BLOG

減肉やせん孔が見つかった地下タンクを使い続けられるか|補修の要件と点検の周期

減肉やせん孔が見つかった地下タンクの継続使用を解説するアイキャッチ画像

内面ライニングを施すために地下タンクを開放したところ、板厚が3.2ミリメートル未満となる減肉やせん孔が見つかる。
実際に報告されている事例です。
このとき、タンクをそのまま使い続けられるのか
平成21年の通達は、認められる場合の要件を5つに分けて示しています

ライニングのためにタンクを開けたら、思ったより減肉が進んでいました。もう入れ替えるしかないですか。

要件に適合すれば継続使用が認められます。ただし孔の数と大きさに具体的な上限があるので、まずそこを測ってください。

補修の方法も決まっているんでしょうか。

下地処理から積層の厚さ、使う樹脂の規格まで指定されています。そのうえで点検の周期も定められました。

この記事の結論
  • 減肉やせん孔が発見された地下タンクでも、要件に適合する場合は政令第23条を適用して継続使用が認められます
  • 第1の要件は、地下タンクからの危険物の流出が確認されていないことです
  • 第2の要件は減肉又はせん孔の個数と大きさで、1か所のみなら直径38ミリメートル以下などの上限が示されています
  • 補修は、板厚が3.2ミリメートル以上保持しているところまで削り取ったうえで、繊維強化プラスチックを全方向に150ミリメートル以上被覆して行います
  • 内面ライニング実施後は10年以内に開放点検を行い、その後5年ごとに同様の点検を繰り返します

継続使用の出発点は危険物の流出がないこと

地下タンクの脇に設けた漏えい検査管で点検を行うイメージ
平成21年11月17日付けの消防危第204号は、地下タンクからの危険物の流出事故を未然に防止するため内面ライニングを施工しようとタンクを開放したところ、板厚が3.2ミリメートル未満となるような減肉又はせん孔が発見される事例が報告されているとして、いかなる補修および維持管理が実施されれば継続使用を認めてよいかという照会を扱っています。
答 以下の要件に適合する場合には、認めて差し支えない。
1 地下タンクからの危険物の流出が確認されていないこと
なお、確認方法については、例えば、漏れの点検及び漏えい検査管による点検の結果により異常がないことが挙げられる。
流出がないことが第1の要件です
孔が空いていても、そこから外へ危険物が出ていなければ継続使用の検討に入れるという整理です。
確認の手段として、漏れの点検と漏えい検査管による点検が例示されています。
逆に流出が確認されていれば、この先の要件を満たしても継続使用の話にはなりません。

減肉やせん孔の個数と大きさの上限

鋼板の一定面積の枠内にある孔の数と直径を測るイメージ
第2の要件は数値で示されています。
米国石油協会の標準規格1631「地下タンクの内面ライニング及び定期点検」を参考としたものです。
2 減肉又はせん孔の個数と大きさは、次のいずれかを満たすこと。この場合において、減肉の大きさは、板厚が3.2mm未満の部分の大きさとし、せん孔の大きさは、せん孔部の周囲を板厚が3.2mm以上保持しているところまで削り取った大きさとする
(1) タンクに1か所のみ減肉又はせん孔がある場合、減肉又はせん孔の直径が38mm以下であること
(2) タンクに複数の減肉又はせん孔がある場合、次のとおりとする。
 ア 0.09㎡あたりの数が5か所以下であり、かつ、減肉又はせん孔の直径が12.7mm以下であること
 イ 46㎡あたりの数が20か所以下であり、かつ、減肉又はせん孔の直径が12.7mm以下であること
1か所だけなら直径38ミリメートルまで許されますが、複数ある場合は12.7ミリメートルまでと厳しくなります。
1か所か複数かで上限が変わります
複数の場合はアとイの2つの密度基準があり、狭い範囲での集中と広い範囲での総数の両方が見られます。
大きさの測り方も定義されており、せん孔は削り取った後の大きさで判定する点に注意が要ります。

下地処理と穴埋めの手順

鋼板の減肉部を削り取りパテで埋めた断面のイメージ
第3の要件は補修の手順です。
下地の作り方から具体的に指定されています。
3 減肉又はせん孔部分について次のとおり補修を行う。
(1) 地下タンク内面の処理については、クリーニング後、「橋梁塗装設計施工要領」(平成18年4月首都高速道路株式会社)に示されている素地調整第1種相当となるように行うこと
(2) せん孔部分については、板厚が3.2mm以上保持しているところまで削り取り、防水セメント又は金属パテで穴及び削り取った部分を埋める
素地調整の水準まで外部の要領を引いて指定しています。
素地調整は第1種相当が求められます
せん孔部は、板厚が3.2ミリメートル以上残っているところまで削り取ったうえで、防水セメント又は金属パテで埋めます。
削り取る作業は欠損を広げる方向ですが、健全な板厚のところまで露出させてから埋めるという考え方です。

繊維強化プラスチックによる被覆

孔の周囲を全方向に広く覆う樹脂の積層を示した断面のイメージ
穴を埋めたうえで、繊維強化プラスチックを積層します。
被覆の範囲と厚さが数値で決められています。
(3) 次に示すFRPを減肉又はせん孔部位から全方向に150mm以上被覆し、厚さが2mm以上となるよう積層すること
ア FRPは、樹脂が日本工業規格K6919「繊維強化プラスチック用液状不飽和ポリエステル樹脂」(UP-CM、UP-CE又はUP-CEEに係る規定に限る。)に適合する樹脂又はこれと同等以上の耐薬品性を有するビニルエステル樹脂、強化材が日本工業規格R3411「ガラスチョップドストランドマット」及び日本工業規格R3417「ガラスロービングクロス」に適合するガラス繊維から造ること。
イ FRPの引張強さの限界値及び空洞率の最大値は、日本工業規格K7011「構造用ガラス繊維強化プラスチック」の「第I類、2種、GL-10」に適合すること
全方向に150ミリ以上被覆します
穴の縁だけを塞ぐのではなく、周囲へ広く重ねることで健全な母材に応力を伝える構成です。
なお耐薬品性試験については、日本工業規格K7070に規定する試験において同K7012の6.3に規定する事項に適合することとされ、その試験液は貯蔵し又は取り扱う危険物とすることまで指定されています。

補修後の内面ライニングと点検の周期

タンク内面全体にライニングを施し定期的に点検することを示すイメージ
補修が終われば完了ではありません。
タンク内部全体への内面ライニングと、その後の点検までが要件に含まれています。
4 補修後、「鋼製地下タンクの内面保護に係るFRPライニング施工に関する指針について」(平成19年2月27日付け消防危第48号)の別添第1の2から4までの指針に基づきタンク内部全体に内面ライニングを実施する。なお、完成検査前検査は、補修後から全体の内面ライニングを成形する前までの間に実施する必要がある
5 内面ライニング実施後、10年以内に開放点検を行い、次の点について点検すること。さらに、その後5年ごとに同様の点検を繰り返すこと
(1) 内面ライニングにゆがみ、ふくれ、き裂、損傷、穴等の異常がないこと
(2) 減肉又はせん孔の個数及び大きさが、上記2に適合していること
10年以内に開き以後5年ごとです
点検の内容は2つで、ライニング自体の異常と、減肉やせん孔が上限の範囲に収まっているかの確認です。
つまり第2の要件は、補修時だけでなくその後の点検でも繰り返し当てはめられることになります。
完成検査前検査のタイミングにも指定があり、補修後から全体の内面ライニングを成形する前までの間とされています。

よくある質問

Q. 減肉とせん孔で大きさの測り方は違いますか?
違います。減肉の大きさは板厚が3.2ミリメートル未満の部分の大きさとされ、せん孔の大きさはせん孔部の周囲を板厚が3.2ミリメートル以上保持しているところまで削り取った大きさとされています。せん孔は削り取った後の大きさで判定するため、補修前の見た目より大きくなります。
Q. 完成検査前検査はいつ実施しますか?
補修後から全体の内面ライニングを成形する前までの間に実施する必要があるとされています。ライニングを仕上げてしまう前に検査を受ける順序です。
Q. 耐薬品性の試験液は何を使いますか?
貯蔵し、又は取り扱う危険物とすることとされています。日本工業規格K7070「繊維強化プラスチックの耐薬品性試験方法」に規定する耐薬品性試験において、同K7012「ガラス繊維強化プラスチック製耐食貯槽」6.3に規定する事項に適合することが求められます。
Q. 二重殻タンクの水圧試験はどの工程の後に行いますか?
平成6年7月29日付け消防危第66号が扱っています。二重殻タンクの種類に応じ、鋼製二重殻タンクはスペーサーを溶接する工程の後、強化プラスチック製二重殻タンクはタンク本体に検知管を溶接する工程の後に行うこととしてよいかという照会に対し、回答はいずれも「お見込みのとおり」となっています。

まとめ

  • 板厚が3.2ミリメートル未満となる減肉又はせん孔が発見された地下タンクでも、要件に適合すれば政令第23条を適用して継続使用が認められます
  • 第1の要件は危険物の流出が確認されていないことで、漏れの点検および漏えい検査管による点検が確認方法として例示されています
  • 第2の要件は個数と大きさで、1か所のみなら直径38ミリメートル以下です
  • 複数ある場合は、0.09平方メートルあたり5か所以下または46平方メートルあたり20か所以下で、いずれも直径12.7ミリメートル以下であることが求められます
  • 補修は、クリーニング後に素地調整第1種相当とし、板厚が3.2ミリメートル以上保持しているところまで削り取って防水セメント又は金属パテで埋めます
  • その上に繊維強化プラスチックを、減肉又はせん孔部位から全方向に150ミリメートル以上被覆し、厚さ2ミリメートル以上となるよう積層します
  • 樹脂と強化材は日本工業規格に適合するものが指定され、耐薬品性試験の試験液は貯蔵し又は取り扱う危険物とされています
  • 補修後はタンク内部全体に内面ライニングを実施し、実施後10年以内に開放点検を行い、その後5年ごとに同様の点検を繰り返します

孔の数と大きさに具体的な上限があるとは知りませんでした。まず測るところからですね。

開放したその場で判定できるよう、数値を持って現場に入るのが確実です。㈱防災屋でも点検の段取りからご相談を承っています。

参考・出典

  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(平成21年11月17日 消防危第204号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 問2
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(平成6年7月29日 消防危第66号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)地下タンク貯蔵所関係 問1・問2
  • 鋼製地下タンクの内面保護に係るFRPライニング施工に関する指針について(平成19年2月27日付け消防危第48号)
  • 危険物の規制に関する政令第23条
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
減肉やせん孔が見つかった地下タンクの継続使用を解説するアイキャッチ画像
内面ライニングを施すために地下タンクを開放したところ、板厚が3.2ミリメートル未満となる減肉やせん孔が見つかる。 実際に報告されている事例です。 このとき、タンクをそのまま使い続けられるのか。 平成21年の通達は、認めら...