「防火シャッターの点検、どこまで見ればいいんだろう」——防火管理者から㈱防災屋によく寄せられる質問です。
防火シャッターは、降下位置に物が置かれているだけで火災時に完全に閉鎖できなくなることがあります。
防火設備定期検査では、設置場所の周囲状況から駆動装置、カーテン部、ケース、まぐさ及びガイドレールまで、9つの検査項目が定められています。
本記事では、防火シャッターの定期検査で実際にどこをどう確認するのか、判定基準と実務で見落としやすいポイントをあわせて解説します。
うちのテナントビル、防火シャッターの下によく荷物が置かれているんです。
点検のとき、これも指摘されるんでしょうか。
はい、要是正になります。
防火シャッターは降下位置に物があると、火災時に完全に閉鎖できず延焼や煙の拡散を防げなくなるためです。
駆動装置やカーテン部など、防火シャッターにはほかにもいろいろな部品があるんですよね。
全体でどんな項目を見るのか知りたいです。
防火設備定期検査業務基準では、設置状況・駆動装置・カーテン部・ケース・まぐさ及びガイドレールの5つの視点で、あわせて9つの検査項目が定められています。
順番に見ていきましょう。
- 防火シャッターの降下位置に物品や配管があると、火災時に完全に閉鎖できなくなります。
- 日常的に開閉するシャッターは、開閉機の固定ボルトの緩みとスプロケットの心ずれを必ず確認します。
- 軸受け部のブラケットやローラチェーンに異常な振動・歯飛びがあると、閉鎖の途中で止まるおそれがあります。
- スラットの片流れや吊り元の緩みを放置すると、火災時に閉鎖障害の原因になります。
- ケースの外れや、まぐさ・ガイドレールの遮煙材の損傷は、煙の拡散につながるため見逃せません。
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目次
防火シャッターの降下位置になぜ物を置いてはいけないのか

防火シャッターの検査は、まず設置場所の周囲状況から始まります。
降下位置に物があるかどうかは、目視だけで判定できる基本項目です。
降下位置に置かれた物は、火災時にそのまま障害物になります。
商品棚や看板、配管・配線が防火シャッターの降下位置を横切っていると、閉鎖の途中で引っかかり止まってしまいます。
座板に危害防止装置が付いていない古いタイプでは、物に接触しても自動では停止せず、変形や損傷にもつながります。
また、シャッターカーテンの降下経路に照明器具や懸垂物があると、接触してカーテンが変形するおそれもあります。
点検時は、床に降下位置を表示しておくと、日常的な物品の放置を防ぎやすくなります。
うちのテナントは通路が狭くて、シャッターの下に台車を置いてしまうことがあります。
これは要是正になりますか。
はい、降下位置に物があると要是正です。
床にラインテープなどで降下位置を示しておくと、従業員にも伝わりやすくなります。
開閉機とスプロケットの取り付けはどこまで確認するのか

日常的に開閉する管理併用の防火シャッターは、開閉回数が多い分だけ駆動部にゆるみが出やすくなります。
ここでは軸受け部のブラケットと巻取りシャフト、開閉機の取付け、そしてスプロケットの状態を確認します。
固定ボルトの緩みは、部材の脱落につながる重大なサインです。
開閉回数が多くなると、軸受け部のブラケットや巻取りシャフト、開閉機の固定ボルトが振動で緩みやすくなります。
あわせて、開閉機側と巻取りシャフト側のスプロケットが一直線上にあるか、心ずれがないかも確認します。
心ずれがあるとローラチェーンが外れかかり、防火シャッターが急降下する危険な状態になります。
開閉時の異常音や振動は、ボルトの緩みやスプロケットの心ずれを疑うきっかけになります。
開閉のときに、ガタガタと変な音がすることがあるんです。
これも点検の対象になりますか。
はい、異常音は固定ボルトの緩みやスプロケットの心ずれのサインです。
音がする時点で、一度点検業者にご相談いただくのが安全です。
軸受けブラケットとローラチェーンの劣化はどう見分けるのか

駆動装置は、設置から年数が経つほど摩耗や腐食が進みます。
ここでは軸受け部のブラケットやベアリング、ローラチェーン又はワイヤロープの劣化を見ていきます。
チェーンのたるみは、歯飛びという故障の前兆です。
ローラチェーンがスプロケットの歯先を滑って乗り越える歯飛びは、摩耗による伸びやたるみ、歯先の摩耗が原因で起こります。
放置すると、開閉操作時にチェーンが脱落・破断し、防火シャッターが急降下する重大事故につながります。
たるみの目安は、スプロケットの軸間距離の4%を超える振れ幅で、要是正と判断されます。
ワイヤロープ式の場合は、折れや素線の断線によるささくれがないかもあわせて確認します。
うちの建物は築30年近いので、駆動装置の劣化が心配です。
どのくらいの年数で交換の目安になりますか。
劣化の程度は使用環境で差が大きいため、年数だけでは判断できません。
定期検査でチェーンのたるみや腐食を実際に確認するのが確実です。
スラットと吊り元はどんな劣化に注意するのか

カーテン部は、防火シャッターが実際に炎や煙を遮る本体部分です。
スラット及び座板、そしてスラットを巻取りシャフトに固定する吊り元の状態を確認します。
スラットの片流れは、閉鎖不能に直結する劣化です。
片流れとは、開閉を繰り返すうちにガイドレールの呑み込み部より上のスラットが左右どちらかに片寄る現象です。
放置すると、片寄ったスラットが軸受け部のブラケットに接触し、閉鎖に支障が出ます。
吊り元はシャッターカーテンを巻取りシャフトに固定する部材で、変形や固定ボルトの緩みがないかを確認します。
吊り元は全閉状態でなければ見えないため、検査は必ずシャッターを閉鎖させた状態で行います。
点検のときにシャッターを全部閉めるんですね。
営業中は難しいのですが、必ず必要ですか。
吊り元は全閉にしないと隠れて見えないので、閉鎖しての確認が必要です。
営業時間外に日程を調整して実施することをおすすめします。
ケースとまぐさ・ガイドレールはなぜ隙間なく塞がれていないといけないのか

最後に、シャッターカーテンを覆うケースと、開口部を縁取るまぐさ及びガイドレールを確認します。
どちらも遮炎性・遮煙性を保つための部材です。
ケースの隙間は、遮炎性能そのものの欠落です。
ケースは巻取りシャフトに巻かれたシャッターカーテンを覆うカバーで、外れや隙間があると延焼や避難への支障につながります。
まぐさは開口部の上端の見切り材、ガイドレールはシャッターカーテンを誘導する左右のレールです。
遮煙性能を持つ防火シャッターには、ガイドレールとまぐさに遮煙材が設けられており、損傷や脱落がないかを確認します。
遮煙材は奥まった位置にあり見えにくいため、電灯で照らすなどして確実に確認することが重要です。
ケースの中って、点検のときに開けて見てもらえるんですか。
普段は全く見えない場所なので気になります。
はい、ケース板をずらすなどして内部を確認し、終わったら必ず元通りに復帰させます。
気になる場合は点検報告書で状態をご確認いただけます。
よくある質問
まとめ
防火シャッターも、駆動装置からまぐさ・ガイドレールまで見るところがたくさんあるんですね。
次の点検のときは、自分でも降下位置だけは確認してみます!
そのお気持ちが一番の予防になります。
細かな駆動装置の点検やまぐさ・ガイドレールの遮煙材の確認は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項
- 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
- 昭和48年建設省告示第2564号(防火区画に用いる遮煙性能を有する防火設備等の構造方法を定める件)
- 平成12年建設省告示第1360号(防火設備の構造方法を定める件)
- 平成12年建設省告示第1369号(特定防火設備の構造方法を定める件)
※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。





