのは、添付資料であれば何でも自由に直してよいとは書かれていないことです。軽易なものという限定が付いています。数量の実績を新しい数字に置き換えるのと、備蓄の方針そのものを変えるのとでは意味が違います。
実務では、計画本体と添付資料の区分を最初にはっきりさせておくのが早道です。区分ができていれば、毎年の更新でどこまでを内部処理にできるかが自動的に決まります。
災害危険区域とはどの区域か

この災害危険区域という語が何を指すのかについて、大分県から照会がありました。
問 災害対策基本法第35条第2項第1号に定める災害危険区域の指定に関する事項についての考え方を示されたい。
答 ここでは建築基準法第39条に基づく災害危険区域を意味し、条例で津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を指定することができるのである。このほか、法律に基づく指定以外の被害危険区域を調査把握しておくことは当然差し支えない。
災害危険区域は災害対策基本法が独自に設けた制度ではなく、建築基準法第39条に基づくものだと示されました。指定は条例で行い、対象は津波、高潮、出水等による危険の著しい区域です。
建築基準法第39条の区域に指定されると、その区域内での住居の用に供する建築物の建築の禁止その他の制限が条例で定められます。指定は地図上の線引きにとどまらず、建てられるものが変わります。
後段も重要です。法律に基づく指定以外の被害危険区域を調査把握しておくことは当然差し支えないとされています。条例で指定していない場所であっても、危ないと分かっている区域を把握しておくのは妨げられません。
指定という制度上の行為と、把握という日常の備え。この2つは別物として扱ってよいということです。
よくある質問
Q併任しないまま本部員に任命したらどうなりますか?
A回答は、本部員は当該市町村の職員のうちから任命されることになつており、消防の一部事務組合の職員を本部員に任命しようとするときはあらかじめその職員を市町村の職員に併任しておくことが必要であるとしています。併任は任命の前提として示されています。
Q防災会議は共同設置できるのに本部はできないのはなぜですか?
A回答は、災害対策本部の共同設置については規定がなく、また災害応急対策は災害対策基本法第50条第2項の規定により個々の執行機関にその実施責任が課せられていることから、できないものと解するとしています。実施責任が市町村ごとに分かれていることが理由です。
Q地域防災計画の数量を直すたびに修正手続がいりますか?
A回答は、衣料品等の品名や数量等は本来計画そのものではなく添付資料として取扱われるものと思料されるので、軽易なものは修正の手続きをとることは要しないものと解するとしています。軽易なものという限定が付いている点にご注意ください。
Q条例で指定していない危険な区域は扱えないのですか?
A回答は、法律に基づく指定以外の被害危険区域を調査把握しておくことは当然差し支えないとしています。建築基準法第39条に基づく指定という制度上の行為と、危険な区域を把握しておくことは別に扱えます。
まとめ
- 本部員は当該市町村の職員のうちから任命されます(災害対策基本法第23条第3項)
- 消防の一部事務組合の職員を本部員にするにはあらかじめ市町村の職員に併任しておくことが必要です
- 災害対策本部の共同設置は規定がなくできないものと解するとされました
- 理由は災害応急対策の実施責任が個々の執行機関に課せられていることです(第50条第2項)
- 災害救助法の救助組織は災害対策本部に吸収されるもので別個な組織と考えるべきでないとされています
- 地域防災計画の添付資料にあたる軽易なものは修正の手続きを要しません
- 災害危険区域は建築基準法第39条に基づくもので、条例で危険の著しい区域を指定します
- 法律に基づく指定以外の被害危険区域を調査把握しておくことは差し支えありません
組織はまとめる、でも市町村をまたいではまとめない、ということですね。
責任の単位で線が引かれています。名簿と計画の区分は平時に整えておくのが確実です。㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 災対本部員に一部事務組合職員を任命することについて
- 災害対策本部の共同設置について
- 災害対策本部と災害救助法に基づく救助組織との関係について(昭和39年7月21日 自消丙総発第167号 大分県あて回答)
- 地域防災計画の添付資料としての取り扱いについて(昭和39年7月21日 自消丙総発第167号 長崎県あて回答)
- 災害危険区域の指定に関する事項について(昭和39年7月21日 自消丙総発第167号 大分県あて回答)
- 災害対策基本法第23条第3項・第35条第2項第1号・第50条第2項
- 災害救助法第22条
- 建築基準法第39条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和30年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄の自治体にご確認ください。




