地下に埋めた危険物のタンクや配管は、目視での確認が難しいぶん、専用の「漏れの点検」という定期点検が義務づけられています。
ただ、その点検には周期があり、危険物を入れていない設備にまで毎年同じ負担を求めるのは酷な場面もあります。
そこで消防庁は、危険物の貯蔵及び取扱いを休止しているタンクや配管に限り、漏れの点検の期限を先送りできる仕組みを用意しました。
ただし点検の期限を延ばせても、それまでの点検記録を捨ててよいわけではありません。
うちの地下タンク、もう何年も危険物を入れていないんですが、それでも毎年点検しないと駄目ですか。
いいえ、休止していれば漏れの点検の期限を延ばせる制度があります。
それなら、点検の記録ももう残さなくていいってことですか。
いいえ、点検記録の保存義務は別に続きます。
順番に見ていきましょう。
- 地下貯蔵タンク・二重殻タンクの強化プラスチック製の外殻・地下埋設配管の漏れの点検は、危険物の貯蔵及び取扱いを休止し市町村長等が保安上支障がないと認めれば、市町村長等が定める期間延長できる
- 根拠は「危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令等の公布について」(平成22年6月28日 消防危第130号)
- 対象は地下貯蔵タンク・二重殻タンクの強化プラスチック製の外殻・地下埋設配管の3種類で、原則1年(一部3年)に1回の点検が課される
- 点検の期限が延びても、点検記録の保存義務(原則3年間)は別に続く
- 延長を受けるには別記様式の申請書に理由書等を添えて市町村長等に申請する必要がある
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目次
地下貯蔵タンクの漏れの点検はなぜ専用の制度になっているのか

そこで消防庁は、経年劣化による流出事故を防ぐための改正を重ねてきました。
設置年数・塗覆装の種類・設計板厚から腐食のおそれが高いと判定されたタンクには、内面ライニングや電気防食といった対策が新たに求められるようになりました。
その一方で、地下貯蔵タンク・二重殻タンク・地下埋設配管には、目視点検が難しい構造ゆえに「漏れの点検」という専用の定期点検が課されています。
この通知では、腐食対策の強化とあわせて、その漏れの点検の運用ルールも整理されました。
使っていない設備にまで一律の点検を求めるのは酷なので、休止中の扱いも同時に定められています。
うちの地下タンク、外から見えないのに、どうやって漏れを見つけるんですか。
専用の漏れ検知の設備や、定期点検で確認する仕組みになっています。
漏れの点検の対象になるのはどの設備か

それぞれ点検の周期も異なります。
地下貯蔵タンクは原則1年に1回ですが、完成検査から15年を超えないものや、漏れを検知する設備を備えているものは3年に1回でよいとされています。
二重殻タンクの強化プラスチック製の外殻と、地下埋設配管も、それぞれ3年に1回です。
条文がこの3つの設備を並べているのは、いずれも目視で漏れを確認しにくい構造だからです。
自分の施設がこの3種類のどれに当たるかで、点検の頻度が変わります。
うちの設備がどの区分に入るか、自分で判断していいんですか。
完成検査済証や設置年など記録をもとに、所轄消防署に確認するのが確実です。
休止中は点検の期限をどこまで延ばせるのか

ただし、休止しているというだけでは足りません。
条文(規則第62条の5の2第3項・第62条の5の3第3項)は、危険物の貯蔵及び取扱いが休止され、かつ市町村長等が保安上支障がないと認める場合に限り、所有者等の申請に基づいて期間を延長できるとしています。
延長される期間は一律ではなく、市町村長等が定める期間です。
黙って使わずに放置しているだけでは延長にならず、申請と認定という手続きを経て初めて認められます。
これは屋外タンク貯蔵所の新基準適合期限の延長とは別の制度で、対象になる設備も条文も異なります。
何年も使っていないタンクなら、黙っていても休止扱いになりますよね。
いいえ、申請して市町村長等に認めてもらって初めて延長になります。
点検を延ばせても点検記録の保存義務は別なのか

保存期間は別の条文で定められています。
地下貯蔵タンク・二重殻タンクの外殻・地下埋設配管、どの設備の漏れの点検記録も同じ3年間が基本になります。
休止によって点検の期限が延びた場合は、その延長期間を加えた期間、記録を保存し続けなければなりません。
つまり点検そのものは先送りできても、過去に取った記録を早めに処分してよいことにはなりません。
休止が解けて再開したとき、それまでの記録の提示を求められる場合に備えておく必要があります。
点検をしなくていいなら、古い記録も一緒に処分していいんですね。
いいえ、延長された期間ぶん、記録の保存は続きます。
休止から延長を受けるにはどう申請すればよいのか

口頭の申し出だけでは足りません。
地下貯蔵タンク・二重殻タンクは別記様式第四十二、地下埋設配管は別記様式第四十三と、対象になる設備によって様式が分かれています。
理由書には、休止に至った経緯や保安上支障がないと考える根拠など、参考となる事項を記載します。
申請の窓口や添付書類の細部は市町村ごとに運用が異なることがあるため、事前に所轄消防署へ相談しておくと確実です。
延長を受けたあとも、休止の状態が続いているかどうかは所有者等の責任で管理する必要があります。
申請書と理由書、今度の点検のときに準備しておきます。
様式は所轄消防署で確認できます。
早めに相談してみてください。
よくある質問
まとめ
休止中の地下タンク、点検記録もあわせて確認しておきます!
それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令等の公布について」(平成22年6月28日 消防危第130号 消防庁次長)
- 根拠条文 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の5の2・第62条の5の3・第62条の8
- 危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令(平成22年総務省令第71号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





