自動火災報知設備が作動したら、消防機関へ通報すると同時に、建物の関係者にも知らせる。
この同時にという言葉を、完全に同じ瞬間だと読むと運用が苦しくなります。
回答はそこを緩めました。
求められているのは条件が実質的に担保されることです。
警備会社から、消防機関と当社へ同時に移報すると聞きました。
完全に同時でないと駄目なんでしょうか。
いいえ。
条件が実質的に担保されれば、完全に時間的に同時でなくとも差し支えないとされています。
そもそも、なぜ当社にも同時に知らせる必要があるのですか。
そこがこの記事の中心です。
遠隔移報の仕組みは、建物側が何もしなくてよくなる仕組みではありません。
5つの回答を順に見ていきます。
- 同時に移報するとは、条件が実質的に担保されれば完全に時間的に同時でなくとも差し支えありません
- 消防隊到着後一定時間内の現場到着は、真火災時の情報提供と非火災時の引揚げ援助等を目的としています
- 警備業法上の通報後25分以内という設定とは別に、消防機関が独自に判断します
- 即時通報に対応できる体制は、直近の待機所の体制を中心に業者全体の担当数やエリアも考慮して判断されます
- 条件適合性に係る審査を県単位の団体等に一括委託することは許されません
▼
目次
同時に移報とは完全に同時のことか

この同時にという語を、完全に同じ瞬間と読むべきか。
従つて、134号通知第1(1)②、③の条件が実質的に担保されれば、完全に時間的に同時でなくとも差し支えない。
条文の言葉ではなく、その条件が何のために置かれたかで読んでいます。
関係者の所在地へも移報するという付加条件は、それ自体が目的ではありません。134号通知の条件を実質的に担保するために置かれた手段です。
だから、その条件が実質的に担保されるなら、秒単位で揃っていなくても構いません。
とはいえ、実質的に担保されるという言い方は事業者側に判断を委ねているわけではありません。担保されている状態を説明できる必要があります。移報の順序と所要時間を、契約書か仕様書のどこかに残しておくことになります。
ということは、何秒以内という数字を探すより、仕組みを説明できるかが大事なんですね。
そのとおりです。
契約時に、どの順で誰に届くのかを図で1枚もらっておいてください。
あとで聞かれたときに一番早く済みます。
消防隊到着後一定時間内とはどういう趣旨か

この要求は何のために置かれたのか。そして一定時間内は、警備業法上の時間設定とどういう関係にあるのか。
また、「一定時間内」の判断基準及び警備業法上の時間設定との関係いかん。
従つて、警備業法上の機械警備業者については、各都道府県公安委員会が「通報後25分以内」という時間設定を行つているところであるが、134号通知における「一定時間内」の判断にあたつては、上記目的を十分に達成し得るかを考慮して独自に判断されたい。
目的が2つ挙げられています。真火災時の適切な情報提供。そして非火災時の消防隊の速やかな現場引揚げ援助等。
つまり、消防隊が着いたときに建物のことを説明できる人がいるかどうかが問題です。火事だったなら状況を伝える。火事でなかったなら早く引き揚げてもらう。
時間の扱いも重要です。警備業法では公安委員会が通報後25分以内という設定をしています。しかし134号通知の一定時間内は、その数字を借りずに独自に判断するとされました。
所轄によって運用が違い得るということです。契約前に、自分の建物を管轄する消防機関の考え方を確かめておく必要があります。
警備会社は25分以内と言っていました。
それで足りると思っていたのですが。
25分は警備業法の側の数字です。
消防機関は目的を達せられるかで独自に判断します。
契約を結ぶ前に所轄へ確認しておくと、あとで直さずに済みます。
対応できる体制は何を見て判断されるか

この体制の有無は、どうやって判断するのか。
判断材料が具体的に並べられています。
1つ目は自分の建物との関係です。直近の待機所について、現場派遣員の数と能力、保有車両数、建物までの距離、そして自動火災報知設備までの到達方法。
最後の到達方法という項目に注目してください。待機所から建物までの距離だけでなく、着いてから受信機にたどり着けるかまで見ます。鍵の保管や夜間の入館経路がここに効きます。
2つ目は業者全体の視点です。1つの待機所が何件の防火対象物を担当しているか。担当エリアはどこまでか。
自分の建物だけを見て足りていても、その待機所が多くを抱えていれば体制として成り立ちません。
待機所が何件担当しているかなんて、こちらからは分からないのですが。
審査するのは消防機関なので、そこは業者側が示します。
建物側で確かめておきたいのは、夜間に受信機まで入れる経路と鍵の扱いです。
ここが詰まっていないと体制が成り立ちません。
審査を県単位でまとめてもらえるか

これを県単位の団体等にまとめて委託できないか。
134号通知は、条件適合性に係る審査は当該防火対象物を管轄するそれぞれの消防機関が行うこととしたものである。
一括委託は許されません。審査は、その防火対象物を管轄するそれぞれの消防機関が行います。
理由は前の項目から読み取れます。審査の対象には、待機所から建物までの距離や受信機までの到達方法が含まれます。これは建物ごと、地域ごとに違います。県単位でまとめられる性質のものではありません。
ただし、まったく効率化できないわけではありません。同じ通知は、一定のエリア内に複数の防火対象物があり、そのいずれもが同一の業者等に委託している場合、業者等の側の一定の条件については1回の審査で済ますことが可能だとしています。そのための任意の登録制度も認められています。
建物ごとに見る部分と、業者ごとにまとめられる部分。この2つを分けた設計になっています。
建物ごとの部分と、業者ごとの部分を分けて考えればいいわけですね。
そのとおりです。
複数の建物をお持ちなら、業者側の条件は登録制度でまとまることがあります。
建物ごとの条件は、それぞれの所轄で見てもらう前提で進めてください。
審査の事務経費は誰が負担するか

徴収できるかどうかを直接には述べず、望ましい姿を示しています。
根拠は、遠隔移報システム等が119番通報に係る事項であることです。119番通報は誰か特定の人のための仕組みではありません。だから公益的観点が認められる。したがって事務経費は一般行政経費から支出されることが望ましい。
前の記事で見た検査手数料の話とは扱いが違います。検査は手数料の対象で審査は行政経費です。
この記事の5つを並べると、遠隔移報という仕組みの位置づけが見えてきます。同時性は目的で読む。到着時間は消防機関が独自に決める。体制は建物と業者の両面で見る。審査は管轄ごと。そして費用は公益として扱う。
どれも、119番通報という公共の仕組みに私設の設備をつなぐ以上、そのつなぎ目は行政の側が確かめるという考え方で揃っています。
審査でお金を請求されることはない、と考えてよいのでしょうか。
望ましいという書き方なので、扱いは所轄によります。
ただ根拠は示されているので、聞かれたらこの考え方を出せば話が早く進みます。
よくある質問
まとめ
遠隔移報にしても、こちらがやることは残るんですね。
すっきりしました。
夜間の入館経路と鍵の扱い、そして移報の順序。
この3つを書面にしておけば審査でも困りません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 自動火災報知設備の遠隔移報に係る運用について(消防予第134号通知)に関する質疑応答
- 自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(昭和61年11月6日 消防予第148号)
- 消防機関へ通報する非常通報装置の取扱いについて(昭和62年7月14日 消防予第118号通知。平成8年8月19日 消防予第164号により廃止)
- 消防法第17条
- 警備業法
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和60年代から平成初期のものが含まれ、通知番号や機関の名称等は当時のものです。廃止された通知が含まれる点にもご注意ください。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





