防災会議には、行政の職員だけでなく外部の組織からも委員が入ります。
誰を任命できるのか、報酬は払うのか、代理で出席してよいのか。
条文には委員の枠が書かれているだけで、運用の細かいところは書かれていません。
これらの問いに個別の回答が積み重なっています。
医師会を指定地方公共機関にすることはできるのでしょうか。
できるとされました。災害時において被災者の救助に積極的に参加している実態からみて、知事の判断により指定できるという理由です。
県の職員が市町村防災会議の委員になったら、市町村から報酬を払うのですか。
支給することを要しないとされています。県の職員が地域防災計画の作成等に参画することは、都道府県の職員として法律上当然の責務だからです。
この記事の結論
- 医師会を災害対策基本法第2条第6号に定める指定地方公共機関とすることはできるとされています
- 同一県内に同格の陸上自衛隊の機関の長が2人いる場合、2名の任命は可能ですが適当でないとされました
- 市町村防災会議の委員として消防署長を任命することは差支えないとされています
- 県の出先機関の長に対しては、市町村防災会議の委員としての報酬を支給することを要しません
- 職によって指名または任命された委員の場合は代理出席が可能ですが、一身専属的な委員には代理の余地がないとされました
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目次
医師会を指定地方公共機関にできるか

指定地方公共機関は、災害対策基本法第2条第6号により、知事が指定します。指定されると防災に関する責務を負い、防災会議にも関わることになります。
医師会がこれに当たるかが問われました。
問 医師会を法第2条第6号に定める指定地方公共機関とすることができるか。
答 お見込みのとおり。
(理由)
医師会は公益社団法人として組織されており、災害時において被災者の救助に積極的に参加している実態からみて、知事の判断により指定地方公共機関として指定できる。
(理由)
医師会は公益社団法人として組織されており、災害時において被災者の救助に積極的に参加している実態からみて、知事の判断により指定地方公共機関として指定できる。
理由が2つに分かれています。1つは組織の形で、公益社団法人として組織されていること。もう1つは実態で、災害時において被災者の救助に積極的に参加していることです。
条文に医師会という名前が書かれているわけではありません。形と実態の両方から見て、知事が判断することになります。
逆にいえば、法人の形が整っていても災害時の活動実態がなければ、同じ結論にはなりません。名簿に載せることが目的ではなく、災害時に動く組織を組み込むための仕組みだと読めます。
同格の機関の長を2人指定できるか

同じ県の中に、まったく同格の陸上自衛隊の機関の長が2人いる場合が照会されました。
問 同一県内に全く同格の陸上自衛隊の機関の長が2人いる場合、2人を都道府県防災会議の委員として指定できるか。
答 災害対策基本法第15条第5項第2号の規定からして方面総監が2名指名すれば2名任命できるが、同一任命権者に属する者を2名委員にすることは他の委員との均衡やその任務からみて適当でない。
形式と適否が分けて答えられています。条文の読み方としては2名任命できる。ただし適当ではない、という構造です。
理由として挙げられたのは、同一任命権者に属する者を2名入れることの他の委員との均衡とその任務です。
防災会議は、いろいろな立場の機関を集めて計画をまとめる場です。同じ指揮系統の人が2つの席を占めれば、その分だけ他の分野の声が入らなくなります。
できるかどうかを聞かれて、できるが望ましくないと答える形は、この時期の回答によく見られます。禁止ではないので、最終的には運用する側の判断になります。
消防署長を委員に任命できるか

市町村防災会議の委員の枠は、災害対策基本法第15条第5項各号に準じて条例で定められます。
問 市町村防災会議の委員として、消防署長を任命して差支えないか。
答 消防署の職員は、市町村の職員であり、災害対策基本法第15条第5項第6号にいう消防機関であり任命して差支えない。
任命にあたつては、市町村防災会議条例準則第3条第5項第6号にて処理されたい。
任命にあたつては、市町村防災会議条例準則第3条第5項第6号にて処理されたい。
答えは、どの枠で入るのかまで示しています。消防署の職員は市町村の職員であり、第15条第5項第6号にいう消防機関に当たる。だから任命して差支えない、という筋道です。
実務としては後段が効きます。任命にあたっては市町村防災会議条例準則第3条第5項第6号で処理されたいとされました。
どの号で任命するかが決まっていないと、委員の枠数の数え方や、後任の扱いで迷うことになります。誰を入れるかと同時に、どの枠で入れるかを決めておく必要があります。
県の職員に報酬を支給するか

このとき市町村から報酬を払うのか。地方公務員法第24条第4項の重複給与の禁止との関係が問われました。
問 委員として県の出先機関の長(土木出張所、保健所等)が任命されることが予想されるが、この場合、県の一般職の職員は地方公務員法第24条第4項の規定により、当該市町村より委員としての報酬を受けることができないと解してよいか。
答 報酬を支給することを要しない。
(理由)
地公法第24条第4項の規定は、同一地方公共団体において、一般職の職員が他の一般職の職員を兼ねる場合の重複給与禁止規定である。したがつて、一般職の職員が他の地方公共団体の特別職を兼ねる場合においては同条の適用はなく、特別職の報酬を受けることは可能である。
ただし、本件の場合、……県の職員が市町村防災会議の委員として、地域防災計画の作成、その他の事務に参画することは、都道府県の職員として法律上当然の責務であるから、県の出先機関の長に対しては市町村防災会議の委員としての報酬を支給することを要しない。
(理由)
地公法第24条第4項の規定は、同一地方公共団体において、一般職の職員が他の一般職の職員を兼ねる場合の重複給与禁止規定である。したがつて、一般職の職員が他の地方公共団体の特別職を兼ねる場合においては同条の適用はなく、特別職の報酬を受けることは可能である。
ただし、本件の場合、……県の職員が市町村防災会議の委員として、地域防災計画の作成、その他の事務に参画することは、都道府県の職員として法律上当然の責務であるから、県の出先機関の長に対しては市町村防災会議の委員としての報酬を支給することを要しない。
問いは、地公法の重複給与禁止により受けられないのではないか、という立て方でした。回答はその読み方を否定しています。
同条は同一地方公共団体の中での話です。県の一般職が市町村の特別職を兼ねる場合には適用がなく、報酬を受けること自体は可能だとされました。
そのうえで、本件では支給することを要しないとされています。理由は別のところにあり、県の職員が市町村の地域防災計画の作成等に参画することは、都道府県の職員として法律上当然の責務だからです。
受け取れないから払わないのではなく、もともとの職務の一部だから報酬という形にならない、という整理です。
委員の代理出席は認められるか

委員は本来の職務で忙しく、会議に出られないことがあります。代わりの人を出してよいのか。
問 防災会議に委員の代理出席は認められるか。
答 職によつて指名または任命された委員の場合は代理出席が可能である。一身専属的な委員には代理の余地がないと思われる。
分かれ目は、その人がどういう理由で委員になったかです。
職によって指名または任命された委員は、その職に就いている人として会議に出ています。だからその職の代理を務める人が出れば足ります。
一方、その人個人の知見や立場を見込んで任命された一身専属的な委員は、代わりが利きません。学識経験者などが典型になります。
前の項目の消防署長は、消防機関という枠で任命された職による委員です。この整理でいけば代理出席の余地があることになります。
委員名簿を作るときに、どちらの類型かを整理しておくと、当日の運営で迷わずに済みます。
よくある質問
Q医師会以外の団体も指定地方公共機関にできますか?
A回答が扱っているのは医師会についてです。理由として、公益社団法人として組織されていることと、災害時において被災者の救助に積極的に参加している実態が挙げられ、知事の判断により指定できるとされています。他の団体については、同じ観点から個別に判断されることになります。
Q同格の機関の長を2人任命したら違法ですか?
A回答は、方面総監が2名指名すれば2名任命できるとしたうえで、同一任命権者に属する者を2名委員にすることは他の委員との均衡やその任務からみて適当でないとしています。できないとは述べていません。
Q県の職員は報酬を受け取ること自体ができないのですか?
A回答は、地方公務員法第24条第4項は同一地方公共団体における重複給与禁止の規定であり、一般職の職員が他の地方公共団体の特別職を兼ねる場合には適用がなく、特別職の報酬を受けることは可能であるとしています。そのうえで本件は法律上当然の責務であることを理由に、支給することを要しないとされました。
Q代理出席できるかはどう見分けますか?
A回答は、職によって指名または任命された委員の場合は代理出席が可能であり、一身専属的な委員には代理の余地がないと思われるとしています。その人が就いている職を理由に任命されたのか、その人個人を見込んで任命されたのかが分かれ目です。
まとめ
- 医師会は知事の判断により指定地方公共機関として指定できるとされています
- 理由として、公益社団法人として組織されていることと、災害時に被災者の救助に積極的に参加している実態が挙げられました
- 同格の陸上自衛隊の機関の長2名の任命は可能ですが、他の委員との均衡からみて適当でないとされました
- 消防署の職員は市町村の職員であり第15条第5項第6号にいう消防機関として任命して差支えありません
- 県の出先機関の長には、委員としての報酬を支給することを要しません
- これは受け取れないからではなく、都道府県の職員として法律上当然の責務だからです
- 代理出席は職によって指名または任命された委員なら可能で、一身専属的な委員には代理の余地がありません
どの枠で任命したかが、あとの運用に効いてくるんですね。
委員名簿は職による委員と一身専属的な委員を分けて整理しておくと運営が楽になります。㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 医師会を指定地方公共機関とすることができるか(昭和44年10月6日 消防防第385号 大分県・静岡県あて回答)
- 都道府県防災会議委員の任命について
- 市町村防災会議委員として消防署長を任命できるか(昭和39年4月3日 自消丙総発第77号回答)
- 市町村防災会議委員の報酬について
- 防災会議に委員の代理出席は認められるか(昭和45年4月 福岡県あて回答)
- 災害対策基本法第2条第6号・第15条第5項
- 地方公務員法第24条第4項
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和30年代から40年代のものが含まれます。個別の事案についての適用は、所轄の自治体にご確認ください。



