地震のあと避難ハッチを開けたら、ふたが変形して動かない。降下先には落下物が散乱している。
この状態でも、別の階段が通れれば建物を使い続けてよいのでしょうか。
結論は、使えない避難器具だけを見るのではなく、その階から地上まで安全に逃げられる経路が残っているかで判断することです。
代替経路で補えない区画は立入・使用を制限し、点検と復旧を業務再開の条件にします。
避難はしごが壊れていても、階段があれば大丈夫ですか?
その階から屋外まで経路全体を確認します。
ロープや脚立で代用したら早くないですか?
自己流の代用品は避難器具になりません。
- 破損・変形・操作障害がある避難器具は使用せず、立入できる範囲から確認します。
- 器具本体だけでなく、開口部、操作面積、降下空間、避難空地まで一続きで点検します。
- その階から地上まで安全な代替避難経路が無ければ、区画の使用を止めます。
- ロープや脚立を自己判断で置かず、消防設備業者と所轄消防署へ連絡します。
- 使用停止の表示、代替経路、誘導担当、復旧確認を一枚の対応票にまとめます。
▼

目次
避難器具が使えないまま建物を使ってよいのか

まず周囲の落下物、床やバルコニーの損傷、煙や火気などを確認し、危険な場所へ近づかないことが先です。
「少し曲がっただけ」「ふたを押せば開く」と判断して在館者へ使わせると、降下中の落下や開口部での転倒につながります。
異常を見つけた担当者は、器具へ使用停止の表示を付け、対象階と設置場所を防火管理者や管理会社へ報告します。
消防用設備等は技術上の基準に従って設置し、維持することが求められます。復旧方法を自己判断せず、消防設備業者へ点検を依頼します。
少し曲がっただけなら使えますか?
異常がある器具は使わず、専門業者へ確認します。
どの器具と避難経路を対象に確認するのか

その器具を使う階、器具へ近づく通路、開口部、降下空間、地上の避難空地、そこから安全な場所へ移動する経路まで確認します。
地震後は、器具が無傷でもバルコニーの床、手すり、外壁、取付部が損傷していることがあります。
上階の降下口と下階の避難ハッチが同じ垂直線上にある場合は、下の階で人や物が干渉しないかも確認します。
通常階段を代替経路にするなら、階段室の扉、通路、非常口、屋外までの動線が通れるかを入口から出口まで歩いて確認します。
- 避難器具へ安全に近づけるか
- ふたや窓を安全に開放できるか
- 操作するための面積が残っているか
- 降下空間と地上の避難空地に障害物がないか
- 代替階段から屋外まで通行できるか
箱の中だけ見たらええんちゃいますか?
近づく所から降りた先までが確認範囲です。
代替避難経路と区画制限はどう決めるのか

最初に平面図へ使用停止場所を記し、同じ階から使える階段、屋外階段、別の避難器具を確認します。
代替経路は「階段の入口が開く」だけでなく、屋外の安全な場所まで連続していることが条件です。
経路が長くなる場合は、曲がり角や分岐に誘導担当を配置し、在館者へ変更を周知します。
高齢者、車いす利用者、子ども、宿泊者など、自力で代替階段を使いにくい人がいる施設では介助者と一時待機場所も決めます。
火気を使う厨房や作業場、避難経路が一つしか残らない区画、夜間に誘導担当を確保できない区画は、営業や立入を止める判断が必要です。
| 確認結果 | BCP上の対応 |
|---|---|
| 安全な代替経路と誘導体制がある | 使用範囲と人数を限定して継続を検討する |
| 代替経路はあるが介助者が足りない | 対象者や区画の利用を制限する |
| 地上まで安全な経路がない | 区画を閉鎖し復旧まで使用しない |
別の階段へ案内できれば営業できますか?
利用者と誘導体制まで含めて判断します。
代用品を置くだけでは補えないのはなぜか

市販のロープ、脚立、縄ばしごを置いても、法令上の避難器具を復旧したことにはなりません。
壊れたふたを木片で固定する、変形したはしごを力で伸ばす、別の場所へ勝手に掛け替える行為は危険です。
応急対応は、器具を自己流で使える形にすることではなく、危険な器具を使わせず安全な経路へ振り替えることです。
代替経路でも安全を確保できない場合は、対象区画を閉鎖し、在館者を別の階や拠点へ移します。
修理後は外観だけで終わらず、消防設備業者が操作、展張、固定、降下空間などを確認し、必要に応じて所轄消防署へ相談します。
丈夫そうな縄ばしごなら代わりになりますか?
基準と取付条件を満たさない代用はできません。
明日から使用停止と復旧手順をどう確認するのか

災害後は、目視できる範囲から異常を探し、危険箇所へ立ち入らずに使用停止範囲を決めます。
使用停止の表示と代替避難経路の案内は、異常を見つけた時点で同時に行います。
次に、建物所有者、管理会社、防火管理者、消防設備業者へ報告し、区画の使用を続けるか止めるかを決めます。
所轄消防署へは、器具の種類、場所、損傷状況、代替経路、在館者、復旧見込みを整理して相談します。
復旧後は、器具本体、取付部、操作面積、開口部、降下空間、避難空地の全項目を再確認し、使用停止表示を外します。
- 避難器具の位置と対象階を平面図へ記入する
- 使用停止札と立入制限テープを用意する
- 階段など代替避難経路を歩いて確認する
- 正副の誘導担当と介助担当を決める
- 消防設備業者と所轄消防署の連絡先を掲示する
- 復旧確認の項目と記録様式を作る
内閣府の事業継続ガイドラインが示す点検・訓練・見直しの考え方に沿い、不足した人員や表示物をBCPと消防計画へ反映します。
まず何を準備したらええですか?
位置図と使用停止札からそろえましょう。
よくある質問
まとめ
代替経路の訓練までやります!
使わせない判断と復旧確認までが手順です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- 消防庁 消防用設備等の点検基準・点検要領・点検票
- 消防庁 別表第15 避難器具の点検の基準
- 消防庁 第15 避難器具の点検要領
- 消防庁 金属製避難はしごの適切な維持管理について
- 消防庁 避難器具の基準
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および消防庁、内閣府の資料に基づく一般的な解説です。避難器具の種類、設置階、損傷状況、建物用途、在館者、代替避難経路によって必要な使用制限や復旧方法は異なります。個別の判断と点検・修理は、建物所有者、管理会社、消防設備士、消防設備業者、所轄消防署へご確認ください。





