地下街や地下施設の巡回中に、無線通信補助設備の保護箱の周りが水に濡れていたらどうしますか。
扉を開けて中を確かめたくなりますが、水の浸入や通電状態が分からないまま触るのは危険です。
外側が乾いたように見えても、接続端子や同軸ケーブルの接続部まで正常とは限りません。
安全を確保して状況を記録し、使用不能の疑いを共有して専門点検へつなぐことが重要です。
端子箱の下が水浸しです。
扉を開けて見てもええですか。
無理に開けません。
安全確保と記録を先にします。
水が引いて乾いたら、もう使えるんでしょうか。
見た目だけでは戻せません。
通信経路全体を点検します。
この記事の結論
- 浸水を見つけても安全未確認の保護箱を無理に開けません。
- 発見時刻・場所・水の範囲・外観を乾いた安全な位置から記録します。
- 端子箱だけでなく増幅器・分配器・アンテナ・同軸ケーブルまで確認します。
- 未確認の間は消防隊の無線連絡に支障がある可能性を関係者へ共有します。
- 専門点検で機能を確認し、復旧判断と時刻をBCPへ残します。
▼

目次
浸水した無線通信補助設備の保護箱を開けてよいのか

まず水の流入、漏電のおそれ、滑りやすい床、天井や壁の損傷を確認し、人が近づかない範囲を作ります。
消防法第17条は、対象となる防火対象物の関係者に、基準に従って消防用設備等を設置し維持することを求めています。
消防庁の無線通信補助設備の点検基準は、保護箱に変形・損傷・著しい腐食等がなく、内部にほこりや水が入っていないことを確認項目にしています。
保護箱は接続端子を守るものですが、扉を開けたことで内部へ水が回る場合があります。
また、濡れた床から手を伸ばして端子や金属部分へ触れる行為には危険が伴います。
現場では立入範囲を確保し、離れた位置から箱の場所と水の範囲を撮影します。
扉の変形、鍵の状態、壁面からの漏水、ケーブル引込み部も外側から分かる範囲で記録してください。
その後、防火管理者、BCP担当者、消防用設備の専門業者へ使用不能の疑いを伝えます。
中を見る前に、人が近づかないようにするんですね。
そうです。
安全確保が最初です。
どの建物と設備を対象に確認するのか

一つの赤い保護箱だけでなく、建物内に延びる通信経路を一組で確認します。
消防法施行令第29条の3は、延べ面積が千平方メートル以上の地下街について、消防隊が相互に無線連絡を容易に行えるよう無線通信補助設備を設ける基準を定めています。
消防庁の点検基準は、保護箱、接続端子、終端抵抗器・キャップ、増幅器、分配器、アンテナ、漏えい同軸ケーブル、配線接続部などを点検対象にしています。
地下街に複数の端子箱がある場合は、場所の呼び名だけでなく、階・通路・出入口番号まで合わせます。
確認対象を次のように整理しましょう。
- 消防隊が使用する接続端子と保護箱
- 終端抵抗器や端子キャップの有無と外観
- 増幅器・分配器・アンテナの設置場所
- 漏えい同軸ケーブルと一般同軸ケーブルの経路
- 電源、配線接続部、浸水が広がった区画
それでも想定を超える浸水があれば、端子箱から離れた部分まで影響が及ぶ可能性があります。
施設担当者は消防設備図面と点検票をそろえ、どの系統が濡れた可能性があるかを専門業者へ伝えます。
機械室や天井内など立入条件が異なる場所は、現場ごとの安全確認が必要です。
一部の端子箱が無事でも、通信経路の途中が損傷していれば、設備全体の機能へ影響します。
赤い箱だけを見れば終わりではないんですね。
はい。
通信経路を一組で見ます。
水の浸入を見つけたら何を記録し誰へ伝えるのか

現場写真と停止情報を一つの記録につなげると、復旧判断の抜けを防げます。
消防法第17条の3の3は、消防用設備等を定期に点検し、その結果を消防長または消防署長へ報告する仕組みを定めています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、被害状況を把握し、重要業務への影響や代替手段、復旧状況を継続して管理する考え方を示しています。
安全な場所から、次の順番で対応します。
- 発見時刻、場所、水の深さと広がりを記録する
- 保護箱の外観、扉、鍵、壁面、引込み部を撮影する
- 端子箱と通信経路を設備図面で特定する
- 防火管理者・BCP担当者・専門業者へ使用不能の疑いを共有する
- 必要に応じて所轄消防署へ状況と暫定対応を相談する
- 点検結果、復旧承認者、復旧時刻を記録する
端子を使ったか、扉を開けたか、電源を操作したかも記録対象です。
BCP側では、設備の状態を確認済み・未確認・使用不能に分けます。
消防隊の活動に関わるため、単なる建物設備の故障ではなく、防災機能の低下として共有してください。
夜間や休日でも専門業者へ連絡できるよう、緊急連絡先と代行者を登録しておきます。
写真と停止情報を同じ記録にまとめます。
ええですね。
復旧まで追える記録にしましょう。
乾けば使えると思い込みやすいのはなぜか

しかし、水は端子、キャップ、ケーブル接続部、増幅器や分配器の内部へ残ることがあります。
消防庁の点検基準は、接続端子の損傷、終端抵抗器・キャップ、プラグの着脱、分配器の防水措置、同軸ケーブル接続部の防湿措置などを確認対象にしています。
外観が乾いたことは、絶縁状態や接続状態、必要な通信性能が回復したことを示すものではありません。
濡れた接続部には腐食や接触不良が後から現れる場合があります。
一度つながったように見えても、場所や電波条件によって通信が不安定になる可能性があります。
- 濡れたプラグを差し込まない
- 端子やキャップを布で拭いただけで復旧扱いにしない
- 乾燥目的で勝手に通電や加熱をしない
- 扉が閉まるだけで保護機能が戻ったと判断しない
- 一部区間の通信だけで全区画を正常扱いにしない
必要な測定や通信確認を行い、影響範囲を切り分けます。
部品交換や乾燥処置をした場合も、処置後の機能確認が必要です。
施設側は、専門業者の結果を受けるまで未復旧表示を解除しない運用にします。
表面が乾いただけでは、復旧ではないんですね。
はい。
機能確認までが復旧です。
明日から無線通信補助設備の浸水対応をどう確認するのか

平常時の点検と訓練へ、浸水を想定した確認手順を入れておきましょう。
消防庁は、無線通信補助設備について所定の点検基準・点検要領と点検票を公表しています。点検票には点検結果、不良内容、措置内容を記録する欄があります。
内閣府の事業継続ガイドラインは、教育・訓練、点検、見直しを繰り返し、事業継続の実効性を維持する考え方を示しています。
次の手順を防災訓練や設備点検に組み込んでください。
- 保護箱、増幅器、分配器、アンテナ、ケーブル経路を図面で確認する
- 浸水しやすい場所と安全な撮影位置を決める
- 防火管理者・BCP担当者・専門業者の連絡順を決める
- 使用不能の表示方法と施設内の共有先を決める
- 点検結果を受けて復旧を承認する人を決める
- 復旧時刻と残った不良内容をBCPへ戻す
浸水想定区域とケーブル経路を重ねると、確認の優先順位を決めやすくなります。
訓練では、端子箱を開けずにどこまで情報を集められるかを試してください。
連絡先が不通のときに備え、代行者と別の連絡手段も決めます。
復旧後は、点検結果と措置内容を確認し、未復旧表示の解除時刻を記録しましょう。
端子箱の番号と連絡先を一覧にします。
ええですね。
開けずに動ける手順にしましょう。
よくある質問
Q保護箱の表面だけが濡れていても使用を止めますか?
A内部への水の浸入や通信経路の状態を見た目だけで判断できません。使用不能の疑いとして共有し、専門業者へ確認します。
Q施設担当者が扉を開けて写真を撮ってもよいですか?
A浸水中や安全未確認の状態では無理に開けません。まず外観と周囲を安全な位置から記録し、開放確認は専門業者へ依頼します。
Q一つの端子箱が無事なら設備は使えますか?
A別の端子箱、増幅器、分配器、アンテナ、ケーブル経路に影響がある場合があります。系統全体の点検結果で判断します。
Q復旧完了は何を見て判断しますか?
A水が引いたことだけでなく、各機器と配線の点検、必要な測定や通信確認を終えた点検記録で判断します。
まとめ
✔浸水中や安全未確認の保護箱を無理に開けません。
✔乾いた安全な位置から外観と水の範囲を記録します。
✔端子箱からアンテナと同軸ケーブルまで一組で確認します。
✔未確認の間は使用不能の疑いを関係者へ共有します。
✔表面が乾いても自己判断で接続や通電をしません。
✔専門点検の測定と通信確認で復旧を判断します。
✔発見から復旧までの判断を消防計画とBCPへ残します。
端子箱を開けずに連絡する訓練をやってみます!
記録と停止共有と専門点検を一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
この記事を書いた人
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第17条・第17条の3の3
- e-Gov法令検索 消防法施行令第29条の3
- 消防庁 消防用設備等の点検基準・点検要領
- 消防庁 無線通信補助設備の点検基準 別表第22
- 消防庁 消防用設備等の点検要領 第22 無線通信補助設備
- 消防庁 無線通信補助設備点検票 別記様式第22
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令・点検基準等に基づく一般的な解説です。無線通信補助設備の点検方法、浸水時の安全措置、復旧判断は建物の構造・設備構成・被害状況や地域の運用で異なります。実際の対応は専門業者および所轄消防署へご確認ください。





