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地下に居室をつくるとなぜ防湿の基準を満たさなければならないのか|建築基準法第二十九条が定める地階の居室の技術的基準を解説

採光窓とダクトが設けられた地下のコンクリート躯体の部屋

地下に部屋をつくるとき、そこに防湿の基準があることをご存知でしょうか。
建築基準法は、住宅の居室や学校の教室などを地階に設ける場合、壁や床の防湿の措置について政令で定める技術的基準に適合させることを求めています。
この基準を知らずに地下の部屋を居室として使うと、既存の倉庫を転用する場面でも思わぬ確認が必要になることがあります。
この記事では地階の居室に求められる防湿の基準と、用途変更のときの注意点まで整理します

地下にある休憩室って、そのまま自由に使ってもいいんですよね。

いえ、住宅の居室や学校の教室などを地階に設ける場合は防湿の基準を満たす必要があります。
建築基準法第二十九条が壁や床の防湿の措置を求めています。

うちは地下の倉庫を休憩室に変えようと思っているんですが、それも対象になりますか。

はい、用途変更で居室に変える場合も基準の適用を受けることがあります。
今回はその中身と注意点を確認しましょう。

この記事の結論
  • 住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室を地階に設ける場合、建築基準法第二十九条が定める防湿の技術的基準に適合させなければなりません
  • 施行令第二十二条の二は、居室にからぼり・換気設備・湿度調節設備のいずれかを設けることを求めています。
  • 直接土に接する外壁や床は、防水層を設けるか、空隙と排水設備を組み合わせる構造にしなければなりません
  • 既存の地下倉庫等を居室に用途変更する場合も、建築基準法第八十七条第三項の準用によりこの基準の適用を受けることがあります。
  • 基準に適合しない構造でも、国土交通大臣の認定を受ければ例外的に使用が認められます

地階の居室に求められる防湿の基準を示す図解

地階につくる部屋になぜ防湿の基準があるのか

地下に埋まった居室の壁に土が直接接している断面イラスト
地階の部屋は、壁や床の外側がそのまま土に接していることがほとんどです。
そのため地上の部屋と同じ造りでは、湿気がこもりやすくなります。
建築基準法第二十九条 住宅の居室、学校の教室、病院の病室又は寄宿舎の寝室で地階に設けるものは、壁及び床の防湿の措置その他の事項について衛生上必要な政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。
地階に人が長時間過ごす部屋を設けるときは、防湿の技術的基準に適合させる義務があります
条文が挙げているのは住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室という、人が継続的に使う部屋です。
これは土に接する壁や床から湿気が入り込み、衛生上の問題を招くことを防ぐための規定です。
具体的にどんな基準を満たせばよいかは、建築基準法本体ではなく政令に委ねられています。
まずは対象になる部屋の範囲を、もう少し詳しく確認しましょう。

地下の会議室も、この防湿の基準に関係してくるんですか。

条文が挙げる四つの用途に当てはまるかで決まります。
次はその「地階」自体の定義を確認しましょう。

防湿の基準はどんな居室に適用されるのか

住宅教室病室寝室の四つの部屋が地階の土の中に並ぶイラスト
「地階」という言葉も、実は施行令が数値で定義しています。
見た目が半地下でも、基準の対象になるかは高さの割合で決まります。
建築基準法施行令第一条第二号 地階 床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のものをいう。
床面から地盤面までの高さが天井の高さの三分の一以上あれば、その階は地階として扱われます
半地下のように一部だけ地上に出ている階でも、この割合を超えていれば対象です。
そのうえで、住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室としてこの地階に部屋を設けると、防湿の基準がかかります。
事務所や店舗そのものは条文に列挙されていませんが、休憩室や宿直室のように居室として使う部屋を地階に置く計画では、この定義に照らして確認しておく方が安全です。
次は、実際にどんな設備や構造が求められるのかを見ていきます。

半分だけ地面から出ている部屋も、地階として扱われることがあるんですね。

はい、高さの割合で決まるので見た目だけでは判断できません。
次は求められる設備の中身を確認しましょう。

施行令はどんな設備や構造を求めているのか

からぼりと換気設備と湿度調整設備が壁の防水層と並ぶイラスト
求められる基準は大きく二つに分かれます。
居室そのものの湿度対策と、外壁や床の防水対策です。
建築基準法施行令第二十二条の二 法第二十九条(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。 一 居室が、次のイからハまでのいずれかに該当すること。 イ 国土交通大臣が定めるところにより、からぼりその他の空地に面する開口部が設けられていること。 ロ 第二十条の二に規定する技術的基準に適合する換気設備が設けられていること。 ハ 居室内の湿度を調節する設備が設けられていること。 二 直接土に接する外壁、床及び屋根又はこれらの部分(以下この号において「外壁等」という。)の構造が、次のイ又はロのいずれかに適合するものであること。 イ 外壁等の構造が、次の(1)又は(2)のいずれか(屋根又は屋根の部分にあつては、(1))に適合するものであること。ただし、外壁等のうち常水面以上の部分にあつては、耐水材料で造り、かつ、材料の接合部及びコンクリートの打継ぎをする部分に防水の措置を講ずる場合においては、この限りでない。 (1)外壁等にあつては、国土交通大臣が定めるところにより、直接土に接する部分に、水の浸透を防止するための防水層を設けること。 (2)外壁又は床にあつては、直接土に接する部分を耐水材料で造り、かつ、直接土に接する部分と居室に面する部分の間に居室内への水の浸透を防止するための空隙(当該空隙に浸透した水を有効に排出するための設備が設けられているものに限る。)を設けること。 ロ 外壁等の構造が、外壁等の直接土に接する部分から居室内に水が浸透しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
一号は、からぼり・換気設備・湿度調節設備のいずれか一つを居室に設けることを求めています
からぼりは建物の周りに掘る空地で、開口部を通じて光や風を通す構造です。三つのうちどれを選ぶかは設計の自由です。
二号は直接土に接する外壁や床について、水の浸透を防止するための防水層を設けるか、耐水材料と排水できる空隙を組み合わせる構造を求めています。
どちらの方法にもよらない特殊な構造は、国土交通大臣の認定を受けることで例外的に認められます。
つまり湿度対策と防水対策の両方が揃って初めて、地階の居室として使える構造になります。

換気設備さえ付けておけば、防水層の方は無くてもいいんですか。

いいえ、一号と二号は両方とも満たす必要があります。
次は見落としやすい落とし穴を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

地下倉庫が矢印の先で執務室に変わる様子を示すイラスト
見落としやすいのは、新築のときだけでなく用途変更のときにもこの基準がかかる場合があることです。
地下倉庫を居室に転用する計画で、この点が抜け落ちる事例があります。
建築基準法第八十七条第三項 第三条第二項の規定により第二十七条、第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条(略)の規定(略)の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。 一 増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合 二 当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合 三(略)
既存の建物で第二十九条の適用を受けていなかった部分でも、用途変更を機に基準の準用を受けることがあります
地下の倉庫や機械室を人が使う休憩室や事務室に変える計画は、まさにこの用途変更にあたります。
一号のとおり、増築や大規模な修繕・模様替を伴う場合は準用の対象になります。
二号の例外は類似の用途どうしの変更で、修繕や模様替を伴わないか大規模でない場合に限られており、居室への転用は当てはまりにくいものです。
「壁や床には手を付けないから関係ない」と思い込まず、用途変更の計画段階でこの基準の適用有無を確認することが欠かせません。

壁を壊さずに使い方だけ変えても、確認が必要になることがあるんですね。

はい、工事内容にかかわらず確認しておく方が安心です。
最後に明日からの確認手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

設計図書と虫眼鏡と防水層付きの地階の部屋を並べたイラスト
地階の部屋を居室として使う計画があるなら、工事を決める前に確認しておきたいことがあります。
順番に見ていきましょう。 まず自分の建物の地下の部屋が「地階」に当たるかを、床面から地盤面までの高さで確認します
次にその部屋が住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室のように人が継続的に使う居室にあたるかを確かめます。
該当する場合は、設計図書でからぼり・換気設備・湿度調節設備のいずれかが設けられているかを確認します。
あわせて外壁や床に防水層または排水できる空隙が設けられているかも図面で確かめます。
既存の地下倉庫等を居室へ用途変更する計画があるときは、増築や大規模な修繕・模様替を伴うかどうかも含めて、早い段階で建築士や特定行政庁に相談しておくと手戻りを防げます。

まずは自分の建物の地下の部屋が、地階に当たるかどうかから見てみます。

はい、図面での確認から始めるのが近道です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q地下の駐車場や倉庫にも防湿の基準はかかりますか?
Aいいえ。対象は住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室で、人が使わない駐車場や倉庫はこの基準の対象になりません。
Q半地下の部屋はどうやって地階かどうかを判断すればよいですか?
A床面から地盤面までの高さが、その階の天井の高さの三分の一以上あれば地階として扱われます。
Q換気設備を付ければ防水層は不要になりますか?
Aいいえ。換気設備は一号の基準であり、外壁や床の防水層等の基準(二号)とは別に両方を満たす必要があります。
Q既存の地下倉庫を休憩室に変えるだけでも基準はかかりますか?
A増築や大規模な修繕・模様替を伴う場合は、建築基準法第八十七条第三項の準用によって基準の適用を受けることがあります。

まとめ

住宅の居室・学校の教室・病院の病室・寄宿舎の寝室を地階に設ける場合、建築基準法第二十九条の防湿の基準がかかります。
「地階」は床面から地盤面までの高さが天井の高さの三分の一以上の階を指し、見た目だけでは判断できません
施行令第二十二条の二第一号はからぼり・換気設備・湿度調節設備のいずれかを居室に求めています。
同条第二号は直接土に接する外壁や床に、防水層または排水できる空隙のいずれかを求めています
既存の建物を用途変更するときも、建築基準法第八十七条第三項の準用でこの基準がかかることがあります。
いずれの方法にもよらない特殊な構造は、国土交通大臣の認定を受ければ例外的に使用できます
地下の部屋を居室として使う計画があるときは、工事を決める前に図面と用途変更の有無を確認しておくと手戻りを防げます。

地下の部屋を用途変更するときは、防湿の基準まで先に確認するようにします!

地下の部屋の用途変更のご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第二十九条・第八十七条第三項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第一条第二号・第二十二条の二(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断は個別の建物の構造によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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