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窓のない居室が一つあるだけでなぜ避難施設等の基準まで適用されるのか|建築基準法施行令第百十六条の二が定める無窓居室の判定基準を解説

窓のない会議室に続く廊下の写真

建物に窓のない部屋が一つあるだけで、建築基準法の規制が変わることがあります。
対象は特殊建築物や大規模な建物だけではありません。
延べ面積が小さく階数が低い建物でも、無窓居室があれば規制の対象になります。
どんな居室が対象になり、何の基準に従うのかを解説します

うちは二階建ての小さな事務所なんですが、地下の窓のない会議室があります。
これも何か規制の対象になるんでしょうか。

建築基準法施行令第百十六条の二が定める無窓居室に当たるかもしれません。
まず何が対象になるのか見ていきましょう。

うちは特殊建築物でも大規模な建物でもないので、規制の対象外だと思っていました。

無窓居室は規模を問わず対象になる点が見落としやすいところです。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第三十五条は、特殊建築物や大規模建築物だけでなく、政令で定める無窓居室を有する建築物も避難施設等の技術的基準の対象にすると定めています
  • 無窓居室の判定基準は建築基準法施行令第百十六条の二の二つの号で決まります。
  • 第一号の採光基準に該当すると廊下や避難階段等の基準(第二節)が、第二号の排煙基準に該当すると排煙設備の設置義務(第百二十六条の二)が働きます
  • この規定は主要構造部の耐火化を求める無窓の居室(第百十一条)とは別の規定です。
  • 該当するかどうかは採光に有効な部分の面積と排煙上有効な開口部の面積を実測して判断します。

窓のない居室があるだけで避難施設等の基準が適用されることを示す図解

なぜ窓のない居室が一つあるだけで避難施設等の基準まで及ぶのか

窓のない部屋が一つある建物と規制の書類が積まれている様子のイラスト
避難施設等の技術的基準は、特殊建築物や大規模な建物だけを対象にしているわけではありません。
条文は対象になる建築物を四つの類型で挙げています。
建築基準法第三十五条 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
四つの類型のうち三つは、用途・階数・延べ面積という建物の規模で判定できます
ところが四つ目の無窓居室を有する建築物だけは、規模とは無関係に居室一つの状態で判定されます。
劇場や病院のような特殊建築物でなく、階数が二以下で延べ面積が千平方メートル以下の小さな建物であっても、条文が定める無窓居室が一つあれば対象になります。
自分の建物が小規模だからといって、この基準と無縁だとは言い切れません。
次は、どんな居室が無窓居室に当たるのかを確認しましょう。

小さな事務所ビルでも、この基準の対象になることがあるんですね。

はい、無窓居室の有無だけで対象になり得ます。
次は判定基準そのものを見ていきましょう。

どんな居室が施行令第百十六条の二の無窓居室に当たるのか

小さな開口部の部屋と大きな開口部の部屋を比べたイラスト
無窓居室に当たるかどうかは、感覚ではなく面積の計算で決まります。
条文は二つの号のどちらかに該当すれば無窓居室になると定めています。
建築基準法施行令第百十六条の二第一項 法第三十五条(略)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号に該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。一 面積(第二十条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の二十分の一以上のもの 二 開放できる部分(略)の面積の合計が、当該居室の床面積の五十分の一(略)以上のもの
この号は「未満のもの」を無窓居室とする号の裏返しで、床面積の20分の1以上の採光面積があれば第一号の無窓居室からは外れます
第一号は採光に有効な部分の面積が床面積の20分の1に届かない居室を指します。
第二号は排煙上有効に開放できる部分の面積が床面積の50分の1に届かない居室を指します。
採光と排煙は別の物差しなので、窓が小さくても排煙上有効な換気口があれば第二号だけは外れる、といったことが起こります。
次は、この二つの号に該当するとそれぞれ何を求められるのかを見ていきましょう。

採光と排煙で基準が違うんですね。
窓が小さければ一律にアウトだと思っていました。

はい、号ごとに物差しが別です。
次は該当した場合の義務の中身を確認しましょう。

該当するとどんな基準に従わなければならないのか

廊下から階段や出口へ続き排煙設備や非常用照明が備わる様子のイラスト
第一号と第二号は、該当したときに求められる基準が異なります。
どちらの号に当たるかで、確認すべき条文の場所が変わります。
建築基準法施行令第百十七条第一項 この節の規定は、(略)前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階(略)に限り適用する。第百二十六条の二第一項 (略)第百十六条の二第一項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室(略)には、排煙設備を設けなければならない。
第一号の無窓居室がある階は、廊下の幅や直通階段の設置など第二節の基準(第百十九条以下)の対象になります
第二号の無窓居室がある部分は、排煙設備の設置(第百二十六条の二)の対象になります。
一つの居室が両方の号に該当すれば、廊下等の基準と排煙設備の基準が両方かかります。
逆にどちらか一方の号にしか該当しなければ、かかる基準もその号に対応するものだけです。
次は、よく似た別の規定と混同しないための注意点を見ていきましょう。

号によってかかる基準が違うんですね。
排煙設備さえ付ければ済むと思っていました。

はい、該当する号によって必要な対策が変わります。
次はよく混同される規定との違いを見ていきましょう。

主要構造部を求める無窓の居室とは何が違うのか

壁の構造を強化した建物と廊下や階段の設備を備えた建物を比べたイラスト
建築基準法には「無窓の居室」という似た名前の別の規定もあります。
条文の号立てが似ているため、混同しやすいところです。
建築基準法施行令第百十一条第一項 法第三十五条の三(略)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(略)とする。一 面積(略)の合計が、当該居室の床面積の二十分の一以上のもの 二 直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径一メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上のもの
第百十一条の無窓の居室は法第三十五条の三に基づき、該当すると主要構造部を耐火構造や不燃材料にすることを求める別の規定です
第一号の採光の物差しは今回の第百十六条の二と同じ床面積の20分の1ですが、第二号は避難上有効な開口部の大きさという別の物差しで、排煙の物差しではありません。
同じ「窓のない居室」という言葉でも、根拠条文が違えば求められる対策も違います。
自分の建物のどの規定に当たるのかを確認するときは、条番号まで確かめる必要があります。
次は、実務でこれらを確認する手順を見ていきましょう。

似たような窓なし規定が何種類もあるんですね。
どれの話をしているのか分からなくなりそうです。

条番号を確かめるのが一番の近道です。
次は実際の確認の進め方を見ていきましょう。

明日からなにを測って確かめればよいのか

図面とメジャーや虫眼鏡が置かれた様子のイラスト
判定は図面と現場の両方を見ながら進めます。
まず窓や開口部のある部屋を洗い出すところから始めます。
建築基準法施行令第百十六条の二第二項 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前項の規定の適用については、一室とみなす。
まず自分の建物にある居室のうち、窓や開口部が小さい部屋を図面で洗い出してください
洗い出した部屋ごとに、採光に有効な部分の面積排煙上有効に開放できる部分の面積を実測し、それぞれ床面積の20分の1・50分の1と比べます。
ふすまや障子で仕切られた隣室があるときは、二室を合わせて一室として計算し直します。
第一号に該当すれば廊下や直通階段の基準を、第二号に該当すれば排煙設備の設置を、図面上で満たしているか確認してください。
判断に迷う部屋があれば、設計者や所轄の特定行政庁に相談しておくと手戻りを防げます。

うちの地下の会議室、窓が小さいので一度採光の面積を測ってみます。

はい、採光と排煙の両方を測っておくと安心です。
気になる部屋があれば図面から確認してみてください。

よくある質問

Q小規模な建物でも避難施設等の基準の対象になりますか?
Aなります。建築基準法第三十五条が定める四つの類型のうち、無窓居室を有する建築物は規模を問わず対象になります。
Q無窓居室に当たるかどうかはどうやって判定しますか?
A建築基準法施行令第百十六条の二の第一号(採光)と第二号(排煙)のどちらかに該当するかで判定します。
Q排煙設備さえ設置すれば無窓居室の基準はすべて満たせますか?
A満たせません。第一号に該当する居室があれば、排煙設備とは別に廊下や直通階段の基準も満たす必要があります。
Q第百十一条の無窓の居室と同じ規定ですか?
A別の規定です。第百十一条は主要構造部の耐火化を求める規定で、今回の第百十六条の二とは根拠となる法律の条文も判定基準も異なります。

まとめ

建築基準法第三十五条は、無窓居室を有する建築物を規模と無関係に避難施設等の基準の対象にします
無窓居室の判定は建築基準法施行令第百十六条の二の第一号(採光)と第二号(排煙)で行います。
第一号に該当すると廊下や直通階段等の基準が、第二号に該当すると排煙設備の設置義務が働きます
両方の号に該当すれば、両方の基準が同時に適用されます。
主要構造部の耐火化を求める無窓の居室(第百十一条)とは根拠条文も判定基準も異なる別の規定です。
ふすまや障子で仕切られた二室は一室とみなして判定します。
判断に迷う部屋があれば、設計者や所轄の特定行政庁に相談しておくと安心です。

うちの窓のない会議室、まずは面積を測って号に当たるか確認してみます!

無窓居室の判定を含むご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第三十五条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百十六条の二(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百十七条第一項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百二十六条の二第一項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百十一条第一項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における該当の可否は、居室の実測結果や建物の構造によって異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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