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地下街の無線通信補助設備はなんのためにあるのか|設置が必要になる延べ面積と無線機接続端子の基準を解説

地下街の通路で消防隊の無線はどうやって届くのか

地下街の壁に付いている赤い小さな箱を見たことがあるでしょうか。
あれは飾りでも電気の設備でもなく、火災のときに駆けつけた消防隊が無線でやり取りするための設備の一部です。
地下は電波が通りにくいので、建物の側があらかじめ電波の道を用意しておくことが法令で求められています。
この記事では無線通信補助設備がどの建物に必要で防火管理者は何を見ておけばよいのかを条文から整理します

地下街のテナントで防火管理者になったのですが、通路の壁に赤い箱が付いていて中身が分かりません。
触ってよいものなのか判断できずにいます。

それはおそらく無線機接続端子の保護箱です。
消防隊が地下で無線を使うための設備なので、まわりをふさがないことがいちばん大事になります。

地下では無線が届きにくいという話は聞いたことがあります。
その対策が建物の側にもあるということですか。

そのとおりです。
消防法施行令が消火活動上必要な施設の一つとして定めていて、地下街には設置義務があります。

この記事の結論
  • 無線通信補助設備は消防隊どうしの無線連絡のために建物の側が用意する設備です
  • 設置義務があるのは令別表第一(16の2)項の地下街で延べ面積が1,000平方メートル以上のものです
  • 電波の道は漏えい同軸ケーブル等で作り、消防隊は無線機を端子につないで使います
  • 端子は地上で消防隊が有効に活動できる場所と防災センター等の両方に設けます
  • 保護箱は赤色に塗色して「無線機接続端子」と表示することまで規則が決めています

地下街の無線通信補助設備の仕組みと設置基準を示した図解

無線通信補助設備はなんのためにある設備なのか

地上の建物と地下の通路を隔てる地層と無線機を持つ消防隊員のイラスト
消火器や自動火災報知設備が建物にいる人のための設備なのに対して、この設備は駆けつけた消防隊のための設備です。
まずは消防法施行令がこの設備をどこに位置付けているかを見ます。
消防法施行令第7条第6項
法第17条第1項の政令で定める消火活動上必要な施設は、排煙設備、連結散水設備、連結送水管、非常コンセント設備及び無線通信補助設備とする

消防法施行令第29条の3第2項第2号
無線通信補助設備は、前項に規定する防火対象物における消防隊相互の無線連絡が容易に行われるように設けること。
目的は消防隊どうしの会話をつなぐことです
地下街のように厚いコンクリートと土に囲まれた空間では、携帯型の無線機の電波が地上まで届きません。
指揮をとる隊員が地上にいて、放水や検索をする隊員が地下にいるという状況で会話が切れると、活動そのものが止まってしまいます。
そこで建物の側にあらかじめ電波の通り道を作らせるという考え方が採られました。
五つある消火活動上必要な施設のうち、排煙設備や連結送水管が煙や水を扱うのに対して、無線通信補助設備だけが情報を扱う設備という点も覚えておくと整理しやすくなります。

建物の設備なのに使うのは消防隊なのですね。
普段は誰も触らないということですか。

操作するのは消防隊ですが、使える状態に保つのは建物の関係者です。
まずは端子の場所を図面で押さえておきましょう。

どの建物に設置しなければならないのか

地下街の通路と延べ面積を測る巻尺と空白の表示板のイラスト
対象はきわめて限定的で、条文は用途と規模を一つずつしか挙げていません。
自分の建物が入るかどうかは二つの条件を順に当てるだけで判定できます。
消防法施行令第29条の3第1項
無線通信補助設備は、別表第一(16の2)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のものに設置するものとする。
条件は用途と面積の二つだけです
一つ目の用途は令別表第一(16の2)項、すなわち地下街です。
二つ目の面積は延べ面積が1,000平方メートル以上であることです。
階数も収容人員も条文には出てこないので、高層建築物であっても地下街でなければこの条文による設置義務は生じません。
同じ地下でも(16の3)項の準地下街は条文に挙がっておらず、地下階を持つだけの建物も同様です。
自分の建物が地下街に当たるかどうかが分からないときは、所轄消防本部が地下街として扱っているかを先に確かめるのが確実です。

思っていたよりずっと対象が狭いのですね。
地下駐車場がある建物は関係ないということでしょうか。

この条文だけで見ればそのとおりです。
ただし市町村が条例で基準を付け加えている場合があるので、所轄消防本部にも確認しておくと安心です。

漏えい同軸ケーブルと端子にはどんな基準があるのか

天井を走るケーブルと壁の赤い保護箱と無線機を持つ人のイラスト
設置の細かい基準は消防法施行規則が定めています。
防火管理者が現場で目にするのは、天井を走るケーブルと壁の赤い箱の二つです。
消防法施行規則第31条の2の2第1項
一 無線通信補助設備は、漏えい同軸ケーブル、漏えい同軸ケーブルとこれに接続する空中線又は同軸ケーブルとこれに接続する空中線(以下「漏えい同軸ケーブル等」という。)によるものとし、(略)
八 無線機を接続する端子(以下「端子」という。)は、次のイからニまでに定めるところによること。
イ 端子は、地上で消防隊が有効に活動できる場所及び防災センター等に設けること。
(略)
ハ 端子は、床面又は地盤面からの高さが0.8メートル以上1.5メートル以下の位置に設けること。
ニ 端子は、次の(イ)及び(ロ)の規定に適合する保護箱に収容すること。(略)
(ロ) 保護箱の表面は、赤色に塗色し、「無線機接続端子」と表示すること
電波の道と入口の二つで一組です
電波の道にあたるのが漏えい同軸ケーブルで、外被にすきまを設けて電波をわざと漏らす構造になっており、これが地下の通路に沿って走ることで無線が届く範囲が生まれます。
入口にあたるのが端子で、消防隊はここに自分の無線機をつないで地下と地上を結びます。
端子は地上側と防災センター等の両方に設けることとされているので、片方だけでは足りません
高さが0.8メートル以上1.5メートル以下と決められているのは、防火衣を着た隊員が立ったまますぐ扱えるようにするためです。
保護箱があの赤色なのも規則が指定しているからで、通路の内装に合わせて塗り替えることはできません。

つまりあの赤い箱は消防隊の無線の差込口なのですね。
色にも意味があったとは思いませんでした。

赤色と表示は探しやすさのための決まりです。
表示が汚れて読めなくなっていないかを一度見てみてください。

実務で見落としやすいのはどこか

荷物でふさがれた赤い保護箱と増幅器と非常電源のイラスト
この設備は普段動いているところを誰も見ないので、不具合に気づきにくいという性質があります。
規則の条文には、見落としやすい点がそのまま書き込まれています。
消防法施行規則第31条の2の2第1項
四 漏えい同軸ケーブル等は、耐熱性を有するように、かつ、金属板等により電波の輻射特性が低下することのないように設置すること。
(略)
七 増幅器を設ける場合には、次のイからハまでに定めるところによること。
(略)
ロ 増幅器には非常電源を附置するものとし、当該非常電源は、その容量を無線通信補助設備を有効に30分間以上作動できる容量とするほか、第24条第4号の規定の例により設けること。
(略)
十 警察の無線通信その他の用途と共用する場合は、消防隊相互の無線連絡に支障のないような措置を講じること。
設備は生きていても使えなくなることがあります
一つ目は端子まわりで、保護箱の前に什器や在庫が積まれていると、消防隊は箱の扉を開けることができません。
令第29条の3第2項第1号が点検に便利なように設けることを求めている以上、あとから前をふさぐ行為はその趣旨に反します。
二つ目はケーブルまわりで、規則が金属板等による影響をわざわざ挙げているとおり、後付けの金属製の天井材や什器がケーブルの近くに入ると電波の出方が変わります。
改装のたびに天井裏を触るテナントビル型の地下街では、工事の前に位置を共有しておくことが実質的な防止策になります。
三つ目は増幅器を置いている場合の非常電源で、容量は30分間以上と定められていますが、蓄電池は経年で劣化するため点検の記録を見ておく必要があります。

実は箱の前に段ボールを置いている区画に心当たりがあります。
すぐに片づけるよう伝えたほうがよさそうですね。

ぜひお願いします。
置き場所が足りないから置いているという場合が多いので、代わりの置き場をあわせて決めると戻りにくくなります。

明日からなにを確かめればよいのか

点検表を持つ人と壁の赤い保護箱と報告書の束のイラスト
無線通信補助設備は消防用設備等の一つなので、点検と報告の仕組みがそのまま当てはまります。
防火管理者の側でやることは、日常の確認と法定点検の受け皿づくりの二つです。
消防法施行規則第31条の6第3項
防火対象物の関係者は、前二項の規定により点検を行った結果を、維持台帳(略)に記録するとともに、次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。(略)
一 令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項及び(16の3)項に掲げる防火対象物 1年に1回
地下街の報告は1年に1回です
令別表第一(16の2)項は第1号に挙がっているので、無線通信補助設備を含む消防用設備等の点検結果は1年に1回の報告になります。
防火管理者の側では、消防法施行規則第3条第1項第1号ロの自主検査と同号ハの点検及び整備を消防計画に落とし込み、端子の保護箱の前が空いているか、表示が読めるかといった項目を日常の確認に入れておきます。
そのうえで、テナントの改装工事が入るときはケーブルと端子の位置を工事業者に先に伝えるという段取りを決めておくと、あとから電波の道が塞がれる事態を防げます。
点検で指摘が出たときは、記録を維持台帳に残したうえで管理権原者に上げることまでが一連の流れです。

消防計画の自主検査の項目に足しておけばよいのですね。
次の見直しのときに入れてみます。

それが確実です。
写真を撮って正常な状態を残しておくと、次の担当者にも引き継ぎやすくなります。

よくある質問

Q地下街ではない建物にも無線通信補助設備は必要になりますか?
A消防法施行令第29条の3第1項が対象にしているのは令別表第一(16の2)項の地下街だけです。ただし消防法第17条第2項により市町村はその地方の気候又は風土の特殊性に照らして条例で異なる規定を設けることができるので、実際の要否は所轄消防本部にご確認ください。
Q増幅器を設けていない場合でも非常電源は必要ですか?
A消防法施行規則第31条の2の2第1項第7号は「増幅器を設ける場合には」という条件付きの規定です。増幅器を置かない構成であれば非常電源を附置する義務は生じませんが、置く場合は30分間以上作動できる容量が必要になります。
Q保護箱の色を通路の内装に合わせて変えることはできますか?
Aできません。消防法施行規則第31条の2の2第1項第8号ニは、保護箱の表面を赤色に塗色し「無線機接続端子」と表示することを求めています。表示が汚れたり剥がれたりしている場合は復旧が必要です。
Q警察の無線と設備を共用することは認められていますか?
A消防法施行規則第31条の2の2第1項第10号が共用する場合を想定しており、消防隊相互の無線連絡に支障のないような措置を講じることを条件にしています。共用そのものは禁じられていませんが、支障が出ない設計であることが前提です。

まとめ

無線通信補助設備は消防法施行令第7条第6項が挙げる消火活動上必要な施設の一つです
目的は消防隊どうしの無線連絡が地下でも切れないようにすることです
設置義務があるのは令別表第一(16の2)項の地下街で延べ面積1,000平方メートル以上のものです
電波の道は漏えい同軸ケーブル等で作り、入口となる端子は地上と防災センター等の両方に設けます
端子の高さは0.8メートル以上1.5メートル以下で、保護箱は赤色に塗色して表示を付けます
保護箱の前をふさぐ行為と後付けの金属材が最も多い見落としです
点検結果の報告は地下街の場合1年に1回で、日常の確認は消防計画の自主検査に組み込みます

赤い箱の意味が分かってすっきりしました。
明日さっそく通路を見て回ります。

その一歩がいちばん効きます
地下街の防火管理でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の3
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第6項・第29条の3・別表第一
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項・第31条の2の2・第31条の6
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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